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第3部 周りと仲良くしろと言われました
146.いろいろ溢れてしまいました(第三部完結。今後は番外編を上げます)
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香子はなかなか床から出させてもらえなかった。
食事や入浴はできたが、その後は四神が代わるがわる香子を捕らえて離さなかった。
延夕玲や紅児はとても心配して青藍や紅夏に尋ねたが、『あれは花嫁様の自業自得だ』と言われただけだった。
夕玲はすぐに引き下がったが、紅児は引き下がらなかった。
『……花嫁様が納得されていたとしても……あんなに出てこられないのはおかしいですっ!』
青龍に抱かれた翌日はともかく、その次の日も全く部屋に戻ってこないのだ。戻ってきたと思えばむせかえるほどの色気で近づくのも躊躇してしまうほどである。紅児は眷属とすでに結婚しているのでまだ耐性はあるが、夕玲や林雪紅だけでなく侍女たちも困っている様子だった。
服装を整えられればまた四神にさらわれて、そんなのはおかしいと紅児は訴えた。
『黒月さんもそう思われませんかっ? あれでは花嫁様が壊れてしまいます!』
『……それは困る』
紅夏に訴えてもだめだったというのに、黒月に訴えたらどうにか夕方には香子は解放された。
『花嫁様ぁっ!』
玄武に抱かれて部屋に戻ってきた香子に、紅児は縋りついた。
『あ……ごめんなさい。エリーザを不安にさせてしまったわね……』
『そんなことはどうでもいいのです。花嫁様がたいへんな目に遭われていたのに私、私……』
香子は涙をぼろぼろこぼしている紅児を見て反省した。四神のことは大好きで、ここにいる期間は厳密には一年ではなくてもいいと知って香子は気が抜けてしまったのだ。四神宮にいられる期間は最長で現在の皇帝が崩御するまでだと確認したら、もういいかなと香子は思ってしまったのだ。
そうしたら今更ながら抱かれる際にマグロ状態の自分に気づいて、それはいけないのかなとか余計なことを考えてしまった。
四神は香子を愛しく想うあまり暴走し、今回のような状態になってしまったのである。
『明日からはいつも通りに戻るわ。エリーザ、ありがとう……』
そう言って紅児の髪を何度も優しく撫でた香子だったが、紅児が『花嫁様が壊れちゃう!』と言ったと聞いて複雑な心境になった。そんな言葉を誰から習ったのか。おそらくはませた侍女からなのだろうが、紅児も紅夏にいいように抱かれているのではないかとか、また余計な想像をしてしまった。
(だめかもしれない……)
ずっと四神に代わるがわる抱かれていたから、脳内がそういうことで満たされすぎておかしくなっている気がする。
玄武はそのまま香子から離れなかった。どうやら離れがたいようで、そんな玄武のことも香子は好きだと思った。
重症である。
だが本当に考えなければいけないことがあることも、香子は知っていた。
(私は誰が一番なのかしら……)
それを真剣に考える為には一旦四神と離れなければならないと香子は思う。
前に部屋で一人になりたいと訴えた時、居間では玄武が控えていた。そして結局香子は玄武を寝室に呼んでしまいなし崩しになってしまった。ならば、誰ならそうならないといえるのかと香子はまた考える。
(難しい……)
結婚したけど気に食わなかったからチェンジで、というわけにはいかないのだ。四神は花嫁と添い遂げる。それならば一番好きな相手と過ごしたいと香子は思う。
衣裳を整えて、やっと食堂で夕飯を食べ、香子は落ち着けた気がした。
四神を見回したが、香子の目にはいつもと変わりないように映った。本当に憎らしいと香子は思う。
表情が動かないというのは相手に気持ちを悟らせない効果がある。香子はそれでも四神の表情の僅かな変化をわかるようになってきてはいる方だ。眷属はただ四神の命令を遂行するだけである。四神と対等なのは四神の花嫁だけだ。
それでも人と神の関係である。お互いに齟齬はあるしたいへんだ。
香子は嘆息した。
『……ちょっと疲れたので、今宵は一人で過ごさせてくださいませ』
『それは……』
『聞きたくはないな』
案の定玄武と朱雀は難色を示した。
『一人になりたい時もあるとお伝えしています。玄武様、朱雀様、夜を共に過ごして私に触れないで一晩過ごせますか?』
『無理だ』
『無理だな』
二神は即答した。それはそれですがすがしいと香子は苦笑した。
『触れられてしまうと何も考えられなくなってしまいますから……一人で少し考えたいのです』
『ならば、我が今宵は居間で控えよう』
朱雀が提案をした。提案するだけ進歩したと香子も思う。だがそれではだめなのだ。側にいると思えば、香子はまた四神に流されてしまう。
『居間には黒月に控えてもらいたいです。朱雀様は申し訳ありません』
『聞きたくないのだが?』
朱雀はこういう時はひどくわがままだ。
『今宵は誰にも抱かれたくないのです。朱雀様が居間に控えていらっしゃったら朱雀様に縋ってしまいますから……。どうか聞き分けてくださいませ』
普段ならいい。でも今夜は久しぶりに身体を空けておきたいと香子は思ったのだ。
朱雀が嘆息した。
『誰に嫁ぐのか決めるのか』
『今夜では決まらないかもしれません。でも、少しは考えられるかと』
『……ならばしかたない』
珍しく朱雀が引き下がった。だけど。
『抱かれたくなったらいつでも呼べ』
『……なりませんから!』
やっぱり朱雀は一言多かった。
第三部おしまい。
この後は番外編をいくつか上げます。それから最後の第四部へ進みたいと思います。眷属とその”つがい”の話を予定しています。
それにしても長かったー!
食事や入浴はできたが、その後は四神が代わるがわる香子を捕らえて離さなかった。
延夕玲や紅児はとても心配して青藍や紅夏に尋ねたが、『あれは花嫁様の自業自得だ』と言われただけだった。
夕玲はすぐに引き下がったが、紅児は引き下がらなかった。
『……花嫁様が納得されていたとしても……あんなに出てこられないのはおかしいですっ!』
青龍に抱かれた翌日はともかく、その次の日も全く部屋に戻ってこないのだ。戻ってきたと思えばむせかえるほどの色気で近づくのも躊躇してしまうほどである。紅児は眷属とすでに結婚しているのでまだ耐性はあるが、夕玲や林雪紅だけでなく侍女たちも困っている様子だった。
服装を整えられればまた四神にさらわれて、そんなのはおかしいと紅児は訴えた。
『黒月さんもそう思われませんかっ? あれでは花嫁様が壊れてしまいます!』
『……それは困る』
紅夏に訴えてもだめだったというのに、黒月に訴えたらどうにか夕方には香子は解放された。
『花嫁様ぁっ!』
玄武に抱かれて部屋に戻ってきた香子に、紅児は縋りついた。
『あ……ごめんなさい。エリーザを不安にさせてしまったわね……』
『そんなことはどうでもいいのです。花嫁様がたいへんな目に遭われていたのに私、私……』
香子は涙をぼろぼろこぼしている紅児を見て反省した。四神のことは大好きで、ここにいる期間は厳密には一年ではなくてもいいと知って香子は気が抜けてしまったのだ。四神宮にいられる期間は最長で現在の皇帝が崩御するまでだと確認したら、もういいかなと香子は思ってしまったのだ。
そうしたら今更ながら抱かれる際にマグロ状態の自分に気づいて、それはいけないのかなとか余計なことを考えてしまった。
四神は香子を愛しく想うあまり暴走し、今回のような状態になってしまったのである。
『明日からはいつも通りに戻るわ。エリーザ、ありがとう……』
そう言って紅児の髪を何度も優しく撫でた香子だったが、紅児が『花嫁様が壊れちゃう!』と言ったと聞いて複雑な心境になった。そんな言葉を誰から習ったのか。おそらくはませた侍女からなのだろうが、紅児も紅夏にいいように抱かれているのではないかとか、また余計な想像をしてしまった。
(だめかもしれない……)
ずっと四神に代わるがわる抱かれていたから、脳内がそういうことで満たされすぎておかしくなっている気がする。
玄武はそのまま香子から離れなかった。どうやら離れがたいようで、そんな玄武のことも香子は好きだと思った。
重症である。
だが本当に考えなければいけないことがあることも、香子は知っていた。
(私は誰が一番なのかしら……)
それを真剣に考える為には一旦四神と離れなければならないと香子は思う。
前に部屋で一人になりたいと訴えた時、居間では玄武が控えていた。そして結局香子は玄武を寝室に呼んでしまいなし崩しになってしまった。ならば、誰ならそうならないといえるのかと香子はまた考える。
(難しい……)
結婚したけど気に食わなかったからチェンジで、というわけにはいかないのだ。四神は花嫁と添い遂げる。それならば一番好きな相手と過ごしたいと香子は思う。
衣裳を整えて、やっと食堂で夕飯を食べ、香子は落ち着けた気がした。
四神を見回したが、香子の目にはいつもと変わりないように映った。本当に憎らしいと香子は思う。
表情が動かないというのは相手に気持ちを悟らせない効果がある。香子はそれでも四神の表情の僅かな変化をわかるようになってきてはいる方だ。眷属はただ四神の命令を遂行するだけである。四神と対等なのは四神の花嫁だけだ。
それでも人と神の関係である。お互いに齟齬はあるしたいへんだ。
香子は嘆息した。
『……ちょっと疲れたので、今宵は一人で過ごさせてくださいませ』
『それは……』
『聞きたくはないな』
案の定玄武と朱雀は難色を示した。
『一人になりたい時もあるとお伝えしています。玄武様、朱雀様、夜を共に過ごして私に触れないで一晩過ごせますか?』
『無理だ』
『無理だな』
二神は即答した。それはそれですがすがしいと香子は苦笑した。
『触れられてしまうと何も考えられなくなってしまいますから……一人で少し考えたいのです』
『ならば、我が今宵は居間で控えよう』
朱雀が提案をした。提案するだけ進歩したと香子も思う。だがそれではだめなのだ。側にいると思えば、香子はまた四神に流されてしまう。
『居間には黒月に控えてもらいたいです。朱雀様は申し訳ありません』
『聞きたくないのだが?』
朱雀はこういう時はひどくわがままだ。
『今宵は誰にも抱かれたくないのです。朱雀様が居間に控えていらっしゃったら朱雀様に縋ってしまいますから……。どうか聞き分けてくださいませ』
普段ならいい。でも今夜は久しぶりに身体を空けておきたいと香子は思ったのだ。
朱雀が嘆息した。
『誰に嫁ぐのか決めるのか』
『今夜では決まらないかもしれません。でも、少しは考えられるかと』
『……ならばしかたない』
珍しく朱雀が引き下がった。だけど。
『抱かれたくなったらいつでも呼べ』
『……なりませんから!』
やっぱり朱雀は一言多かった。
第三部おしまい。
この後は番外編をいくつか上げます。それから最後の第四部へ進みたいと思います。眷属とその”つがい”の話を予定しています。
それにしても長かったー!
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