461 / 597
第4部 四神を愛しなさいと言われました
9.初めてのお出かけかもしれません
しおりを挟む
甘く、蕩けるような時間だった。
全身を朱雀の熱とテナー、玄武のバリトンに包まれて、香子は全身が溶けてなくなるのではないかと思った。
その声も顔も身体も、与えらえる熱も、溢れんばかりの愛も、香子は自分でいいのかと尻込みしそうになるほどだ。
「や……ぁ……溶けちゃ……ぁあっ……」
もう違う国の言葉なんて出てこない。だが玄武も朱雀も香子の言葉は聞ける。心にも触れる。
『香子……香子……』
『愛している』
甘すぎて死んでしまう、と香子は思った。
ごはんだけは定期的に与えられていたから、香子も泣きたくなるほどの空腹は覚えなかった。青龍の時は水分補給だけで延々抱かれるからそれなりにつらい。本当は丸一日香子を抱き続けたいと言われている。二十四時間耐久セックスは無理だと香子はきっぱり断った。抱かれ続けることで与えられる快感もそうだが、なにより空腹で楽しめない。
(うん……四神とのHは……嫌いじゃない)
翌々日の朝食をいただきながら、香子は頬を染めた。
今日はもう朱雀の領地へ向かう日である。一日ワープしている。本当に一日中抱かれていたのだなと思っただけで、香子の頬がまた熱くなった。
『香子』
香子の椅子になっている玄武が香子を呼んだ。
『はい?』
『そなに赤くなっていると、また抱きたくなってしまう』
『も、もうだめです!』
顔の熱がなかなか去らないのに更に全身熱くなるようなことを言うとは何事か。香子は手に取った肉包(肉まん)を玄武の口に突っ込んだ。玄武が目を見開く。そんな表情もなかなか見られるものではないので香子はクスクス笑った。
『……なんということするのだ』
肉包を上品に食べ終えてから、玄武が抗議した。
『玄武様がとんでもないことを言うからです。私、今日のお出かけは本当に楽しみにしているんですよ? 玄武様に……そのう……抱かれるのは嫌ではないですけど……今ではないです』
言ってから香子は余計なことをまた言ってしまったかもと冷汗をかいた。
『……そなたは我らを煽るのがうまいな』
玄武の横に腰掛けて、同じように食事をしていた朱雀が意地悪そうに呟いた。
『っ! あ、煽ったつもりはございません! もうっ、玄武様と朱雀様が悪いんですっ!』
『そうだな』
玄武は素直に同意した。
『思い出すだけでいくらでも抱ける』
朱雀がふふんと得意そうな顔をした。そんなに抱かれてはかなわないと、香子は首を振った。
『今日はダメですよ。これから支度して……出かけるんですから』
『そうだな。領地にいる者たちに通達はしてあるが、早めに向かった方がよかろう』
朱雀が言い、香子は饅頭(マントウ)に搾菜などを挟んでかぶりついた。このふかふかの饅頭が最高である。肉まんの皮だけと言えないこともないが、饅頭はふかふかの白い面包なのだ。そのまま食べてもいいし、間にいろいろなものを挟んで食べてもいい。春巻も当然ながら用意されていたので、香子はこれでもかと食べた。
そうして朝食を堪能してから支度をし、連れに来た朱雀の腕の中に香子は収まった。
今回は朱雀の衣裳に合わせて内側の袍は臙脂色で、裙子(スカート)は薄めの灰色である。長袍は黒で、それに朱雀が刺繍してある見事なものだ。
化粧や髪型、衣裳を担当する侍女たちは自分たちの作品の出来栄えにほうとため息をついた。香子は自分が平凡な顔だと思っているがそんなことはない。最初ここに来た時はかわいいかも? と言えるぐらいであった香子だが、四神に愛されることで本当に美しくなっている。顔の造作が変わったわけではないが、肌は透き通るように白くなり、きめ細やかで、スタイルも更にメリハリがつき、愛されているという自信が香子をとにかく魅力的にしていた。
『そなたを見るほどに愛おしくなる。どれ、白虎と青龍に見せてやろう』
朱雀が香子を抱いたまま歩き出した。
今日は白虎と青龍の顔を見るのは戻ってきてからかもしれないと思っていたから、顔を見れたことが香子は嬉しかった。朱雀はこういう気遣いがうまい。
『そのうちうちの領地にも来てもらいたいものだ』
白虎にそう言われて、香子は頬を染めた。誰かの領地に行くにはいろいろ段階というものがあることを香子も知ったからである。
『そ、そのうち、デス……』
『うむ。夜には戻ってくるのだろう』
『そのつもりではいるが……』
『泊まりになるようであれば早めに知らせを寄こされよ』
『そうしよう』
香子に聞こえるように二神が会話してくれるのが嬉しいと思った。青龍の室へ向かうと、似たようなことを言われた。
『青龍の領地へ向かうとなれば一日ではきかぬだろう』
『そうですね。最低二晩は香子を抱かなければ……』
『……行きません』
きっぱりと香子は答える。あれ以上抱かれ続けたら死んでしまうと香子は蒼褪めた。
そんなやりとりを経て、出かける前だというのに香子はもう疲れてしまった。これはめいっぱい朱雀の領地を堪能させてもらわないとわりに合わないなどと香子は思う。
そうして玄武と合流し、趙文英に声をかけてから朱雀の領地へと移動したのだった。
全身を朱雀の熱とテナー、玄武のバリトンに包まれて、香子は全身が溶けてなくなるのではないかと思った。
その声も顔も身体も、与えらえる熱も、溢れんばかりの愛も、香子は自分でいいのかと尻込みしそうになるほどだ。
「や……ぁ……溶けちゃ……ぁあっ……」
もう違う国の言葉なんて出てこない。だが玄武も朱雀も香子の言葉は聞ける。心にも触れる。
『香子……香子……』
『愛している』
甘すぎて死んでしまう、と香子は思った。
ごはんだけは定期的に与えられていたから、香子も泣きたくなるほどの空腹は覚えなかった。青龍の時は水分補給だけで延々抱かれるからそれなりにつらい。本当は丸一日香子を抱き続けたいと言われている。二十四時間耐久セックスは無理だと香子はきっぱり断った。抱かれ続けることで与えられる快感もそうだが、なにより空腹で楽しめない。
(うん……四神とのHは……嫌いじゃない)
翌々日の朝食をいただきながら、香子は頬を染めた。
今日はもう朱雀の領地へ向かう日である。一日ワープしている。本当に一日中抱かれていたのだなと思っただけで、香子の頬がまた熱くなった。
『香子』
香子の椅子になっている玄武が香子を呼んだ。
『はい?』
『そなに赤くなっていると、また抱きたくなってしまう』
『も、もうだめです!』
顔の熱がなかなか去らないのに更に全身熱くなるようなことを言うとは何事か。香子は手に取った肉包(肉まん)を玄武の口に突っ込んだ。玄武が目を見開く。そんな表情もなかなか見られるものではないので香子はクスクス笑った。
『……なんということするのだ』
肉包を上品に食べ終えてから、玄武が抗議した。
『玄武様がとんでもないことを言うからです。私、今日のお出かけは本当に楽しみにしているんですよ? 玄武様に……そのう……抱かれるのは嫌ではないですけど……今ではないです』
言ってから香子は余計なことをまた言ってしまったかもと冷汗をかいた。
『……そなたは我らを煽るのがうまいな』
玄武の横に腰掛けて、同じように食事をしていた朱雀が意地悪そうに呟いた。
『っ! あ、煽ったつもりはございません! もうっ、玄武様と朱雀様が悪いんですっ!』
『そうだな』
玄武は素直に同意した。
『思い出すだけでいくらでも抱ける』
朱雀がふふんと得意そうな顔をした。そんなに抱かれてはかなわないと、香子は首を振った。
『今日はダメですよ。これから支度して……出かけるんですから』
『そうだな。領地にいる者たちに通達はしてあるが、早めに向かった方がよかろう』
朱雀が言い、香子は饅頭(マントウ)に搾菜などを挟んでかぶりついた。このふかふかの饅頭が最高である。肉まんの皮だけと言えないこともないが、饅頭はふかふかの白い面包なのだ。そのまま食べてもいいし、間にいろいろなものを挟んで食べてもいい。春巻も当然ながら用意されていたので、香子はこれでもかと食べた。
そうして朝食を堪能してから支度をし、連れに来た朱雀の腕の中に香子は収まった。
今回は朱雀の衣裳に合わせて内側の袍は臙脂色で、裙子(スカート)は薄めの灰色である。長袍は黒で、それに朱雀が刺繍してある見事なものだ。
化粧や髪型、衣裳を担当する侍女たちは自分たちの作品の出来栄えにほうとため息をついた。香子は自分が平凡な顔だと思っているがそんなことはない。最初ここに来た時はかわいいかも? と言えるぐらいであった香子だが、四神に愛されることで本当に美しくなっている。顔の造作が変わったわけではないが、肌は透き通るように白くなり、きめ細やかで、スタイルも更にメリハリがつき、愛されているという自信が香子をとにかく魅力的にしていた。
『そなたを見るほどに愛おしくなる。どれ、白虎と青龍に見せてやろう』
朱雀が香子を抱いたまま歩き出した。
今日は白虎と青龍の顔を見るのは戻ってきてからかもしれないと思っていたから、顔を見れたことが香子は嬉しかった。朱雀はこういう気遣いがうまい。
『そのうちうちの領地にも来てもらいたいものだ』
白虎にそう言われて、香子は頬を染めた。誰かの領地に行くにはいろいろ段階というものがあることを香子も知ったからである。
『そ、そのうち、デス……』
『うむ。夜には戻ってくるのだろう』
『そのつもりではいるが……』
『泊まりになるようであれば早めに知らせを寄こされよ』
『そうしよう』
香子に聞こえるように二神が会話してくれるのが嬉しいと思った。青龍の室へ向かうと、似たようなことを言われた。
『青龍の領地へ向かうとなれば一日ではきかぬだろう』
『そうですね。最低二晩は香子を抱かなければ……』
『……行きません』
きっぱりと香子は答える。あれ以上抱かれ続けたら死んでしまうと香子は蒼褪めた。
そんなやりとりを経て、出かける前だというのに香子はもう疲れてしまった。これはめいっぱい朱雀の領地を堪能させてもらわないとわりに合わないなどと香子は思う。
そうして玄武と合流し、趙文英に声をかけてから朱雀の領地へと移動したのだった。
12
お気に入りに追加
4,015
あなたにおすすめの小説
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
明智さんちの旦那さんたちR
明智 颯茄
恋愛
あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。
奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。
ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。
*BL描写あり
毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
女性が全く生まれない世界とか嘘ですよね?
青海 兎稀
恋愛
ただの一般人である主人公・ユヅキは、知らぬうちに全く知らない街の中にいた。ここがどこだかも分からず、ただ当てもなく歩いていた時、誰かにぶつかってしまい、そのまま意識を失う。
そして、意識を取り戻し、助けてくれたイケメンにこの世界には全く女性がいないことを知らされる。
そんなユヅキの逆ハーレムのお話。
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
女性の少ない異世界に生まれ変わったら
Azuki
恋愛
高校に登校している途中、道路に飛び出した子供を助ける形でトラックに轢かれてそのまま意識を失った私。
目を覚ますと、私はベッドに寝ていて、目の前にも周りにもイケメン、イケメン、イケメンだらけーーー!?
なんと私は幼女に生まれ変わっており、しかもお嬢様だった!!
ーーやった〜!勝ち組人生来た〜〜〜!!!
そう、心の中で思いっきり歓喜していた私だけど、この世界はとんでもない世界で・・・!?
これは、女性が圧倒的に少ない異世界に転生した私が、家族や周りから溺愛されながら様々な問題を解決して、更に溺愛されていく物語。
【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる