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第3部 周りと仲良くしろと言われました

75.四神の嫉妬に付き合うのはたいへんです

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 とろとろである。
 香子は自分が蕩けた自覚はあった。
 白虎は最後までは香子を抱かなかったが、香子の全身をいつも通り舐め回した。
 四神の学習能力はとても高く、香子が感じるところは全てチェックしてそこだけを重点的に触れているようだった。おかげで最後まで抱かれなくても香子はたいへんなことになってしまう。白虎の毛にしがみつき、香子は白虎の愛撫を受けた。

「~~~~~ッッ!?」

 感度が上がっているのが自分でもわかるので、香子はどうしたらいいのかわからない。ちょっと油断するとすぐ求められてしまう。
 白虎に抱かれてから四神のアピールが更に激しくなったと香子は思った。

(これでも落ち着いた状態なの……?)

 四神全てに抱かれたことで香子も気持ちがだいぶ落ち着いてきているのは感じていた。精神は全てに作用する。

「あっ、あっ、あーーーーーっっ……!」
『そなたを今宵抱く。よいだろう?』
『……は、はい……』
『素直なそなたも愛しくてならぬ……』

 香子は背中をべろりと舐められてびくびく震えた。慣れてきたのか、白虎の本性を現わされて触れられてもあまり恐ろしいとは思わなくなった。白虎がどこまでも紳士的だからだろう。それでも虎が恐ろしい猛獣だということは間違いないので、それは忘れないようにしようと香子は思った。
 香子は夕飯をなにがなんでも食べたいのでそれまでには一旦解放してもらった。あれからずっと愛撫を受け続けてぐったりである。

(だから愛欲の日々はまだ嫌なのに~……)

 少しでいいから一人にしてほしいと香子は思う。

(結婚したら……私の部屋も用意してもらおう……)

 まだ先の話ではあるが、あと半年弱である。最初の一か月が異常に濃かっただけで、その後の時間の過ぎ方は少しずつ加速しているように香子には思えた。それが慣れによるものだということは香子にもわかっている。まだ半年あると考えるか、もうあと半年しかないと考えるかでも違ってくる。
 髪を直し、衣裳を改めて用意されて着替えさせられた。礼服とまではいかないが、茶会に着ていった衣裳は白虎のおかげでくしゃくしゃになってしまった。本当に、こういう衣裳というのは着た後はどうなっているのだろうと香子は考えてしまう。貧乏性なのかしら? と香子は思った。
 やっと侍女が満足して着替えを終え(侍女たちは香子を着飾ることに命をかけている)、居間に向かうと白虎が待っていた。当たり前のように香子は抱き上げられる。侍女たちは目を伏せているようだったが、それでも視線を感じる。香子は心配そうに自分を見ている紅児に笑んだ。紅児は優しい子だと香子は思う。だからこそ紅夏とは改めてしっかり話さなければいけない。

(他にも考えなきゃいけないことはあるのだけど……)

 延夕玲のことも気になるし、香子の頭の中はなんだかんだいって忙しかった。
 夕食の席はいつも通りだった。香子はやっとおいしくごはんが食べられた。

『おいしい……』

 シンプルな、ジャガイモを千切りにした炒め物がおいしい。なんでこんなにしゃきしゃきになるのか聞いてみたい。アクセントに入れられているピーマンの細切りもいいかんじだ。これは香子のリクエストである。毎日豪華な食事よりも庶民が普通に食べるような料理がいいのだ。にんにくのみじん切りも一緒に炒めてもらったのでたまらない。匂いは気になるかもしれないが香子はにんにくの味が大好きだった。

『そなたは本当においしそうに食べるな』

 白虎が言う。

『おいしいですから!』

 いつもの答えだ。レンコンとひき肉を炒めてもらったものもとてもおいしい。あく抜きもされているのでしっかり白い。大陸で食べていた時はあく抜きがされていなかったのでマーブルがかっていたものが普通に出てきた。でもおいしかった。ちゃんとした料理人はあく抜きとかもしっかりするのだなと再認識した。なにせ香子は学生だったからそんなに高級な店には行ったことがなかったのである。
 ごはんの後は茶室に移動して今日のことを話した。すでに朱雀がみなに念話で伝えていたようだが、四神は香子のとりとめもない話を聞くのも好きなようである。

『……ボースーの大使は許せませんな』

 青龍が涼やかな声で恐ろしいことを言う。

『何かしようとしちゃだめですよ?』
『なにゆえに』
『白虎様が怒ってくださいましたから。皇帝がよいように取り計らうでしょう』

 青龍は一瞬眉を寄せた。

『……あの皇帝を信用するのか?』
『なれば、どう対応したか文書でも出させましょう。青龍様』
『うむ』
『私はもう皇帝には関わりたくないのです』

 ”皇帝”という単語を出しただけで反応されるのがいただけないと香子は思う。あれだけ皇帝は毛嫌いしていると伝えているのに。だがそういうことではないのだということも香子は知っていた。もう香子が人間の男を指した単語を口にするのが許せないのだ。こればかりは四神の本能であるからしかたない。

『だからこの話はもう終わりにしてくださいませ』
『わかった』

 青龍がやっと引き下がった。

『香子、今宵は白虎と過ごすのだな』

 朱雀がニヤニヤしながら言う。香子は朱雀を睨んだ。

『はい』
『朱雀兄、よろしくお願いします』

 白虎が頼むのを朱雀は知っていて言うのだから性格が悪い。

『頼まれずとも参ろう』

 そういう話は後でしてほしいと香子は思うのだが、朱雀はわざとこういうところでするのだ。

『朱雀様、性格が悪いです』
『そなたに触れたくてたまらないのだ』
(もうっ……)

 香子が朱雀に勝てるはずがないのだ。顔が熱くなって困る。
 でもそんな朱雀を、香子は好きだった。

(惚れた弱味ぃ……)

 また穴を掘って埋まりたいと香子は思った。
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