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第3部 周りと仲良くしろと言われました
139.万里の長城がまた見たくなりました
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満貫全席とまでは言わないが、それなりに豪華な料理が並んだ。
ささやか、というには金がかかりすぎだと香子は思ったが、そこは気にしないことにした。めったに食べられないような料理である。
香子はやはり清蒸魚とフカヒレの料理が気に入った。フカヒレはスープだけでなく煮物のような料理もあり、ふんだんに使われていた。
古老肉(酢豚)もまた見事だった。箸で切れる揚げた豚肉などどうなっているのだと香子は感動した。
『内臓類はあまり好まれないと聞きましたが、その通りでしたな』
皇太后がにこにこしながら香子にいろいろ取り分ける。ヘーゼルナッツと揚げ鳥の炒めなど高価だなぁと香子は思う。香子は終始顔が崩れっぱなしで、出された料理を満喫した。
(中華料理には逆らえない……)
中華料理が好きすぎてやヴぁいと香子は思った。デザートのマンゴープリンもどうかと思った。プリンアラモード的な飾りつけをされていて、香子は大いにときめいた。
『……とってもおいしかったです……』
おいしい料理には決して逆らえない香子だった。食べたらなくなってしまうものではあるが、それらを食べた思い出は残る。
『花嫁様に気に入っていただけて幸いじゃ。花嫁様、これからもよろしく頼むぞ』
『はい』
それは皇太后との関係もだろうが、主に延夕玲のことに違いなかった。そういえば今回は青藍は同席していないが、以前皇太后に挨拶に向かったと聞いたことはあった。今二人の関係がどうなっているのか、香子は少し気になったが馬に蹴られたくはないので自重することにした。
『……老仏爺。もしかしたら、少しだけ延ばすかもしれません』
『そうですか。その際は改めてお声掛けください』
『はい』
二か月延ばせば、皇太后と円明園を見に行けるかもしれないと香子は思ったのだ。もう冬だから、こんな寒い時期に皇太后を連れ出すわけにはいかない。今から春が待ち遠しいのはみな一緒だった。
その夜、香子は朱雀に飛んでもらえないかと頼んだ。朱雀は快く引き受けた。
抱かれる前にと、玄武に見送られて、香子は朱雀の背に乗って夜空を飛んだ。
明かりがよく見えるのは王城周辺のみだ。
〈どこへ向かうのか〉
〈長城に添って、西に向かってもらうことはできますか?〉
〈いいだろう〉
今香子がいるのは空の上だが、それでも見上げる者がいないとは限らない。だから念の為心話で会話をした。
世界は暗くてよく見えはしない。それでも夜目が利くようにはなっているので建物の形などはよく見えた。
これも神の力かと思うと香子は若干切なくなる。
どうして四神の花嫁は平行世界のような異世界から招かれるのだろうか。ぼんやりそんなことを考えて首を振った。神の思惑など人間が理解できるようなことではないし、それを知ったところで香子が帰れるわけでもない。仮説とか、伝聞のような形で何故かは聞いたが、それは香子である必要もなかったのだ。
この世界の神々がそう決めて、香子の世界の神々がそれを認めたから。ただそれだけの話だ。
朱雀のスピードはとても速い。それほど時間もかけずに長城の上に着いた。
〈わぁ……〉
雪が積もっているのがわかる。そういえば長城がある場所は山の上だったことを香子は思い出した。声が出そうになるのをどうにか抑えた。
ところどころにある望楼からわずかに光が漏れているのが見える。あそこに兵士たちがいて、ここを突破されないように守っているのだろう。ここから更に遥か北に玄武の領地がある。今は四神が唐王朝と契約を結んでいるから、眷属たちがその更に北にある国を見張っているのだと香子は聞いた。
この国の北にあるのはオロス国だ。
香子は中秋節の際に姿を見たオロス国の王を思い出した。白い肌をして、全体的に色素が薄い美丈夫だったが、その目は猛禽のようだった。
(でも大丈夫)
香子が四神の花嫁である限り、隣国にはわずかな土地も譲らない覚悟がある。国内のことや、国家が転覆するようなことにならない限り四神はその国には関わらないが、外国が攻めてくる場合は別である。その際は天罰が落ちるだろう。
どんなことになるのかは、香子は怖くて聞いていない。でも民草が困るようなことにならなければいいなと思うのみである。権力を持っている者が決めたことには従わざるを得ないだろう。甘ちゃんと言われようが、みなに幸せになってほしいと香子は思うのだ。
〈西か。どこまで参ろうか〉
〈私が満足するまで飛んでくださいますか?〉
〈是非もない〉
朱雀は笑ったようだった。
長城が観光地であればよかったと香子は思う。そうしたら気軽に訪れて、雄大な景色を見ることができたのに。長城は大事な軍事施設だ。また遊牧民族や、北方の国が攻めてきた時の為の城壁である。それがどこまでも続いてるのを見るのは、それだけこの国が苦難の道を歩んできたのかを知るようで、香子は胸が苦しくなった。
〈香子、如何した?〉
〈ずっと平和が続いてほしいです。四神はそれを叶えてくれますか?〉
〈そなたが望むならば叶えよう〉
夜目がきかなければとても見られない景色を、香子は朱雀の背に乗りながら静かな気持ちで眺めた。
ささやか、というには金がかかりすぎだと香子は思ったが、そこは気にしないことにした。めったに食べられないような料理である。
香子はやはり清蒸魚とフカヒレの料理が気に入った。フカヒレはスープだけでなく煮物のような料理もあり、ふんだんに使われていた。
古老肉(酢豚)もまた見事だった。箸で切れる揚げた豚肉などどうなっているのだと香子は感動した。
『内臓類はあまり好まれないと聞きましたが、その通りでしたな』
皇太后がにこにこしながら香子にいろいろ取り分ける。ヘーゼルナッツと揚げ鳥の炒めなど高価だなぁと香子は思う。香子は終始顔が崩れっぱなしで、出された料理を満喫した。
(中華料理には逆らえない……)
中華料理が好きすぎてやヴぁいと香子は思った。デザートのマンゴープリンもどうかと思った。プリンアラモード的な飾りつけをされていて、香子は大いにときめいた。
『……とってもおいしかったです……』
おいしい料理には決して逆らえない香子だった。食べたらなくなってしまうものではあるが、それらを食べた思い出は残る。
『花嫁様に気に入っていただけて幸いじゃ。花嫁様、これからもよろしく頼むぞ』
『はい』
それは皇太后との関係もだろうが、主に延夕玲のことに違いなかった。そういえば今回は青藍は同席していないが、以前皇太后に挨拶に向かったと聞いたことはあった。今二人の関係がどうなっているのか、香子は少し気になったが馬に蹴られたくはないので自重することにした。
『……老仏爺。もしかしたら、少しだけ延ばすかもしれません』
『そうですか。その際は改めてお声掛けください』
『はい』
二か月延ばせば、皇太后と円明園を見に行けるかもしれないと香子は思ったのだ。もう冬だから、こんな寒い時期に皇太后を連れ出すわけにはいかない。今から春が待ち遠しいのはみな一緒だった。
その夜、香子は朱雀に飛んでもらえないかと頼んだ。朱雀は快く引き受けた。
抱かれる前にと、玄武に見送られて、香子は朱雀の背に乗って夜空を飛んだ。
明かりがよく見えるのは王城周辺のみだ。
〈どこへ向かうのか〉
〈長城に添って、西に向かってもらうことはできますか?〉
〈いいだろう〉
今香子がいるのは空の上だが、それでも見上げる者がいないとは限らない。だから念の為心話で会話をした。
世界は暗くてよく見えはしない。それでも夜目が利くようにはなっているので建物の形などはよく見えた。
これも神の力かと思うと香子は若干切なくなる。
どうして四神の花嫁は平行世界のような異世界から招かれるのだろうか。ぼんやりそんなことを考えて首を振った。神の思惑など人間が理解できるようなことではないし、それを知ったところで香子が帰れるわけでもない。仮説とか、伝聞のような形で何故かは聞いたが、それは香子である必要もなかったのだ。
この世界の神々がそう決めて、香子の世界の神々がそれを認めたから。ただそれだけの話だ。
朱雀のスピードはとても速い。それほど時間もかけずに長城の上に着いた。
〈わぁ……〉
雪が積もっているのがわかる。そういえば長城がある場所は山の上だったことを香子は思い出した。声が出そうになるのをどうにか抑えた。
ところどころにある望楼からわずかに光が漏れているのが見える。あそこに兵士たちがいて、ここを突破されないように守っているのだろう。ここから更に遥か北に玄武の領地がある。今は四神が唐王朝と契約を結んでいるから、眷属たちがその更に北にある国を見張っているのだと香子は聞いた。
この国の北にあるのはオロス国だ。
香子は中秋節の際に姿を見たオロス国の王を思い出した。白い肌をして、全体的に色素が薄い美丈夫だったが、その目は猛禽のようだった。
(でも大丈夫)
香子が四神の花嫁である限り、隣国にはわずかな土地も譲らない覚悟がある。国内のことや、国家が転覆するようなことにならない限り四神はその国には関わらないが、外国が攻めてくる場合は別である。その際は天罰が落ちるだろう。
どんなことになるのかは、香子は怖くて聞いていない。でも民草が困るようなことにならなければいいなと思うのみである。権力を持っている者が決めたことには従わざるを得ないだろう。甘ちゃんと言われようが、みなに幸せになってほしいと香子は思うのだ。
〈西か。どこまで参ろうか〉
〈私が満足するまで飛んでくださいますか?〉
〈是非もない〉
朱雀は笑ったようだった。
長城が観光地であればよかったと香子は思う。そうしたら気軽に訪れて、雄大な景色を見ることができたのに。長城は大事な軍事施設だ。また遊牧民族や、北方の国が攻めてきた時の為の城壁である。それがどこまでも続いてるのを見るのは、それだけこの国が苦難の道を歩んできたのかを知るようで、香子は胸が苦しくなった。
〈香子、如何した?〉
〈ずっと平和が続いてほしいです。四神はそれを叶えてくれますか?〉
〈そなたが望むならば叶えよう〉
夜目がきかなければとても見られない景色を、香子は朱雀の背に乗りながら静かな気持ちで眺めた。
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