334 / 597
第3部 周りと仲良くしろと言われました
31.ずっと理由を探しています
しおりを挟む
陰暦では8月になったばかり。太陽暦では9月。陰暦の八月十五が中秋節だ。
秋の風が吹いているのに8月とはこれ如何に、と香子は思ってしまう。大陸もカレンダーは太陽暦だったが、春節(旧正月)、端午節、中秋節は陰暦を採用していた。だから年間のスケジュールなどいろいろ毎年日付が変わってよくわからなかった。
(二学期の始まりとかも春節が基準だったよね。おかげで毎年微妙に開始日とか休みとか違ったなー)
日付をチェックしておくのが面倒だったなと香子は思う。陰暦だと歳の数え方も違う。数え年というのがよくわからない。産まれた時はすでに1歳で、正月に2歳になる。そう考えると香子はこちらでは23歳になるはずだ。年が明けたら24歳かと思ったら、香子はなんか嫌になった。別に年を取るのが嫌なわけではない。まだ自分は22歳だと思っていたから24歳? と考えたら嫌になったのだ。
青龍と穏やかに外でお茶を飲み、とりとめもない話をした。香子の留学時代の話がどうしてもメインになってしまうのだが、四神はみな機嫌よさそうに香子の話を聞いてくれる。助言が欲しいなと思えば四神なりに考えた言葉をくれたりして、もちろん的を射てない答えも多いのだが、香子は怒ったり笑ったりしながらもこの日々を愛しく感じていた。
(いつまでも不安定な状態じゃ困るよね)
周りにとってもそうだが、何よりも香子自身がつらい。
(情緒を安定させる為に抱かれるのかぁ……)
ちょっと抵抗はあるが、それはそれでありかなと香子も思った。大祭に出る為に抱かれるよりは理由としてしっくりしている気がしたのだ。
青龍の室に移動し、居間の長椅子に腰掛けて、香子は青龍の腕をぎゅーっと抱きしめた。
『香子……あまりそういうかわいいことをしてくれるな』
青龍が苦笑する。
『青龍様は何もしちゃだめです』
『酷なことを言う』
『私が抱きしめたいんです』
『……抱きしめるぐらいはよかろう?』
笑いを含んだ声に、香子は少しだけ考えた。
『口づけ禁止、胸とか、その……下半身に触るのも禁止です』
『足に触れるのもだめか』
『……膝から下でしたら……』
『……わかった。だが髪に口づけることは許してくれまいか』
『っっ! だ、だめですっ!』
髪に口づけるぐらい、と思うかもしれないが、この四神という連中は髪を一房取って香子の目の前で口づけたりするのだ。もうなんていうか恥ずかしくていたたまれなくなるからだめだと香子は思っている。
『香子が厳しい……』
落胆したように言われてもだめなものはだめなのである。口づけだけなら……なんて答えたら全身に口づけしたりするのだ。もちろんそれは足の間も例外ではない。昼間から甘く啼かされるのは、香子としては勘弁してほしいところである。
『しかたないな……だがそなたを領地に連れ帰ることができたなら……わかっているな?』
(いやあああ~~~愛欲の日々はいやあああ~~~)
エロマンガのような日々を思い浮かべて香子は真っ赤になった。青龍がふふっと笑う。
『愛らしいものだ』
むかつく、と香子は思ったがしょうがない。生きている年数も経験も違うのだ。そのわりにはかなり子どもっぽいところもあるのだが。
ふと香子は考える。
『その……青龍様の初めての相手ってどんな女性だったんですか?』
『気になるのか?』
『いえ、別に。ただ、どんな人とどんな風に抱き合ったのかなーって』
嫉妬も何もなく純粋な興味である。ここらへんが香子に色気がない所以だろう。それでも四神に抱かれた影響で周りを色気で悩殺していたりもするのだが。
青龍は少し黙った。記憶を辿っているのだろうと、香子は茶杯に手を伸ばした。丸一日飲んでいても飽きない。お茶を飲むのは幸せである。
『ふむ……あまりよくは覚えていないが、確かそれなりに男に慣れた女性であったな。一から手ほどきをしてもらい、何度か相手をさせた記憶はある。我はあまりそういうことに興味は持てなかった故、すぐに眷属に下げ渡したが……』
『それって、何年ぐらい前の話ですか?』
『成人してすぐだ。そうだな……五十年ほど前だろうか』
普通に考えたらその女性はもう生きていないだろう。だが眷属に下げ渡しと言っていた。
『その方の消息はご存知ですか?』
『いや……知らぬな』
『そうですか』
それならそれでいいだろうと、香子は追及しないことにした。青龍に抱かれたとはいえ、その女性が眷属の誰かの”つがい”であったらいいなと思ってしまった。”つがい”であればその眷属と共に長い時を過ごすことになる。まだ当時の美貌を留めたまま青龍の領地で暮らしているのではないかと思ったら、なんだか嬉しくなった。本当にそうだったらいいと香子は思う。でもそうでなかったら悲しいから、香子は聞かないことにした。だからその女性は、香子の想像の中で幸せに過ごすのだ。
光石が光り始めた。表が暗くなってきたのだろう。
香子はなんとなくおなかがすいてきたなと思った。
さて、夕飯に雪菜炒毛豆(漬物と枝豆の炒め物)は出てくるだろうか。
秋の風が吹いているのに8月とはこれ如何に、と香子は思ってしまう。大陸もカレンダーは太陽暦だったが、春節(旧正月)、端午節、中秋節は陰暦を採用していた。だから年間のスケジュールなどいろいろ毎年日付が変わってよくわからなかった。
(二学期の始まりとかも春節が基準だったよね。おかげで毎年微妙に開始日とか休みとか違ったなー)
日付をチェックしておくのが面倒だったなと香子は思う。陰暦だと歳の数え方も違う。数え年というのがよくわからない。産まれた時はすでに1歳で、正月に2歳になる。そう考えると香子はこちらでは23歳になるはずだ。年が明けたら24歳かと思ったら、香子はなんか嫌になった。別に年を取るのが嫌なわけではない。まだ自分は22歳だと思っていたから24歳? と考えたら嫌になったのだ。
青龍と穏やかに外でお茶を飲み、とりとめもない話をした。香子の留学時代の話がどうしてもメインになってしまうのだが、四神はみな機嫌よさそうに香子の話を聞いてくれる。助言が欲しいなと思えば四神なりに考えた言葉をくれたりして、もちろん的を射てない答えも多いのだが、香子は怒ったり笑ったりしながらもこの日々を愛しく感じていた。
(いつまでも不安定な状態じゃ困るよね)
周りにとってもそうだが、何よりも香子自身がつらい。
(情緒を安定させる為に抱かれるのかぁ……)
ちょっと抵抗はあるが、それはそれでありかなと香子も思った。大祭に出る為に抱かれるよりは理由としてしっくりしている気がしたのだ。
青龍の室に移動し、居間の長椅子に腰掛けて、香子は青龍の腕をぎゅーっと抱きしめた。
『香子……あまりそういうかわいいことをしてくれるな』
青龍が苦笑する。
『青龍様は何もしちゃだめです』
『酷なことを言う』
『私が抱きしめたいんです』
『……抱きしめるぐらいはよかろう?』
笑いを含んだ声に、香子は少しだけ考えた。
『口づけ禁止、胸とか、その……下半身に触るのも禁止です』
『足に触れるのもだめか』
『……膝から下でしたら……』
『……わかった。だが髪に口づけることは許してくれまいか』
『っっ! だ、だめですっ!』
髪に口づけるぐらい、と思うかもしれないが、この四神という連中は髪を一房取って香子の目の前で口づけたりするのだ。もうなんていうか恥ずかしくていたたまれなくなるからだめだと香子は思っている。
『香子が厳しい……』
落胆したように言われてもだめなものはだめなのである。口づけだけなら……なんて答えたら全身に口づけしたりするのだ。もちろんそれは足の間も例外ではない。昼間から甘く啼かされるのは、香子としては勘弁してほしいところである。
『しかたないな……だがそなたを領地に連れ帰ることができたなら……わかっているな?』
(いやあああ~~~愛欲の日々はいやあああ~~~)
エロマンガのような日々を思い浮かべて香子は真っ赤になった。青龍がふふっと笑う。
『愛らしいものだ』
むかつく、と香子は思ったがしょうがない。生きている年数も経験も違うのだ。そのわりにはかなり子どもっぽいところもあるのだが。
ふと香子は考える。
『その……青龍様の初めての相手ってどんな女性だったんですか?』
『気になるのか?』
『いえ、別に。ただ、どんな人とどんな風に抱き合ったのかなーって』
嫉妬も何もなく純粋な興味である。ここらへんが香子に色気がない所以だろう。それでも四神に抱かれた影響で周りを色気で悩殺していたりもするのだが。
青龍は少し黙った。記憶を辿っているのだろうと、香子は茶杯に手を伸ばした。丸一日飲んでいても飽きない。お茶を飲むのは幸せである。
『ふむ……あまりよくは覚えていないが、確かそれなりに男に慣れた女性であったな。一から手ほどきをしてもらい、何度か相手をさせた記憶はある。我はあまりそういうことに興味は持てなかった故、すぐに眷属に下げ渡したが……』
『それって、何年ぐらい前の話ですか?』
『成人してすぐだ。そうだな……五十年ほど前だろうか』
普通に考えたらその女性はもう生きていないだろう。だが眷属に下げ渡しと言っていた。
『その方の消息はご存知ですか?』
『いや……知らぬな』
『そうですか』
それならそれでいいだろうと、香子は追及しないことにした。青龍に抱かれたとはいえ、その女性が眷属の誰かの”つがい”であったらいいなと思ってしまった。”つがい”であればその眷属と共に長い時を過ごすことになる。まだ当時の美貌を留めたまま青龍の領地で暮らしているのではないかと思ったら、なんだか嬉しくなった。本当にそうだったらいいと香子は思う。でもそうでなかったら悲しいから、香子は聞かないことにした。だからその女性は、香子の想像の中で幸せに過ごすのだ。
光石が光り始めた。表が暗くなってきたのだろう。
香子はなんとなくおなかがすいてきたなと思った。
さて、夕飯に雪菜炒毛豆(漬物と枝豆の炒め物)は出てくるだろうか。
2
お気に入りに追加
4,015
あなたにおすすめの小説
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
明智さんちの旦那さんたちR
明智 颯茄
恋愛
あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。
奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。
ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。
*BL描写あり
毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?
女性が全く生まれない世界とか嘘ですよね?
青海 兎稀
恋愛
ただの一般人である主人公・ユヅキは、知らぬうちに全く知らない街の中にいた。ここがどこだかも分からず、ただ当てもなく歩いていた時、誰かにぶつかってしまい、そのまま意識を失う。
そして、意識を取り戻し、助けてくれたイケメンにこの世界には全く女性がいないことを知らされる。
そんなユヅキの逆ハーレムのお話。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました
市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。
私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?!
しかも婚約者達との関係も最悪で……
まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる