437 / 597
第3部 周りと仲良くしろと言われました
134.世間はもう冬なのだそうです
しおりを挟む
その日の夜、しょうがないかなぁと香子は青龍も受け入れた。
もう毎日がエロマンガ状態だが、そういうものなのだ。朱雀の熱を与えられればわけがわからなくなるのが救いと言えば救いだった。
それに、青龍に抱かれた次の日はなんだか途中から記憶がぼやけている気がする。ずっと抱かれているのはわかるのだが、どういう風に抱かれているのかは思い出せない。ただものすごく気持ちよくて啼いていたのはわかっている。
そして何よりも困るのは、青龍の相手をすると長いということだ。
香子が目を覚ましたのは次の日の夕方だった。香子はすすり泣いた。
『おなか……すいたよう~……』
悲しい。とても切ない。昨夜から昼近くまで半日以上も抱かれて気を失うように眠ったのだ。そして目覚めは空腹と共にやってくる。ひどい話だと香子は思った。
『香子』
朱雀が香子の口に何かを入れてくれた。飴のようだった。
『甘い、です……』
『これでしばし待て』
『ううう……』
噛みたくなる飴である。ココナッツの味がして、香子はおいしいと思った。玄武と朱雀が香子に睡衣を着せ、玄武の長袍を肩からかけられて横抱きにされた。ちょうど居間から「料理をお持ちしました」と声がかかったので玄武はすぐに香子を運んでくれた。
香子は、「いただきます」とだけ言うと前菜に手をつけた。相変わらずどれもこれもおいしかった。次から次へと料理が運ばれ、玄武と朱雀も優雅に食べながら皿を片付けていく。皮蛋があまりにもおいしくて、香子はいっぱい食べた。香子は卵料理が大好きなのである。
菜包(野菜まん)を三個食べて、ようやく香子は一息ついた。
『おいしいです……』
『それはよかったな』
これでもかと食べまくってから玄武に抱かれて部屋に戻ると、部屋には紅児がいた。いつもの侍女の恰好を見て、香子は嬉しくなった。とはいえもう夕方なので今日はもうすぐにさよならである。今夜も玄武と朱雀とは過ごすことになる。
『エリーザ、また仕えてくれるのは嬉しいけど……無理はしないようにしてね?』
『お心遣い、ありがとうございます』
紅児はにっこりと笑んだ。
四神宮の中はいつでも快適な温度で保たれている。これは四神がいるからだ。
だが四神宮を一歩でも出れば途端に冬のそれに変わる。四神宮の外に詰めている趙文英は寒くないだろうかと香子は心配になった。
白虎と過ごしている日、香子は白雲に趙のことを尋ねた。
『……寒い、のでしょうな。我ら四神の眷属は気候に影響を受けないのでよくわかりませぬが』
そういえばそうだった、と香子は肩を落とした。四神も四神の眷属も、側にいれば快適な温度になるという特性があるせいか、イマイチ寒い暑いなどがわかっていないのである。自分の周りの温度を快適に保つなどどんなチートだと香子は思ってしまう。
『趙は暖石を持っているのかしら』
『所持はしているでしょう』
『暖石の効果ってどうなのかしらね? 大きければ大きいほど範囲が広がったりするのかしら』
『そうだと聞いたことはあります』
『いつも謁見の間の裏の小部屋にいるのでしょう? 大きい暖石を経費で買うこととかできないのかしら?』
『聞いてみましよう』
ずっと使うものだから経費でもいいのではないかと香子は思ったのだ。だが経費で買えるものは必要最低限の大きさのものだけと聞き、香子は不満だった。
『私の贈物を売ったお金の一部を経費として……』
と言ったらとんでもないと趙に怒られた。もちろんそれは白雲を介してのやりとりである。趙が北京の冬の寒さに凍えるよりはいいではないか。とにかく香子は趙のおかげで快適に暮らせているのだし、と思ったけど、それならば寄付に回してくださいと言われてしまった。
確かに王都の孤児院や救貧院のようなところはいくらお金があっても足りないのが現状だ。国としてもお金は出しているが、寄付もあれば子どもたちがそれだけ助かるのである。
『……別に慈善事業のつもりはなかったんだけどなぁ……』
倉庫の肥やしにするぐらいならばお金に換えて貧しい人たちなどに使ってもらえたらとは思っていたのだが、そのお金を四神宮の者たちに使えないのはどうかと香子は思う。
『いっそのこと、何か内職でもしてお金を稼いだ方がいいのかしら?』
そう呟いたら白虎が楽しそうに笑った。
『そなたが働くのか?』
『その方が好きに使えるかと思いまして。って言っても何ができるのかもさっぱりわからないんですけど』
自分にできることはなんだろう? と香子は首を傾げた。
『香子、大事なことを忘れてはおらぬか?』
白虎に言われて首を傾げた。
『そなたは四神の花嫁ぞ。我らに頼めばいい』
『ええ? でも趙に大きい暖石を支給したいって話なんですよ? 四神に頼んじゃいけないでしょう』
『それぐらいかまわぬだろう。実際趙には苦労をかけているようだしな』
『まぁ、確かに……苦労はとってもかけていると思います』
香子はこれまでのことを思い出した。本当に、趙には迷惑をかけっぱなしである。
『だから香子、もう趙のことは話すな』
(あ、これ嫉妬だったわ)
香子は早めに話を切り上げなかったことを後悔したが、それはもう後の祭りだった。
もう毎日がエロマンガ状態だが、そういうものなのだ。朱雀の熱を与えられればわけがわからなくなるのが救いと言えば救いだった。
それに、青龍に抱かれた次の日はなんだか途中から記憶がぼやけている気がする。ずっと抱かれているのはわかるのだが、どういう風に抱かれているのかは思い出せない。ただものすごく気持ちよくて啼いていたのはわかっている。
そして何よりも困るのは、青龍の相手をすると長いということだ。
香子が目を覚ましたのは次の日の夕方だった。香子はすすり泣いた。
『おなか……すいたよう~……』
悲しい。とても切ない。昨夜から昼近くまで半日以上も抱かれて気を失うように眠ったのだ。そして目覚めは空腹と共にやってくる。ひどい話だと香子は思った。
『香子』
朱雀が香子の口に何かを入れてくれた。飴のようだった。
『甘い、です……』
『これでしばし待て』
『ううう……』
噛みたくなる飴である。ココナッツの味がして、香子はおいしいと思った。玄武と朱雀が香子に睡衣を着せ、玄武の長袍を肩からかけられて横抱きにされた。ちょうど居間から「料理をお持ちしました」と声がかかったので玄武はすぐに香子を運んでくれた。
香子は、「いただきます」とだけ言うと前菜に手をつけた。相変わらずどれもこれもおいしかった。次から次へと料理が運ばれ、玄武と朱雀も優雅に食べながら皿を片付けていく。皮蛋があまりにもおいしくて、香子はいっぱい食べた。香子は卵料理が大好きなのである。
菜包(野菜まん)を三個食べて、ようやく香子は一息ついた。
『おいしいです……』
『それはよかったな』
これでもかと食べまくってから玄武に抱かれて部屋に戻ると、部屋には紅児がいた。いつもの侍女の恰好を見て、香子は嬉しくなった。とはいえもう夕方なので今日はもうすぐにさよならである。今夜も玄武と朱雀とは過ごすことになる。
『エリーザ、また仕えてくれるのは嬉しいけど……無理はしないようにしてね?』
『お心遣い、ありがとうございます』
紅児はにっこりと笑んだ。
四神宮の中はいつでも快適な温度で保たれている。これは四神がいるからだ。
だが四神宮を一歩でも出れば途端に冬のそれに変わる。四神宮の外に詰めている趙文英は寒くないだろうかと香子は心配になった。
白虎と過ごしている日、香子は白雲に趙のことを尋ねた。
『……寒い、のでしょうな。我ら四神の眷属は気候に影響を受けないのでよくわかりませぬが』
そういえばそうだった、と香子は肩を落とした。四神も四神の眷属も、側にいれば快適な温度になるという特性があるせいか、イマイチ寒い暑いなどがわかっていないのである。自分の周りの温度を快適に保つなどどんなチートだと香子は思ってしまう。
『趙は暖石を持っているのかしら』
『所持はしているでしょう』
『暖石の効果ってどうなのかしらね? 大きければ大きいほど範囲が広がったりするのかしら』
『そうだと聞いたことはあります』
『いつも謁見の間の裏の小部屋にいるのでしょう? 大きい暖石を経費で買うこととかできないのかしら?』
『聞いてみましよう』
ずっと使うものだから経費でもいいのではないかと香子は思ったのだ。だが経費で買えるものは必要最低限の大きさのものだけと聞き、香子は不満だった。
『私の贈物を売ったお金の一部を経費として……』
と言ったらとんでもないと趙に怒られた。もちろんそれは白雲を介してのやりとりである。趙が北京の冬の寒さに凍えるよりはいいではないか。とにかく香子は趙のおかげで快適に暮らせているのだし、と思ったけど、それならば寄付に回してくださいと言われてしまった。
確かに王都の孤児院や救貧院のようなところはいくらお金があっても足りないのが現状だ。国としてもお金は出しているが、寄付もあれば子どもたちがそれだけ助かるのである。
『……別に慈善事業のつもりはなかったんだけどなぁ……』
倉庫の肥やしにするぐらいならばお金に換えて貧しい人たちなどに使ってもらえたらとは思っていたのだが、そのお金を四神宮の者たちに使えないのはどうかと香子は思う。
『いっそのこと、何か内職でもしてお金を稼いだ方がいいのかしら?』
そう呟いたら白虎が楽しそうに笑った。
『そなたが働くのか?』
『その方が好きに使えるかと思いまして。って言っても何ができるのかもさっぱりわからないんですけど』
自分にできることはなんだろう? と香子は首を傾げた。
『香子、大事なことを忘れてはおらぬか?』
白虎に言われて首を傾げた。
『そなたは四神の花嫁ぞ。我らに頼めばいい』
『ええ? でも趙に大きい暖石を支給したいって話なんですよ? 四神に頼んじゃいけないでしょう』
『それぐらいかまわぬだろう。実際趙には苦労をかけているようだしな』
『まぁ、確かに……苦労はとってもかけていると思います』
香子はこれまでのことを思い出した。本当に、趙には迷惑をかけっぱなしである。
『だから香子、もう趙のことは話すな』
(あ、これ嫉妬だったわ)
香子は早めに話を切り上げなかったことを後悔したが、それはもう後の祭りだった。
12
お気に入りに追加
4,015
あなたにおすすめの小説
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
明智さんちの旦那さんたちR
明智 颯茄
恋愛
あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。
奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。
ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。
*BL描写あり
毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?
女性が全く生まれない世界とか嘘ですよね?
青海 兎稀
恋愛
ただの一般人である主人公・ユヅキは、知らぬうちに全く知らない街の中にいた。ここがどこだかも分からず、ただ当てもなく歩いていた時、誰かにぶつかってしまい、そのまま意識を失う。
そして、意識を取り戻し、助けてくれたイケメンにこの世界には全く女性がいないことを知らされる。
そんなユヅキの逆ハーレムのお話。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました
市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。
私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?!
しかも婚約者達との関係も最悪で……
まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる