425 / 597
第3部 周りと仲良くしろと言われました
122.寂しいのは間違いありませんがそういうことではないのです
しおりを挟む
紅児たちとの会話の詳細については、「貴方色に染まる」103話を参照してください。
ーーーーー
だんだん辺りが暗くなってきた。
御花園はこんな時間でも美しい。香子は奇岩をぼーっと見るのが好きで、こういう石は四神の領地にもあるのだろうかとぼんやり思った。しかし先ほどの朱雀の言もある。下手なことは言わない方がいいだろうとも香子は思った。
知らないことが多すぎるのに、何気なく聞いたことが逆鱗に触れるとか、床に連れ込まれる原因になるなんていうのは勘弁してほしいと香子は思う。それでは何も聞けないし、知ることもできないではないか。
本格的に暗くなる前に四神宮に戻った。
香子は以前と違って夜目がきくようにはなったが、やはり明るい状態で見るのが一番である。
まだ夕飯前だ。
紅児が叔父と会い、それほど問題がなければ香子に報告に来るに違いない。
『朱雀様、紅夏には私は朱雀様の室にいるとお伝えください』
『我はそなたと過ごす時間が増えて嬉しいが……それでよいのか?』
『紅夏は確かに朱雀様から離れましたけど、紅夏の主神は朱雀様でしょう? 報告に来るとしたら朱雀様にではないのですか』
『そうだろうな』
この四神と眷属の関係というのも不思議ではある。
紅夏は朱雀が先代の花嫁を抱いたことで生まれた眷属だ。だから朱雀が親と言っても差支えはないのだが、基本四神は子育てに従事しないので種を撒いただけにすぎない。だが四神の眷属であることに変わりはないので、紅夏は朱雀に従う。従わなくなるのは”つがい”を見つけてからだ。
”つがい”を見つけた眷属は”つがい”の為だけに生きるようになる。
だから、紅夏が紅児を裏切ることは絶対にないし、命をかけて紅児を守るだろう。
香子はお茶を淹れて飲んだ。ほっとする。
まだまだ紅児のことで頭がいっぱいなのだが、四神は嫉妬を抑えながらそれを許している。
そうしているうちに紅児が戻ってきたようだった。趙文英から白雲に連絡がいったようで、白虎から朱雀に伝わってきた。この伝言ゲーム的なのはどうにかならないものだろうかと香子は毎回考えてしまう。考えてもしかたないことなのだけど。
紅児たちが自分で来るまではほっておくことにする。混乱している頭では報告もうまくできないだろうから。
そうしてやっと紅児が来たのは夕飯の後だった。
『遅くなりまして、申し訳ありません』
紅夏が悪びれもせず言う。香子は苦笑した。
らしいといえばらしい。
詰ってもしかたないので今後の予定を聞いた。予定通り、船が出る前日に港へ移動して”試し”を行い、それで問題なければ翌朝この国を出国するようだ。
『寂しくなるけど、仕方ないわね……』
香子は儚い笑みを浮かべた。それに紅夏がとんでもないことを言う。
『花嫁様が我が主に嫁がれれば近いうちにまたお会いできましょう』
いずれ二人がこの国に戻ってくることは間違いないだろうが、結婚というのはそういうものではないと香子は抗弁した。まだ言質を取られるわけにはいかないのである。
この国を離れる前に紅児の養父母の元へ会いに行くらしい。眷属のスピードならばそれも可能だろうと香子は頷いた。
最後に、紅夏が朱雀の室を出る際また余計なことを言った。
『朱雀様、我はエリーザが愛しくてならないのです。……おわかりですね?』
そう紅夏は言うと、紅児を連れ扉を閉めた。
アイツはいったいなんということを言うのだ。香子の顔がカーッと一気に赤くなった。
『~~~~~っっ!! 紅夏ーーーーっっ!!』
それはまるで負け犬の遠吠えのようだと香子も思ったが、叫ばずにはいられなかった。
朱雀の腕からは逃れられない。香子はすぐに身体の力を抜いた。
『……よいのか?』
『夕飯は、いただきましたし……』
『そういうことではない。我とだけでいいのかと聞いている』
色を含んだテナーが耳を犯す。香子は背筋がぞくぞくするのを感じた。
『できれば……玄武様も一緒の方がいいです、けど』
『それは残念だな。だが、今宵は一度では終わらぬぞ?』
『……いじわるしないでください……』
床での朱雀はいじわるだから、せめて香子はそう願った。
『……善処しよう』
それ絶対聞いてくれる気ない! と香子は思ったが、そういうことで四神に逆らえるはずはない。玄武も呼ばれたことで、共に入浴もすることになり、香子は二神に散々可愛がられてしまったのだった。
そんなわけで翌朝起きるのは遅くなった。紅夏許すまじである。
紅児は秦皇島の村へ夜中のうちに向かったはずである。今日中に戻ってはくるだろうが遅い時間になるだろう。
『香子……』
朱雀のテナーがとても甘い。香子の身体は動かなかった。
『おなかすきました……』
『……そうだな。食べさせねばならぬな』
香子はほっとした。朝からまた抱かれるようなことになれば、今日も一日中抱かれ続けることになりそうだったから。
朝食を食べた後は部屋に戻ると香子は伝えた。
『離れがたいのだが?』
『……そんなに紅夏の言うことに左右されなくてもいいでしょう……』
朱雀だけでなく玄武もくっついてきて困ってしまう。部屋に戻ることは許されたが、それは部屋の寝室だった。場所を変えただけじゃないかと香子は怒ったが、二神は香子にくっついたまま離れてくれない。
香子が、紅児がいなくなるのはとても寂しいと思っているから寄り添ってくれるのかもしれない。そう思ったら二神をとても愛しく思えた。
再び甘い空気が漂い始めた頃、朱雀の眷属がやってきたという連絡があった。
朱雀は舌打ちした。
そんな朱雀を見て、香子は目を丸くした。
ーーーーー
「貴方色に染まる」は103~108話辺りです。
ーーーーー
だんだん辺りが暗くなってきた。
御花園はこんな時間でも美しい。香子は奇岩をぼーっと見るのが好きで、こういう石は四神の領地にもあるのだろうかとぼんやり思った。しかし先ほどの朱雀の言もある。下手なことは言わない方がいいだろうとも香子は思った。
知らないことが多すぎるのに、何気なく聞いたことが逆鱗に触れるとか、床に連れ込まれる原因になるなんていうのは勘弁してほしいと香子は思う。それでは何も聞けないし、知ることもできないではないか。
本格的に暗くなる前に四神宮に戻った。
香子は以前と違って夜目がきくようにはなったが、やはり明るい状態で見るのが一番である。
まだ夕飯前だ。
紅児が叔父と会い、それほど問題がなければ香子に報告に来るに違いない。
『朱雀様、紅夏には私は朱雀様の室にいるとお伝えください』
『我はそなたと過ごす時間が増えて嬉しいが……それでよいのか?』
『紅夏は確かに朱雀様から離れましたけど、紅夏の主神は朱雀様でしょう? 報告に来るとしたら朱雀様にではないのですか』
『そうだろうな』
この四神と眷属の関係というのも不思議ではある。
紅夏は朱雀が先代の花嫁を抱いたことで生まれた眷属だ。だから朱雀が親と言っても差支えはないのだが、基本四神は子育てに従事しないので種を撒いただけにすぎない。だが四神の眷属であることに変わりはないので、紅夏は朱雀に従う。従わなくなるのは”つがい”を見つけてからだ。
”つがい”を見つけた眷属は”つがい”の為だけに生きるようになる。
だから、紅夏が紅児を裏切ることは絶対にないし、命をかけて紅児を守るだろう。
香子はお茶を淹れて飲んだ。ほっとする。
まだまだ紅児のことで頭がいっぱいなのだが、四神は嫉妬を抑えながらそれを許している。
そうしているうちに紅児が戻ってきたようだった。趙文英から白雲に連絡がいったようで、白虎から朱雀に伝わってきた。この伝言ゲーム的なのはどうにかならないものだろうかと香子は毎回考えてしまう。考えてもしかたないことなのだけど。
紅児たちが自分で来るまではほっておくことにする。混乱している頭では報告もうまくできないだろうから。
そうしてやっと紅児が来たのは夕飯の後だった。
『遅くなりまして、申し訳ありません』
紅夏が悪びれもせず言う。香子は苦笑した。
らしいといえばらしい。
詰ってもしかたないので今後の予定を聞いた。予定通り、船が出る前日に港へ移動して”試し”を行い、それで問題なければ翌朝この国を出国するようだ。
『寂しくなるけど、仕方ないわね……』
香子は儚い笑みを浮かべた。それに紅夏がとんでもないことを言う。
『花嫁様が我が主に嫁がれれば近いうちにまたお会いできましょう』
いずれ二人がこの国に戻ってくることは間違いないだろうが、結婚というのはそういうものではないと香子は抗弁した。まだ言質を取られるわけにはいかないのである。
この国を離れる前に紅児の養父母の元へ会いに行くらしい。眷属のスピードならばそれも可能だろうと香子は頷いた。
最後に、紅夏が朱雀の室を出る際また余計なことを言った。
『朱雀様、我はエリーザが愛しくてならないのです。……おわかりですね?』
そう紅夏は言うと、紅児を連れ扉を閉めた。
アイツはいったいなんということを言うのだ。香子の顔がカーッと一気に赤くなった。
『~~~~~っっ!! 紅夏ーーーーっっ!!』
それはまるで負け犬の遠吠えのようだと香子も思ったが、叫ばずにはいられなかった。
朱雀の腕からは逃れられない。香子はすぐに身体の力を抜いた。
『……よいのか?』
『夕飯は、いただきましたし……』
『そういうことではない。我とだけでいいのかと聞いている』
色を含んだテナーが耳を犯す。香子は背筋がぞくぞくするのを感じた。
『できれば……玄武様も一緒の方がいいです、けど』
『それは残念だな。だが、今宵は一度では終わらぬぞ?』
『……いじわるしないでください……』
床での朱雀はいじわるだから、せめて香子はそう願った。
『……善処しよう』
それ絶対聞いてくれる気ない! と香子は思ったが、そういうことで四神に逆らえるはずはない。玄武も呼ばれたことで、共に入浴もすることになり、香子は二神に散々可愛がられてしまったのだった。
そんなわけで翌朝起きるのは遅くなった。紅夏許すまじである。
紅児は秦皇島の村へ夜中のうちに向かったはずである。今日中に戻ってはくるだろうが遅い時間になるだろう。
『香子……』
朱雀のテナーがとても甘い。香子の身体は動かなかった。
『おなかすきました……』
『……そうだな。食べさせねばならぬな』
香子はほっとした。朝からまた抱かれるようなことになれば、今日も一日中抱かれ続けることになりそうだったから。
朝食を食べた後は部屋に戻ると香子は伝えた。
『離れがたいのだが?』
『……そんなに紅夏の言うことに左右されなくてもいいでしょう……』
朱雀だけでなく玄武もくっついてきて困ってしまう。部屋に戻ることは許されたが、それは部屋の寝室だった。場所を変えただけじゃないかと香子は怒ったが、二神は香子にくっついたまま離れてくれない。
香子が、紅児がいなくなるのはとても寂しいと思っているから寄り添ってくれるのかもしれない。そう思ったら二神をとても愛しく思えた。
再び甘い空気が漂い始めた頃、朱雀の眷属がやってきたという連絡があった。
朱雀は舌打ちした。
そんな朱雀を見て、香子は目を丸くした。
ーーーーー
「貴方色に染まる」は103~108話辺りです。
22
お気に入りに追加
4,015
あなたにおすすめの小説
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
明智さんちの旦那さんたちR
明智 颯茄
恋愛
あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。
奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。
ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。
*BL描写あり
毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。
転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
女性が全く生まれない世界とか嘘ですよね?
青海 兎稀
恋愛
ただの一般人である主人公・ユヅキは、知らぬうちに全く知らない街の中にいた。ここがどこだかも分からず、ただ当てもなく歩いていた時、誰かにぶつかってしまい、そのまま意識を失う。
そして、意識を取り戻し、助けてくれたイケメンにこの世界には全く女性がいないことを知らされる。
そんなユヅキの逆ハーレムのお話。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
目が覚めたら男女比がおかしくなっていた
いつき
恋愛
主人公である宮坂葵は、ある日階段から落ちて暫く昏睡状態になってしまう。
一週間後、葵が目を覚ますとそこは男女比が約50:1の世界に!?自分の父も何故かイケメンになっていて、不安の中高校へ進学するも、わがままな女性だらけのこの世界では葵のような優しい女性は珍しく、沢山のイケメン達から迫られる事に!?
「私はただ普通の高校生活を送りたいんです!!」
#####
r15は保険です。
2024年12月12日
私生活に余裕が出たため、投稿再開します。
それにあたって一部を再編集します。
設定や話の流れに変更はありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる