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第3部 周りと仲良くしろと言われました

122.寂しいのは間違いありませんがそういうことではないのです

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紅児たちとの会話の詳細については、「貴方色に染まる」103話を参照してください。
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 だんだん辺りが暗くなってきた。
 御花園はこんな時間でも美しい。香子は奇岩をぼーっと見るのが好きで、こういう石は四神の領地にもあるのだろうかとぼんやり思った。しかし先ほどの朱雀の言もある。下手なことは言わない方がいいだろうとも香子は思った。
 知らないことが多すぎるのに、何気なく聞いたことが逆鱗に触れるとか、ベッドに連れ込まれる原因になるなんていうのは勘弁してほしいと香子は思う。それでは何も聞けないし、知ることもできないではないか。
 本格的に暗くなる前に四神宮に戻った。
 香子は以前と違って夜目がきくようにはなったが、やはり明るい状態で見るのが一番である。
 まだ夕飯前だ。
 紅児が叔父と会い、それほど問題がなければ香子に報告に来るに違いない。

『朱雀様、紅夏には私は朱雀様の室にいるとお伝えください』
『我はそなたと過ごす時間が増えて嬉しいが……それでよいのか?』
『紅夏は確かに朱雀様から離れましたけど、紅夏の主神は朱雀様でしょう? 報告に来るとしたら朱雀様にではないのですか』
『そうだろうな』

 この四神と眷属の関係というのも不思議ではある。
 紅夏は朱雀が先代の花嫁を抱いたことで生まれた眷属だ。だから朱雀が親と言っても差支えはないのだが、基本四神は子育てに従事しないので種を撒いただけにすぎない。だが四神の眷属であることに変わりはないので、紅夏は朱雀に従う。従わなくなるのは”つがい”を見つけてからだ。
”つがい”を見つけた眷属は”つがい”の為だけに生きるようになる。
 だから、紅夏が紅児を裏切ることは絶対にないし、命をかけて紅児を守るだろう。
 香子はお茶を淹れて飲んだ。ほっとする。
 まだまだ紅児のことで頭がいっぱいなのだが、四神は嫉妬を抑えながらそれを許している。
 そうしているうちに紅児が戻ってきたようだった。趙文英から白雲に連絡がいったようで、白虎から朱雀に伝わってきた。この伝言ゲーム的なのはどうにかならないものだろうかと香子は毎回考えてしまう。考えてもしかたないことなのだけど。
 紅児たちが自分で来るまではほっておくことにする。混乱している頭では報告もうまくできないだろうから。
 そうしてやっと紅児が来たのは夕飯の後だった。

『遅くなりまして、申し訳ありません』

 紅夏が悪びれもせず言う。香子は苦笑した。
 らしいといえばらしい。
 詰ってもしかたないので今後の予定を聞いた。予定通り、船が出る前日に港へ移動して”試し”を行い、それで問題なければ翌朝この国を出国するようだ。

『寂しくなるけど、仕方ないわね……』

 香子は儚い笑みを浮かべた。それに紅夏がとんでもないことを言う。

『花嫁様が我が主に嫁がれれば近いうちにまたお会いできましょう』

 いずれ二人がこの国に戻ってくることは間違いないだろうが、結婚というのはそういうものではないと香子は抗弁した。まだ言質を取られるわけにはいかないのである。
 この国を離れる前に紅児の養父母の元へ会いに行くらしい。眷属のスピードならばそれも可能だろうと香子は頷いた。
 最後に、紅夏が朱雀の室を出る際また余計なことを言った。

『朱雀様、我はエリーザが愛しくてならないのです。……おわかりですね?』

 そう紅夏は言うと、紅児を連れ扉を閉めた。
 アイツはいったいなんということを言うのだ。香子の顔がカーッと一気に赤くなった。

『~~~~~っっ!! 紅夏ーーーーっっ!!』

 それはまるで負け犬の遠吠えのようだと香子も思ったが、叫ばずにはいられなかった。
 朱雀の腕からは逃れられない。香子はすぐに身体の力を抜いた。

『……よいのか?』
『夕飯は、いただきましたし……』
『そういうことではない。我とだけでいいのかと聞いている』

 色を含んだテナーが耳を犯す。香子は背筋がぞくぞくするのを感じた。

『できれば……玄武様も一緒の方がいいです、けど』
『それは残念だな。だが、今宵は一度では終わらぬぞ?』
『……いじわるしないでください……』

 床での朱雀はいじわるだから、せめて香子はそう願った。

『……善処しよう』

 それ絶対聞いてくれる気ない! と香子は思ったが、そういうことで四神に逆らえるはずはない。玄武も呼ばれたことで、共に入浴もすることになり、香子は二神に散々可愛がられてしまったのだった。


 そんなわけで翌朝起きるのは遅くなった。紅夏許すまじである。
 紅児は秦皇島の村へ夜中のうちに向かったはずである。今日中に戻ってはくるだろうが遅い時間になるだろう。

香子シャンズ……』

 朱雀のテナーがとても甘い。香子の身体は動かなかった。

『おなかすきました……』
『……そうだな。食べさせねばならぬな』

 香子はほっとした。朝からまた抱かれるようなことになれば、今日も一日中抱かれ続けることになりそうだったから。
 朝食を食べた後は部屋に戻ると香子は伝えた。

『離れがたいのだが?』
『……そんなに紅夏の言うことに左右されなくてもいいでしょう……』

 朱雀だけでなく玄武もくっついてきて困ってしまう。部屋に戻ることは許されたが、それは部屋の寝室だった。場所を変えただけじゃないかと香子は怒ったが、二神は香子にくっついたまま離れてくれない。
 香子が、紅児がいなくなるのはとても寂しいと思っているから寄り添ってくれるのかもしれない。そう思ったら二神をとても愛しく思えた。
 再び甘い空気が漂い始めた頃、朱雀の眷属がやってきたという連絡があった。
 朱雀は舌打ちした。
 そんな朱雀を見て、香子は目を丸くした。



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「貴方色に染まる」は103~108話辺りです。
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