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第3部 周りと仲良くしろと言われました
96.一日がかりはつらいのです
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確認をしたら、翌日は特に予定はなかった。張錦飛もここのところ忙しいようで、三日に一度というのはあくまで目安となりつつある。
なので断る理由もなくなってしまい、香子はその夜青龍とも過ごすことになった。丸一日コースごあんなーい! という声が頭の中で響いたが、抱かれるのが嫌なわけじゃないしと香子は玄武の室に運ばれたのだった。
いつだって後悔するのは翌日である。香子が意識を取り戻したのはもう夕方になろうという時刻だった。しかも目覚めが空腹と共に訪れるのは本当にいただけない。
『おなかすいたぁ~……』
べそをかきながら目を覚ました香子の為に、玄武と青龍が食事の手配をしたようだった。
とにかくすぐに食べられる物を、ということで前菜が急いで運ばれてきた。これらを香子が食べている間に料理を作ってくれるのである。ちなみに朱雀は香子が意識を失った後は己の室に戻っているらしい。青龍に抱かれる時も基本三人がかりだ。回復してもらわなければ全く動けなくなってしまうので、四神による回復は必須だった。
(以前はでも……朱雀様が敢えて回復させてくれなかったんだよね)
香子は思い出したら腹が立ってきた。今夜絶対八つ当たりしてやると決意した。
前菜をあらかた食べ終えると肉包(肉まん)や菜包(野菜まん)、その他春巻や揚げた餃子などが運び込まれた。必死で香子たちの為に料理をしてくれる厨房のみなさんには本当に頭が下がる思いである。でももう香子は、おなかが空きすぎて味わうどころではなかった。
それでも春巻で香子はテンションが上がった。しかももやしたっぷりの春巻だけでなく上品なもの、そしてエビだけが入ったものなどもある。厨房のみなさん大好き! と香子は思った。
その後は炒め物などが運ばれ、最後に水餃子をつまみはじめてやっと香子は胃が落ち着くのを感じた。
『おいしい……』
『花嫁様、お食事中のところ失礼します』
白雲は香子が落ち着くのを待っていたらしい。書状のようなものを渡された。
『皇太后からだそうです』
『ああ……玄武様、読んでください』
『わかった』
読めないことはないが美辞麗句が綴られていたりと、身分が高い人たちの手紙というのはとにかく読みづらいのだ。漢字が繁体字なのはまだいいのだが、句読点がないのがいただけない。どこで切ったらいいのかわからなくなってしまうのである。だから香子は誰かに読んでもらうようにしていた。
皇太后からの文の内容はこうだった。
香山に行くのは大歓迎だから、打ち合わせを明日辺りしないかというお誘いである。
『白雲、これを持ってきたのは誰かしら?』
『延夕玲です』
『なら、夕玲に伝えて。”是(はい)”と返事を書いてくれと』
『承知しました』
白雲は拱手すると玄武の室を出て行った。きっと夕玲はやきもきしていたに違いなかった。おそらく今日の朝には文が届いていたのだろう。夕玲には悪いことをしたと香子は思った。
それにしても水餃子はなんておいしいのだろうかと香子は惚れ惚れしてしまう。それだけでも北京に留学してよかったと思っている。そして四神の花嫁になったことでいくら食べても太らない身体。これはもう食べるしかなかった。
『おいしい……今度蝦餃(海老の蒸し餃子)も作ってほしいわ』
凍石を見つけたことで海鮮等の大量輸送が可能になった。おかげで香子は北京にいながらにして海鮮料理を食べられるようになったのである。もちろん生では無理だが、いろんな海産物を食べることができて香子は幸せだ。
香子がうっとりしながら言っていることを室の隅に控えた侍女は心に留め、片付けに厨房へ向かってからそれを厨師に伝えるのだった。おかげで香子はいつでもおいしいごはんを食べられる。あちこちへ勝手に向かうことはできないが、ごはんがおいしいというのは何にも勝ると香子は思っていた。
(でも……今夜は表の空気を感じたいかも)
香子はそっと、自分の隣に腰掛けている青龍の腕に触れた。今香子を抱いているのは玄武である。こうすることで二神に思いが伝わるはずだ。
(今夜は夜の散歩がしたいです)
(青龍とか?)
(はい)
(行ってくるといい)
(ありがとうございます)
(では今宵、しばし香子を借りて行きます)
玄武の許可も下りたので、今夜は青龍の背に乗せてもらい、空を飛んでもらうことになった。
でも、そんなことができるならもっと早く教えてほしかったなと香子は恨めしく思う。今までの己の遠慮はなんだったんだ、というやつである。
でも空を飛んでもらうのは暗くなってからしかできないし、夜の景色は本当に何も見えなくて、ここが異世界なのだなということを香子は何度も再認識することとなった。それでも四神宮にただただ閉じこもっているよりはいい。
(誰かと結婚したら、もう少し自由に表へ出られるんだっけ……)
ただ誰かと結婚すればここからは出て行くことになる。誰かの領地に住んで、その誰かが死ぬまで添い遂げるのだ。
(どうにかしないと)
香子は自分がちっぽけな存在だと知ってはいたが、あがけるだけあがくつもりでいる。
まずは今夜の空中散歩が楽しみだった。
ーーーーー
「貴方色に染まる」81話辺りです。
なので断る理由もなくなってしまい、香子はその夜青龍とも過ごすことになった。丸一日コースごあんなーい! という声が頭の中で響いたが、抱かれるのが嫌なわけじゃないしと香子は玄武の室に運ばれたのだった。
いつだって後悔するのは翌日である。香子が意識を取り戻したのはもう夕方になろうという時刻だった。しかも目覚めが空腹と共に訪れるのは本当にいただけない。
『おなかすいたぁ~……』
べそをかきながら目を覚ました香子の為に、玄武と青龍が食事の手配をしたようだった。
とにかくすぐに食べられる物を、ということで前菜が急いで運ばれてきた。これらを香子が食べている間に料理を作ってくれるのである。ちなみに朱雀は香子が意識を失った後は己の室に戻っているらしい。青龍に抱かれる時も基本三人がかりだ。回復してもらわなければ全く動けなくなってしまうので、四神による回復は必須だった。
(以前はでも……朱雀様が敢えて回復させてくれなかったんだよね)
香子は思い出したら腹が立ってきた。今夜絶対八つ当たりしてやると決意した。
前菜をあらかた食べ終えると肉包(肉まん)や菜包(野菜まん)、その他春巻や揚げた餃子などが運び込まれた。必死で香子たちの為に料理をしてくれる厨房のみなさんには本当に頭が下がる思いである。でももう香子は、おなかが空きすぎて味わうどころではなかった。
それでも春巻で香子はテンションが上がった。しかももやしたっぷりの春巻だけでなく上品なもの、そしてエビだけが入ったものなどもある。厨房のみなさん大好き! と香子は思った。
その後は炒め物などが運ばれ、最後に水餃子をつまみはじめてやっと香子は胃が落ち着くのを感じた。
『おいしい……』
『花嫁様、お食事中のところ失礼します』
白雲は香子が落ち着くのを待っていたらしい。書状のようなものを渡された。
『皇太后からだそうです』
『ああ……玄武様、読んでください』
『わかった』
読めないことはないが美辞麗句が綴られていたりと、身分が高い人たちの手紙というのはとにかく読みづらいのだ。漢字が繁体字なのはまだいいのだが、句読点がないのがいただけない。どこで切ったらいいのかわからなくなってしまうのである。だから香子は誰かに読んでもらうようにしていた。
皇太后からの文の内容はこうだった。
香山に行くのは大歓迎だから、打ち合わせを明日辺りしないかというお誘いである。
『白雲、これを持ってきたのは誰かしら?』
『延夕玲です』
『なら、夕玲に伝えて。”是(はい)”と返事を書いてくれと』
『承知しました』
白雲は拱手すると玄武の室を出て行った。きっと夕玲はやきもきしていたに違いなかった。おそらく今日の朝には文が届いていたのだろう。夕玲には悪いことをしたと香子は思った。
それにしても水餃子はなんておいしいのだろうかと香子は惚れ惚れしてしまう。それだけでも北京に留学してよかったと思っている。そして四神の花嫁になったことでいくら食べても太らない身体。これはもう食べるしかなかった。
『おいしい……今度蝦餃(海老の蒸し餃子)も作ってほしいわ』
凍石を見つけたことで海鮮等の大量輸送が可能になった。おかげで香子は北京にいながらにして海鮮料理を食べられるようになったのである。もちろん生では無理だが、いろんな海産物を食べることができて香子は幸せだ。
香子がうっとりしながら言っていることを室の隅に控えた侍女は心に留め、片付けに厨房へ向かってからそれを厨師に伝えるのだった。おかげで香子はいつでもおいしいごはんを食べられる。あちこちへ勝手に向かうことはできないが、ごはんがおいしいというのは何にも勝ると香子は思っていた。
(でも……今夜は表の空気を感じたいかも)
香子はそっと、自分の隣に腰掛けている青龍の腕に触れた。今香子を抱いているのは玄武である。こうすることで二神に思いが伝わるはずだ。
(今夜は夜の散歩がしたいです)
(青龍とか?)
(はい)
(行ってくるといい)
(ありがとうございます)
(では今宵、しばし香子を借りて行きます)
玄武の許可も下りたので、今夜は青龍の背に乗せてもらい、空を飛んでもらうことになった。
でも、そんなことができるならもっと早く教えてほしかったなと香子は恨めしく思う。今までの己の遠慮はなんだったんだ、というやつである。
でも空を飛んでもらうのは暗くなってからしかできないし、夜の景色は本当に何も見えなくて、ここが異世界なのだなということを香子は何度も再認識することとなった。それでも四神宮にただただ閉じこもっているよりはいい。
(誰かと結婚したら、もう少し自由に表へ出られるんだっけ……)
ただ誰かと結婚すればここからは出て行くことになる。誰かの領地に住んで、その誰かが死ぬまで添い遂げるのだ。
(どうにかしないと)
香子は自分がちっぽけな存在だと知ってはいたが、あがけるだけあがくつもりでいる。
まずは今夜の空中散歩が楽しみだった。
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「貴方色に染まる」81話辺りです。
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