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第1部 四神と結婚しろと言われました
28.中国人じゃないと告白したのに求愛されました
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香子の決意をこめた眼差しに四神たちも居住まいを正した。
『勝手を言って申し訳ないのですが、四神とその眷族の方々以外には絶対聞かれたくないのです』
そう香子が言うと白雲が心得たように、
『紅夏、黒月、表の見張りを頼む』
と他の眷族に申しつけた。これはあくまで保険である。香子の言葉を聞いた時点で朱雀が結界を張ったがそれを言う必要はない。
紅夏と黒月が茶室の外に出、扉を閉めるのを待って香子は口を開いた。
『どこから話したらいいか……まず、私の名前は白沢香子といいます』
本名を名乗ると、四神は当惑したような顔をした。
『シラサワ、ココ?』
『中国語の読みでは白沢香子です。私たちの国でも漢字は使いますが、中国人ではありません』
そう言って四神の反応を見る。
『失礼ですが、中国、というのはこの国と繋がる異世界の国の名前でしょうか?』
白雲が慎重に聞く。その様に、香子はそういった話を四神とは一切していなかったことに気付いた。
『……ごめんなさい。この国は唐というのですよね? この国と同じ言語を話し、ほぼ同じ文化を持つ国は現在中華人民共和国といい、略称は中国です。その中国と海を隔てた隣にある小さい島国が私の出身国です』
『ふむ……』
四神は一様に難しそうな表情をした。
『私の国の言語はもちろん中国語とは違います。書き言葉である漢字は古代中国から渡来してきましたが、読み方や文法も全て異なります』
『では何故そなたはその中国語を話せるのだ?』
朱雀が尋ねる。
そこからが本題である。
『私は中国の歴史が好きで自国にいる時独学で勉強していました。それが高じて中国に留学することにしたのです。そして中国で四年、大学卒業まで暮らしました。……ここに召喚されたのは、私が自国に帰国するというその日だったんです……』
その言葉に茶室内にいた者全員が息を飲んだ。
『……だから、私がここにいるのはなにかの手違いだと思うのです。本来は中国人の誰かが召喚されるべきで、私が四神の花嫁であるはずがない……』
そこまで言った時、玄武と朱雀がゆらりと立ち上がった。香子がはっとして二神を見上げると、ひどく苦しげな顔をしていた。
『……ごめんなさい……』
思わず謝罪が口をついて出た。その途端二神は香子に近寄り、玄武が即座に香子を抱き上げた。
『……そなたがかように思っていたなど、我らは全く知らなんだ……』
何かを耐えるような表情で玄武が香子の戸惑う顔を覗きこむ。
『玄武兄、これはやはり我らの愛を知らしめなければ香子は納得しないのではないでしょうか?』
すぐ横から香子を見下ろしている朱雀が物騒なことを言う。
(……え? 私ここから放逐されるんじゃないの? いったい……)
正直に話せば四神は自分から一切の興味をなくすと思っていた。それなのに。
白虎と青龍もまた席を立つのが見えた。
『……得体が知れぬ娘とは思っていたがそんな事情があったとは……』
『青龍、いいかげん謝罪した方がいいのではないか?』
『そのようですな……』
そう言いながら白虎と青龍も香子に近づいてくる。
そして、青龍が静かな眼差しで香子の手を取った。
『……言葉が足りなくてすまなかったな。我はそなたを誤解していた。これから、よろしく頼む』
そこまで言うと青龍はあろうことか香子の手に口づけた。
(なっ、なになになになに~~~~~~~~~~~~~~っ!?)
青天の霹靂とはまさにこのことである。
『香子、我ともよろしく頼むぞ』
もう片方の手を今度は白虎に取られ口づけられる。
香子は目を白黒させた。
一体何が起こっているのかわからない。
(私、間違ったこと言ってないよね? なんか言葉選びおかしかったかしら……)
あまりに意外な展開すぎて頭がついていかない。そうして香子がパニックに陥っていると、表から紅夏の声がかかった。
『趙文英という者が来たと知らせが参りました』
それに香子はほっとしたが、反対に四神は眉をひそめた。
『勝手を言って申し訳ないのですが、四神とその眷族の方々以外には絶対聞かれたくないのです』
そう香子が言うと白雲が心得たように、
『紅夏、黒月、表の見張りを頼む』
と他の眷族に申しつけた。これはあくまで保険である。香子の言葉を聞いた時点で朱雀が結界を張ったがそれを言う必要はない。
紅夏と黒月が茶室の外に出、扉を閉めるのを待って香子は口を開いた。
『どこから話したらいいか……まず、私の名前は白沢香子といいます』
本名を名乗ると、四神は当惑したような顔をした。
『シラサワ、ココ?』
『中国語の読みでは白沢香子です。私たちの国でも漢字は使いますが、中国人ではありません』
そう言って四神の反応を見る。
『失礼ですが、中国、というのはこの国と繋がる異世界の国の名前でしょうか?』
白雲が慎重に聞く。その様に、香子はそういった話を四神とは一切していなかったことに気付いた。
『……ごめんなさい。この国は唐というのですよね? この国と同じ言語を話し、ほぼ同じ文化を持つ国は現在中華人民共和国といい、略称は中国です。その中国と海を隔てた隣にある小さい島国が私の出身国です』
『ふむ……』
四神は一様に難しそうな表情をした。
『私の国の言語はもちろん中国語とは違います。書き言葉である漢字は古代中国から渡来してきましたが、読み方や文法も全て異なります』
『では何故そなたはその中国語を話せるのだ?』
朱雀が尋ねる。
そこからが本題である。
『私は中国の歴史が好きで自国にいる時独学で勉強していました。それが高じて中国に留学することにしたのです。そして中国で四年、大学卒業まで暮らしました。……ここに召喚されたのは、私が自国に帰国するというその日だったんです……』
その言葉に茶室内にいた者全員が息を飲んだ。
『……だから、私がここにいるのはなにかの手違いだと思うのです。本来は中国人の誰かが召喚されるべきで、私が四神の花嫁であるはずがない……』
そこまで言った時、玄武と朱雀がゆらりと立ち上がった。香子がはっとして二神を見上げると、ひどく苦しげな顔をしていた。
『……ごめんなさい……』
思わず謝罪が口をついて出た。その途端二神は香子に近寄り、玄武が即座に香子を抱き上げた。
『……そなたがかように思っていたなど、我らは全く知らなんだ……』
何かを耐えるような表情で玄武が香子の戸惑う顔を覗きこむ。
『玄武兄、これはやはり我らの愛を知らしめなければ香子は納得しないのではないでしょうか?』
すぐ横から香子を見下ろしている朱雀が物騒なことを言う。
(……え? 私ここから放逐されるんじゃないの? いったい……)
正直に話せば四神は自分から一切の興味をなくすと思っていた。それなのに。
白虎と青龍もまた席を立つのが見えた。
『……得体が知れぬ娘とは思っていたがそんな事情があったとは……』
『青龍、いいかげん謝罪した方がいいのではないか?』
『そのようですな……』
そう言いながら白虎と青龍も香子に近づいてくる。
そして、青龍が静かな眼差しで香子の手を取った。
『……言葉が足りなくてすまなかったな。我はそなたを誤解していた。これから、よろしく頼む』
そこまで言うと青龍はあろうことか香子の手に口づけた。
(なっ、なになになになに~~~~~~~~~~~~~~っ!?)
青天の霹靂とはまさにこのことである。
『香子、我ともよろしく頼むぞ』
もう片方の手を今度は白虎に取られ口づけられる。
香子は目を白黒させた。
一体何が起こっているのかわからない。
(私、間違ったこと言ってないよね? なんか言葉選びおかしかったかしら……)
あまりに意外な展開すぎて頭がついていかない。そうして香子がパニックに陥っていると、表から紅夏の声がかかった。
『趙文英という者が来たと知らせが参りました』
それに香子はほっとしたが、反対に四神は眉をひそめた。
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