上 下
336 / 597
第3部 周りと仲良くしろと言われました

33.こんなに抱かれているのに初心でした

しおりを挟む
 玄武と朱雀の時はどうしたのだっけ? と香子は記憶を辿ることにした。

(確かあの時は……)

 現実逃避と言われてもしかたがないが、誘い方が全く思いつかないのだ。

(玄武様のことも、朱雀様のことも同じぐらい好きだって言って……)

 香子は内心頭を抱えた。

(えー……どっちも同じぐらい好きかもーで選べないからーとかとんだビッチじゃん、私)

 夕食後である。青龍に抱き上げられてみなと共に茶室に移動した。四神は香子の様子がおかしいことに気づいていたが、どうしたらいいのかわからずちらちらと香子の様子を窺っていたが、香子は自分のことで精いっぱいだったのでそれに気づかなかった。
 いつも通り茶室で下ろされてお茶を淹れる。今日のお茶は黄金桂だった。なんとなく遠くで金木犀のような香りがするさわやかな烏龍茶で、香子は気に入っている。

(お茶はいいよねー、うん、いい……)

 お茶を振舞って、自分も一杯飲む。心が落ち着くような気がするからお茶は不思議だなと香子は思う。
 ほうっと烏龍茶の香りが混ざる呼気を吐いて、さあどうしようかと香子はまた首を傾げた。

(選べないって言ったら、することになっちゃったんだよね。玄武様と朱雀様は強引だから……)

 香子は二人に初めて抱かれた日のことを思い出して頬を染めた。自分を包み込むような優しさを湛えながら、それでも玄武は強引で情熱的だ。朱雀はその見た目通り強引で、閨では意地悪い。

『香子、そなに色を含んだ表情をしてくれるな』

 朱雀が香子を眺めてからかうように言った。

『え、えええっ……!?』

 香子は激しく動揺した。自分が発情していると聞かされたようなものである。香子は思わず両手で顔を覆った。朱雀は目を丸くした。そして彼らの間で目配せをする。

『香子、如何した?』

 傍らにいる玄武に優しく声をかけられて、香子はびくっとした。すごく恥ずかしかった。

『な、ななななんでもないですぅ……』

 玄武がふう、と息を吐いた。

『ではベッドで聞かせてもらおうか』
『えええええっっ!?』

 玄武に抱き上げられ、香子は慌てて顔から両手を外した。玄武様がそんなことを言うなんて、言うなんて、と頭がショートしそうである。だがここで玄武の室に連れ込まれるわけにはいかない。そう、連れ込まれたら全てがうやむやになってしまうに違いない。香子は震える唇をどうにか動かした。

『きょ、今日は白虎様とっ!』
『ほう?』

 楽しそうな声が頭上から届く。香子は顔がものすごく熱を持っているのを感じた。このままでは脳が沸騰してしまうのではないかと思うほどである。

『白虎と、如何するのだ?』
『ううう~~……』

 どう言ったらいいのだろう。香子はとても困った。でも何か言わなければ玄武の室に連れて行かれてしまう。

『……白虎様のことも、好きなんですっ!』
『そうか。白虎、受け取れ』
『はい、玄武兄。ありがとうございます』

 香子はいつのまにか立ち上がっていた白虎に手渡された。そうして白虎の腕の中にすっぽりと納まる。香子はとても恥ずかしくなって、白虎の胸に頭を摺り寄せた。

『香子、そなにかわいいことをするな。……襲ってしまうぞ』
『……せ、せめて白虎様の室に』
『……わかった。朱雀兄、お願いします』
『わかった』

 そのまま香子は白虎の室に連れて行かれた。湯浴みをして、睡衣を着せてもらうなんて、そんなことをしていたら決心が鈍りそうだったから。もちろん、抱かれた後は盛大に後悔することになるだろうこともわかっていた。
 それでも、香子が白虎に抱かれるのはこのタイミングでなければならなかった。

『香子、できるだけ優しくする。我を受け入れてくれ……』
『……はい』

 人型のままそう言われて、香子は頷いた。

『我は香子に”熱”を与えよう。さすれば香子の身体は燃え上がる』
『朱雀兄も共に』
『おや、よいのか?』
『はい、香子は我ら四神の花嫁。傷つけるわけにはいきませぬ』
『それもそうだな』

 香子は二人のやりとりを聞きながら、あまりの恥ずかしさに気絶してしまいそうだった。玄武、朱雀、青龍を受け入れたといっても、香子は強引な神々に翻弄されているだけである。まだ生まれて22年しか経っておらず、それほど経験もない香子はまだまだ初心だった。
 床に下ろされて白虎と口づけて、香子は身を震わせた。

『あ、あの……』
『なんだ?』
『……どうか、お手柔らかに……』

 白虎が香子の口元でククッと笑った。

『そうさな……だがかなり待たされたからな』
『そんな……』

 確かに白虎が一番最後ではあるが、まだ知り合って半年ぐらいである。

『ま、まだ半年、ですよ……』
『もう半年だ。そなたとここで過ごす期間は半分を切っている。毎日抱いたとて、足りぬ』
『そん、な……』

 香子は目が潤んでくるのを感じた。狂おしいほどに求められて、胸が苦しくなった。

『香子、愛している』

 真摯な金の瞳に囚われる。
 そうして香子は朱雀から”熱”を与えられ、白虎の腕の中に囚われた。
 それはなんと狂おしく、甘い夜だっただろう。

「……あぁあっ……もうっ、ああぁっ……!」

 全身が溶けると錯覚するほど、香子は求められ、愛された。



ーーーーー
玄武と朱雀に抱かれる前の話は、第一部99話「告白」参照のこと。
Hの詳細はいずれムーンで!(ぉぃ) でも次話で香子が思い出して悶えます(何
しおりを挟む
感想 85

あなたにおすすめの小説

旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜

ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉 転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!? のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました…… イケメン山盛りの逆ハーです 前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります 小説家になろう、カクヨムに転載しています

明智さんちの旦那さんたちR

明智 颯茄
恋愛
 あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。  奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。  ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。  *BL描写あり  毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。

眺めるだけならよいでしょうか?〜美醜逆転世界に飛ばされた私〜

波間柏
恋愛
美醜逆転の世界に飛ばされた。普通ならウハウハである。だけど。 ✻読んで下さり、ありがとうございました。✻

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

女性が全く生まれない世界とか嘘ですよね?

青海 兎稀
恋愛
ただの一般人である主人公・ユヅキは、知らぬうちに全く知らない街の中にいた。ここがどこだかも分からず、ただ当てもなく歩いていた時、誰かにぶつかってしまい、そのまま意識を失う。 そして、意識を取り戻し、助けてくれたイケメンにこの世界には全く女性がいないことを知らされる。 そんなユヅキの逆ハーレムのお話。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました

市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。 私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?! しかも婚約者達との関係も最悪で…… まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!

処理中です...