45 / 597
第1部 四神と結婚しろと言われました
45.山登りの後のごはんは格別です
しおりを挟む
それほど時間もかからずに万春亭と呼ばれる山頂の建物に着いた。そこから都一帯を一望できるという。
(眺めはいいかもしれないけど王城の建物の配置が丸見えだよね、これ)
香子は促されるままに建物に足を踏み入れ、その景観を見ながら眉を寄せた。趙と王はてっきり香子が『すごい!』と感嘆の声を上げると思っていただけに怪訝そうな表情をした。
『失礼ですが、何か気にかかることでも?』
王の問いに香子ははっとしたように顔を上げた。
『いえ……すごい眺めだとは思うのですが、ここってもしかしてそう簡単に足を踏み入れちゃいけないところなのではないかな思って……』
王は内心舌を巻いた。
『確かにここは皇族以外は入れぬ禁域ではある。だが我らは国に仇名す存在ではない為心配は無用だ』
玄武が背後から静かに答える。
『やっぱり……』
香子は恐縮した。そして何故他の庭園ではいけなかったのだろうかとも考える。
(四神と私が一緒にいるところをあまり人に見せない為?)
それぐらいしか思いつかないが、もしかしたらそうなのかもしれないとも思う。
『あのー……他の庭園を見せてもらうことはできるんですか?』
試しに問うと、趙と王は難しそうな顔をした。
『いえ、あの無理ならいいんです』
香子は慌てて手を振った。玄武がそんな香子を後ろから抱き上げる。
『……わぁっ……!』
『随分がんばって上っていたな。そろそろ疲れただろう。腹はすかぬか?』
そう聞かれて香子は自分のおなかに手を当てた。確かに少しばかりすいてきたような気がする。
『……おなかがすいた、気はしますけど……』
香子は自分を微笑みながら抱き上げている玄武を睨んだ。
『いきなり抱き上げないでくださいってば!』
趙はその様子に苦笑して万春亭の中に昼食の支度を整えることにした。王と侍女たちを促し、香子が玄武に抗議している間に席を設ける。
結局むーっとした顔をしながらも香子はそこで昼食を取った。どういうわけか料理が冷めていないことに首を傾げるとそういった保温の技術があるのだと説明された。よくわからないがいろいろあるらしい。
『香子、あちらからの眺めもよさそうではないか?』
玄武に話しかけられる。少し先の山の峰部分に四阿があるのを見止めて、香子も素直に頷いた。
すると香子が食後のお茶の杯を卓に置いた途端、再び玄武に抱き上げられた。
(…………!?)
まさにそれは一瞬だった。
あろうことか玄武は万春亭からもう一つの山の峰に転移したのである。
「え? え? 何? なんなんですか?」
香子は気が動転して思わず日本語で玄武に問い正す。けれどその答えが与えられるはずはなくて。
玄武はそのままの体勢で香子に口づけると、誰からも見えないように四阿に足を踏み入れた。
「……んんっ……!」
玄武は先ほどと違い少し性急だった。香子の口唇を何度もはみ、抱きしめる腕の力も痛みを感じるほどである。いったい何が玄武をこうさせたのか香子には皆目見当がつかなかった。
(できれば二人っきりの時にとは言ったけど……!)
ある意味二人きりではあるが、万春亭には三神も眷族も四神宮に仕える人々もいるのである。
『……はぁ……玄武様……』
口唇が離れ、香子はため息をつくように声をかける。玄武は少し困ったような表情をしていた。
『香子、すまぬ……そなたへの愛しさが抑えられぬ……』
香子は言葉の意味を考えて、それが脳に達した時一気に赤くなった。
(なんで……)
再び玄武の口唇が近づいてくる。香子はそれにどきどきと弾む胸を抑えながら思わず瞳を閉じてしまった。
少し開かれた口唇にするりと玄武の舌が入り込んでくる。やんわりと舌を絡められ、香子は身を震わせた。
「……んっ……」
頭の中にクエスチョンマークがいっぱい浮かんでいたが、その甘い口づけに香子はすぐ何も考えられなくなってしまった。
(眺めはいいかもしれないけど王城の建物の配置が丸見えだよね、これ)
香子は促されるままに建物に足を踏み入れ、その景観を見ながら眉を寄せた。趙と王はてっきり香子が『すごい!』と感嘆の声を上げると思っていただけに怪訝そうな表情をした。
『失礼ですが、何か気にかかることでも?』
王の問いに香子ははっとしたように顔を上げた。
『いえ……すごい眺めだとは思うのですが、ここってもしかしてそう簡単に足を踏み入れちゃいけないところなのではないかな思って……』
王は内心舌を巻いた。
『確かにここは皇族以外は入れぬ禁域ではある。だが我らは国に仇名す存在ではない為心配は無用だ』
玄武が背後から静かに答える。
『やっぱり……』
香子は恐縮した。そして何故他の庭園ではいけなかったのだろうかとも考える。
(四神と私が一緒にいるところをあまり人に見せない為?)
それぐらいしか思いつかないが、もしかしたらそうなのかもしれないとも思う。
『あのー……他の庭園を見せてもらうことはできるんですか?』
試しに問うと、趙と王は難しそうな顔をした。
『いえ、あの無理ならいいんです』
香子は慌てて手を振った。玄武がそんな香子を後ろから抱き上げる。
『……わぁっ……!』
『随分がんばって上っていたな。そろそろ疲れただろう。腹はすかぬか?』
そう聞かれて香子は自分のおなかに手を当てた。確かに少しばかりすいてきたような気がする。
『……おなかがすいた、気はしますけど……』
香子は自分を微笑みながら抱き上げている玄武を睨んだ。
『いきなり抱き上げないでくださいってば!』
趙はその様子に苦笑して万春亭の中に昼食の支度を整えることにした。王と侍女たちを促し、香子が玄武に抗議している間に席を設ける。
結局むーっとした顔をしながらも香子はそこで昼食を取った。どういうわけか料理が冷めていないことに首を傾げるとそういった保温の技術があるのだと説明された。よくわからないがいろいろあるらしい。
『香子、あちらからの眺めもよさそうではないか?』
玄武に話しかけられる。少し先の山の峰部分に四阿があるのを見止めて、香子も素直に頷いた。
すると香子が食後のお茶の杯を卓に置いた途端、再び玄武に抱き上げられた。
(…………!?)
まさにそれは一瞬だった。
あろうことか玄武は万春亭からもう一つの山の峰に転移したのである。
「え? え? 何? なんなんですか?」
香子は気が動転して思わず日本語で玄武に問い正す。けれどその答えが与えられるはずはなくて。
玄武はそのままの体勢で香子に口づけると、誰からも見えないように四阿に足を踏み入れた。
「……んんっ……!」
玄武は先ほどと違い少し性急だった。香子の口唇を何度もはみ、抱きしめる腕の力も痛みを感じるほどである。いったい何が玄武をこうさせたのか香子には皆目見当がつかなかった。
(できれば二人っきりの時にとは言ったけど……!)
ある意味二人きりではあるが、万春亭には三神も眷族も四神宮に仕える人々もいるのである。
『……はぁ……玄武様……』
口唇が離れ、香子はため息をつくように声をかける。玄武は少し困ったような表情をしていた。
『香子、すまぬ……そなたへの愛しさが抑えられぬ……』
香子は言葉の意味を考えて、それが脳に達した時一気に赤くなった。
(なんで……)
再び玄武の口唇が近づいてくる。香子はそれにどきどきと弾む胸を抑えながら思わず瞳を閉じてしまった。
少し開かれた口唇にするりと玄武の舌が入り込んでくる。やんわりと舌を絡められ、香子は身を震わせた。
「……んっ……」
頭の中にクエスチョンマークがいっぱい浮かんでいたが、その甘い口づけに香子はすぐ何も考えられなくなってしまった。
44
お気に入りに追加
4,015
あなたにおすすめの小説
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
明智さんちの旦那さんたちR
明智 颯茄
恋愛
あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。
奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。
ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。
*BL描写あり
毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。
転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
女性が全く生まれない世界とか嘘ですよね?
青海 兎稀
恋愛
ただの一般人である主人公・ユヅキは、知らぬうちに全く知らない街の中にいた。ここがどこだかも分からず、ただ当てもなく歩いていた時、誰かにぶつかってしまい、そのまま意識を失う。
そして、意識を取り戻し、助けてくれたイケメンにこの世界には全く女性がいないことを知らされる。
そんなユヅキの逆ハーレムのお話。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
目が覚めたら男女比がおかしくなっていた
いつき
恋愛
主人公である宮坂葵は、ある日階段から落ちて暫く昏睡状態になってしまう。
一週間後、葵が目を覚ますとそこは男女比が約50:1の世界に!?自分の父も何故かイケメンになっていて、不安の中高校へ進学するも、わがままな女性だらけのこの世界では葵のような優しい女性は珍しく、沢山のイケメン達から迫られる事に!?
「私はただ普通の高校生活を送りたいんです!!」
#####
r15は保険です。
2024年12月12日
私生活に余裕が出たため、投稿再開します。
それにあたって一部を再編集します。
設定や話の流れに変更はありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる