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第4部 四神を愛しなさいと言われました
36.前日は慌ただしいものです
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朱雀の熱を与えられたら、香子の全身は熱くなってもう何も考えられなくなってしまう。
それはいつものことだったが、香子は少し時間が気になった。
玄武の寝室の明るさとか、そういうものもなんとなく香子は気になってしまう。明日が大祭ということで、より落ち着かないのかもしれなかった。
『あっ、あっ、あっ……』
昼間から玄武と朱雀に抱かれるなどそうあることではない。だからなのか、香子はいつもより抱かれることに恥ずかしさを覚えた。
白虎や青龍には昼間から触れられたりもするというのに。
(でも最後まではされないし……)
『あっ、あっ……』
いつものようにしつこいくらい愛撫をされて、香子は熱に浮かされたようになりながら玄武を受け入れさせられた。
(気持ち、いい……)
そう、抱かれればひどく気持ちがいいのだ。それまで、でもでもだってと言っているだけである。
逞しい腕に抱かれて、香子は己が蕩けるのを感じた。
朱雀まで受け入れて、どうにか昼食前に香子は解放された。
それでも玄武と朱雀は不満そうである。
『とても、足りぬな……』
玄武が少し困ったように呟いた。夜と違って慌ただしかったというのもあるだろう。しかし香子はそれどころではない。やっと身体の熱は去ったが、抱かれていた間のことがありありと思い出されていたたまれなくなっていた。
『香子、昼は食べるのではなかったか?』
朱雀に気だるげに聞かれて、香子はそうだったと頭を上げた。言われれば、香子は空腹を覚えた。抱かれたからなのだろう。
(でも、なんで抱かれるとおなかがすくんだろう?)
今更な疑問である。玄武や朱雀は精を出すから空腹を覚えるのはわかるが、何故香子もひどく腹が減るのだろうか。やはり四神の精を身体が異物と判断して取り込むのに体力が使われるのかもしれない。
ただ今そんなことを聞いたら床から出してもらえそうもないと思ったので、香子は聞かないことにした。一応わずかではあるが香子も成長しているのである。(あまり学習はしていない)
昼食である。
白虎と青龍が少し不満そうに見えた。
『香子』
白虎に声をかけられた。
『はい』
『大祭が終わってから、一晩は抱かせよ』
『あっ、ハイ』
香子の頬が赤くなった。それについてはかまわなかったので香子は即答した。すると青龍も声をかけてきた。
『香子、我も一日そなたを抱きたい。もちろん大祭の後でかまわぬが……』
『はい……ええと、そこらへんはみなさんで調整してください……』
そういう話がタブーでないことは香子もわかっているが、食堂ではやめてほしいと思った。なにせ給仕の侍女たちが聞いているのである。
給仕の侍女たちは表情こそ動かさないように訓練しているが、内心激しく身もだえていた。みな香子のことが好きなので、花嫁さまがたっぷり抱かれてしまうことに興味津々である。もちろんそんなことを香子が知るはずもないので、香子は香子で閨の話をここでするなんて申し訳ないと思っていた。世の中そんなものである。
さて、食休み後は慈寧宮へ向かうので侍女たちは張り切って香子を飾った。
『ねえ……』
『花嫁さま、動かないでください!』
『はい……』
衣裳や髪型、化粧を担当する侍女の鬼気迫る形相に、香子は口を挟むことができなかった。
かくして、侍女好みの衣裳を着せられて着飾った香子が完成した。
手鏡で確認できるのは髪型と化粧ぐらいだが(化粧もおしろいは不要である)、これはやりすぎではないかと香子は内心苦笑した。
『とても、素敵だとは思うのだけど、ね……』
『ご不満な点がございますか?』
『……今日は衣裳合わせに向かうのよ?』
『……そうでございましたね……』
侍女たちの声が一気に暗くなる。
『あ、あの……本番は明日だから……明日がんばってもらえると嬉しいわ?』
『かしこまりました!』
侍女たちの声が揃った。香子は一瞬慄いたが、どうにか気づかせないように努めた。髪型をもう少し簡素な物にしてもらって、香子はそっとため息を吐いた。
(忙しい日ねぇ……)
時間になり、玄武の腕に抱かれて慈寧宮へ向かった。その時点で香子はすでにぐったりしていた。
『……随分と疲れている様子だが、大事ないか?』
玄武に他人事のように聞かれて、香子はムッとした。
『……誰のせいだと思っているんですか……』
『……我らのせいもあるな。だが今宵は抱かせてくれぬのだろう?』
耳元で囁かれるバリトンに、香子は震えた。こういうのは反則だと香子は思う。
『明日の朝は早いですし……明日はいろんな人に会うでしょう?』
これ以上は聞かれるわけにいかないと玄武の胸にそっともたれた。
《私、抱かれた翌朝も色気がすごいらしいんですよね。いくら玄武様の腕の中にいるとはいえ……》
《そういうことならば我慢しよう。そなたの色気を人に浴びさせるわけにはいかぬ》
心話で伝えれば、玄武もやっと納得したようだった。
《……だが、この後夕飯まではだめか?》
(どんだけ絶倫……)
そんな情けない玄武も好きなのだからしょうがない。香子は内心ため息をつきつつ、玄武にそっと返事をしたのだった。
それはいつものことだったが、香子は少し時間が気になった。
玄武の寝室の明るさとか、そういうものもなんとなく香子は気になってしまう。明日が大祭ということで、より落ち着かないのかもしれなかった。
『あっ、あっ、あっ……』
昼間から玄武と朱雀に抱かれるなどそうあることではない。だからなのか、香子はいつもより抱かれることに恥ずかしさを覚えた。
白虎や青龍には昼間から触れられたりもするというのに。
(でも最後まではされないし……)
『あっ、あっ……』
いつものようにしつこいくらい愛撫をされて、香子は熱に浮かされたようになりながら玄武を受け入れさせられた。
(気持ち、いい……)
そう、抱かれればひどく気持ちがいいのだ。それまで、でもでもだってと言っているだけである。
逞しい腕に抱かれて、香子は己が蕩けるのを感じた。
朱雀まで受け入れて、どうにか昼食前に香子は解放された。
それでも玄武と朱雀は不満そうである。
『とても、足りぬな……』
玄武が少し困ったように呟いた。夜と違って慌ただしかったというのもあるだろう。しかし香子はそれどころではない。やっと身体の熱は去ったが、抱かれていた間のことがありありと思い出されていたたまれなくなっていた。
『香子、昼は食べるのではなかったか?』
朱雀に気だるげに聞かれて、香子はそうだったと頭を上げた。言われれば、香子は空腹を覚えた。抱かれたからなのだろう。
(でも、なんで抱かれるとおなかがすくんだろう?)
今更な疑問である。玄武や朱雀は精を出すから空腹を覚えるのはわかるが、何故香子もひどく腹が減るのだろうか。やはり四神の精を身体が異物と判断して取り込むのに体力が使われるのかもしれない。
ただ今そんなことを聞いたら床から出してもらえそうもないと思ったので、香子は聞かないことにした。一応わずかではあるが香子も成長しているのである。(あまり学習はしていない)
昼食である。
白虎と青龍が少し不満そうに見えた。
『香子』
白虎に声をかけられた。
『はい』
『大祭が終わってから、一晩は抱かせよ』
『あっ、ハイ』
香子の頬が赤くなった。それについてはかまわなかったので香子は即答した。すると青龍も声をかけてきた。
『香子、我も一日そなたを抱きたい。もちろん大祭の後でかまわぬが……』
『はい……ええと、そこらへんはみなさんで調整してください……』
そういう話がタブーでないことは香子もわかっているが、食堂ではやめてほしいと思った。なにせ給仕の侍女たちが聞いているのである。
給仕の侍女たちは表情こそ動かさないように訓練しているが、内心激しく身もだえていた。みな香子のことが好きなので、花嫁さまがたっぷり抱かれてしまうことに興味津々である。もちろんそんなことを香子が知るはずもないので、香子は香子で閨の話をここでするなんて申し訳ないと思っていた。世の中そんなものである。
さて、食休み後は慈寧宮へ向かうので侍女たちは張り切って香子を飾った。
『ねえ……』
『花嫁さま、動かないでください!』
『はい……』
衣裳や髪型、化粧を担当する侍女の鬼気迫る形相に、香子は口を挟むことができなかった。
かくして、侍女好みの衣裳を着せられて着飾った香子が完成した。
手鏡で確認できるのは髪型と化粧ぐらいだが(化粧もおしろいは不要である)、これはやりすぎではないかと香子は内心苦笑した。
『とても、素敵だとは思うのだけど、ね……』
『ご不満な点がございますか?』
『……今日は衣裳合わせに向かうのよ?』
『……そうでございましたね……』
侍女たちの声が一気に暗くなる。
『あ、あの……本番は明日だから……明日がんばってもらえると嬉しいわ?』
『かしこまりました!』
侍女たちの声が揃った。香子は一瞬慄いたが、どうにか気づかせないように努めた。髪型をもう少し簡素な物にしてもらって、香子はそっとため息を吐いた。
(忙しい日ねぇ……)
時間になり、玄武の腕に抱かれて慈寧宮へ向かった。その時点で香子はすでにぐったりしていた。
『……随分と疲れている様子だが、大事ないか?』
玄武に他人事のように聞かれて、香子はムッとした。
『……誰のせいだと思っているんですか……』
『……我らのせいもあるな。だが今宵は抱かせてくれぬのだろう?』
耳元で囁かれるバリトンに、香子は震えた。こういうのは反則だと香子は思う。
『明日の朝は早いですし……明日はいろんな人に会うでしょう?』
これ以上は聞かれるわけにいかないと玄武の胸にそっともたれた。
《私、抱かれた翌朝も色気がすごいらしいんですよね。いくら玄武様の腕の中にいるとはいえ……》
《そういうことならば我慢しよう。そなたの色気を人に浴びさせるわけにはいかぬ》
心話で伝えれば、玄武もやっと納得したようだった。
《……だが、この後夕飯まではだめか?》
(どんだけ絶倫……)
そんな情けない玄武も好きなのだからしょうがない。香子は内心ため息をつきつつ、玄武にそっと返事をしたのだった。
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