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第1部 四神と結婚しろと言われました
52.好奇心は香子をも殺す
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部屋の中はともかく、一歩表に出れば一人で歩くというのはそういうことらしい。香子は頭が痛くなった。
『それじゃあ、私にどうやってダイエットしろと……』
あんなにおいしいごはんを我慢なんてしたくない。だからせめて少しでも香子は運動しようと思っていたのだ。
『ダイエット?』
その科白を青龍が不思議そうに聞き返す。
『はい……毎日おいしいものばかり食べて動かないでいたら太るなって……』
青龍にはどうもピンとこないようだった。この世界にはダイエットの概念がないのだろうか。
(そういえば中国だと太っているのは美徳だったっけ……)
中国古代四大美女の一人である楊貴妃は豊満だったと言われている。その楊貴妃が生きていたのは唐の時代だ。そしてこの国の名も唐である。
いろいろ聞いた話を総合すると、元の世界の中国とこちらの世界のこの国の歴史は唐の時代まで似通っている。元の世界での唐は安史の乱により疲弊し、約三百年で滅ぼされ五代十国時代(分裂時代)に移行した。この国がそうならなかったというのはやはり四神の力が大きいのかもしれない。
『……我らのうちの誰かに嫁げば太る心配などなくなるがな……』
青龍の呟きに自分の考えに沈んでいた香子は顔を上げた。
『それってどういう……』
『白虎兄はいらっしゃるか』
青龍の歩みはゆっくりではあったが元々それほど広い場所でもない。いろいろ話しているうちに白虎の室の前に着いていたようだ。
『どうぞ』
室の前に白雲がおり、扉を開けてくれた。
白虎は居間の長椅子に肘をついて寝転がっていた。そんな如何にもくつろいでいるという体勢でも貫禄がすごいのは四神だからかもしれない。
『お休みのところ申し訳ない』
青龍が声をかける。白虎はなんともいえない表情で青龍とその腕に抱かれている香子を見た。
『……どうしたのだ?』
聞きたくなる気持ちもよくわかる。香子が白虎だったら間違いなく尋ねるだろう組み合わせだ。
『玄武兄と朱雀兄が、どうも香子の逆鱗に触れてしまったようです』
『ふうむ?』
香子はそれに頷いた。逆鱗とは言い得て妙である。
『で? 何故また我のところに?』
青龍は困ったような表情をした。
『兄のことで我が口を滑らせました。申し訳ありません』
白虎は少し考えるような表情をする。そして苦笑した。
『ということは、房事か……?』
『我の口から言うことはできませんので』
香子はなんだかとても嫌な予感がした。好奇心は猫をも殺すと言うではないか。それが今であってもなんら不思議はない。
『あのっ、答えにくいことなら答えなくていいです! そ、そのうち教えてもらえれば!』
香子が慌てて言うと、白虎はペロリと自分の口元を舐めた。
(舌、なっが……)
肉厚、というかんじではないが人間よりかはるかに長い。確か虎の舌は長くて、しかも猫のそれのようにざらざらしているはずだ。
香子はやはり好奇心に勝てなかった。
『あのー……白虎様の舌って、もしかしてざらざらしてます?』
そう聞くと面白いことを聞かれたというような表情をする。
『ああ、我の舌は確かにざらざらしている。だが安心しろ、そなたを舐める時は棘はしまう故』
最後の科白に香子はぴきーん、と固まった。
(あーもうまたなんかやっちゃったかもー……)
『できれば、そなたを口説き落としてから言うつもりではあったが……』
そう言いながら緩慢な仕草で起き上がる。そして気だるそうに近づいて来、香子の手に唇を当てた。
(ひーーーーーーーーーっ!)
香子はどうしたらいいかわからなくてあわあわした。
白虎はそして、その金の瞳を香子に合わせる。
『香子、我は交わる時虎の姿になってしまうのだ。他の三神はそういうことはないのだがな……』
(……え……?)
香子は聞いた言葉を頭の中でくり返し、そして虎に組み敷かれる己の姿を想像してしまった。
(じゅ、獣姦?)
できることならこのまま意識を失ってしまいたいと香子は思った。
『それじゃあ、私にどうやってダイエットしろと……』
あんなにおいしいごはんを我慢なんてしたくない。だからせめて少しでも香子は運動しようと思っていたのだ。
『ダイエット?』
その科白を青龍が不思議そうに聞き返す。
『はい……毎日おいしいものばかり食べて動かないでいたら太るなって……』
青龍にはどうもピンとこないようだった。この世界にはダイエットの概念がないのだろうか。
(そういえば中国だと太っているのは美徳だったっけ……)
中国古代四大美女の一人である楊貴妃は豊満だったと言われている。その楊貴妃が生きていたのは唐の時代だ。そしてこの国の名も唐である。
いろいろ聞いた話を総合すると、元の世界の中国とこちらの世界のこの国の歴史は唐の時代まで似通っている。元の世界での唐は安史の乱により疲弊し、約三百年で滅ぼされ五代十国時代(分裂時代)に移行した。この国がそうならなかったというのはやはり四神の力が大きいのかもしれない。
『……我らのうちの誰かに嫁げば太る心配などなくなるがな……』
青龍の呟きに自分の考えに沈んでいた香子は顔を上げた。
『それってどういう……』
『白虎兄はいらっしゃるか』
青龍の歩みはゆっくりではあったが元々それほど広い場所でもない。いろいろ話しているうちに白虎の室の前に着いていたようだ。
『どうぞ』
室の前に白雲がおり、扉を開けてくれた。
白虎は居間の長椅子に肘をついて寝転がっていた。そんな如何にもくつろいでいるという体勢でも貫禄がすごいのは四神だからかもしれない。
『お休みのところ申し訳ない』
青龍が声をかける。白虎はなんともいえない表情で青龍とその腕に抱かれている香子を見た。
『……どうしたのだ?』
聞きたくなる気持ちもよくわかる。香子が白虎だったら間違いなく尋ねるだろう組み合わせだ。
『玄武兄と朱雀兄が、どうも香子の逆鱗に触れてしまったようです』
『ふうむ?』
香子はそれに頷いた。逆鱗とは言い得て妙である。
『で? 何故また我のところに?』
青龍は困ったような表情をした。
『兄のことで我が口を滑らせました。申し訳ありません』
白虎は少し考えるような表情をする。そして苦笑した。
『ということは、房事か……?』
『我の口から言うことはできませんので』
香子はなんだかとても嫌な予感がした。好奇心は猫をも殺すと言うではないか。それが今であってもなんら不思議はない。
『あのっ、答えにくいことなら答えなくていいです! そ、そのうち教えてもらえれば!』
香子が慌てて言うと、白虎はペロリと自分の口元を舐めた。
(舌、なっが……)
肉厚、というかんじではないが人間よりかはるかに長い。確か虎の舌は長くて、しかも猫のそれのようにざらざらしているはずだ。
香子はやはり好奇心に勝てなかった。
『あのー……白虎様の舌って、もしかしてざらざらしてます?』
そう聞くと面白いことを聞かれたというような表情をする。
『ああ、我の舌は確かにざらざらしている。だが安心しろ、そなたを舐める時は棘はしまう故』
最後の科白に香子はぴきーん、と固まった。
(あーもうまたなんかやっちゃったかもー……)
『できれば、そなたを口説き落としてから言うつもりではあったが……』
そう言いながら緩慢な仕草で起き上がる。そして気だるそうに近づいて来、香子の手に唇を当てた。
(ひーーーーーーーーーっ!)
香子はどうしたらいいかわからなくてあわあわした。
白虎はそして、その金の瞳を香子に合わせる。
『香子、我は交わる時虎の姿になってしまうのだ。他の三神はそういうことはないのだがな……』
(……え……?)
香子は聞いた言葉を頭の中でくり返し、そして虎に組み敷かれる己の姿を想像してしまった。
(じゅ、獣姦?)
できることならこのまま意識を失ってしまいたいと香子は思った。
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