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第1部 四神と結婚しろと言われました

14.やっと晩餐会が終りました

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 玄武についての話が終り、白虎がそのまま朱雀の話まで始めようとしたのに香子は待ったをかけた。

『すいません、ちょっと頭を整理させてください』

 まず眷族というのがよくわからないし、玄武が千歳ということは他の四神の歳はどうなのだろう。

『えーと、玄武様が千歳ということは皆さんおいくつなんですか?』

『私が約七五〇年、白虎が約五百年、青龍が約一五〇年生きている』

 それについては朱雀が答えてくれた。

(ということは……やっぱり玄武様と朱雀様の次代は必要なのね)
『あと、眷族、というのがわからないのですが……』

 隣に腰かけている白虎が少し考えるような表情をした。

『どう説明したものか……』
『眷族というのは我ら四神に仕える一族のことだ。眷族が多ければ多いほど土地は潤い安定するようになっている』
(うーん……ようは領主に仕える部下みたいなかんじ? んで同じ神様の一族だから数が多い方がいいのかな?)

 うまく掴めないがそんなようなものだろうと香子は勝手に解釈する。
 他にも大事なことを聞き忘れている気がするがすでに香子の頭はパンク状態だった。もうこれ以上は詰め込めないと思った頃、

『四神と白香バイシャン殿は随分と交流を深められた様子、まことにめでたきことである。どうか心安らかに滞在していただきたい』

 すっかり存在を忘れていた皇帝の声がして、香子は声のした方向に目を向けた。

(白香娘娘(白香殿)、ね……)

 四神の前ではさすがに小娘というのは憚られるらしい。

『朕は明日の公務に障る故先に退室させていただくが、四神の方々はごゆるりとなされよ。ご退室の際は四神宮に案内させていただく』

 広間中に聞こえるような朗々と響く声で皇帝は言うと、さっそうと席を立った。それに慌てたように皇后が着き従う。確かに自分だけ残されても困るだろうと香子も思う。
 皇帝が退室した後四神はともかく他の者たちはどうしたらいいのかわからないようだった。四神の手前そそくさと消えることもできなくて困っているように見える。広間の真ん中では相変わらず余興の踊りのようなものが催されてはいるが、座は一気に白けたものになった。

(逃げたな……)

 お茶をのんびりと飲みながら香子は思う。

『そういえばこちらにはどれぐらい滞在されるのですか?』

 ちょっと気になって背後の朱雀に聞いてみる。おそらく四神が王城を去る時は香子も誰かに着き従って行くことになるのだろう。

(せめて一カ月ぐらい猶予があるといいなぁ)

 明日にはもう領地に戻る、とかはさすがに勘弁してほしい。まだ香子は何も知らないのだ。

『一応一年いることにはなっている。もちろん、そなたが相手を決めてくれればすぐにでも戻るが……』

 朱雀に顔を覗きこまれるようにして言われ、香子はぶんぶんと首を振った。この声もこの顔も非常に心臓に悪い。

『そ、そんなに簡単に決められません!』

 慌てて答えると朱雀はくっくっと笑った。どうやらからかわれたらしい。
 さすがにむっとしたが、また澄んだ声がした。

『できるだけ早く決めてもらいたいものだ。私にもしなければならないことがある』

 そこまで言われてさすがに香子も黙っていることはできなかった。

『では先に戻られたらどうでしょう? 青龍様を選ぶことはないでしょうから』
『そなた……!』
『双方共控えよ!』

 朱雀の鋭い声に香子と青龍は黙った。朱雀はそれに嘆息する。

『青龍、この度はそなたに直接関係あることではないだろうが、いずれそなたにも次代を乞う時期は訪れるのだ。白香をないがしろにするような発言は以後慎むように』
『……承知しました』

 幾分くやしそうに青龍が言う。

『そなたもあまり厳しいことを言ってくれるな。我が言われたわけではないが選ぶことがないなどと言われると切なくなる』

 そう言って朱雀は香子を抱きしめた。

『はい、ごめんなさい……』

 確かに売り言葉に買い言葉で言いすぎた感はある。短気なのもどうにかしないとと香子は思う。

『あの……そろそろ部屋に戻ってもいいでしょうか?』

 さすがに香子はもう限界だった。

『そうだな。我らも移動するとしよう』

 玄武の言葉に四神がすっと立ち上がる。朱雀は当たり前のように香子を抱き上げた。そして狼狽する香子をよそに案内する者の後に着いて四神と香子は退室した。
 後に残された者たちは四神と香子について三々五々に言い合いながらやがて広間から去って行った。
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