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第1部 四神と結婚しろと言われました
53.猫科の動物にはときめきます
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白虎は苦笑するしかなかった。
こういう反応は予想範囲内だったが、告白したことで香子に避けられると思うとけっこうつらいものがある。青龍が本当に申し訳なさそうな表情をしているのも気に食わなかった。
一方香子はすでにパンク気味の頭をフル回転させていた。
(落ち着け、落ち着くのよ私! 確か白虎って四神の中でも一番古いって説があるじゃない? だからきっと本能が表に出ると虎の姿になってしまうのではっ!?)
どうにかそんなことを考えて自分を納得させる。
それに、白虎が今五百歳ということは先代の花嫁が先代の白虎を受け入れたという証拠だ。
きっと想像だけだから恐ろしいと思うに違いない。
香子は意を決して白虎の目を見返した。
やはり金の瞳は綺麗だった。
『あのっ、そういう時以外にも虎の姿になることはできるんですか?』
白虎が目を丸くする。香子の問いは想定外だったらしい。
『……なろうと思えばなれるが……』
『あのっ、それでもし私が触れても欲情、とかしませんよね?』
一応確認しておかなければ危険だ。香子がもふもふ触らせてもらっている間に襲われたらしゃれにならない。
白虎は少し考えるような表情をした。
『そうだな……尾や直接性器に触られなければ大丈夫だとは思うが……。こわくはないのか?』
青龍も意外だというような表情をしている。
実は香子は猫が大好きだった。
もちろん虎と猫が違うことはわかっているが、TVや動物園で見た感じ、虎はでっかい猫というイメージがある。
(さ、触りたい……もふもふしたいーーーー!)
香子の目が爛々と輝いているのを見て、白虎は笑った。
『そなたは面白い娘よの』
『なれば我は席を外しましょうか?』
青龍が遠慮して言った。それに白虎は首を振る。
『今日はそなたと一緒にいるのであろう? それに万が一我が香子を襲いそうになったら止めてほしい』
さらっと不穏なことを言われて香子はちょっと冷汗をかいた。
(うーん……もしかしなくても私早まった?)
相変わらず学習能力のない己が嫌になる。
『できるだけ努力はしましょう』
青龍がそう言って香子を下ろした。すると白虎が後ずさり、寝室に香子と青龍を促した。
首を傾げながら白虎の後について寝室に足を踏み入れる。床の脇に敷かれた大きな絨毯の上で白虎は立ち止った。
『香子、目を閉じよ』
いつにない威厳をこめた声に香子は従った。ぶわっと一瞬風が吹いたかと思ったら、それはすぐにおさまった。
『目を開けてもかまわぬぞ』
声が違う、と香子は感じた。玄武よりもさらに低い。これはバリトンではなく、バスだ。
香子がおそるおそる目を開けると、絨毯の上に白い虎が悠然と横たわっていた。
『……きれい……』
思わず香子は呟いた。
白地に黒の縞模様がはしっているその姿はめったにお目にかかれない物で。
白虎は香子の科白に目を丸くした。余程香子の反応が意外だったらしい。
『……恐ろしくは、ないのか?』
そう聞かれて、香子ははっとした。中国で虎といえば一番ぐらいに恐れられている猛獣である。昔は山に入って虎に食われた、なんて話もあったぐらいだ。
けれど日本に野生の虎が生息していたことはなかった。昔の絵ではしばしば虎の絵が描かれた物はあったが、全て中国や韓国からの影響であろうことが窺える。その為実際に虎を見てもその恐ろしさが理解できない。
『私の国には、野生の虎がいなかったのです。だから恐ろしいという実感がわかないのです。……それに、白虎様は私を傷つけたりはしないでしょう?』
白虎の目が一瞬見開かれたが、次の瞬間には細められる。
『……青龍、やはり香子を連れて戻れ』
低いバスが唸るように響いた。
『わかりました』
香子は目をぱちくりさせた。青龍に抱き上げられる。
『え? え?』
そのまま青龍は香子を抱き白虎の室を出た。わけがわからなかった。
『あの? なんなんですか?』
『……自覚がないというのも罪なことよ』
青龍はため息交じりに呟いた後、自分の室に戻るまでもう一言も発しなかった。
こういう反応は予想範囲内だったが、告白したことで香子に避けられると思うとけっこうつらいものがある。青龍が本当に申し訳なさそうな表情をしているのも気に食わなかった。
一方香子はすでにパンク気味の頭をフル回転させていた。
(落ち着け、落ち着くのよ私! 確か白虎って四神の中でも一番古いって説があるじゃない? だからきっと本能が表に出ると虎の姿になってしまうのではっ!?)
どうにかそんなことを考えて自分を納得させる。
それに、白虎が今五百歳ということは先代の花嫁が先代の白虎を受け入れたという証拠だ。
きっと想像だけだから恐ろしいと思うに違いない。
香子は意を決して白虎の目を見返した。
やはり金の瞳は綺麗だった。
『あのっ、そういう時以外にも虎の姿になることはできるんですか?』
白虎が目を丸くする。香子の問いは想定外だったらしい。
『……なろうと思えばなれるが……』
『あのっ、それでもし私が触れても欲情、とかしませんよね?』
一応確認しておかなければ危険だ。香子がもふもふ触らせてもらっている間に襲われたらしゃれにならない。
白虎は少し考えるような表情をした。
『そうだな……尾や直接性器に触られなければ大丈夫だとは思うが……。こわくはないのか?』
青龍も意外だというような表情をしている。
実は香子は猫が大好きだった。
もちろん虎と猫が違うことはわかっているが、TVや動物園で見た感じ、虎はでっかい猫というイメージがある。
(さ、触りたい……もふもふしたいーーーー!)
香子の目が爛々と輝いているのを見て、白虎は笑った。
『そなたは面白い娘よの』
『なれば我は席を外しましょうか?』
青龍が遠慮して言った。それに白虎は首を振る。
『今日はそなたと一緒にいるのであろう? それに万が一我が香子を襲いそうになったら止めてほしい』
さらっと不穏なことを言われて香子はちょっと冷汗をかいた。
(うーん……もしかしなくても私早まった?)
相変わらず学習能力のない己が嫌になる。
『できるだけ努力はしましょう』
青龍がそう言って香子を下ろした。すると白虎が後ずさり、寝室に香子と青龍を促した。
首を傾げながら白虎の後について寝室に足を踏み入れる。床の脇に敷かれた大きな絨毯の上で白虎は立ち止った。
『香子、目を閉じよ』
いつにない威厳をこめた声に香子は従った。ぶわっと一瞬風が吹いたかと思ったら、それはすぐにおさまった。
『目を開けてもかまわぬぞ』
声が違う、と香子は感じた。玄武よりもさらに低い。これはバリトンではなく、バスだ。
香子がおそるおそる目を開けると、絨毯の上に白い虎が悠然と横たわっていた。
『……きれい……』
思わず香子は呟いた。
白地に黒の縞模様がはしっているその姿はめったにお目にかかれない物で。
白虎は香子の科白に目を丸くした。余程香子の反応が意外だったらしい。
『……恐ろしくは、ないのか?』
そう聞かれて、香子ははっとした。中国で虎といえば一番ぐらいに恐れられている猛獣である。昔は山に入って虎に食われた、なんて話もあったぐらいだ。
けれど日本に野生の虎が生息していたことはなかった。昔の絵ではしばしば虎の絵が描かれた物はあったが、全て中国や韓国からの影響であろうことが窺える。その為実際に虎を見てもその恐ろしさが理解できない。
『私の国には、野生の虎がいなかったのです。だから恐ろしいという実感がわかないのです。……それに、白虎様は私を傷つけたりはしないでしょう?』
白虎の目が一瞬見開かれたが、次の瞬間には細められる。
『……青龍、やはり香子を連れて戻れ』
低いバスが唸るように響いた。
『わかりました』
香子は目をぱちくりさせた。青龍に抱き上げられる。
『え? え?』
そのまま青龍は香子を抱き白虎の室を出た。わけがわからなかった。
『あの? なんなんですか?』
『……自覚がないというのも罪なことよ』
青龍はため息交じりに呟いた後、自分の室に戻るまでもう一言も発しなかった。
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