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第3部 周りと仲良くしろと言われました
22.それは連れ出してもらったお礼になるのでしょうか
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かなり長い間表にいたらしい。朱雀の室に戻ると、玄武が優しい眼差しで待っていた。
『香子』
『玄武様、ただいま戻りました』
白虎が玄武に香子を渡す。その動きがあまりに自然で、思わず香子は笑ってしまった。
『香子?』
『なんでもないです』
そう言って玄武の首に縋りついた。すうーっと玄武の匂いを嗅ぐ。相変わらずほのかな、香子が心地良く感じる匂いがした。
そうして白虎を見やる。
『白虎様、朱雀様、ありがとうございました』
『礼を言われるようなことはしていない』
『いいえ。私一人では一歩もこの王城を出ることはかないません。連れ出してくれたことに感謝しています』
『そうか』
白虎は満足そうに頷いた。
そして。
『ならば我はそなたから礼を受け取ってもいいだろうか』
いたずらっ子のような目でそんなことを言った。香子は目を丸くした。礼を、と言われても自分に差し出せるようなものがあるだろうかと香子は首を傾げた。
『んー……まだ抱かれることはできませんけど、それ以外で……私のできる範囲ならいいですよ』
『そなたはいつも通りあればいい』
香子の首は曲がりっぱなしだ。ではどうすればいいのだろうか。白虎がちら、と朱雀を窺う。あ、これもしかしたら……と香子は冷汗をかいた。
白虎が一歩近づく。
『香子、そなたが兄らに抱かれている姿が見たいと伝えたことがあったな』
『は、はい……』
そういえばそんなことを以前言われた。断固拒否したけど。
香子は目を泳がせた。
今それを望まれたら逆らえない。だって外に連れ出してもらったから。夜の街を飛ぶのは、本当に楽しかったから。
『香子、そなたが兄らに抱かれている姿が見たい』
(うわあああああんっ! 卑怯だあああああっ!)
『……ずるいです』
香子は精いっぱい不機嫌そうな顔をして白虎を睨んだ。
『何がずるい?』
『私……これからもいろんなところに連れて行ってほしいです』
『そなたが望むならばどこへでも行こう』
『いっぱいわがまま言いますよ』
『そなたのわがままなどかわいいものだ』
『……見せるのは、一度きりですよ?』
香子は顔がどんどん熱くなるのを感じた。白虎はとても嬉しそうに目を細めた。
『……そのうち、そなたを抱けるというのならば頷こう』
『そ、それはそのうちです……まだ、わかりません』
今ここで返事はできない。適当な返答をするのは失礼だと思うから。白虎の手がそっと香子の頬に触れた。
『真っ赤に熟れて、とてもおいしそうだ……』
ここで色を含んだ目をするのは反則ではなかろうか。香子は思わずギュッと目を閉じた。
『……約束は、まだできないのです……』
『わかっている。そなたは誠実で、とても臆病だ。そんな約束などいくらでも反故にできるのにそうしようとはしない。だから……』
白虎の手が香子の手をそっと捕らえ、指先に口づけた。香子はこれ以上ないくらい顔が熱くなっているのに、更に全身の熱が上昇したように思えた。
『そなたが愛しくてならぬ』
(ずるい……)
四神が香子を愛するのは当然だ。だって香子は四神の花嫁で、四神は花嫁を無条件で愛するようになっているから。このことについて悩んだことはあるが悩んでもしかたない。人間だって遺伝子に操られている。本能が優秀な者を求める。四神にとってはそれが花嫁に限定されているというだけのこと。なんてわかりやすくて、なんて一途なことだろう。
(全員私のもの、なんだよね……)
四神は香子のものだ。香子の感情に振り回されて一喜一憂する。なんて不憫な神様たちだろうと香子は思う。
『……今夜だけですよ? 見せるだけです。私に触れてもいけません。守れますか?』
『触れることも許されぬのか?』
『だって、触れてもいいって言ったら……白虎様我慢できます?』
『……自信はないな』
白虎は苦笑した。
本能に逆らうすべはない。ただ見せるだけだと、香子は笑う。
『白虎様』
香子が白虎が手招きした。白虎が近づいて顔を屈める。香子はそのまま白虎の首に腕を回し、引き寄せて……。
『……そなたはなんて愛らしいのか』
『……これだけです。玄武様、朱雀様』
『香子』
それまで黙っていた玄武と朱雀に声をかける。
『……抱いてください』
これを口にするのはいまだにとても恥ずかしい。でも自分が言い出さなければこのままだと思うから。
『……朝まで離さぬぞ』
玄武のバリトンが甘く響く。この声は反則だと、香子はいつも思う。まるで全身を甘く舐められているようだ。
『……優しくしてください』
『いつも優しく抱いているではないか』
『っ』
それには反論したかったが、確かに二人がかりで抱かれているのだ。甘く狂おしいほどの”熱”を与えられ、全身が溶けてしまいそうなほど感じさせられる。そんな快感は四神に抱かれるまで知らなかった。
『……お手柔らかに』
それ以上のことはもう香子には言えなかった。
玄武にそっと床に下ろされ、甘い口づけを受けたらもう何も考えられなくなった。ただ時折、身を焦がすような白虎の視線に身もだえた。
そうして香子は翌朝、また頭を抱えることになったのだった。
『香子』
『玄武様、ただいま戻りました』
白虎が玄武に香子を渡す。その動きがあまりに自然で、思わず香子は笑ってしまった。
『香子?』
『なんでもないです』
そう言って玄武の首に縋りついた。すうーっと玄武の匂いを嗅ぐ。相変わらずほのかな、香子が心地良く感じる匂いがした。
そうして白虎を見やる。
『白虎様、朱雀様、ありがとうございました』
『礼を言われるようなことはしていない』
『いいえ。私一人では一歩もこの王城を出ることはかないません。連れ出してくれたことに感謝しています』
『そうか』
白虎は満足そうに頷いた。
そして。
『ならば我はそなたから礼を受け取ってもいいだろうか』
いたずらっ子のような目でそんなことを言った。香子は目を丸くした。礼を、と言われても自分に差し出せるようなものがあるだろうかと香子は首を傾げた。
『んー……まだ抱かれることはできませんけど、それ以外で……私のできる範囲ならいいですよ』
『そなたはいつも通りあればいい』
香子の首は曲がりっぱなしだ。ではどうすればいいのだろうか。白虎がちら、と朱雀を窺う。あ、これもしかしたら……と香子は冷汗をかいた。
白虎が一歩近づく。
『香子、そなたが兄らに抱かれている姿が見たいと伝えたことがあったな』
『は、はい……』
そういえばそんなことを以前言われた。断固拒否したけど。
香子は目を泳がせた。
今それを望まれたら逆らえない。だって外に連れ出してもらったから。夜の街を飛ぶのは、本当に楽しかったから。
『香子、そなたが兄らに抱かれている姿が見たい』
(うわあああああんっ! 卑怯だあああああっ!)
『……ずるいです』
香子は精いっぱい不機嫌そうな顔をして白虎を睨んだ。
『何がずるい?』
『私……これからもいろんなところに連れて行ってほしいです』
『そなたが望むならばどこへでも行こう』
『いっぱいわがまま言いますよ』
『そなたのわがままなどかわいいものだ』
『……見せるのは、一度きりですよ?』
香子は顔がどんどん熱くなるのを感じた。白虎はとても嬉しそうに目を細めた。
『……そのうち、そなたを抱けるというのならば頷こう』
『そ、それはそのうちです……まだ、わかりません』
今ここで返事はできない。適当な返答をするのは失礼だと思うから。白虎の手がそっと香子の頬に触れた。
『真っ赤に熟れて、とてもおいしそうだ……』
ここで色を含んだ目をするのは反則ではなかろうか。香子は思わずギュッと目を閉じた。
『……約束は、まだできないのです……』
『わかっている。そなたは誠実で、とても臆病だ。そんな約束などいくらでも反故にできるのにそうしようとはしない。だから……』
白虎の手が香子の手をそっと捕らえ、指先に口づけた。香子はこれ以上ないくらい顔が熱くなっているのに、更に全身の熱が上昇したように思えた。
『そなたが愛しくてならぬ』
(ずるい……)
四神が香子を愛するのは当然だ。だって香子は四神の花嫁で、四神は花嫁を無条件で愛するようになっているから。このことについて悩んだことはあるが悩んでもしかたない。人間だって遺伝子に操られている。本能が優秀な者を求める。四神にとってはそれが花嫁に限定されているというだけのこと。なんてわかりやすくて、なんて一途なことだろう。
(全員私のもの、なんだよね……)
四神は香子のものだ。香子の感情に振り回されて一喜一憂する。なんて不憫な神様たちだろうと香子は思う。
『……今夜だけですよ? 見せるだけです。私に触れてもいけません。守れますか?』
『触れることも許されぬのか?』
『だって、触れてもいいって言ったら……白虎様我慢できます?』
『……自信はないな』
白虎は苦笑した。
本能に逆らうすべはない。ただ見せるだけだと、香子は笑う。
『白虎様』
香子が白虎が手招きした。白虎が近づいて顔を屈める。香子はそのまま白虎の首に腕を回し、引き寄せて……。
『……そなたはなんて愛らしいのか』
『……これだけです。玄武様、朱雀様』
『香子』
それまで黙っていた玄武と朱雀に声をかける。
『……抱いてください』
これを口にするのはいまだにとても恥ずかしい。でも自分が言い出さなければこのままだと思うから。
『……朝まで離さぬぞ』
玄武のバリトンが甘く響く。この声は反則だと、香子はいつも思う。まるで全身を甘く舐められているようだ。
『……優しくしてください』
『いつも優しく抱いているではないか』
『っ』
それには反論したかったが、確かに二人がかりで抱かれているのだ。甘く狂おしいほどの”熱”を与えられ、全身が溶けてしまいそうなほど感じさせられる。そんな快感は四神に抱かれるまで知らなかった。
『……お手柔らかに』
それ以上のことはもう香子には言えなかった。
玄武にそっと床に下ろされ、甘い口づけを受けたらもう何も考えられなくなった。ただ時折、身を焦がすような白虎の視線に身もだえた。
そうして香子は翌朝、また頭を抱えることになったのだった。
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