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第3部 周りと仲良くしろと言われました

134.世間はもう冬なのだそうです

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 その日の夜、しょうがないかなぁと香子は青龍も受け入れた。
 もう毎日がエロマンガ状態だが、そういうものなのだ。朱雀の熱を与えられればわけがわからなくなるのが救いと言えば救いだった。
 それに、青龍に抱かれた次の日はなんだか途中から記憶がぼやけている気がする。ずっと抱かれているのはわかるのだが、どういう風に抱かれているのかは思い出せない。ただものすごく気持ちよくて啼いていたのはわかっている。
 そして何よりも困るのは、青龍の相手をすると長いということだ。
 香子が目を覚ましたのは次の日の夕方だった。香子はすすり泣いた。

『おなか……すいたよう~……』

 悲しい。とても切ない。昨夜から昼近くまで半日以上も抱かれて気を失うように眠ったのだ。そして目覚めは空腹と共にやってくる。ひどい話だと香子は思った。

香子シャンズ

 朱雀が香子の口に何かを入れてくれた。飴のようだった。

『甘い、です……』
『これでしばし待て』
『ううう……』

 噛みたくなる飴である。ココナッツの味がして、香子はおいしいと思った。玄武と朱雀が香子に睡衣ねまきを着せ、玄武の長袍を肩からかけられて横抱きにされた。ちょうど居間から「料理をお持ちしました」と声がかかったので玄武はすぐに香子を運んでくれた。
 香子は、「いただきます」とだけ言うと前菜に手をつけた。相変わらずどれもこれもおいしかった。次から次へと料理が運ばれ、玄武と朱雀も優雅に食べながら皿を片付けていく。皮蛋があまりにもおいしくて、香子はいっぱい食べた。香子は卵料理が大好きなのである。
 菜包(野菜まん)を三個食べて、ようやく香子は一息ついた。

『おいしいです……』
『それはよかったな』

 これでもかと食べまくってから玄武に抱かれて部屋に戻ると、部屋には紅児がいた。いつもの侍女の恰好を見て、香子は嬉しくなった。とはいえもう夕方なので今日はもうすぐにさよならである。今夜も玄武と朱雀とは過ごすことになる。

『エリーザ、また仕えてくれるのは嬉しいけど……無理はしないようにしてね?』
『お心遣い、ありがとうございます』

 紅児はにっこりと笑んだ。


 四神宮の中はいつでも快適な温度で保たれている。これは四神がいるからだ。
 だが四神宮を一歩でも出れば途端に冬のそれに変わる。四神宮の外に詰めている趙文英は寒くないだろうかと香子は心配になった。
 白虎と過ごしている日、香子は白雲に趙のことを尋ねた。

『……寒い、のでしょうな。我ら四神の眷属は気候に影響を受けないのでよくわかりませぬが』

 そういえばそうだった、と香子は肩を落とした。四神も四神の眷属も、側にいれば快適な温度になるという特性があるせいか、イマイチ寒い暑いなどがわかっていないのである。自分の周りの温度を快適に保つなどどんなチートだと香子は思ってしまう。

ジャオは暖石を持っているのかしら』
『所持はしているでしょう』
『暖石の効果ってどうなのかしらね? 大きければ大きいほど範囲が広がったりするのかしら』
『そうだと聞いたことはあります』
『いつも謁見の間の裏の小部屋にいるのでしょう? 大きい暖石を経費で買うこととかできないのかしら?』
『聞いてみましよう』

 ずっと使うものだから経費でもいいのではないかと香子は思ったのだ。だが経費で買えるものは必要最低限の大きさのものだけと聞き、香子は不満だった。

『私の贈物を売ったお金の一部を経費として……』

 と言ったらとんでもないと趙に怒られた。もちろんそれは白雲を介してのやりとりである。趙が北京の冬の寒さに凍えるよりはいいではないか。とにかく香子は趙のおかげで快適に暮らせているのだし、と思ったけど、それならば寄付に回してくださいと言われてしまった。
 確かに王都の孤児院や救貧院のようなところはいくらお金があっても足りないのが現状だ。国としてもお金は出しているが、寄付もあれば子どもたちがそれだけ助かるのである。

『……別に慈善事業のつもりはなかったんだけどなぁ……』

 倉庫の肥やしにするぐらいならばお金に換えて貧しい人たちなどに使ってもらえたらとは思っていたのだが、そのお金を四神宮の者たちに使えないのはどうかと香子は思う。

『いっそのこと、何か内職でもしてお金を稼いだ方がいいのかしら?』

 そう呟いたら白虎が楽しそうに笑った。

『そなたが働くのか?』
『その方が好きに使えるかと思いまして。って言っても何ができるのかもさっぱりわからないんですけど』

 自分にできることはなんだろう? と香子は首を傾げた。

『香子、大事なことを忘れてはおらぬか?』

 白虎に言われて首を傾げた。

『そなたは四神の花嫁ぞ。我らに頼めばいい』
『ええ? でも趙に大きい暖石を支給したいって話なんですよ? 四神に頼んじゃいけないでしょう』
『それぐらいかまわぬだろう。実際趙には苦労をかけているようだしな』
『まぁ、確かに……苦労はとってもかけていると思います』

 香子はこれまでのことを思い出した。本当に、趙には迷惑をかけっぱなしである。

『だから香子、もう趙のことは話すな』
(あ、これ嫉妬だったわ)

 香子は早めに話を切り上げなかったことを後悔したが、それはもう後の祭りだった。
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