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第4部 四神を愛しなさいと言われました
32.これも自業自得というのでしょうか
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お茶菓子は干果(乾燥させた果物)だった。干した物でもビタミンは取れるのだろうかと考えながら、香子はいくつか摘まんだ。
そうして昼食に呼ばれるまで、特に何を話すでもなく青龍の膝の上で過ごしていた。
だが午後はそういうわけにもいかないだろうということは香子もわかっていた。香子を抱いていた手も、さりげなくだがいろいろなところを触っていたからである。
(青龍様ってムッツリっていうのかな)
香子は青龍を勝手に安全圏だと思っていたが、実はそうではなかった。最初が最初だけに、香子がそう思い込んでいただけである。もちろんそう思っていたかったという香子の願望もあった。
朱雀に最初から口説かれ、玄武にも触れられ、白虎も耐えてはいたが香子に触れようとした。香子がどこかに安全圏を求めるのは必然だった。でも今は四神全員を受け入れて、やっと香子の気持ちも安定してきた。青龍がそんな香子を口説こうとするのも無理はなかった。
昼食の時間になって食堂へ移動する。今日は特に衣裳が乱れることもなかったから、侍女たちは髪型を整えた程度である。
『表に出られたのですから、お召し替えはしていただきたいのですが……』
『汚れてないからこのままでいいでしょう?』
そう香子が言えば、侍女たちは大仰にため息を吐いた。香子の衣裳は、香子が思っているよりたくさんあるのだ。
『……昼食の後はお召し替えを』
『ハイ……』
ここの侍女たちは香子のことを着せ替え人形か何かと勘違いしているのではないかと香子は思ったが、さすがに口には出さなかった。着替えも何気に面倒くさいのである。
昼食の席で、香子は気になったことを四神に聞いてみた。
『あのぅ……眷属に嫁いだ場合はその眷属に合わせて四神の領地に入るものなのでしょうか?』
聞いてから、これでは話が通らないかもしれないと香子は眉を寄せた。補足する。
『例えばなんですけど、エリーザは紅夏の妻ですよね? そうしたら、私が四神のどなたかに嫁いだ後、エリーザは紅夏と共に朱雀様の領地に行ってしまうのでしょうか』
玄武が少し表情を動かした。
『……眷属がすることは眷属に任せている故、わからぬな』
『ってことは、その眷属が他の四神の領地に住んでもいいということですか?』
『それは眷属の自由だろう』
朱雀がしれっと答える。
ということは、と香子は考えた。
『……じゃあ私がエリーザに側にいてほしいと思えば、もし朱雀様に嫁がなくても一緒にいられる可能性はあるのでしょうか』
『つがいの意志によるであろうな』
白虎が頷いた。
『えー……』
(ってことは、青龍様のところに嫁がなくても夕玲は私と一緒にいることはできるのか。でも青藍が嫌がるかな。そこらへんは結婚してからのお互いの歩み寄りだよね。あ、でも……)
こちらの世界では夫に従うのが当たり前だということを思い出し、香子はげんなりした。
『香子、そなたが気に病むことはない。そなたはそなたが望む相手と共にあればいいのだ』
青龍が優しく声をかけてきた。
『青龍様、ありがとうございます』
正直香子は困っていた。最初のうちは玄武や朱雀に惹かれて、でも今は白虎のことも、青龍のことも好きなのである。決め手がない状態が一番堪えていた。
(気が多いっていうのかなぁ……。みんな好きって一番よくないと思うんだけど……)
香子は自己嫌悪の状態になっていた。そんな香子の手に玄武が触れる。
『香子』
『……はい』
『急ぐ必要はない。我らはそなたしか見ぬ』
それだけは間違いなかった。四神は花嫁以外求めない。
『わかっています。でも不誠実だなって思うんです』
『不誠実などということはないだろう。香子が我ら全員を受け入れてくれているのは嬉しい。香子は我らのことを好いているのだろう?』
『……はい』
香子は己の倫理観を今までも何度も捨てようとしたが、その度に罪悪感に囚われていた。こればかりは育った環境や今まで教えられていたことがネックになっている。そしてそれを撤回させる程の説得力を四神も持ち合わせてはいなかった。
四神には香子が何故そんなに躊躇するのかわかっていないのだ。
そんなわけで、午後も青龍と過ごすことにした香子だったが、悶々とした気持ちは晴れそうもなかった。
午後は衣裳替えをして、青龍には室へ連れ込まれた。これはもう予想していたことだったから、香子も素直に観念した。
青藍にお茶を淹れさせる。そのお茶も紅茶だった。
とても寒い時期はやはり紅茶がいいと香子は思う。身体を暖めることを考えたらやはり紅茶がいい。
大学に通っていた頃、友人に紅茶を飲ませたらお通じがよくなったと喜ばれたことを思い出した。それまでどれだけ友人の身体は冷えていたのだろうと呆れていた。
(やっぱ寒い時は紅茶だよね……)
緑茶は夏がいいと香子はぼんやり思う。
『もし、私が誰かに嫁いでも……他の四神がその領地まで訪ねてくることはあるんですよね?』
『ああ、そなたに会いたいからな』
『その際は、そのう……』
『なんだ?』
『……えっち、するんですか?』
香子としてはすごく聞きづらかったが、頬を染めて聞いてみた。
すると。
『……触れさせよ』
青龍のスイッチが入ってしまったらしく、そのまま寝室に運ばれて香子は全身を舐め回されてしまったのだった。
そうして昼食に呼ばれるまで、特に何を話すでもなく青龍の膝の上で過ごしていた。
だが午後はそういうわけにもいかないだろうということは香子もわかっていた。香子を抱いていた手も、さりげなくだがいろいろなところを触っていたからである。
(青龍様ってムッツリっていうのかな)
香子は青龍を勝手に安全圏だと思っていたが、実はそうではなかった。最初が最初だけに、香子がそう思い込んでいただけである。もちろんそう思っていたかったという香子の願望もあった。
朱雀に最初から口説かれ、玄武にも触れられ、白虎も耐えてはいたが香子に触れようとした。香子がどこかに安全圏を求めるのは必然だった。でも今は四神全員を受け入れて、やっと香子の気持ちも安定してきた。青龍がそんな香子を口説こうとするのも無理はなかった。
昼食の時間になって食堂へ移動する。今日は特に衣裳が乱れることもなかったから、侍女たちは髪型を整えた程度である。
『表に出られたのですから、お召し替えはしていただきたいのですが……』
『汚れてないからこのままでいいでしょう?』
そう香子が言えば、侍女たちは大仰にため息を吐いた。香子の衣裳は、香子が思っているよりたくさんあるのだ。
『……昼食の後はお召し替えを』
『ハイ……』
ここの侍女たちは香子のことを着せ替え人形か何かと勘違いしているのではないかと香子は思ったが、さすがに口には出さなかった。着替えも何気に面倒くさいのである。
昼食の席で、香子は気になったことを四神に聞いてみた。
『あのぅ……眷属に嫁いだ場合はその眷属に合わせて四神の領地に入るものなのでしょうか?』
聞いてから、これでは話が通らないかもしれないと香子は眉を寄せた。補足する。
『例えばなんですけど、エリーザは紅夏の妻ですよね? そうしたら、私が四神のどなたかに嫁いだ後、エリーザは紅夏と共に朱雀様の領地に行ってしまうのでしょうか』
玄武が少し表情を動かした。
『……眷属がすることは眷属に任せている故、わからぬな』
『ってことは、その眷属が他の四神の領地に住んでもいいということですか?』
『それは眷属の自由だろう』
朱雀がしれっと答える。
ということは、と香子は考えた。
『……じゃあ私がエリーザに側にいてほしいと思えば、もし朱雀様に嫁がなくても一緒にいられる可能性はあるのでしょうか』
『つがいの意志によるであろうな』
白虎が頷いた。
『えー……』
(ってことは、青龍様のところに嫁がなくても夕玲は私と一緒にいることはできるのか。でも青藍が嫌がるかな。そこらへんは結婚してからのお互いの歩み寄りだよね。あ、でも……)
こちらの世界では夫に従うのが当たり前だということを思い出し、香子はげんなりした。
『香子、そなたが気に病むことはない。そなたはそなたが望む相手と共にあればいいのだ』
青龍が優しく声をかけてきた。
『青龍様、ありがとうございます』
正直香子は困っていた。最初のうちは玄武や朱雀に惹かれて、でも今は白虎のことも、青龍のことも好きなのである。決め手がない状態が一番堪えていた。
(気が多いっていうのかなぁ……。みんな好きって一番よくないと思うんだけど……)
香子は自己嫌悪の状態になっていた。そんな香子の手に玄武が触れる。
『香子』
『……はい』
『急ぐ必要はない。我らはそなたしか見ぬ』
それだけは間違いなかった。四神は花嫁以外求めない。
『わかっています。でも不誠実だなって思うんです』
『不誠実などということはないだろう。香子が我ら全員を受け入れてくれているのは嬉しい。香子は我らのことを好いているのだろう?』
『……はい』
香子は己の倫理観を今までも何度も捨てようとしたが、その度に罪悪感に囚われていた。こればかりは育った環境や今まで教えられていたことがネックになっている。そしてそれを撤回させる程の説得力を四神も持ち合わせてはいなかった。
四神には香子が何故そんなに躊躇するのかわかっていないのだ。
そんなわけで、午後も青龍と過ごすことにした香子だったが、悶々とした気持ちは晴れそうもなかった。
午後は衣裳替えをして、青龍には室へ連れ込まれた。これはもう予想していたことだったから、香子も素直に観念した。
青藍にお茶を淹れさせる。そのお茶も紅茶だった。
とても寒い時期はやはり紅茶がいいと香子は思う。身体を暖めることを考えたらやはり紅茶がいい。
大学に通っていた頃、友人に紅茶を飲ませたらお通じがよくなったと喜ばれたことを思い出した。それまでどれだけ友人の身体は冷えていたのだろうと呆れていた。
(やっぱ寒い時は紅茶だよね……)
緑茶は夏がいいと香子はぼんやり思う。
『もし、私が誰かに嫁いでも……他の四神がその領地まで訪ねてくることはあるんですよね?』
『ああ、そなたに会いたいからな』
『その際は、そのう……』
『なんだ?』
『……えっち、するんですか?』
香子としてはすごく聞きづらかったが、頬を染めて聞いてみた。
すると。
『……触れさせよ』
青龍のスイッチが入ってしまったらしく、そのまま寝室に運ばれて香子は全身を舐め回されてしまったのだった。
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