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第1部 四神と結婚しろと言われました
48.叶わぬ想い(黒月視点)
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どうしても理解できない。
玄武がいない時や側にいない方がいい雰囲気の時、黒月は朱雀付として紅夏と一緒にいることになっている。
黒月は眷族の中でも出生が難しいとされている雌だった。その為他の眷族より大事に育てられていたことは間違いない。
一般的に四神の眷族は自分の神を崇め、人間を弱い者として慈しむ。しかしあまり雌が産まれず、つがいとなる人間との混血が進むと、寿命も短くなり、人間に思考が近付いてしまうという問題があった。
玄武が香子の前の花嫁との間に子をもうけなかったせいか、眷族たちは混血が進み黒月の世代は一五〇年ほどしか生きられないという異例の事態に直面している。それだというのに眷族たちが子を成せるのが五〇歳を過ぎてからというのは変わらないのだ。
まだ四〇歳を迎えたばかりの黒月は、大事に育てられたことと人間に思考が近付いているせいかわがままだった。
そして黒月はあろうことか己の神である玄武に恋をしていた。
五〇歳を迎え成人すればその恋心も消えるだろうが、見た目はどうであれ今はまだ子どもである。今回は親である眷族の反対を押し切り玄武会いたさに王城まで来てしまった。
玄武が花嫁を迎える、ということは聞いて知っていた。
けれどそれが何故人間で、しかも異世界から召喚されてくる者であるのか理解できない。
黒月にとって玄武は孤高の存在だった。
その冷やかな眼差しに熱が籠るところなど見たことがない。黒月がもっと幼い頃、たまたま玄武の部屋に入り込みいろいろな物を壊してしまった時も玄武は歯牙にもかけなかった。
北の地を治めるに相応しい凍てついた眼差しの神。
だから黒月は、玄武がその花嫁に対しても冷たい態度を取るのではないかと思っていたのだ。
それなのに。
黒月は、いきなり泣き出した花嫁に目を見張った。そんな悲痛な叫びはついぞ聞いたことがなく、どうしたらいいのかわからなかった。
やがてその嗚咽が小さくなった頃、玄武が動いた。
黒月は玄武の動きを、信じられない物を見るような思いで見つめた。
玄武は先ほどの朱雀のように花嫁を抱き上げるとその場を後にした。
何が起きたのかわからなかった。
それからも玄武は花嫁を離さなかった。次代が必要なのだということは黒月も頭ではわかっている。四神の子を産めるのは異世界からの花嫁のみ。どんなに黒月が玄武を想ってもその存在すら認識してもらえていないだろう。
わかっていてもくやしかった。
何故同じところにいる自分ではなく、異世界かからぽっと現れた人間の娘なのだろうかと。
だからどうしても睨むことはやめられなかった。邪魔をすることが決してできぬ代わりに、それぐらい許されるはずだと思った。
しかしもちろんそんな黒月の態度は他の眷族たちには不遜に映った。
「……黒月、そなたが人間に近い思考を持っているのはそなたのせいではない。だが、花嫁様は四神の大事なお方だ。これ以上無礼な態度を取り続けるなら我らにも考えがあるぞ」
紅夏と二人で茶室の表を見張っている時に言われ、黒月は返事をすることしかできなかった。
けれど四神も花嫁も黒月の視線に気づいていないように見えた。玄武と朱雀、花嫁はすでにとても仲が良く、近いうちに結婚してしまうように見える。
(私には決して手が届かないのにどうして……)
花嫁が恥じらって玄武の腕から降りた時も、なんて贅沢な、と思った。
黒月なら喜んでその腕の中に捕らわれるだろう。玄武にもし求められたら簡単にその身を投げ出すだろう。けれどまだ黒月には生殖機能が備わっていないし、もし備わる歳になったとしても玄武の子を産むことはできない。
朱雀の室の前で紅夏と玄武の帰りを待ちながら、黒月は花嫁という存在が憎らしくてたまらなかった。
玄武がいない時や側にいない方がいい雰囲気の時、黒月は朱雀付として紅夏と一緒にいることになっている。
黒月は眷族の中でも出生が難しいとされている雌だった。その為他の眷族より大事に育てられていたことは間違いない。
一般的に四神の眷族は自分の神を崇め、人間を弱い者として慈しむ。しかしあまり雌が産まれず、つがいとなる人間との混血が進むと、寿命も短くなり、人間に思考が近付いてしまうという問題があった。
玄武が香子の前の花嫁との間に子をもうけなかったせいか、眷族たちは混血が進み黒月の世代は一五〇年ほどしか生きられないという異例の事態に直面している。それだというのに眷族たちが子を成せるのが五〇歳を過ぎてからというのは変わらないのだ。
まだ四〇歳を迎えたばかりの黒月は、大事に育てられたことと人間に思考が近付いているせいかわがままだった。
そして黒月はあろうことか己の神である玄武に恋をしていた。
五〇歳を迎え成人すればその恋心も消えるだろうが、見た目はどうであれ今はまだ子どもである。今回は親である眷族の反対を押し切り玄武会いたさに王城まで来てしまった。
玄武が花嫁を迎える、ということは聞いて知っていた。
けれどそれが何故人間で、しかも異世界から召喚されてくる者であるのか理解できない。
黒月にとって玄武は孤高の存在だった。
その冷やかな眼差しに熱が籠るところなど見たことがない。黒月がもっと幼い頃、たまたま玄武の部屋に入り込みいろいろな物を壊してしまった時も玄武は歯牙にもかけなかった。
北の地を治めるに相応しい凍てついた眼差しの神。
だから黒月は、玄武がその花嫁に対しても冷たい態度を取るのではないかと思っていたのだ。
それなのに。
黒月は、いきなり泣き出した花嫁に目を見張った。そんな悲痛な叫びはついぞ聞いたことがなく、どうしたらいいのかわからなかった。
やがてその嗚咽が小さくなった頃、玄武が動いた。
黒月は玄武の動きを、信じられない物を見るような思いで見つめた。
玄武は先ほどの朱雀のように花嫁を抱き上げるとその場を後にした。
何が起きたのかわからなかった。
それからも玄武は花嫁を離さなかった。次代が必要なのだということは黒月も頭ではわかっている。四神の子を産めるのは異世界からの花嫁のみ。どんなに黒月が玄武を想ってもその存在すら認識してもらえていないだろう。
わかっていてもくやしかった。
何故同じところにいる自分ではなく、異世界かからぽっと現れた人間の娘なのだろうかと。
だからどうしても睨むことはやめられなかった。邪魔をすることが決してできぬ代わりに、それぐらい許されるはずだと思った。
しかしもちろんそんな黒月の態度は他の眷族たちには不遜に映った。
「……黒月、そなたが人間に近い思考を持っているのはそなたのせいではない。だが、花嫁様は四神の大事なお方だ。これ以上無礼な態度を取り続けるなら我らにも考えがあるぞ」
紅夏と二人で茶室の表を見張っている時に言われ、黒月は返事をすることしかできなかった。
けれど四神も花嫁も黒月の視線に気づいていないように見えた。玄武と朱雀、花嫁はすでにとても仲が良く、近いうちに結婚してしまうように見える。
(私には決して手が届かないのにどうして……)
花嫁が恥じらって玄武の腕から降りた時も、なんて贅沢な、と思った。
黒月なら喜んでその腕の中に捕らわれるだろう。玄武にもし求められたら簡単にその身を投げ出すだろう。けれどまだ黒月には生殖機能が備わっていないし、もし備わる歳になったとしても玄武の子を産むことはできない。
朱雀の室の前で紅夏と玄武の帰りを待ちながら、黒月は花嫁という存在が憎らしくてたまらなかった。
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