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第3部 周りと仲良くしろと言われました
119.幸せにしてほしいのです
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紅児たちとのやりとりの詳細は「貴方色に染まる」97話をどうぞ。
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翌日、香子は部屋に戻ってから紅児がいなくなったことを実感した。
もちろんまだ紅児は少なくとも四神宮の周りにいて、帰国の準備を進めているはずである。それでも部屋にいる侍女が一人だけしかいないというのは、なんとなく香子の心をささくれ立たせた。
(一昨日、紅夏がエリーザを抱かなかったことにはなんて忍耐力なのって思ったけど、自分公認でさせてしまうというのもキツイよねー……)
しょうがないとしか言えないのだが、それでも思うところはある。確かに六か月以内にと期限を区切ったのは香子だ。セレスト王国からできるだけ早めに返事をもらわなければ、香子は誰かに嫁いでしまう。嫁いだ後紅児に関わるのはたいへんだろうと香子は思ったのだ。もし香子がもう朱雀に嫁ぐと決めていたならばそれほど問題はないかもしれないが、香子はまだ最初に誰に嫁ぐかを決めかねている。気が多いといえばそれまでなのだが、こちらの世界に来るまでそんな状態になったことがないから難しい。
それに香子は四神のうちの誰かと一緒になった場合、何百年もその誰かと添い遂げることになる。そう簡単に決められることではなかった。
香子は今日は朱雀と共にいることにした。どうせ紅児のこと以外考えられないのだ。眷属がやったことはその神の責任だと香子は朱雀にしがみついた。
『香子、あまりかわいいことをするなと言っているだろう』
『かわいいことなんてしてません。いろいろ考えてしまってたいへんなんですから朱雀様はもう少し協力してください!』
『そなたにはかなわぬな。口づけは良いか?』
『……顔だけです』
『酷なことを言うな』
『それがだめならずっとだっこしててください!』
朱雀は苦笑した。
『本当に、そなたにはかなわぬ』
その代わりといってはなんだが、口づけはひどく甘かった。
『んっ、んっ……』
『香子、そなたに触れたい』
『んっ……だめ、ですっ!』
そんな攻防を昼まで続けたら、香子はもう半分ぐらいどうでもよくなってしまった。いろいろくよくよ考えていた自分がバカみたいだと、やっと香子は思えた。四神はどうにかして香子とエロいことをしようとしているが、そのおかげか悩みがぱぁっと晴れてしまったようにも思えた。
(言っちゃなんだけど、みんなそれほど余裕がないっていうか……)
いつでもがっつかれている香子としては、四神が愛しく思えてそれで胸がいっぱいになってしまうのだ。
『今なら二人のこと、祝福できそうな気がします……』
昼食時に香子はそう呟いた。昼食の後は茶室に移動するわけだが、おそらくその際に紅児は紅夏と共に報告に来るだろう。想像しただけで香子はげんなりしたが、することをしなければ船に乗ることはできないのだ。
茶室に移動して四神と共にお茶を飲んでいたら、予想通り二人が現れた。
(あー……)
二人の姿を見て、香子は二人が交わったことにすぐ気が付いた。
紅児の髪の色が明らかに変わっている。
元々紅児の髪は朱色系の赤だった。それが朱雀や紅夏と同じ色になりつつある。確か色がはっきり入るまでには、”熱”を与えられてから何度か交わる必要があるはずだから、そういうことなのだと気づいて香子は内心泣きたくなった。
二人は結婚式さえ挙げていないものの、もう夫婦である。
香子は二人を眺め、口元がひくつきそうになるのをどうにかこらえた。その結果猫のようににんまりしたような表情になってしまったが、香子自身はそのことに気づかなかった。
『朱雀様、花嫁様、此度朱雀の眷属である紅夏は花嫁様が後見されている娘、エリーザ・グッテンバーグと夫婦になりましたことを報告します』
紅夏が拱手してそう告げる。朱雀は苦笑した。
『……先を越されたな。今後我の世話をする必要はない。そなたの妻を大事にせよ』
朱雀はそう言って、香子を愛しくてならないというように眺めた。その視線がくすぐったいと香子は思う。
香子もまた二人を祝福する言葉を述べた。
結婚式はこちらでは挙げている時間がない為、もし帰国できたならセレスト王国で行えばいい。だがもし船に乗れなかったらこちらで結婚式はしたいと香子は思っている。
紅児は結婚証明書みたいなものはないかと聞いてきたが、紅児はまだ十四歳なのでそれはわからなかった。
紅夏との仲睦まじい様子を見て、香子は内心胸を撫で下ろした。紅夏には、紅児をとにかく大事にしてほしいと香子は思う。
紅児が帰国したら、彼女を守るのは紅夏しかいないのだ。それはしっかり話しておく必要はあった。
しばらくそのままお茶をしてから、二人は退室した。
香子は嘆息した。香子がやきもきしてもしょうがないのだが、心配でたまらなかった。
『香子』
玄武が声をかけた。
『大丈夫だ。眷属は”つがい”を誰よりも大切にする。そして一生離すことはない。あの娘のことも守り抜くだろう』
『それならいいんですけど……私のエリーザが……』
他人事ではなく、妹のように思っていた相手が早々に嫁ぐなんて、香子はとても納得がいかなかった。
『絶対幸せにしなかったら許さないんだから……』
『そうだな』
香子はそっと玄武の長袍の袖を掴んだ。
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「貴方色に染まる」は95~97話辺りです。
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翌日、香子は部屋に戻ってから紅児がいなくなったことを実感した。
もちろんまだ紅児は少なくとも四神宮の周りにいて、帰国の準備を進めているはずである。それでも部屋にいる侍女が一人だけしかいないというのは、なんとなく香子の心をささくれ立たせた。
(一昨日、紅夏がエリーザを抱かなかったことにはなんて忍耐力なのって思ったけど、自分公認でさせてしまうというのもキツイよねー……)
しょうがないとしか言えないのだが、それでも思うところはある。確かに六か月以内にと期限を区切ったのは香子だ。セレスト王国からできるだけ早めに返事をもらわなければ、香子は誰かに嫁いでしまう。嫁いだ後紅児に関わるのはたいへんだろうと香子は思ったのだ。もし香子がもう朱雀に嫁ぐと決めていたならばそれほど問題はないかもしれないが、香子はまだ最初に誰に嫁ぐかを決めかねている。気が多いといえばそれまでなのだが、こちらの世界に来るまでそんな状態になったことがないから難しい。
それに香子は四神のうちの誰かと一緒になった場合、何百年もその誰かと添い遂げることになる。そう簡単に決められることではなかった。
香子は今日は朱雀と共にいることにした。どうせ紅児のこと以外考えられないのだ。眷属がやったことはその神の責任だと香子は朱雀にしがみついた。
『香子、あまりかわいいことをするなと言っているだろう』
『かわいいことなんてしてません。いろいろ考えてしまってたいへんなんですから朱雀様はもう少し協力してください!』
『そなたにはかなわぬな。口づけは良いか?』
『……顔だけです』
『酷なことを言うな』
『それがだめならずっとだっこしててください!』
朱雀は苦笑した。
『本当に、そなたにはかなわぬ』
その代わりといってはなんだが、口づけはひどく甘かった。
『んっ、んっ……』
『香子、そなたに触れたい』
『んっ……だめ、ですっ!』
そんな攻防を昼まで続けたら、香子はもう半分ぐらいどうでもよくなってしまった。いろいろくよくよ考えていた自分がバカみたいだと、やっと香子は思えた。四神はどうにかして香子とエロいことをしようとしているが、そのおかげか悩みがぱぁっと晴れてしまったようにも思えた。
(言っちゃなんだけど、みんなそれほど余裕がないっていうか……)
いつでもがっつかれている香子としては、四神が愛しく思えてそれで胸がいっぱいになってしまうのだ。
『今なら二人のこと、祝福できそうな気がします……』
昼食時に香子はそう呟いた。昼食の後は茶室に移動するわけだが、おそらくその際に紅児は紅夏と共に報告に来るだろう。想像しただけで香子はげんなりしたが、することをしなければ船に乗ることはできないのだ。
茶室に移動して四神と共にお茶を飲んでいたら、予想通り二人が現れた。
(あー……)
二人の姿を見て、香子は二人が交わったことにすぐ気が付いた。
紅児の髪の色が明らかに変わっている。
元々紅児の髪は朱色系の赤だった。それが朱雀や紅夏と同じ色になりつつある。確か色がはっきり入るまでには、”熱”を与えられてから何度か交わる必要があるはずだから、そういうことなのだと気づいて香子は内心泣きたくなった。
二人は結婚式さえ挙げていないものの、もう夫婦である。
香子は二人を眺め、口元がひくつきそうになるのをどうにかこらえた。その結果猫のようににんまりしたような表情になってしまったが、香子自身はそのことに気づかなかった。
『朱雀様、花嫁様、此度朱雀の眷属である紅夏は花嫁様が後見されている娘、エリーザ・グッテンバーグと夫婦になりましたことを報告します』
紅夏が拱手してそう告げる。朱雀は苦笑した。
『……先を越されたな。今後我の世話をする必要はない。そなたの妻を大事にせよ』
朱雀はそう言って、香子を愛しくてならないというように眺めた。その視線がくすぐったいと香子は思う。
香子もまた二人を祝福する言葉を述べた。
結婚式はこちらでは挙げている時間がない為、もし帰国できたならセレスト王国で行えばいい。だがもし船に乗れなかったらこちらで結婚式はしたいと香子は思っている。
紅児は結婚証明書みたいなものはないかと聞いてきたが、紅児はまだ十四歳なのでそれはわからなかった。
紅夏との仲睦まじい様子を見て、香子は内心胸を撫で下ろした。紅夏には、紅児をとにかく大事にしてほしいと香子は思う。
紅児が帰国したら、彼女を守るのは紅夏しかいないのだ。それはしっかり話しておく必要はあった。
しばらくそのままお茶をしてから、二人は退室した。
香子は嘆息した。香子がやきもきしてもしょうがないのだが、心配でたまらなかった。
『香子』
玄武が声をかけた。
『大丈夫だ。眷属は”つがい”を誰よりも大切にする。そして一生離すことはない。あの娘のことも守り抜くだろう』
『それならいいんですけど……私のエリーザが……』
他人事ではなく、妹のように思っていた相手が早々に嫁ぐなんて、香子はとても納得がいかなかった。
『絶対幸せにしなかったら許さないんだから……』
『そうだな』
香子はそっと玄武の長袍の袖を掴んだ。
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「貴方色に染まる」は95~97話辺りです。
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