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第1部 四神と結婚しろと言われました
30.後悔先に立たずとはよく言ったものです(後半は白虎、青龍視点)
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香子は思わず自分の腕や手をくんくんとかいでしまった。お茶のいい香りはするがそんないかにもフェロモンですという匂いはしない。
「?」
香子の行動に四神は目を丸くした。そして合点がいったというように苦笑する。
『そなた自身にはわからぬものなのだろう。昨夜から我らはそなたの香りに酔いしれている。のう、白虎、青龍』
朱雀が同意を求めるように白虎と青龍に目線をやる。彼らは一様に頷いた。
『って、私の前の女性もそうだったのですか……?』
おそるおそる聞くと『もちろん』と玄武と朱雀が応えた。
香子は再び頭痛がしてくるのを感じた。
『張燕からも常にそなたのような甘い香りがしていた。我慢するのがたいへんであったな……』
玄武が再び苦笑して言う。
張燕、というのが前の花嫁の名前なのだろう。玄武は懐かしそうな、そして寂しそうな表情をした。玄武は張燕に眷族すら産んでもらわなかったという。きっといろいろあったのだろうと香子はただ想像することしかできない。
(って、常にってーーーーーーーっ!?)
そんなずっと発情してるような香りを香子が振りまいているというのだろうか。名前が香子だからってそれは勘弁してほしい。
『あの……その香りを抑えることはできないんですか……?』
いくらなんでもいちいち襲われては身が持たない。どこかに突破口があるはずだと香子は尋ねてみた。
すると玄武と朱雀が目を細める。
(ま、またもしかして藪蛇とかーーーーー!?)
香子は背中を冷汗が伝うのを感じた。
『身をもって体験してみるか?』
いつのまにか両隣は玄武と朱雀によってホールドされている。
『い、いえ! 遠慮します!』
(やっぱり藪蛇だったーーーーーーーー!)
後悔先に立たずとはまさにこのことである。
『そう遠慮するでない。頼むから、我らの愛を受け取っておくれ』
甘いバリトンとテナーに耳元で囁かれるのは本当に心臓に悪い。香子は泣きそうになった。
玄武に抱き上げられ、朱雀がその後ろにつく。
(誰かたーすーけーてーーーーー!!)
香子の頭の中を無情にもドナドナが流れていった。
* *
後に残された白虎と青龍はまだ茶鍾に残っているお茶を白雲と紅夏に入れさせた。
『……なぁ青龍よ、香子は食われると思うか?』
白虎の問いに青龍の手が止まる。
『さぁ……どうでしょう。さすがに兄らは慎重だと思いますが』
『それならいいんだけどな……』
直接はまだ関係ないので他人事でいられるが、それでもあの香りはまずいと白虎と青龍は思う。
人間にはわからないだろうあの甘い香。誘っているのかと言わんばかりである。
歳を経た二神ならある程度は自分を抑えられるのかもしれないが、まだ若い白虎と青龍は情動を抑えられる自信がない。だからこそ青龍は香子が隣に腰かけた時狼狽し、思わずひどいことを言ってしまった。好きな子をいじめる小学生となんらやっていることは変わらない。
紅夏が苦笑した。
『失礼ですが、朱雀様は花嫁様の意思を尊重されると思いますよ』
紅夏は張燕が産んだ眷族である。ここに来ている眷族は黒月を除きみな張燕の子だった。
『そうか……』
『それならいい』
愛するあまり花嫁を傷つけてしまうのでは本末転倒である。いずれ白虎も青龍も眷族を産んでもらう必要がある。まだ香子に対してそれほどの感情はないが、できるだけ心穏やかに暮らせるように働きかけをしようとは思う。
『そろそろ戻るか』
白虎が席を立ち、青龍も従った。
今宵香子は朱雀か玄武の室に連れ込まれているのだろう。
さすがに白虎と青龍は香子に同情した。
「?」
香子の行動に四神は目を丸くした。そして合点がいったというように苦笑する。
『そなた自身にはわからぬものなのだろう。昨夜から我らはそなたの香りに酔いしれている。のう、白虎、青龍』
朱雀が同意を求めるように白虎と青龍に目線をやる。彼らは一様に頷いた。
『って、私の前の女性もそうだったのですか……?』
おそるおそる聞くと『もちろん』と玄武と朱雀が応えた。
香子は再び頭痛がしてくるのを感じた。
『張燕からも常にそなたのような甘い香りがしていた。我慢するのがたいへんであったな……』
玄武が再び苦笑して言う。
張燕、というのが前の花嫁の名前なのだろう。玄武は懐かしそうな、そして寂しそうな表情をした。玄武は張燕に眷族すら産んでもらわなかったという。きっといろいろあったのだろうと香子はただ想像することしかできない。
(って、常にってーーーーーーーっ!?)
そんなずっと発情してるような香りを香子が振りまいているというのだろうか。名前が香子だからってそれは勘弁してほしい。
『あの……その香りを抑えることはできないんですか……?』
いくらなんでもいちいち襲われては身が持たない。どこかに突破口があるはずだと香子は尋ねてみた。
すると玄武と朱雀が目を細める。
(ま、またもしかして藪蛇とかーーーーー!?)
香子は背中を冷汗が伝うのを感じた。
『身をもって体験してみるか?』
いつのまにか両隣は玄武と朱雀によってホールドされている。
『い、いえ! 遠慮します!』
(やっぱり藪蛇だったーーーーーーーー!)
後悔先に立たずとはまさにこのことである。
『そう遠慮するでない。頼むから、我らの愛を受け取っておくれ』
甘いバリトンとテナーに耳元で囁かれるのは本当に心臓に悪い。香子は泣きそうになった。
玄武に抱き上げられ、朱雀がその後ろにつく。
(誰かたーすーけーてーーーーー!!)
香子の頭の中を無情にもドナドナが流れていった。
* *
後に残された白虎と青龍はまだ茶鍾に残っているお茶を白雲と紅夏に入れさせた。
『……なぁ青龍よ、香子は食われると思うか?』
白虎の問いに青龍の手が止まる。
『さぁ……どうでしょう。さすがに兄らは慎重だと思いますが』
『それならいいんだけどな……』
直接はまだ関係ないので他人事でいられるが、それでもあの香りはまずいと白虎と青龍は思う。
人間にはわからないだろうあの甘い香。誘っているのかと言わんばかりである。
歳を経た二神ならある程度は自分を抑えられるのかもしれないが、まだ若い白虎と青龍は情動を抑えられる自信がない。だからこそ青龍は香子が隣に腰かけた時狼狽し、思わずひどいことを言ってしまった。好きな子をいじめる小学生となんらやっていることは変わらない。
紅夏が苦笑した。
『失礼ですが、朱雀様は花嫁様の意思を尊重されると思いますよ』
紅夏は張燕が産んだ眷族である。ここに来ている眷族は黒月を除きみな張燕の子だった。
『そうか……』
『それならいい』
愛するあまり花嫁を傷つけてしまうのでは本末転倒である。いずれ白虎も青龍も眷族を産んでもらう必要がある。まだ香子に対してそれほどの感情はないが、できるだけ心穏やかに暮らせるように働きかけをしようとは思う。
『そろそろ戻るか』
白虎が席を立ち、青龍も従った。
今宵香子は朱雀か玄武の室に連れ込まれているのだろう。
さすがに白虎と青龍は香子に同情した。
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