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第4部 四神を愛しなさいと言われました
4.甘さは判断を狂わせるようです
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香子がごはんに夢中だったせいか、その日の夜の営みは穏やかだった。
否、穏やかとはとてもいえなかっただろう。いつも通りではあったが甘さが追加されたようである。しかも何故かその日の夜は、香子の室で優しく奪われた。
香子が皇帝を歯牙にもかけていないことを四神もようやく納得したようだった。
おかげで、翌朝は久しぶりに香子は床単を頭から被ることとなった。昨夜の甘さを思い出しただけで死にそうである。
(やヴぁい……玄武様と朱雀様が本気を出してきた……)
いつもたっぷり感じさせられてしまうのだが、昨夜はそれが更にすごかった気がする。
『香子、腹は空かぬか?』
『……おなか、空きました……』
玄武のバリトンに、香子は身もだえながらも小さな声で答えた。そう、昨夜もたっぷり抱かれたからおなかは空いているのである。
(色気ないなぁ)
だが、香子としても色気がないぐらいがいいような気がした。これで色気があったらたいへんだからだ。
毎日中華料理が食べられるのは至福である。香子の為に用意されるふかふかの饅頭も、香子のお気に入りだ。大学の食堂の饅頭は白くでボソボソしたパンであったが、ここで出される饅頭は日本で食べる肉まんのごとくふかふかだ。肉まんの具なし、というかんじである。だが包子(肉まん)になると皮がもっと頑丈になるのだから腹に溜まろうというものだ。おいしいは幸せだと、今朝も香子は料理を堪能した。
『本当にそなたはおいしそうに食べる』
『おいしいですから!』
玄武の言葉に香子は即答した。
もちろん和食が食べたいと思う時もある。醤油もあるが、基本は甘いのでしょっぱいものを取り寄せてもらっていたりはする。四神宮のごはんに関して言えば、もう香子色であると言っていいだろう。四神宮の厨師たちは本当にがんばってくれているなぁと香子はしみじみ思うのだった。
食後のお茶を飲みながら、香子はふと思い出した。
冬の大祭である春節に、香子は参加する気満々なのだが、果たして四神はどうなのだろうかと。
昨夜皇帝に大祭ではどのようなことをするかなどは聞いたが、四神の意志をはっきりとは確認していないと思ったのだ。ただ、冬の大祭は玄武を祀るものである為玄武以外はどちらでもいいというスタンスである。
これは改めて聞くべきなのかと香子は少し悩んだ。
が、悩んでもしかたないので改めて聞くことにした。玄武が香子の椅子になっているのだ。悩むだけ無駄である。
『玄武様……今更なんですけど』
『香子、如何した?』
『私、冬の大祭に出るつもりですけど、玄武様も一緒に出ていただけますよね?』
『……うむ』
しぶしぶというかんじだが、玄武は応えた。
『玄武様は……私が人目に触れるのが嫌なのですか? 私を誰にも見せたくないと思っていらっしゃる? ……それとも、私が四神以外の誰かに……』
『香子、それ以上はならぬ』
朱雀に遮られて、香子は自分の口を手で塞いだ。そして青ざめた。
失敗した、と香子は思った。
『……そなたは疲れているのだろう。香子、我の室に向かおう』
玄武が優しく声をかける。
『いいえ、いいえ……ごめんなさい……』
自分が不安定になっているなどという言い訳を、香子はしたくなかった。不安定だから言ってはならないことを言おうとして、それが許されるなどありえないと香子は思った。
『ならば……”仕置き”をしようか?』
玄武のバリトンが不穏な言葉を紡ぐ。香子は頬が熱くなるのを感じた。
『玄武兄、連れて行ってしまいましょう。香子、そなたは今日はもう床から出ることはまかりならぬ。わかったな?』
朱雀に言われて泣きそうになった。
四神はどこまでも香子に甘い。香子の不安定さも、何もかも包み込んでしまう。
もちろん、それは決してただではないのだが。
香子は玄武にしがみついた。
(抱かれるのって、お仕置きになるのかしら?)
二神が言っていることは、香子を抱く為のただの口実のような気がする。
(ま、いいか)
四神に抱かれるのは……どちらかといえば好きだ。香子は自分が随分遠くへ来てしまったような気がした。(実際にはるか彼方ではなる)
『や、優しくしてください……』
玄武が香子を抱いたまま立ち上がった。朱雀が己の長袍も香子にかけた。
『途中食事は取らせるが、明日の朝までは離さぬと知れ』
『……そんな……』
また甘くなってしまうのかと思ったら、香子は目が潤んでくるのを感じた。
侍女たちがおろおろしている。悪いことをしていると香子は思ったが、どうしようもない。
『そなた、延であったか』
『はい』
『今日は一日香子を預かる。何かあれば玄武の室にいると伝えよ』
『承知しました』
そういえばここは香子の部屋であった。香子は玄武の胸に顔を伏せた。恥ずかしくてしかたなかった。
だがそのまた翌朝、玄武と朱雀は上機嫌であった。
『あのような失言一つでこなにそなたを堪能できるのであれば、いくらでもかまわぬ』
玄武に言われて、香子は今度こそ涙目になった。
失言はしないに越したことはない。言葉には本当に気を付けようと、香子は何度目かの決意をしたのだった。
否、穏やかとはとてもいえなかっただろう。いつも通りではあったが甘さが追加されたようである。しかも何故かその日の夜は、香子の室で優しく奪われた。
香子が皇帝を歯牙にもかけていないことを四神もようやく納得したようだった。
おかげで、翌朝は久しぶりに香子は床単を頭から被ることとなった。昨夜の甘さを思い出しただけで死にそうである。
(やヴぁい……玄武様と朱雀様が本気を出してきた……)
いつもたっぷり感じさせられてしまうのだが、昨夜はそれが更にすごかった気がする。
『香子、腹は空かぬか?』
『……おなか、空きました……』
玄武のバリトンに、香子は身もだえながらも小さな声で答えた。そう、昨夜もたっぷり抱かれたからおなかは空いているのである。
(色気ないなぁ)
だが、香子としても色気がないぐらいがいいような気がした。これで色気があったらたいへんだからだ。
毎日中華料理が食べられるのは至福である。香子の為に用意されるふかふかの饅頭も、香子のお気に入りだ。大学の食堂の饅頭は白くでボソボソしたパンであったが、ここで出される饅頭は日本で食べる肉まんのごとくふかふかだ。肉まんの具なし、というかんじである。だが包子(肉まん)になると皮がもっと頑丈になるのだから腹に溜まろうというものだ。おいしいは幸せだと、今朝も香子は料理を堪能した。
『本当にそなたはおいしそうに食べる』
『おいしいですから!』
玄武の言葉に香子は即答した。
もちろん和食が食べたいと思う時もある。醤油もあるが、基本は甘いのでしょっぱいものを取り寄せてもらっていたりはする。四神宮のごはんに関して言えば、もう香子色であると言っていいだろう。四神宮の厨師たちは本当にがんばってくれているなぁと香子はしみじみ思うのだった。
食後のお茶を飲みながら、香子はふと思い出した。
冬の大祭である春節に、香子は参加する気満々なのだが、果たして四神はどうなのだろうかと。
昨夜皇帝に大祭ではどのようなことをするかなどは聞いたが、四神の意志をはっきりとは確認していないと思ったのだ。ただ、冬の大祭は玄武を祀るものである為玄武以外はどちらでもいいというスタンスである。
これは改めて聞くべきなのかと香子は少し悩んだ。
が、悩んでもしかたないので改めて聞くことにした。玄武が香子の椅子になっているのだ。悩むだけ無駄である。
『玄武様……今更なんですけど』
『香子、如何した?』
『私、冬の大祭に出るつもりですけど、玄武様も一緒に出ていただけますよね?』
『……うむ』
しぶしぶというかんじだが、玄武は応えた。
『玄武様は……私が人目に触れるのが嫌なのですか? 私を誰にも見せたくないと思っていらっしゃる? ……それとも、私が四神以外の誰かに……』
『香子、それ以上はならぬ』
朱雀に遮られて、香子は自分の口を手で塞いだ。そして青ざめた。
失敗した、と香子は思った。
『……そなたは疲れているのだろう。香子、我の室に向かおう』
玄武が優しく声をかける。
『いいえ、いいえ……ごめんなさい……』
自分が不安定になっているなどという言い訳を、香子はしたくなかった。不安定だから言ってはならないことを言おうとして、それが許されるなどありえないと香子は思った。
『ならば……”仕置き”をしようか?』
玄武のバリトンが不穏な言葉を紡ぐ。香子は頬が熱くなるのを感じた。
『玄武兄、連れて行ってしまいましょう。香子、そなたは今日はもう床から出ることはまかりならぬ。わかったな?』
朱雀に言われて泣きそうになった。
四神はどこまでも香子に甘い。香子の不安定さも、何もかも包み込んでしまう。
もちろん、それは決してただではないのだが。
香子は玄武にしがみついた。
(抱かれるのって、お仕置きになるのかしら?)
二神が言っていることは、香子を抱く為のただの口実のような気がする。
(ま、いいか)
四神に抱かれるのは……どちらかといえば好きだ。香子は自分が随分遠くへ来てしまったような気がした。(実際にはるか彼方ではなる)
『や、優しくしてください……』
玄武が香子を抱いたまま立ち上がった。朱雀が己の長袍も香子にかけた。
『途中食事は取らせるが、明日の朝までは離さぬと知れ』
『……そんな……』
また甘くなってしまうのかと思ったら、香子は目が潤んでくるのを感じた。
侍女たちがおろおろしている。悪いことをしていると香子は思ったが、どうしようもない。
『そなた、延であったか』
『はい』
『今日は一日香子を預かる。何かあれば玄武の室にいると伝えよ』
『承知しました』
そういえばここは香子の部屋であった。香子は玄武の胸に顔を伏せた。恥ずかしくてしかたなかった。
だがそのまた翌朝、玄武と朱雀は上機嫌であった。
『あのような失言一つでこなにそなたを堪能できるのであれば、いくらでもかまわぬ』
玄武に言われて、香子は今度こそ涙目になった。
失言はしないに越したことはない。言葉には本当に気を付けようと、香子は何度目かの決意をしたのだった。
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