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第3部 周りと仲良くしろと言われました

48.皇帝に呼び出されました

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 衣裳も決まったし、あとは月餅がどうなるかぐらいだと香子は思っていたが、秋の大祭の期間中四神への面会希望もあるようだ。わざわざ皇帝に呼び出されて言われたのはそんなことだった。香子はそれに不機嫌そうな様子を隠しもしなかった。
 四神が他国の国王と会うかどうかは四神に任せるとして、何故自分まで皇帝に呼び出されるのか香子にはわからなかった。

『白香娘娘は今日もご機嫌斜めのようだ』
『…………』

 皇帝に声をかけられたが香子は無言で茶を啜った。相変わらずいい茶葉を使っていると、香子の頬が少し緩んだ。

『我らは人には関わらぬと言ったはずだ』

 白虎もまた不機嫌そうに言う。皇帝が側にいるので香子は白虎の膝の上でお茶を飲んでいた。香子としてはその姿を見られるのは恥ずかしいが、これで四神が満足するならそれでいいと思うようにはなっていた。

『周辺国の王が一目なりとも四神にお会いしたいと申しております。周辺国の王が大唐に集まるのは中秋のみ。どうか叶えてやってはいただけぬでしょうか』

 後ろに控える中書令ではなく皇帝が言い募る。それだけでも異例ではあるだろうが四神には関係ないことだ。

『一目なれば楼台に上がる際に見ればよいだろう』
『ははは、これは手厳しい』

 皇帝は困ったような顔をした。そしてちらりと香子を見る。

(こっち見んな)

 香子としても唐の国の面子を考えるならば食事会のようなものに一回出てもいいとは思う。唐の皇帝の要請により四神が腰を上げたというのが重要なのだ。ここで四神が断れば唐の面子は丸つぶれ。周辺国から四神に勧誘が増えることが考えられる。
 このヤージョウ大陸にある国といえば、唐を起点として考えると西にシーザン、北にオロス、シーザンの更に西にバジスタン、シーザンとオロスの間にボースーがある。大陸に都合五か国あるが、香子としては旅行には行ってもいいなと思えども定住したいとは思えない。香子は唐の国が好きなのだ。

(他の国に住みたいとは思えないしなぁ……)

 張に他の国のことを尋ねたところ、元の世界の環境とあまり変わるところはなかった。シーザンは高地と草原で、オロスはとても寒く、バジスタンはそれなりに乾いた気候である。ボースーはシーザンとオロスの間にあるのでそれなりに寒いようである。何より食事が中華料理(中国料理)ではない。香子は中華料理を愛しているのだ。そうでなければ毎日鬱々としていたに違いないと香子は思っている。食は香子にとって重要な位置を占めていた。

『ですがそういうわけにもいかぬのです。周辺国の王は何日もかけてこの大唐の王都へやってきます。四神を迎えての秋の大祭は、朕の代では今回限りでしょう。どうか大唐の民の為、午餐会と晩餐会に顔を出してはいただけぬでしょうか』
(なんで二回も出ることになってるのー?)

 そんなに皇帝はツッコミを入れられたいのかと香子は眉を寄せた。そして傍らに腰掛ける玄武を見やる。香子はそっと玄武の長袍の端を掴んだ。手を握られる。

〈どちらかでいいので出席してはいただけませんか?〉

 心の中で玄武にこっそりお願いしてみた。

何故なにゆえに?〉
〈……そういう時の料理ってすっごく豪華じゃないですか。見てみたいし、食べてみたいです〉

 こう言えば四神は出てくれるはずだと香子はわかっていた。四神が動くのは香子の為だけだから。

〈……わかった〉
『……食事をするだけだ。香子も連れて行く』
『四神の恩情に感謝いたします』

 本当は面倒くさいし嫌だがしかたないと香子は思う。今年だけのことだ。だからいろいろ経験してもいいと香子は思っている。付き合わされる四神は気の毒かもしれないがしょうがない。恨み言は香子を召喚したという天皇ティエンホワンに言えばいいと香子は思った。
 おいしいお茶を飲んで小さめの月餅をを二個食べた。どちらも中に入っているものが違っておいしかった。

香子シャンズ、戻るぞ』
『はい、白虎様』
『失礼ですが白香娘娘、これらの月餅のお味は如何でしたかな?』

 中書令の李雲に声をかけられて香子は内心驚いた。

『どちらもおいしかったです』
『それはよろしゅうございました。こちらにある月餅は包みますのでお持ちください。お手数ですがお好みではないものがございましたらお知らせいただけると助かります』
『わかりました。ありがとうございます』

 楼台から配る月餅の選定だろうと香子は当たりをつけた。こうして自然に食べさせてくれるのは好感度が高い。中書令はやはり宰相だけあってできる人だなと香子は改めて思った。
 白虎の腕に抱かれて、今度こそ香子たちはその場を辞した。
 皇帝の執務室に向かう大きな門を出たところで、白虎は瞬間移動をしたようだった。一瞬目まぐるしく景色が変わったかと思うと、香子はもう四神宮の入口にいた。香子は周りを見回してからしまったと思った。
 皇帝とは口を聞かなかったが、中書令とは口を聞いてしまった。

(あー……)
『白虎様。……月餅が食べたりないです』
『あとで食べればよかろう』
『もー、しょうがないじゃないですかー!』

 白虎は香子の抗議を受け付けなかった。昼間からは本当に勘弁してほしいと、切実に香子は思った。



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今年もまったり物語が進みます~
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