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第1部 四神と結婚しろと言われました

16.神様は俺様がデフォルトのようです

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 昨夜はいろいろとりとめもないことを考えているうちに香子は眠ってしまったらしい。

(いつ布団に入ったんだっけ?)

 目覚めたばかりの働かない頭でぼんやりと視線を巡らせると、何故か隣に……。

「ぎゃあああああああああああああっっっ!!」

 これはさすがに香子も日本語で叫んでしまった。

『……白香バイシャン、もう少し悲鳴には色気というものが欲しいのだが……』
『なっ、なっ、なんでここにいるんですかっ!?』

 顔をほんの少し顰めて、香子に朝から色気を語るのは案の定赤い長髪の朱雀であった。

『何事だ!?』
『白香、無事か!?』

 香子が顔を真っ赤にして抗議した時、寝室に青龍と白虎が同時ぐらいに飛び込んできた。そしてベッドで朱雀と香子が共にいる光景を目にして嘆息した。

『人騒がせな……』
『もうモノにしてしまったのですか? さすが朱雀兄』
『そっ、そんなわけないでしょうがっ!』

 香子が真っ赤な顔のまま全力で否定する。昨夜の今朝で本当にそんなことになっていたら香子としては憤死ものだ。ちなみに科白は上から青龍、白虎、香子の順である。

『…………』
『そうか。朱雀兄、ではがんばってください』

 無情にも二神はそのまま部屋を出て行ってしまった。

(っつーかこの状況をどうにかしてほしかったのに……)

 香子ががっくりと首を落とすと、その体に朱雀が腕を絡めた。

『……なんでここにいるんです?』
『我が訪れる前に寝てしまったそなたが悪い』

 昨夜ちら、と考えたことは現実に起こりうることだったらしい。

『……起きてたらどうなってたんですか?』

 そう憮然として聞くと、朱雀はにっこりした。

『もちろんそなたを口説いて抱いていたに決まっておる』
(そういえば朱雀って火の神様でもあるんだっけ……)

 なんとも情熱的なことである。

『……私、まだどなたにもお返事しておりませんが』

 それ以前にはっきりと口説かれてもいない。

『先に体の相性をみるのも大事だろう』

 開いた口が塞がらないとはこのことだ。

(……神様なんか嫌いだ……)

 香子はため息をついた。とりあえず説得を試みるしかなさそうである。

『あのですね。私三日前に彼と別れてきたばかりなんです』
『ほほう』

 香子を抱き寄せたまま朱雀は面白そうな表情をした。

『でも彼とは嫌で別れたわけではないのです。だから私の心はまだ彼の元にあるんです』
『だがそれは界を渡る前に付き合っていた者だろう?』

 そう言いながら朱雀は香子を床に押し倒そうとする。

『それはそうですけど! いくら二度と会えないかもしれないと思ったとしても、私にとってはまだ三日しか経ってないんです! って、何してるんですかっ!?』

 朱雀はどうにか逃げようとする香子の体をきつく抱きしめ、その薄い胸に顔を寄せた。

『そなたの香りをかいでいる』
(やっぱり神様なんか嫌いだーーーーーー!!)

 香子が怒りに身を震わせた時、ちょうどいいタイミングで香子のおなかが鳴った。

 ぐうううう~~~

『……おなかすきました……』
『そのようだな……』

 朱雀は苦笑すると香子から手を放した。

『着替えをした方がいい。その格好はなかなかに煽情的だ』

 そう言われて香子は自分の格好を見る。
 そういえば昨夜体が透けるような夜着を着せられていたのだった。急いで胸の辺りを両手で隠すと朱雀は笑いながら戻って行った。

(む、むかつく~~~~~~!!)

 そこでいいかげん香子はからかわれたことに気づいた。朱雀には昨夜からからかわれっぱなしである。
 着替えはそういえばどこにあるのだろうと寝室の中を見回したが何もない。これでは食事にいけないではないかと困っていると、

『白香様、失礼します』

 という侍女の声がした。

『入りなさい』

 返事をすると顔を洗う用のお湯の入った洗面器を持った者、顔を拭く布を持った者、着替えを持った者などが入ってきた。

(うーん、ホント中国の時代劇っぽいなー)

 と思いながら香子は侍女に促されるままに顔を洗って拭き、衣装を着替えさせられた。赤い髪を結い上げられ、

『お食事の用意ができております。こちらへどうぞ』

 とやっと南東の部屋に案内された。
 そこでふと香子は思い出した。

(そういえば私のバッグ、どうしたんだろう?)

 朝食が済んだら聞かなければと香子は冷汗をかいた。
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