異世界で四神と結婚しろと言われました

浅葱

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第4部 四神を愛しなさいと言われました

48.四神は嫉妬が多すぎます

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 白虎が歩きだした。
 室に向かう。
 白雲が扉を開けて、香子は白虎に抱かれたまま居間の長椅子に腰掛けた。
 すぐに白雲がお茶を淹れた。いつでも温かいお茶が飲めるようにと、各部屋には大きい水差しがある。茶壺には熱石が入っているので、そこに水を入れて温まったら茶葉を入れる形である。この世界には便利なものがあると香子は感心していたが、このような便利な石があるのは唐の国だけで、周辺諸国にはないというのだから驚きだ。おそらく四神の加護のようなものが働いているのだろうと勝手に香子は思っている。
 お茶がおいしいと、香子は思った。
 黒月を四神宮の外にある謁見の間に行かせたはいいが、何故黒月が行く気になったのか香子はまだわからないでいた。

(私が言わなかったらきっと行かなかったよね)

 黒月には悪いことをしたと香子は思う。香子としては黒月がただ誰かの室の前に控えて立っているというのも気兼ねするのだ。だが黒月としてはどうなのだろう。
 香子は首を傾げた。
 四神は神様だから人間とは違うということは香子にもわかっている。だが眷属はどうなのだろう。
”番”については誰の言葉も聞き入れないということはよく知っている。

(わかんないなぁ)

 人の気持ちだってわからないものだ。眷属の気持ちなどわかるはずがない。それ以前に香子は誰かに仕えたことがないから、その仕えている人の為に一日中何かをするということが理解できない。

香子シャンズ、如何した?』

 無意識のうちにう~……などと、香子は音を発していたらしかった。

『あ、すみません。……一日中部屋の外に立ってるって、ヒマじゃないのかなとかどうでもいいことを考えてました』

 白虎に聞かれて香子は素直に答えた。

『……それは確かに我にもわからぬ。白雲、どうだ?』
『……我は番のことを考えております故、苦にはなりません』

 さらりと白雲が答える。白雲の番といえば侍女頭の陳秀美である。香子は内心ごちそうさまと思いながら聞いてみた。

『じゃあ、陳に会う前はどうだったの?』

 白雲は一瞬止まったが、『覚えておりませぬ』と答えた。

『そう……』
『ですが』

 白雲は言葉を続けた。

『おそらく、黒月は花嫁さまの守護であるということに誇りを持っています。ですので部屋の外に控えていることは全く苦にならないはずです』
『……ありがとう』

 白雲の言うことを鵜呑みにすることはできない。それよりも香子には気になることがあった。

『……成人する前に番に会っても、番とはわからないのだったかしら……』
『……眷属同士であれば番である必要もありませんのでわかりかねます』
『そうみたいよねぇ。でも貴方たちを見ていると不思議でしょうがないの』
『? 何のことでしょう』

 白雲は珍しく、軽く首を傾げた。香子は茶器を卓に置いて、おなかに辺りに回っている白虎の腕を抱えた。白虎を忘れていないとう意思表示である。あまり放置すると四神は拗ねてしまうので、そういったフォローは必要だ。
 白虎は気をよくしたのか、香子の髪に何度も口づけを落とした。

『だって白雲はここに来てから番を見つけたでしょう? 白雲だけなら偶然で済むけど、青藍も、紅夏もだし……それに紅炎だったかしら? 彼もよね。だったら黒月だって番をここで見つたとしてもおかしくはないわ』
『……その可能性はありますが、断定はできかねます』
『……それはそうよね』

 黒月が成人するまであと十年ある。もし趙文英が黒月の番だったとして、彼は黒月を待てるだろうか。今は端正な表であり、スタイルもいい趙だが十年後はどうなのだろうなどとどうでもいいことを香子は考えてしまった。それが白虎に伝わったのだろうか。

『……香子』
『ん?』

 白虎が香子を抱いたまま立ち上がった。

『白虎様?』

 白虎は無言で香子を寝室に運んだ。

『あっ……』

 そうしてベッドに香子を下ろし、すぐに覆いかぶさってきた。

『んんっ……』

 口唇を塞がれて香子は戸惑う。例え恋愛感情はなくても、香子が人間の男性のことを考えるのはご法度であった。香子と白虎が離れていれば問題はなかったが、香子は白虎の腕の中にいた。何を考えているか直接はわからずとも、身体に触れていればなんとなく伝わるものなのである。特に香子はもう四神と身体を重ねているから、そういったものが伝わりやすくなっていた。
 香子もしまったと思った。
 人様のことを考えている余裕など、本来香子にはない。
 それでもコイバナなどができたらいいななんて考えてしまったからいけないのである。例えそうなったとしても、黒月が香子にキャピキャピと話す姿など誰も想像はつかないのだか。
 香子は観念して素直に口づけに応えた。
 肉厚の長い舌が口腔内を辿るのが気持ちいい。
 触れ合えば触れ合うほど気持ちよくなる気が香子はした。
 衣裳の前を寛げられ、白くたわわな胸を白虎の手が優しく揉む。

『んんっ……』

 時折乳首を摘ままれてくにくにと揉まれるのが絶妙だった。

『んんっ……ぁっ……白虎さまぁ……』

 口づけが顔中に降ってきた。四神の嫉妬は時に心地いいと香子は思う。
 最後まで抱かないということをはふはふと息を吐ぎながら白虎に約束させて、香子は夕食までの間白虎に愛撫されたのだった。


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