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第1部 四神と結婚しろと言われました
6.王城に着いたようです
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王都の飯館(レストラン)というだけあって今まで食べたものよりもメニューはあかぬけていた。
お皿もぴかぴかに磨かれているし、料理と共にお皿に乗っている飾り(野菜の飾り切りはいつも食べていいのかどうか悩む)も見事だ。もちろん店内も広く清潔でさすが王都の飯館と言いたくなる。
給仕のタイミングもばっちりで、何故かメニュー表もまず香子に渡された。
正直香子は学生だったのであまりこういう豪華な店には縁がなかった。その為メニュー表を見せられても大体字面でこういう料理なのかなと想像するだけで全体が掴めない。ここはやはり趙文英に頼むべきだろうと香子はメニュー表を趙に渡した。
『お気に召しませんでしたか?』
と聞かれて違うと答える。
『私は学生だったのでこんな高級そうな店で食事をしたことがありません。メニューを見てもどんな料理なのか想像がつかないのでおまかせします』
そう言うと趙はにっこりした。
『お嫌いな物はありますか?』
『肉の塊や内臓の類は苦手です。できれば野菜、鶏、魚介類で選んでいただけると助かります』
『承知しました』
そうやって選んでもらった料理はおいしかった。お茶は高級な店らしく菊花茶だったのが少々残念だと思ったぐらいである。(香子は庶民の店ばかり行っていたので茉莉花茶で慣れている)
驚いたことに通された個室には着替えの為の小さな部屋までついていた。食べ終えた後そこで元の服に着替える。得体のしれない服だろうに丁寧に洗濯までされていた。
長袖のTシャツにジーンズ。そういえばセーターやオーバーは飛行機の中で脱いでしまったのだ。けれどそれだけの格好なのに寒くはない。
(私が帰国した時は冬だったんだけど……?)
『今更なのですが、現在の季節って……?』
『春です。その格好ではいささか寒くございませんか?』
『いえ、今のところは大丈夫です』
冬から春に移動? 香子は頭を悩ませながらも再び促されるまま馬車に乗った。
王城に着く前にできるだけいろんなことを聞こうと思っていたが、朝早かったこともあって疲れていたらしい。香子はすぐにうとうとと眠ってしまった。
『……白香様、白香様』
何度も声をかけられてやっと香子の意識は浮上した。目を開けて辺りを見回すと随分と暗くなっている。いつのまにか自分が眠っていたことに気づき、香子はばっと体を起こした。
『あの、すいませんでした……』
趙に謝るととんでもないと微笑まれる。
『移動で疲れていらっしゃるのですから起こすのが申し訳ないぐらいです。ですがそろそろ王城に着きますので』
そう言われてとうとうか、と香子はそっとため息をついた。泣いても笑ってもここで自分の運命がわかるはずである。
そうしているうちに馬車が何度か止まり、そろそろ着いたのかなと思ったところで『着きました』と趙に促された。
馬車の扉が外側から開かれ、趙に手を取られて馬車を下りようとした時、目の前にいかにも官吏という格好をした人々が平伏していた。
(な、何ーーーーー?)
『異世界からこられました客人にご挨拶に参りました。どうぞこちらへ』
その中でも位の高そうな格好をしたおじさんに促される。
『あ、あのぅ……』
(これは一体なんのどっきりカメラですか……?)
趙を見ると軽く頷いた。どうやらこのおじさんに着いて行った方がいいらしい。
おじさんの後に着いて行くとその後に趙、それから先ほど待っていたらしい人々が着いてくる気配を感じた。あまりにも慣れないことに、香子は背中をだらだらと冷汗が流れるのを感じた。
広い石畳を歩き、白い石で造られた長い階段を上ると、その先にあるのが謁見室らしかった。
(紫禁城(現在の故宮)と造りは似てるけどどうなんだろう?)
現実逃避がしたくてどうでもいいことをつい香子は考えてしまう。
再び階段を上り広い室内に足を踏み入れると、沢山の人の目が一斉に香子をとらえた。
(……うっ……)
おそらく見世物パンダになる予感はしていたが、これほど注目を浴びたのは初めてである。香子がひるみそうになっている間もおじさんはどんどん足を進め、おそらく玉座だろうと思う場所から十メートルぐらい離れた場所で足を止めた。
『皇帝陛下がまもなくいらっしゃいます。それまでしばらくお待ちください』
そう言って脇に避け、香子は後ろに控えている趙と真ん中の位置で取り残された。
(この場合ただ突っ立ってればいいわけ……?)
いくらなんでもここで座り込むわけにはいかないだろう。そんなことを考えていると、
『皇帝陛下のおなーりー!』
と、銅鑼の音と共に朗々とした声が室内に響いた。
お皿もぴかぴかに磨かれているし、料理と共にお皿に乗っている飾り(野菜の飾り切りはいつも食べていいのかどうか悩む)も見事だ。もちろん店内も広く清潔でさすが王都の飯館と言いたくなる。
給仕のタイミングもばっちりで、何故かメニュー表もまず香子に渡された。
正直香子は学生だったのであまりこういう豪華な店には縁がなかった。その為メニュー表を見せられても大体字面でこういう料理なのかなと想像するだけで全体が掴めない。ここはやはり趙文英に頼むべきだろうと香子はメニュー表を趙に渡した。
『お気に召しませんでしたか?』
と聞かれて違うと答える。
『私は学生だったのでこんな高級そうな店で食事をしたことがありません。メニューを見てもどんな料理なのか想像がつかないのでおまかせします』
そう言うと趙はにっこりした。
『お嫌いな物はありますか?』
『肉の塊や内臓の類は苦手です。できれば野菜、鶏、魚介類で選んでいただけると助かります』
『承知しました』
そうやって選んでもらった料理はおいしかった。お茶は高級な店らしく菊花茶だったのが少々残念だと思ったぐらいである。(香子は庶民の店ばかり行っていたので茉莉花茶で慣れている)
驚いたことに通された個室には着替えの為の小さな部屋までついていた。食べ終えた後そこで元の服に着替える。得体のしれない服だろうに丁寧に洗濯までされていた。
長袖のTシャツにジーンズ。そういえばセーターやオーバーは飛行機の中で脱いでしまったのだ。けれどそれだけの格好なのに寒くはない。
(私が帰国した時は冬だったんだけど……?)
『今更なのですが、現在の季節って……?』
『春です。その格好ではいささか寒くございませんか?』
『いえ、今のところは大丈夫です』
冬から春に移動? 香子は頭を悩ませながらも再び促されるまま馬車に乗った。
王城に着く前にできるだけいろんなことを聞こうと思っていたが、朝早かったこともあって疲れていたらしい。香子はすぐにうとうとと眠ってしまった。
『……白香様、白香様』
何度も声をかけられてやっと香子の意識は浮上した。目を開けて辺りを見回すと随分と暗くなっている。いつのまにか自分が眠っていたことに気づき、香子はばっと体を起こした。
『あの、すいませんでした……』
趙に謝るととんでもないと微笑まれる。
『移動で疲れていらっしゃるのですから起こすのが申し訳ないぐらいです。ですがそろそろ王城に着きますので』
そう言われてとうとうか、と香子はそっとため息をついた。泣いても笑ってもここで自分の運命がわかるはずである。
そうしているうちに馬車が何度か止まり、そろそろ着いたのかなと思ったところで『着きました』と趙に促された。
馬車の扉が外側から開かれ、趙に手を取られて馬車を下りようとした時、目の前にいかにも官吏という格好をした人々が平伏していた。
(な、何ーーーーー?)
『異世界からこられました客人にご挨拶に参りました。どうぞこちらへ』
その中でも位の高そうな格好をしたおじさんに促される。
『あ、あのぅ……』
(これは一体なんのどっきりカメラですか……?)
趙を見ると軽く頷いた。どうやらこのおじさんに着いて行った方がいいらしい。
おじさんの後に着いて行くとその後に趙、それから先ほど待っていたらしい人々が着いてくる気配を感じた。あまりにも慣れないことに、香子は背中をだらだらと冷汗が流れるのを感じた。
広い石畳を歩き、白い石で造られた長い階段を上ると、その先にあるのが謁見室らしかった。
(紫禁城(現在の故宮)と造りは似てるけどどうなんだろう?)
現実逃避がしたくてどうでもいいことをつい香子は考えてしまう。
再び階段を上り広い室内に足を踏み入れると、沢山の人の目が一斉に香子をとらえた。
(……うっ……)
おそらく見世物パンダになる予感はしていたが、これほど注目を浴びたのは初めてである。香子がひるみそうになっている間もおじさんはどんどん足を進め、おそらく玉座だろうと思う場所から十メートルぐらい離れた場所で足を止めた。
『皇帝陛下がまもなくいらっしゃいます。それまでしばらくお待ちください』
そう言って脇に避け、香子は後ろに控えている趙と真ん中の位置で取り残された。
(この場合ただ突っ立ってればいいわけ……?)
いくらなんでもここで座り込むわけにはいかないだろう。そんなことを考えていると、
『皇帝陛下のおなーりー!』
と、銅鑼の音と共に朗々とした声が室内に響いた。
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