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第1部 四神と結婚しろと言われました
26.四神の花嫁と呼ばれる由縁
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朱雀は丁寧に、四神と花嫁の関係、そしてここで定められたルールについて香子に説明した。
『そなたが最初の相手を決めるまで我らはここを離れることはあたわぬのだ。その禁を破りここを離れた場合、そなたの夫となる権利を失う』
香子にはそれがどれだけたいへんなことかよくわからなかった。青龍にはどうも嫌われているようにしか思えない。
『僭越ながらその先は我に説明をさせていただきたく存じます』
朱雀の後に引き継いだのは白虎の眷族である白雲だった。香子は朱雀に促され再び席につく。するとそれを待っていたように前菜が運ばれてきた。
(そういえばお腹すいてたんだっけ……)
『花嫁様はどうぞ食べながらお聞きください。四神は大体千年で代替わりをするということはご存知でしょうか』
朱雀に箸を渡され条件反射で受け取る。白雲の言葉に香子は頷いた。
『四神には我らのような眷族が沢山おります。代替わりの際には我らが新たな四神の教育とお世話を務めさせていただくことになっております』
それにも頷く。
『ですが眷族同士、もしくは人間との混血が進みますと我らの寿命はだんだん短くなり、四神の教育やお世話をすることが難しくなります。その為花嫁様に眷族もまた産んでいただく必要があるのです』
(そういうメカニズムだったんだ……)
なんとなく香子も合点がいった。
『たいへん失礼ですが、前の花嫁様がいらした際玄武様は眷族すら産んでいただくことはしませんでした。そのおかげで玄武様の眷族は混血が進み、そこにいる黒月の寿命はおそらく一五〇年程になっていると思われます』
白雲の言葉に黒月は目を伏せた。
『眷族の混血が進むことは寿命が短くなるだけではございませぬ。元々あった四神への忠誠心及びに人間に対する慈しみが薄れ、それにより治める土地の荒廃を招きかねないこととなります』
『わ、我の玄武様への忠誠心を愚弄されるか!?』
黒月はカッとなり白雲に怒鳴った。
『黒月、控えよ』
朱雀の眷族である紅夏に窘められ、黒月は悔しそうに首を垂れる。
『黒月、決してそなたが悪いわけではない。だがそなたより目上の者に口答えをすることといい、花嫁様へのその目つきは忠誠心が薄れていると取られても仕方がないことだ』
『……肝に銘じます』
白雲が淡々と告げる事実に、黒月は恥入ったように返事をした。
『話を戻します。青龍様も今はまだお若くいらっしゃいますが、花嫁様もこの先何百年と生きられます。次代は必要なくても眷族がいなければ安定した土地を治めることは難しい。夫となる権利を失うことは、四神としての責務を放棄することと同義なのです』
そこまで言うと白雲は拱手し、白虎の後ろに下がった。
つまり香子が相手として選ぶ選ばないは関係なく、夫となる権利は最低でも確保しておかなければいけない重要事項だということがわかった。
『ありがとうございました……』
四神というのもいろいろたいへんなのだなと香子は思う。
だが四神の花嫁がそんなに重要な立場だというなら、尚のこと香子は黙っているべきではないとも思う。
やっと香子は前菜に手をつけた。
前菜は大体どれも見たことがある物だったから箸をつけるのに迷いはなかった。
四神も申し訳程度に箸をつけ、その後出てきた料理も静かに食べた。食事をしながら物想いにふける香子を四神が心配そうに見ていたが、もちろん香子が気づくはずもない。
そして昼夜兼用の食事が終り食後のお茶に手をつけてから、香子は意を決して四神を見まわした。
『あの……これからお時間よろしいですか……?』
それに全員が頷く。一同は北西の茶室に移動することにした。
『そなたが最初の相手を決めるまで我らはここを離れることはあたわぬのだ。その禁を破りここを離れた場合、そなたの夫となる権利を失う』
香子にはそれがどれだけたいへんなことかよくわからなかった。青龍にはどうも嫌われているようにしか思えない。
『僭越ながらその先は我に説明をさせていただきたく存じます』
朱雀の後に引き継いだのは白虎の眷族である白雲だった。香子は朱雀に促され再び席につく。するとそれを待っていたように前菜が運ばれてきた。
(そういえばお腹すいてたんだっけ……)
『花嫁様はどうぞ食べながらお聞きください。四神は大体千年で代替わりをするということはご存知でしょうか』
朱雀に箸を渡され条件反射で受け取る。白雲の言葉に香子は頷いた。
『四神には我らのような眷族が沢山おります。代替わりの際には我らが新たな四神の教育とお世話を務めさせていただくことになっております』
それにも頷く。
『ですが眷族同士、もしくは人間との混血が進みますと我らの寿命はだんだん短くなり、四神の教育やお世話をすることが難しくなります。その為花嫁様に眷族もまた産んでいただく必要があるのです』
(そういうメカニズムだったんだ……)
なんとなく香子も合点がいった。
『たいへん失礼ですが、前の花嫁様がいらした際玄武様は眷族すら産んでいただくことはしませんでした。そのおかげで玄武様の眷族は混血が進み、そこにいる黒月の寿命はおそらく一五〇年程になっていると思われます』
白雲の言葉に黒月は目を伏せた。
『眷族の混血が進むことは寿命が短くなるだけではございませぬ。元々あった四神への忠誠心及びに人間に対する慈しみが薄れ、それにより治める土地の荒廃を招きかねないこととなります』
『わ、我の玄武様への忠誠心を愚弄されるか!?』
黒月はカッとなり白雲に怒鳴った。
『黒月、控えよ』
朱雀の眷族である紅夏に窘められ、黒月は悔しそうに首を垂れる。
『黒月、決してそなたが悪いわけではない。だがそなたより目上の者に口答えをすることといい、花嫁様へのその目つきは忠誠心が薄れていると取られても仕方がないことだ』
『……肝に銘じます』
白雲が淡々と告げる事実に、黒月は恥入ったように返事をした。
『話を戻します。青龍様も今はまだお若くいらっしゃいますが、花嫁様もこの先何百年と生きられます。次代は必要なくても眷族がいなければ安定した土地を治めることは難しい。夫となる権利を失うことは、四神としての責務を放棄することと同義なのです』
そこまで言うと白雲は拱手し、白虎の後ろに下がった。
つまり香子が相手として選ぶ選ばないは関係なく、夫となる権利は最低でも確保しておかなければいけない重要事項だということがわかった。
『ありがとうございました……』
四神というのもいろいろたいへんなのだなと香子は思う。
だが四神の花嫁がそんなに重要な立場だというなら、尚のこと香子は黙っているべきではないとも思う。
やっと香子は前菜に手をつけた。
前菜は大体どれも見たことがある物だったから箸をつけるのに迷いはなかった。
四神も申し訳程度に箸をつけ、その後出てきた料理も静かに食べた。食事をしながら物想いにふける香子を四神が心配そうに見ていたが、もちろん香子が気づくはずもない。
そして昼夜兼用の食事が終り食後のお茶に手をつけてから、香子は意を決して四神を見まわした。
『あの……これからお時間よろしいですか……?』
それに全員が頷く。一同は北西の茶室に移動することにした。
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