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第4部 四神を愛しなさいと言われました
35.除夕(旧暦の大晦日)をどう過ごすのか考えてしまいます
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除夕(旧暦の大晦日)になった。
朝である。相変わらず香子は床の上にいて、玄武と朱雀と共に転がっていた。
忘れないうちにと明日の朝は早いから今夜は誰にも抱かれないと香子が言ったら、そういうことなら今日は一日抱いていたいと玄武と朱雀が言う。
白虎と青龍には普段から遠慮させているのにそれはどうなのだと香子は目を丸くした。
『そうしたら白虎様や青龍様は……』
『香子を抱きたい』
『知らぬ。抱かせよ』
玄武と朱雀はいつになく強引だった。
『……せ、せめて白虎様、青龍様と相談ぐらいしてください!』
『相談か……』
しぶしぶというかんじで、玄武が一瞬虚空を眺めた。きっと念話を使っているのだろうと香子は黙った。その間に朱雀に抱き寄せられ、香子は唇を塞がれた。朝から舌を奪うような激しい口づけをされ、香子は頭がぼうっとなるのを感じた。
『……んっ、んっ、んっ』
『……白虎と青龍はかまわぬそうだ』
相談ではなく一方的に伝えたのではないかと香子は思ったが、胸をやわやわと揉まれ始めたらもうどうしようもなかった。
ぐ~きゅるるる~~~
そんな香子を助けたのはいつもの腹の虫で、香子はほっとした。やはり夕食は余程のことがない限り量を増やしてはならないという思いを新たにした。
玄武と朱雀が致し方ないというように手を放す。おかげで朝から香子はHされないで済んだ。
(食べ溜めをするのは青龍様と抱き合う時だけにしよう……)
『……香子、しばし待て』
『はい、待ちます』
玄武が念話で連絡してくれたようである。いわゆるテレパシーの類だが、とても便利だと香子は思う。いちいち鈴を鳴らして侍女を呼ばなくていいのだ。この便利さに慣れてしまうと四神の側にいるのが一番いいのである。
(あれー? 私便利さに負けてる?)
便利に慣れると不便な生活には戻れないという典型的な状態に、香子は苦笑した。
朝食が届いたと黒月から声をかけられた。香子は睡衣を直してもらってから玄武に抱かれて居間へ移動する。
今日の朝食もいつも通りだった。そのいつも通りが豪勢である。
どうしても四神に抱かれた翌朝は空腹感がひどい。(最近は抱かれない夜はないのだが)
ふかふかの饅頭(マントウ)の間にザーサイや、小麦粉を揚げて作った細かいスナックのような物を挟んで食べる。あれもこれもおいしくて香子は幸せを感じるのだが、なにぶんとてもおなかがすいているのですごいスピードで食べてしまう。厨師が気を遣って毎回春巻を用意してくれるのも香子は嬉しくてたまらない。
香子の気持ちとしては春巻だったら一度に十本ぐらい食べられると小さい頃から思っていたが、実際のところ三本も食べれば満腹になってしまうしそんなに食べると胃がちょっと重く感じられた。けれど今は何本食べても胃が重くなることはない。好きなものを好きなだけ食べられるという状況は、香子にとって天国のようだった。
『おいしい……春巻好き……』
はふうとため息をつき、皮がパリパリの海老春巻を香子は食べた。
『ほんにそなたはおいしそうに食べるな』
玄武もそう言いながら、上品な仕草ではあったがけっこうな量を食べている。
『おいしいですから!』
そんな香子を、料理を運んでくる侍女たちや玄武と朱雀は微笑ましく見守っていた。
ごはんがおいしくて香子は忘れていたが、日中は玄武と朱雀と共に抱き合うことになってしまった。
しかし今日の午後は皇太后のところへ行くことになっている。最終的な衣裳の調整だ。
先日で済んだではないかと四神は難色を示したが、香子の胸のサイズは日々変化しているのである。そろそろ大きさ的に落ち着いてもらいたいと香子も思っているが、本当にどこまで育つのかわからない。いきなり大きくなるわけではないが、大祭である。針子たちが慎重になるのも無理はなかった。
『では戻ってきてからならよいか』
『……夕飯はきちんといただきたいです。今日はせっかくの除夕なのですから』
玄武に言われたが、それだけは香子も譲るわけにはいかない。
『ならば昼まで抱かせよ』
朱雀はどうしてもしたくてたまらないらしい。
『……昼食までに終わりますか?』
香子としてはあまりこういうことを聞きたくはなかったが、聞かないわけにもいかなかった。抱き合うのは確かに気持ちがいいし、求められるのも嬉しいが、香子の優先順位はごはんなのである。こればかりはどんなイケメンに迫られても変わることはないのだった。
香子の食い意地が張っていることは間違いない。
朱雀は苦笑した。
『江緑の元へ向かうのは何時(なんどき)か』
『申の刻だったかと』
『わかった。昼食の時間までにはそなたを離すよう努力しよう』
『……私、時間に遅れるのとかも嫌ですよ?』
『真面目なことだ』
クックッと朱雀が笑う。
(もうっ!)
香子はむくれたが、朱雀のことも好きだからどうしようもなかった。
(まずは誰かを選ばなきゃいけないんだよね……?)
玄武の寝室に戻され、睡衣を脱がされながら香子は考える。それはもしかしたら人の都合かもしれない。
四神の中で一番年を重ねているのは玄武だ。
(次代を産んだら、玄武様が消えてしまうなんて……私には耐えられるのかしら?)
玄武と口づけを交わしながら、香子は泣きそうになるのをぐっとこらえた。
ーーーーー
江緑 皇太后の名前
朝である。相変わらず香子は床の上にいて、玄武と朱雀と共に転がっていた。
忘れないうちにと明日の朝は早いから今夜は誰にも抱かれないと香子が言ったら、そういうことなら今日は一日抱いていたいと玄武と朱雀が言う。
白虎と青龍には普段から遠慮させているのにそれはどうなのだと香子は目を丸くした。
『そうしたら白虎様や青龍様は……』
『香子を抱きたい』
『知らぬ。抱かせよ』
玄武と朱雀はいつになく強引だった。
『……せ、せめて白虎様、青龍様と相談ぐらいしてください!』
『相談か……』
しぶしぶというかんじで、玄武が一瞬虚空を眺めた。きっと念話を使っているのだろうと香子は黙った。その間に朱雀に抱き寄せられ、香子は唇を塞がれた。朝から舌を奪うような激しい口づけをされ、香子は頭がぼうっとなるのを感じた。
『……んっ、んっ、んっ』
『……白虎と青龍はかまわぬそうだ』
相談ではなく一方的に伝えたのではないかと香子は思ったが、胸をやわやわと揉まれ始めたらもうどうしようもなかった。
ぐ~きゅるるる~~~
そんな香子を助けたのはいつもの腹の虫で、香子はほっとした。やはり夕食は余程のことがない限り量を増やしてはならないという思いを新たにした。
玄武と朱雀が致し方ないというように手を放す。おかげで朝から香子はHされないで済んだ。
(食べ溜めをするのは青龍様と抱き合う時だけにしよう……)
『……香子、しばし待て』
『はい、待ちます』
玄武が念話で連絡してくれたようである。いわゆるテレパシーの類だが、とても便利だと香子は思う。いちいち鈴を鳴らして侍女を呼ばなくていいのだ。この便利さに慣れてしまうと四神の側にいるのが一番いいのである。
(あれー? 私便利さに負けてる?)
便利に慣れると不便な生活には戻れないという典型的な状態に、香子は苦笑した。
朝食が届いたと黒月から声をかけられた。香子は睡衣を直してもらってから玄武に抱かれて居間へ移動する。
今日の朝食もいつも通りだった。そのいつも通りが豪勢である。
どうしても四神に抱かれた翌朝は空腹感がひどい。(最近は抱かれない夜はないのだが)
ふかふかの饅頭(マントウ)の間にザーサイや、小麦粉を揚げて作った細かいスナックのような物を挟んで食べる。あれもこれもおいしくて香子は幸せを感じるのだが、なにぶんとてもおなかがすいているのですごいスピードで食べてしまう。厨師が気を遣って毎回春巻を用意してくれるのも香子は嬉しくてたまらない。
香子の気持ちとしては春巻だったら一度に十本ぐらい食べられると小さい頃から思っていたが、実際のところ三本も食べれば満腹になってしまうしそんなに食べると胃がちょっと重く感じられた。けれど今は何本食べても胃が重くなることはない。好きなものを好きなだけ食べられるという状況は、香子にとって天国のようだった。
『おいしい……春巻好き……』
はふうとため息をつき、皮がパリパリの海老春巻を香子は食べた。
『ほんにそなたはおいしそうに食べるな』
玄武もそう言いながら、上品な仕草ではあったがけっこうな量を食べている。
『おいしいですから!』
そんな香子を、料理を運んでくる侍女たちや玄武と朱雀は微笑ましく見守っていた。
ごはんがおいしくて香子は忘れていたが、日中は玄武と朱雀と共に抱き合うことになってしまった。
しかし今日の午後は皇太后のところへ行くことになっている。最終的な衣裳の調整だ。
先日で済んだではないかと四神は難色を示したが、香子の胸のサイズは日々変化しているのである。そろそろ大きさ的に落ち着いてもらいたいと香子も思っているが、本当にどこまで育つのかわからない。いきなり大きくなるわけではないが、大祭である。針子たちが慎重になるのも無理はなかった。
『では戻ってきてからならよいか』
『……夕飯はきちんといただきたいです。今日はせっかくの除夕なのですから』
玄武に言われたが、それだけは香子も譲るわけにはいかない。
『ならば昼まで抱かせよ』
朱雀はどうしてもしたくてたまらないらしい。
『……昼食までに終わりますか?』
香子としてはあまりこういうことを聞きたくはなかったが、聞かないわけにもいかなかった。抱き合うのは確かに気持ちがいいし、求められるのも嬉しいが、香子の優先順位はごはんなのである。こればかりはどんなイケメンに迫られても変わることはないのだった。
香子の食い意地が張っていることは間違いない。
朱雀は苦笑した。
『江緑の元へ向かうのは何時(なんどき)か』
『申の刻だったかと』
『わかった。昼食の時間までにはそなたを離すよう努力しよう』
『……私、時間に遅れるのとかも嫌ですよ?』
『真面目なことだ』
クックッと朱雀が笑う。
(もうっ!)
香子はむくれたが、朱雀のことも好きだからどうしようもなかった。
(まずは誰かを選ばなきゃいけないんだよね……?)
玄武の寝室に戻され、睡衣を脱がされながら香子は考える。それはもしかしたら人の都合かもしれない。
四神の中で一番年を重ねているのは玄武だ。
(次代を産んだら、玄武様が消えてしまうなんて……私には耐えられるのかしら?)
玄武と口づけを交わしながら、香子は泣きそうになるのをぐっとこらえた。
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江緑 皇太后の名前
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