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第1部 四神と結婚しろと言われました
27.お茶を入れるのは至福の一時です
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当たり前のように玄武に抱き上げられて茶室に移動する。四神は過保護だと香子はぼんやり思う。
茶室は南と西に採光の為の窓があり北側は壁だった。壁際には大きめの丸い飾り棚と中華風の食器棚が設置されており、飾り棚には置物や茶壺がいろいろ置かれていた。どれも落ち着いた色合いで上品である。
部屋の中央には長い卓が置かれ、椅子は六脚ある。北側の席の前に中国茶藝用のセットが置かれている。香子はそれに目を輝かせた。
中国茶藝は近年台湾から発生したものだけに、この世界でも同じ茶器を見られるとは思っていなかった。
(お茶入れさせてもらっちゃだめかな……)
侍女たちがお湯を用意してきたのを見て、そわそわしながら言ってみる。
『あの……私が入れてもいいかしら?』
侍女たちはびっくりしたような顔をしたが、『どうぞ』とうやうやしく茶巾を香子に差し出した。
『白香?』
『お茶を入れながら話をさせてください』
そう言って北側の席に下ろしてもらう。
四神と眷族は不思議そうな面持ちで香子を窺っている。香子はお湯の温度を確かめ、茶筒の中のお茶葉を確認した。
(わぁ……さすが宮廷にあるだけある……)
ぱっと見ただけで上質の茶葉ということがわかる。
香子は嬉しくなってお湯を茶壺(急須)と茶鍾(急須で出したお茶を一旦入れておく器)に注ぎ、それからそのお湯を人数分の聞香杯(香りをかぐ為の長い筒状の茶器)に移した。
茶筒からお茶葉を取り、全員に回すように見せ茶壺に入れる。それから再びお湯を注ぎ、すぐにそれを茶鍾に捨てた。
また茶壺にお湯を回すようにして注ぎ、蓋をしてその上からお湯をかける。これは下に茶海と言うお湯を受ける為の受け皿があるからできることである。
お茶を蒸らす間に茶鍾に入れたお茶を捨て、聞香杯のお湯を品茗杯(小さい湯呑み)に移してすぐにまた捨てた。
茶鍾に過濾網(茶漉し)を置き、そこに茶壺からお茶を注ぐ。馥郁とした香りに香子の顔がほころんだ。
茶鍾から過濾網を外し、まずは聞香杯にお茶を入れ、それからそのお茶を品茗杯に移した。
『どうぞ、先に聞香杯から香りをかいでください。その長い筒状の茶器です』
そう言われて四神がぎこちなく聞香杯に手を伸ばす。侍女たちは香子の流れるような動きに目を丸くしていた。
香子は自分の前に置いた聞香杯を両手で挟み摩るようにしながら香りをかいだ。
『いい香り……』
こうやって茶藝に使うのは烏龍茶のみである。葡萄のような香りに、香子はこのお茶が東方美人というものだと気付いた。
香りをかいでから品茗杯を親指と人差し指で挟み、中指を底に添えて持つと香子はお茶の味を楽しんだ。
『おいしい……』
『ふむ、うまいな……』
四神たちは正直こういう飲み方は面倒だと思っていた。品茗杯は小さく一口ですぐに飲み干せるような量しか入らない。しかし香子が入れてくれたものだと思うといつも以上においしく感じられるのが不思議でもあった。
この国で茶藝ができるのは宮廷に仕える女性、それから有力貴族お抱えの者だけである。当り前のように手順を間違えることなくお茶を入れた香子を、侍女たちは信じられない思いで見つめた。
そうして何杯かお茶を飲んでから、香子は侍女を下がらせることにした。
侍女が下がってから朱雀が口を開く。
『そなたの世界にも茶藝があったのか?』
『はい。嗜好品ではあるので一般的ではありませんでしたが』
嗜好品と聞いて朱雀は目を細める。やはり香子はそれなりの水準の暮らしをしていたのだろうと確信する。
(お茶を入れさせてもらえてよかった……)
香子は中国にいる時見よう見真似で茶藝のやり方を覚えていた。茶屋で自分たちで入れているのを見た店員が面白がってお茶の淹れ方を教えてくれ、茶器の名前等も覚えた。
『話をするのが遅れてごめんなさい』
香子は品茗杯を置くと意を決したように顔を上げた。
(我が家の私物の為雰囲気出てなくてすいません)
茶室は南と西に採光の為の窓があり北側は壁だった。壁際には大きめの丸い飾り棚と中華風の食器棚が設置されており、飾り棚には置物や茶壺がいろいろ置かれていた。どれも落ち着いた色合いで上品である。
部屋の中央には長い卓が置かれ、椅子は六脚ある。北側の席の前に中国茶藝用のセットが置かれている。香子はそれに目を輝かせた。
中国茶藝は近年台湾から発生したものだけに、この世界でも同じ茶器を見られるとは思っていなかった。
(お茶入れさせてもらっちゃだめかな……)
侍女たちがお湯を用意してきたのを見て、そわそわしながら言ってみる。
『あの……私が入れてもいいかしら?』
侍女たちはびっくりしたような顔をしたが、『どうぞ』とうやうやしく茶巾を香子に差し出した。
『白香?』
『お茶を入れながら話をさせてください』
そう言って北側の席に下ろしてもらう。
四神と眷族は不思議そうな面持ちで香子を窺っている。香子はお湯の温度を確かめ、茶筒の中のお茶葉を確認した。
(わぁ……さすが宮廷にあるだけある……)
ぱっと見ただけで上質の茶葉ということがわかる。
香子は嬉しくなってお湯を茶壺(急須)と茶鍾(急須で出したお茶を一旦入れておく器)に注ぎ、それからそのお湯を人数分の聞香杯(香りをかぐ為の長い筒状の茶器)に移した。
茶筒からお茶葉を取り、全員に回すように見せ茶壺に入れる。それから再びお湯を注ぎ、すぐにそれを茶鍾に捨てた。
また茶壺にお湯を回すようにして注ぎ、蓋をしてその上からお湯をかける。これは下に茶海と言うお湯を受ける為の受け皿があるからできることである。
お茶を蒸らす間に茶鍾に入れたお茶を捨て、聞香杯のお湯を品茗杯(小さい湯呑み)に移してすぐにまた捨てた。
茶鍾に過濾網(茶漉し)を置き、そこに茶壺からお茶を注ぐ。馥郁とした香りに香子の顔がほころんだ。
茶鍾から過濾網を外し、まずは聞香杯にお茶を入れ、それからそのお茶を品茗杯に移した。
『どうぞ、先に聞香杯から香りをかいでください。その長い筒状の茶器です』
そう言われて四神がぎこちなく聞香杯に手を伸ばす。侍女たちは香子の流れるような動きに目を丸くしていた。
香子は自分の前に置いた聞香杯を両手で挟み摩るようにしながら香りをかいだ。
『いい香り……』
こうやって茶藝に使うのは烏龍茶のみである。葡萄のような香りに、香子はこのお茶が東方美人というものだと気付いた。
香りをかいでから品茗杯を親指と人差し指で挟み、中指を底に添えて持つと香子はお茶の味を楽しんだ。
『おいしい……』
『ふむ、うまいな……』
四神たちは正直こういう飲み方は面倒だと思っていた。品茗杯は小さく一口ですぐに飲み干せるような量しか入らない。しかし香子が入れてくれたものだと思うといつも以上においしく感じられるのが不思議でもあった。
この国で茶藝ができるのは宮廷に仕える女性、それから有力貴族お抱えの者だけである。当り前のように手順を間違えることなくお茶を入れた香子を、侍女たちは信じられない思いで見つめた。
そうして何杯かお茶を飲んでから、香子は侍女を下がらせることにした。
侍女が下がってから朱雀が口を開く。
『そなたの世界にも茶藝があったのか?』
『はい。嗜好品ではあるので一般的ではありませんでしたが』
嗜好品と聞いて朱雀は目を細める。やはり香子はそれなりの水準の暮らしをしていたのだろうと確信する。
(お茶を入れさせてもらえてよかった……)
香子は中国にいる時見よう見真似で茶藝のやり方を覚えていた。茶屋で自分たちで入れているのを見た店員が面白がってお茶の淹れ方を教えてくれ、茶器の名前等も覚えた。
『話をするのが遅れてごめんなさい』
香子は品茗杯を置くと意を決したように顔を上げた。
(我が家の私物の為雰囲気出てなくてすいません)
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