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第3部 周りと仲良くしろと言われました
23.特に何も変わったことのない翌日の風景です
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「あああああ~……」
思わず声が出た。というか声を出すことでしかこの恥ずかしさをごまかすすべはなかった。白虎はすでにいない。香子が玄武と朱雀にどろどろに愛されているのを余すことなく鑑賞し、満足そうに戻っていった。香子が意識を失うほんの少し前に、あまりにも愛しくてならないというような目をした白虎が頷いたのが見えた。そうして次に気が付いたのは今さっき。
今香子は玄武の腕の中にいる。
『香子、如何した? 腹がすいたのか?』
逞しくしっかりしている腕の中に囚われて、昨夜のことがありありと思い出されているのだ。できれば放っておいてほしかったが、きっと凄まじい空腹に見舞われるのもすぐだろう。
『……玄武様、ごはん頼んでください……』
『わかった』
玄武が少し視線を遠くへ向けた。念話で黒月たちに伝えてくれているに違いなかった。
(念話って便利だよねぇ。チートだわ……)
チートうんぬんという話をしたら四神の存在そのものがチートだ。ただ存在しているだけで気候だのなんだのが安定するとかなんなのか。そんな関係ないことを考えていないと恥ずかしさで穴を掘り始めそうである。スコップ? シャベル? ショベルカー? はないか。そういえばスコップとシャベルって元の言語が違うだけで意味は同じだった気がする。スコップはオランダ語でシャベルは英語由来だったような、とか全く関係ないことを考えることで香子は己を保っていた。
『香子……』
玄武の顔が至近距離に近づいてきて、香子はぎゅっと目をつぶった。何度口づけても、何度抱かれてもこの美貌には慣れない。胸が甘く締め付けられて、涙がこぼれそうになる。
ちゅ、ちゅと宥めるように角度を変えて口づけられる。後ろから伸びてきた手がやわやわと香子の胸を揉む。朱雀だった。揉みながら乳首を探り当てて、くにくにと指先でこねるのはやめてほしい。
『朱雀さま……やっ……』
『そなたは感じやすいな』
後ろに朱雀が密着する。二神に抱きこまれるような形になった。この時期はまだくっつかれると暑いはずなのに、二神の肌はさらさらで香子に心地良さしか与えない。
『……おなか、すいたのに……』
ようやく身体の感覚が戻ってきて、耐えがたいほどの空腹が襲ってきた。
『香子、もう少し……』
ぐうううう~~~! と、とうとう盛大に腹の虫が鳴いた。
二神が喉の奥でクククッと笑う。
『~~~~っっ! 玄武様も朱雀様もおなかすいたでしょうっ!?』
別の意味での恥ずかしさで香子は真っ赤になった。
『ああ、我も腹はすいた』
『そなたを抱いた故な……』
『~~~~っっ!』
もうなんていうか言葉にならない。香子があまりの羞恥にぷるぷる震えていると、玄武が顔を上げた。
『来たようだな』
髪をかき上げて立ち上がるその無造作な動きすらも美しい。
(ああもうこんなに素敵でかっこよくて私をどうする気なのっ!)
内心八つ当たり気味にそんなことを思いながら、香子は朱雀の腕に抱かれて居間へ移動した。
今朝のごはんもおいしかった。
最近香子がはまっているのは刀削麺である。ただ小麦粉を練った塊を包丁で削り取って麺にしているだけなはずなのにどうしてあんなにおいしいのか。
(小麦粉の配合とか、削り方とかによっても違うんだろうな)
そういえば同じ料理を同じ味付けで同じように作らせても、人によって味が変わるなんてことを聞いたことがある。
ふわふわの卵とトマトが入っている刀削麺を食べて香子はご満悦である。もちろんその他に香子の大好物の春巻や、肉包、菜包、水餃などいっぱい食べた。胃が満たされれば心もハッピーである。
『そなたは本当においしそうに食べる』
なんとも嬉しそうにそう言う玄武だってかなりの量を口に入れていた。
『おいしいですもの。ここの厨師は最高です。何か褒美を用意することってできないんですか?』
『そうだな……』
玄武と朱雀が考えるような顔をした。少しして、不機嫌そうな様子を隠そうともしない紅夏がやってきた。
『お呼びと窺いましたが』
『香子が厨師たちに褒美を与えたいそうだ』
『……そういうことでしたら趙殿が詳しいと存じます。兄と相談して参ります』
兄、というと白雲のことだろう。四神の眷属は四神の為に存在しているのではないのか。なんであんなに不機嫌そうな様子でも咎められないのか香子は不思議でならない。
(まーでも四神だもんね、その眷属だもんね。いろいろ違うよねー)
と思うことで気にしないことにした。紅夏に関して言えば、香子は紅児が幸せならばそれでいいのだ。
朝食の後やっと部屋に戻される。朱雀に抱かれて渡り廊下を通れば太陽の位置が思ったよりも西に傾いているように見えた。
『あれ? 今何時ですか?』
『そうさな。申の刻(午後三時以降)といったところだろう』
『……あー……』
そういえば朝まで抱くとかなんとか言われたような気がする。四神宮にいると寒暖差がないから時間がわかりづらい。
今日は青龍と過ごす日だったはずだ。
(まったりできるといいなぁ……)
明日も青龍と過ごした方がいいのだろうか。
部屋に戻ったら支度してもらってー……と思いながら、他のことはとりあえず考えないことにした。
ーーーーーー
念話については第一部103話参照のこと。
四神は小説家になろうの姉妹サイト、ムーンライトノベルズにも修正して載せております。
https://novel18.syosetu.com/n0386fx/
そちらで開催されている「2020 eロマンスロイヤル大賞」にて一次選考を通過しましたのでお知らせします。このまま最後まで突っ走れたらいいなと思いつつ。
いつも応援ありがとうございます。
思わず声が出た。というか声を出すことでしかこの恥ずかしさをごまかすすべはなかった。白虎はすでにいない。香子が玄武と朱雀にどろどろに愛されているのを余すことなく鑑賞し、満足そうに戻っていった。香子が意識を失うほんの少し前に、あまりにも愛しくてならないというような目をした白虎が頷いたのが見えた。そうして次に気が付いたのは今さっき。
今香子は玄武の腕の中にいる。
『香子、如何した? 腹がすいたのか?』
逞しくしっかりしている腕の中に囚われて、昨夜のことがありありと思い出されているのだ。できれば放っておいてほしかったが、きっと凄まじい空腹に見舞われるのもすぐだろう。
『……玄武様、ごはん頼んでください……』
『わかった』
玄武が少し視線を遠くへ向けた。念話で黒月たちに伝えてくれているに違いなかった。
(念話って便利だよねぇ。チートだわ……)
チートうんぬんという話をしたら四神の存在そのものがチートだ。ただ存在しているだけで気候だのなんだのが安定するとかなんなのか。そんな関係ないことを考えていないと恥ずかしさで穴を掘り始めそうである。スコップ? シャベル? ショベルカー? はないか。そういえばスコップとシャベルって元の言語が違うだけで意味は同じだった気がする。スコップはオランダ語でシャベルは英語由来だったような、とか全く関係ないことを考えることで香子は己を保っていた。
『香子……』
玄武の顔が至近距離に近づいてきて、香子はぎゅっと目をつぶった。何度口づけても、何度抱かれてもこの美貌には慣れない。胸が甘く締め付けられて、涙がこぼれそうになる。
ちゅ、ちゅと宥めるように角度を変えて口づけられる。後ろから伸びてきた手がやわやわと香子の胸を揉む。朱雀だった。揉みながら乳首を探り当てて、くにくにと指先でこねるのはやめてほしい。
『朱雀さま……やっ……』
『そなたは感じやすいな』
後ろに朱雀が密着する。二神に抱きこまれるような形になった。この時期はまだくっつかれると暑いはずなのに、二神の肌はさらさらで香子に心地良さしか与えない。
『……おなか、すいたのに……』
ようやく身体の感覚が戻ってきて、耐えがたいほどの空腹が襲ってきた。
『香子、もう少し……』
ぐうううう~~~! と、とうとう盛大に腹の虫が鳴いた。
二神が喉の奥でクククッと笑う。
『~~~~っっ! 玄武様も朱雀様もおなかすいたでしょうっ!?』
別の意味での恥ずかしさで香子は真っ赤になった。
『ああ、我も腹はすいた』
『そなたを抱いた故な……』
『~~~~っっ!』
もうなんていうか言葉にならない。香子があまりの羞恥にぷるぷる震えていると、玄武が顔を上げた。
『来たようだな』
髪をかき上げて立ち上がるその無造作な動きすらも美しい。
(ああもうこんなに素敵でかっこよくて私をどうする気なのっ!)
内心八つ当たり気味にそんなことを思いながら、香子は朱雀の腕に抱かれて居間へ移動した。
今朝のごはんもおいしかった。
最近香子がはまっているのは刀削麺である。ただ小麦粉を練った塊を包丁で削り取って麺にしているだけなはずなのにどうしてあんなにおいしいのか。
(小麦粉の配合とか、削り方とかによっても違うんだろうな)
そういえば同じ料理を同じ味付けで同じように作らせても、人によって味が変わるなんてことを聞いたことがある。
ふわふわの卵とトマトが入っている刀削麺を食べて香子はご満悦である。もちろんその他に香子の大好物の春巻や、肉包、菜包、水餃などいっぱい食べた。胃が満たされれば心もハッピーである。
『そなたは本当においしそうに食べる』
なんとも嬉しそうにそう言う玄武だってかなりの量を口に入れていた。
『おいしいですもの。ここの厨師は最高です。何か褒美を用意することってできないんですか?』
『そうだな……』
玄武と朱雀が考えるような顔をした。少しして、不機嫌そうな様子を隠そうともしない紅夏がやってきた。
『お呼びと窺いましたが』
『香子が厨師たちに褒美を与えたいそうだ』
『……そういうことでしたら趙殿が詳しいと存じます。兄と相談して参ります』
兄、というと白雲のことだろう。四神の眷属は四神の為に存在しているのではないのか。なんであんなに不機嫌そうな様子でも咎められないのか香子は不思議でならない。
(まーでも四神だもんね、その眷属だもんね。いろいろ違うよねー)
と思うことで気にしないことにした。紅夏に関して言えば、香子は紅児が幸せならばそれでいいのだ。
朝食の後やっと部屋に戻される。朱雀に抱かれて渡り廊下を通れば太陽の位置が思ったよりも西に傾いているように見えた。
『あれ? 今何時ですか?』
『そうさな。申の刻(午後三時以降)といったところだろう』
『……あー……』
そういえば朝まで抱くとかなんとか言われたような気がする。四神宮にいると寒暖差がないから時間がわかりづらい。
今日は青龍と過ごす日だったはずだ。
(まったりできるといいなぁ……)
明日も青龍と過ごした方がいいのだろうか。
部屋に戻ったら支度してもらってー……と思いながら、他のことはとりあえず考えないことにした。
ーーーーーー
念話については第一部103話参照のこと。
四神は小説家になろうの姉妹サイト、ムーンライトノベルズにも修正して載せております。
https://novel18.syosetu.com/n0386fx/
そちらで開催されている「2020 eロマンスロイヤル大賞」にて一次選考を通過しましたのでお知らせします。このまま最後まで突っ走れたらいいなと思いつつ。
いつも応援ありがとうございます。
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