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第4部 四神を愛しなさいと言われました
40.玄武の本性はそういえばこうでした
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玄武の甲羅の上で、蛇に絡みつかれて和んだはいいが、これからどうするのだろうと香子は首を傾げた。
さすがにここで玄武が空を飛ぶことはあるまい。それはさすがに内緒であるはずだ。
どうしてもこの姿を見るとガメラのように火を噴きながらぐるぐる回転して飛ぶのを想像してしまう。ちょっと見てみたい気もするがそれはしないだろうと香子は頭を振った。
『回転をしてうまく飛べるものなのか?』
香子の思考は玄武に伝わっていたらしい。香子は慌てた。
『ち、違うんです。私の世界にそういう映画がって……ええと物語がありまして!』
『そうか。それは見てみたいものだ』
『見なくても大丈夫です……』
さすがに香子は冷汗を掻いた。そしてようやく周りを見た。
『?』
香子は大きな二匹の蛇をなでなでしながら、呆気にとられた様子の皇帝、そして平伏している神官たちを眺めた。皇帝は口をポカンと開けている。それを見て香子はほんの少しだけ溜飲を下げた。
どうだ、私の玄武様はすごいだろう、というやつである。
香子は己の性格が悪いことを自覚している。だがこのままではいつまで経っても戻ってこなさそうなので、しかたなく声をかけた。
『皇帝?』
皇上(皇帝陛下)とは絶対に呼ばない。人間で言う立場とか身分という話であれば香子の方がこの国の皇帝よりも遥かに上である。
『あ、はい……。執明神君(玄武)の本当のお姿はそのような……』
皇帝の声は震えているように香子には聞こえた。確かに祈谷壇の下、門までの間をこんな大きいサイズの玄武が埋めているのである。それは本当に大きくて、口を開けたら皇帝ぐらい食べられそうであった。
『……絵姿などが残っているのではないか?』
玄武が面倒くさそうに言う。
『はい……絵姿を拝見したことはございます』
皇帝は首肯した。
『ならば何をそなに驚く? 我ら四神はこの国の守護を担っておる。もちろん……愛しの花嫁がこの国を思っている間だけではあるがな』
四神の意志は花嫁にかかっている。香子は皇帝に向かってにっこりと笑んだ。皇帝はそれを見て蒼褪めた。
ここにきてようやく、花嫁が脅威であることを理解したようである。
『終わったのか』
玄武が聞いた。皇帝は一瞬何を聞かれたのかわからなかったようだ。
『……は? え、はい。祭祀は終りました』
『では戻るぞ』
『は、はい……しばしお待ちを……』
こうしてみると、皇帝は小物だと香子は思った。人の中ではこの国の頂点だが、本性を現した玄武の前では無力だ。いくらなんでも衛兵を玄武にけしかけるわけにもいかない。相手は神である。それも、この国を守護する絶対的な神だ。
(そんな神様に愛されてるって、何事なんだろうねー?)
香子は首を傾げた。
『香子』
『あっ……』
玄武が一瞬で人の姿に代わり、気がつけば香子はまた玄武の腕の中にいた。どうしても香子の足を地に付けたくはないらしい。香子はふふっと笑った。
『もっと蛇さんを撫でたかったです』
『かようなこと……我が領地へ向かえばいくらでもさせてやろう』
『そうですね。さすがに場所がありませんね』
先程の大きさは相当であった。玄武の大きさは直径10mではきかなかったのではないかと香子は思う。玄武の口元が少し上がった。笑みを浮かべているようで、香子は嬉しくなった。
皇帝はこれから着替えをし、それが終わってからまた輿に乗って戻るらしい。それに付き合わなければならないのは面倒ではあったが、香子は薄絹越しでも街並みが見たかったからそれでかまわなかった。
玄武の色をベースにした衣裳を、香子は改めて眺めた。玄武もまた瞳の色に合わせた緑色の長袍をまとっている。その長袍には香子の髪の色である暗紫紅色で玄武が刺繍されていた。これは玄武の領地にいる眷属が作ってくれた衣裳らしい。
(この髪の色は朱雀様の色なのだけど……)
それでもこの髪の色をとにかく気に入っているから、香子はとても嬉しかった。嬉しいことばかりで顔がにやけてしまう。
玄武の内側の漢服は黒である。それに金色で四神の刺繍がされていた。春節は一年の始まりである。だからこそ、このような贅沢な衣裳が用意されたのだろうと香子は解釈した。
『玄武様って、本当に素敵ですね……』
しみじみと香子がそう呟けば、
『……香子、我の室に戻ろう』
玄武が当たり前のようにそう言うから、香子は思わず頷きそうになってはっとした。
『だ、だめです』
『何故?』
『何故とかじゃないです。輿に乗って王城まで戻るんですよ。それは守ってください』
『では王城まで戻ったらよいか?』
その綺麗な緑色の瞳に見つめられたら香子は逆らえない。
『よ、予定がわかりません』
『今宵は後は晩餐会だけであろう』
『ああうう……』
玄武の方が今日の予定を把握していることに香子は慌てた。
『お、お昼ご飯はしっかり食べたいです!』
『そうだな……昼食はいただこう』
玄武はとても楽しそうだった。
『もう、玄武様ったら……どれだけ私のことが……』
『そなたは我の最愛だ。言っているだろう』
『ああうう……』
そうして皇帝の支度が整うまで、香子は玄武に優しく包まれて過ごしたのだった。
ーーーーー
すみません、修正しましたー。第三部27話で空飛ぶ玄武様がいましたね!(作者、覚えとけ
さすがにここで玄武が空を飛ぶことはあるまい。それはさすがに内緒であるはずだ。
どうしてもこの姿を見るとガメラのように火を噴きながらぐるぐる回転して飛ぶのを想像してしまう。ちょっと見てみたい気もするがそれはしないだろうと香子は頭を振った。
『回転をしてうまく飛べるものなのか?』
香子の思考は玄武に伝わっていたらしい。香子は慌てた。
『ち、違うんです。私の世界にそういう映画がって……ええと物語がありまして!』
『そうか。それは見てみたいものだ』
『見なくても大丈夫です……』
さすがに香子は冷汗を掻いた。そしてようやく周りを見た。
『?』
香子は大きな二匹の蛇をなでなでしながら、呆気にとられた様子の皇帝、そして平伏している神官たちを眺めた。皇帝は口をポカンと開けている。それを見て香子はほんの少しだけ溜飲を下げた。
どうだ、私の玄武様はすごいだろう、というやつである。
香子は己の性格が悪いことを自覚している。だがこのままではいつまで経っても戻ってこなさそうなので、しかたなく声をかけた。
『皇帝?』
皇上(皇帝陛下)とは絶対に呼ばない。人間で言う立場とか身分という話であれば香子の方がこの国の皇帝よりも遥かに上である。
『あ、はい……。執明神君(玄武)の本当のお姿はそのような……』
皇帝の声は震えているように香子には聞こえた。確かに祈谷壇の下、門までの間をこんな大きいサイズの玄武が埋めているのである。それは本当に大きくて、口を開けたら皇帝ぐらい食べられそうであった。
『……絵姿などが残っているのではないか?』
玄武が面倒くさそうに言う。
『はい……絵姿を拝見したことはございます』
皇帝は首肯した。
『ならば何をそなに驚く? 我ら四神はこの国の守護を担っておる。もちろん……愛しの花嫁がこの国を思っている間だけではあるがな』
四神の意志は花嫁にかかっている。香子は皇帝に向かってにっこりと笑んだ。皇帝はそれを見て蒼褪めた。
ここにきてようやく、花嫁が脅威であることを理解したようである。
『終わったのか』
玄武が聞いた。皇帝は一瞬何を聞かれたのかわからなかったようだ。
『……は? え、はい。祭祀は終りました』
『では戻るぞ』
『は、はい……しばしお待ちを……』
こうしてみると、皇帝は小物だと香子は思った。人の中ではこの国の頂点だが、本性を現した玄武の前では無力だ。いくらなんでも衛兵を玄武にけしかけるわけにもいかない。相手は神である。それも、この国を守護する絶対的な神だ。
(そんな神様に愛されてるって、何事なんだろうねー?)
香子は首を傾げた。
『香子』
『あっ……』
玄武が一瞬で人の姿に代わり、気がつけば香子はまた玄武の腕の中にいた。どうしても香子の足を地に付けたくはないらしい。香子はふふっと笑った。
『もっと蛇さんを撫でたかったです』
『かようなこと……我が領地へ向かえばいくらでもさせてやろう』
『そうですね。さすがに場所がありませんね』
先程の大きさは相当であった。玄武の大きさは直径10mではきかなかったのではないかと香子は思う。玄武の口元が少し上がった。笑みを浮かべているようで、香子は嬉しくなった。
皇帝はこれから着替えをし、それが終わってからまた輿に乗って戻るらしい。それに付き合わなければならないのは面倒ではあったが、香子は薄絹越しでも街並みが見たかったからそれでかまわなかった。
玄武の色をベースにした衣裳を、香子は改めて眺めた。玄武もまた瞳の色に合わせた緑色の長袍をまとっている。その長袍には香子の髪の色である暗紫紅色で玄武が刺繍されていた。これは玄武の領地にいる眷属が作ってくれた衣裳らしい。
(この髪の色は朱雀様の色なのだけど……)
それでもこの髪の色をとにかく気に入っているから、香子はとても嬉しかった。嬉しいことばかりで顔がにやけてしまう。
玄武の内側の漢服は黒である。それに金色で四神の刺繍がされていた。春節は一年の始まりである。だからこそ、このような贅沢な衣裳が用意されたのだろうと香子は解釈した。
『玄武様って、本当に素敵ですね……』
しみじみと香子がそう呟けば、
『……香子、我の室に戻ろう』
玄武が当たり前のようにそう言うから、香子は思わず頷きそうになってはっとした。
『だ、だめです』
『何故?』
『何故とかじゃないです。輿に乗って王城まで戻るんですよ。それは守ってください』
『では王城まで戻ったらよいか?』
その綺麗な緑色の瞳に見つめられたら香子は逆らえない。
『よ、予定がわかりません』
『今宵は後は晩餐会だけであろう』
『ああうう……』
玄武の方が今日の予定を把握していることに香子は慌てた。
『お、お昼ご飯はしっかり食べたいです!』
『そうだな……昼食はいただこう』
玄武はとても楽しそうだった。
『もう、玄武様ったら……どれだけ私のことが……』
『そなたは我の最愛だ。言っているだろう』
『ああうう……』
そうして皇帝の支度が整うまで、香子は玄武に優しく包まれて過ごしたのだった。
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すみません、修正しましたー。第三部27話で空飛ぶ玄武様がいましたね!(作者、覚えとけ
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