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第1部 四神と結婚しろと言われました
51.抱き上げられる理由がやっとわかりました
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青龍に促され、椅子に腰かける。
長椅子の隣だが、青龍は玄武や朱雀のように自分の膝に香子を乗せたりはしなかった。
目の前に茶杯を置かれて香子は顔を上げた。青藍が優しく微笑む。
そういえば青龍の室は爽やかな空気に満ちていた。別に玄武や朱雀の室ではなにかこれといって違うかんじは覚えなかったのだが青龍にはなにかあるのだろうか。
『ありがとうございます……』
青藍に礼を言うと少し困ったような顔をされた。
何か自分は間違ったことをしただろうかと首を傾げると、
『香子、眷族は我とそなたに仕える者。礼を言う必要はない』
透き通った声が紡がれるのに、そういうものなのかと思う。
『気をつけます』
素直に応えると、青龍は笑みを浮かべた。穏やかでそしてさわやかな。
玄武や朱雀に見つめられた時と違い胸の高鳴りはないが、青龍からこんな風に遇されるのは慣れないので戸惑ってしまう。
(なんか調子が狂うなぁ……)
『ところで、玄武兄と朱雀兄がどうかしたのか?』
その問いに香子はうっと詰まる。今日はこれから青龍と一緒にいると宣言してしまった手前答えないわけにはいかないだろう。
青藍は拱手すると室を出ていった。
(そこは気を使うとこじゃないです……)
香子はそっと嘆息する。仕方ないので聞いた通り答えることにした。
『ええと……我ら全てを受け入れて身も心もとろけきった私を見てみたい、と二人で話してたんです……』
思い出せる限り正確に言うと、青龍は少し考えるような表情をした。
『……さすがに我ら全て、というのは無理があるだろう。せめて白虎兄と先に交わっていればあるいは……』
(真面目にそんなこと考えるのはやーめーてーーーーーーー!)
青龍は見た目通り生真面目であるらしい。
それにしても気になることを青龍は言った。
『白虎様がなにか?』
それに青龍が困ったような顔をする。
『我の口から説明はできぬ。知りたいのであればこれから白虎兄の室に行くとしよう』
なんだか嫌な予感がするが、いずれ知ることになることを考えると今知っておいてもいいのではないかとも思う。
『はい、知りたいです』
そう答えると、青龍はますます困ったような顔になった。
『先に言っておくが、白虎兄は我らとは少し違うのだ。それだけ頭に入れておいてくれ』
青龍はそう言うと立ち上がり、香子に手を差し伸べた。その手に反射的に自分の手を重ねると、青龍はフッと笑みを浮かべ次の瞬間には香子を抱き上げていた。
(ブルータス、お前もか!?)
口から出なかったのは奇跡と言えよう。香子のうろんな視線に青龍が不思議そうな顔をする。
『香子、如何かしたのか?』
香子を抱き上げたまま室の扉を開け表に出る。青藍がその後ろに続く。
『あの……なんで皆さんは私をいちいち抱き上げるんですか?』
その問いに青龍は合点がいったような表情をした。後ろから青藍が答えてくれる。
『おそれながら……先ほど花嫁様は、本日はこれから青龍様と一緒にいると宣言されました。四神は花嫁様を求めるもの。花嫁様が御自身の足で移動をされるということは、どなたと過ごされるか決めてはいないということになります』
『それって……』
香子は冷汗をかいた。
『つまり花嫁様が御自身の足で移動されている間というのは、どなたにも花嫁様を口説く権利があるのです』
青藍の説明に、香子もやっと合点がいった。
だから景山でも玄武は香子が自分で登ることにいい顔をしなかったのだ。
ようは香子が自分はフリーだと宣言しているところに、四神以外にも人間の男が二人いたということである。
(……よくわからないけど、玄武様がキれた理由はそれだったのね)
それにしてもつくづく四神の生態と言うのはわかりづらい。香子もそんなこと思いもよらないから尋ねもしないし、四神にとってそれが常識だから説明する必要も感じないのだろう。
(まぁまだ知り合って数日だし……)
いろいろ香子も考えを改める必要がありそうだった。
長椅子の隣だが、青龍は玄武や朱雀のように自分の膝に香子を乗せたりはしなかった。
目の前に茶杯を置かれて香子は顔を上げた。青藍が優しく微笑む。
そういえば青龍の室は爽やかな空気に満ちていた。別に玄武や朱雀の室ではなにかこれといって違うかんじは覚えなかったのだが青龍にはなにかあるのだろうか。
『ありがとうございます……』
青藍に礼を言うと少し困ったような顔をされた。
何か自分は間違ったことをしただろうかと首を傾げると、
『香子、眷族は我とそなたに仕える者。礼を言う必要はない』
透き通った声が紡がれるのに、そういうものなのかと思う。
『気をつけます』
素直に応えると、青龍は笑みを浮かべた。穏やかでそしてさわやかな。
玄武や朱雀に見つめられた時と違い胸の高鳴りはないが、青龍からこんな風に遇されるのは慣れないので戸惑ってしまう。
(なんか調子が狂うなぁ……)
『ところで、玄武兄と朱雀兄がどうかしたのか?』
その問いに香子はうっと詰まる。今日はこれから青龍と一緒にいると宣言してしまった手前答えないわけにはいかないだろう。
青藍は拱手すると室を出ていった。
(そこは気を使うとこじゃないです……)
香子はそっと嘆息する。仕方ないので聞いた通り答えることにした。
『ええと……我ら全てを受け入れて身も心もとろけきった私を見てみたい、と二人で話してたんです……』
思い出せる限り正確に言うと、青龍は少し考えるような表情をした。
『……さすがに我ら全て、というのは無理があるだろう。せめて白虎兄と先に交わっていればあるいは……』
(真面目にそんなこと考えるのはやーめーてーーーーーーー!)
青龍は見た目通り生真面目であるらしい。
それにしても気になることを青龍は言った。
『白虎様がなにか?』
それに青龍が困ったような顔をする。
『我の口から説明はできぬ。知りたいのであればこれから白虎兄の室に行くとしよう』
なんだか嫌な予感がするが、いずれ知ることになることを考えると今知っておいてもいいのではないかとも思う。
『はい、知りたいです』
そう答えると、青龍はますます困ったような顔になった。
『先に言っておくが、白虎兄は我らとは少し違うのだ。それだけ頭に入れておいてくれ』
青龍はそう言うと立ち上がり、香子に手を差し伸べた。その手に反射的に自分の手を重ねると、青龍はフッと笑みを浮かべ次の瞬間には香子を抱き上げていた。
(ブルータス、お前もか!?)
口から出なかったのは奇跡と言えよう。香子のうろんな視線に青龍が不思議そうな顔をする。
『香子、如何かしたのか?』
香子を抱き上げたまま室の扉を開け表に出る。青藍がその後ろに続く。
『あの……なんで皆さんは私をいちいち抱き上げるんですか?』
その問いに青龍は合点がいったような表情をした。後ろから青藍が答えてくれる。
『おそれながら……先ほど花嫁様は、本日はこれから青龍様と一緒にいると宣言されました。四神は花嫁様を求めるもの。花嫁様が御自身の足で移動をされるということは、どなたと過ごされるか決めてはいないということになります』
『それって……』
香子は冷汗をかいた。
『つまり花嫁様が御自身の足で移動されている間というのは、どなたにも花嫁様を口説く権利があるのです』
青藍の説明に、香子もやっと合点がいった。
だから景山でも玄武は香子が自分で登ることにいい顔をしなかったのだ。
ようは香子が自分はフリーだと宣言しているところに、四神以外にも人間の男が二人いたということである。
(……よくわからないけど、玄武様がキれた理由はそれだったのね)
それにしてもつくづく四神の生態と言うのはわかりづらい。香子もそんなこと思いもよらないから尋ねもしないし、四神にとってそれが常識だから説明する必要も感じないのだろう。
(まぁまだ知り合って数日だし……)
いろいろ香子も考えを改める必要がありそうだった。
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