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第4部 四神を愛しなさいと言われました

33.ピロートークが終わりません

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 唇を奪われて、全身に触れられている間も、香子は涼しげな水の流れを感じていたようだった。
 どう言葉で説明しようとしてもその感覚はうまく伝えられないと香子はぼんやり思う。ようは、気持ちよかったのである。

(……クセになったらどうしよう……)

 香子は快楽に弱い己の身体が嫌だと思った。

『あっ、あっ、あっ……』

 大きくなってしまった胸の頂を口に含まれるのだって香子は嫌いではない。
 どうしてこんなに四神はえっちがうまいのかと、香子は内心悪態をついた。

『ぁんっ……あっ……青龍、さま……』
『なんだ?』

 垂れている緑色の髪をかき上げる仕草も、水を含んでいるようでなんとも色っぽい。香子は紅潮している頬が更に熱くなるのを感じた。

『どう、して……そんな、に……ぁっ……』

 言葉にならなくて、香子は青龍の腕に触れた。

《どうしてこんなに上手なのですか?》
《なにがだ?》

 ぴちゃぴちゃと胸の尖りを舐められ、時折ちゅうっと吸われる。その度に香子の背筋を電撃のようなものが走るのだ。ただ胸をいじられているだけなのにどうしてそんなに感じてしまうのか、香子にはわからなかった。

《その、私の身体に触れるのがです》
《……我にはわからぬ。そなたが愛しいだけだ》
『ぁああっ……!』

 胸を揉む手の動きも優しい。ただ胸に触れられてもそれほど感じはしないが、尖りをいじられながら揉まれると気持ちよく感じられるのが、不思議だと香子は思う。
 もちろん胸だけで済むはずもなく、香子はしっかり感じさせられてしまった。


 嫉妬とか、そういう感情があるわけではないが、青龍も百五十年程は生きているわけで。
 散々愛でられた後、香子はついこんなことを聞いてしまった。

『青龍様って……私以外の誰かを抱いたことはあるんですよね?』

 経験とか言っても聞き返されるかもしれないと思い、香子はズバリ聞いてみる。青龍は珍しく眉を上げた。

『……ああ、あったな』
『そういうのって眷属が手配したりするんですか?』
『そうだな。花嫁を抱く為の練習だと、何人か相手はしたことがある。もうかなり前のことだ』
『ふうん……そういうものなのですね』
香子シャンズ

 青龍はきつく香子を抱きしめた。

『それを聞いてなんとする?』
『……どうもしません。全くそういう経験がない方に抱かれるのもたいへんだなと思うだけで。どうしたって負担が大きいのは抱かれる方ですから』
『……練習は必要だったということだな』
『そういうことになりますね』

 それでも花嫁の身体は四神を受け入れるように変わっていくから、そこまで花嫁に負担はないのだがようは気持ちの問題である。

『青龍様は、初めてとかそういうことをこだわったりされますか?』

 四神もそういうことが気になるのだろうかという純粋な興味である。ある意味香子は怖いもの知らずだ。
 青龍は眉を少し寄せた。考えているようである。

『青龍様、ちょっと苦しいです……』
『すまぬ』

 青龍は香子を抱きしめる腕を緩めた。以前ならそれほどでもなかったかもしれないが、今の香子は胸が大きくなっているのだ。胸が潰されて痛みを覚えるなんて、と香子は内心身もだえていたが、幸いそれは青龍には伝わらなかったようである。

『……そなたを我ら以外の者が抱いたのは……別の世界でのことだろう?』
『そ、そうなりますね』

 人には聞いたくせに自分が話すとなると、香子は途端に恥ずかしくなった。そしてそんな自分を勝手だなと香子も思う。
 青龍は口角を上げた。

『……その者は命拾いをしたな』
『え?』
『この世界にその者がいたら、八つ裂きにしてもあきたらぬ……』

 この時、初めて香子は青龍が怖いと思った。

『あ、ああああのっ……青龍様たちに知り合う前ですし……』
『わかってはいるが、こればかりはどうにもならぬのだ。そなたに我ら以外の男が触れるなど許しがたい』
『……ごめんなさい』

 香子としては四神がどう考えるのかを知りたかっただけだった。そうでなくても、四神は人の姿をとっているだけで人ではないのである。齟齬があるならばそれを理解していないと、この先困るのは香子の方だった。

『何を謝る? そなたは何も悪くないだろう』
『……無神経だったと思っています』
『そなたが我らを理解しようとしてくれているのは嬉しい。今宵は共に過ごしてはくれぬか?』

 何もない時であれば香子も返事をしたが、あと数日で春節を迎えるという時である。

『すみません。今は落ち着かないので……春節が終わって、その、落ち着いてからでもいいですか?』

 青龍との交わりは長いから、どうしても調整は必要となる。

『そなたは謝ってばかりだな』

 青龍が優しく香子の頭を撫でた。

『我らは花嫁を求めてしまうものなのだ。そなたの気持ちが落ち着いてから抱かせてくれればよい』
『はい……』

 香子はまた頬が熱くなるのを感じた。

『だが……そなに長くは待てぬぞ』
『は、はははははいっ!』

 爽やかな声に色が混じる。声フェチというほどではないが、耳元で囁くのは反則だと香子は思ったのだった。


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