異世界で四神と結婚しろと言われました

浅葱

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第3部 周りと仲良くしろと言われました

121.ちょっとストレスが溜まってきているようです

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紅児たちとの会話の詳細については、「貴方色に染まる」101,102話を参照してください。
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 紅児の叔父からすぐにでも紅児に会いたいと連絡が届いたのは昼前のことだった。
 それほど日数もないから紅児の叔父が焦っていることは間違いない。夕方前には紅児とその叔父を会わせられるよう、香子は申し付けた。準備が整ったと再度連絡を受けてから紅児たちを呼んだ。
 香子は今日も朱雀の室に詰めている。昼食後なので、時間はそれほどなかった。
 呼ばれてやってきた紅児と紅夏の様子を見て、香子は「あー」と思った。紅児が輝いているように見えるし、明らかに髪の色も変わってきている。身体を重ねろとは言ったが、こんなに睦み合っていたさまを見せつけられると、リア充爆発しろと香子も言いたくなった。完全にお前が言うなとツッコまれることも、当然香子はわかっている。
 二人に、夕方前には再び紅児の叔父が来ることを伝えると、紅児の表情が目に見えて固くなった。眉間に皺が寄っていることを指摘すると、紅児ははっとしたような顔をした。
 叔父が母親と共になったと聞かされたばかりである。時間がないとはいえ、こんなに早く顔を合わせるのは酷といえた。

『エリーザ、叔父さんに会う前に私とお話する? 男共は追い出して』

 笑顔で香子が言えば、紅児は困ったような顔をした。結果的に朱雀も紅夏も追い出し、香子はまた紅児と二人きりになっていろいろな話をした。
 髪の色のこと。
 紅児の叔父のこと。紅児の叔父がどう言おうと紅夏と離れることはできない。
 香子はできるだけ紅児に寄り添うような形で言葉を尽くした。
 紅夏と結婚した。船に乗れるかどうか試す。もし乗れなかったら諦める。乗れないとしたら、その理由は話さなければならないだろうが説明は紅夏に投げればいい。
 それでも紅児は申し訳なさそうな顔をした。
 でも紅児はまだ14歳なのだ。香子が14歳の時、こんなに我慢強くなかったし責任感なんてものはなかった。紅児はすごい娘だ。
 だから香子は言い聞かせた。紅児は紅夏と結婚したとはいえ、まだこの国ですら成人していないのだ。
 対する紅夏はもう数百年は生きている。甘えるぐらいで、何もかもやらせるぐらいでちょうどいいのだ。

『はい、ありがとうございます……!』

 やっと紅児の顔が明るくなった。
 叔父に会うのはまだ不安だろうが、説明なども紅夏にさせればどうにかなるだろうと香子は思った。
 そうしてまた前回のような化粧を施され、香子は紅児を連れて王城内の謁見の間へ向かった。
 最初こそ香子は同席したが、紅児が紅夏の妻になったこと。それによって香子の手は紅児から離れたことを白雲に伝えさせた。
 紅児の叔父は目を剥いて絶句した。
 朱雀に抱かれ、香子は退室した。その後ろから「いったいどういうことなんだ!?」という紅児の叔父の叫びが届いたが、香子は振り向かなかった。あとは紅児たちの問題である。

『これから御花園って行くことはできるのかしら?』

 待っていた王英明に聞くと、王は難しい顔をした。

『……聞いて参ります』
『よろしくね』

 わがままを言っていることはわかったが、ここ連日紅児の件で振り回されていて香子も疲れていたのだ。もちろん紅児が悪いわけではない。香子が一人で考えすぎているだけである。

『我は戻りたいのだが』
『私は庭園が見たいです。私を愛でたいのでしたら夜にお願いします』
『そなたも言うようになったな』
『毎晩じゃないですか』
『我は昼夜問わずそなたを愛でたいが』
『まだ遠慮してください』

 朱雀が楽しそうにそんなことを言う。これが冗談ではなく本気なのだから質が悪い。ひとたび香子が許可を出せば、寝室から出してもらえないことは必定だろう。だから香子もできるだけ言質を取られないようにしている。
 謁見の間から少し離れたところで朱雀に抱かれたまましばらく待っていると、王が小走りで戻ってきた。その動きはとても洗練されていて、イケメンは何をやってもイケメンなのかと香子は内心悪態をついた。

『お待たせして申し訳ありません。二刻(一時間)ほどになりますがよろしいでしょうか』

 白雲が香子を窺う。香子は頷いた。

『王殿、大儀であった』

 白雲がそう声をかけると、王はほっとしたようだった。
 そのまま御花園に向かう。すでに辺りは暗くなり始めている。回廊に吊るされたランタンの中にあるのだろう光石グワンシーが柔らかい光を発し始めていた。

『暗くなってからの御花園も見事ですねぇ』

 香子はほう、とため息を吐いた。ここも自由に見回れればいいのにと思ってしまう。

『朱雀様、領地にはこういう庭園はございますか?』

 朱雀はほんの少しだけ考えるような顔をした。

『……おそらくはあるだろう』

 朱雀自身は全く興味がないようである。香子は苦笑した。

『例えばなのですが、私がもし他の神に嫁いだとして、その後に朱雀様の領地を訪れるなんてことは可能なのでしょうか?』

 白雲と黒月がバッと香子を見た。香子は冷汗を掻いた。またなにかやらかしてしまったのだろうか。

『ふむ……それは我にも抱かれにくるという判断でいいのか?』
『……それ以外で訪れてはいけないんですか?』

 ヤることしかないのか、と香子は少しやさぐれた。しかし四神の花嫁なのだから、確かにそれがメインかもしれないとも思い、やっぱりなんだか嫌な気持ちになったのだった。


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「貴方色に染まる」は100~102話辺りです。
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