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第3部 周りと仲良くしろと言われました
21.夢の中にいるようだと思った時もありました
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万春亭の楼台から、香子はじっと王城とその先に広がる王都を眺めた。白虎と朱雀はその大きさを変え、香子を挟むようにして傍らにある。
白虎を椅子代わりにして、燃えているような羽毛の朱雀に寄り添われる。なんという贅沢なのかと香子は思う。
白虎はいつもの、香子を包み込めるような大きさだ。朱雀は飛んでいた時と違い、白虎と同じような大きさにその身体を縮めている。普段の朱雀よりももちろんその姿は大きく、いろいろな赤の羽毛で抱きしめられていると安心感を覚えた。
(はう~もふもふ~もふもふがいっぱい~~)
白虎の毛も朱雀の羽毛もとても気持ちいい。玄武は亀だし青龍は龍だから触れてもこんなに気持ちよくはないだろう。そう思うと朱雀と白虎に挟まれるのは貴重だと思った。
『……そなに我の羽が好きか』
『……白虎様の毛も、朱雀様の羽毛もすごく気持ちいいです……』
うっとりしながら素直に答えると、何故か二神が詰まった。
『……そなにかわいいことを言うと、抱いてしまうぞ……?』
『? え? なんで……』
朱雀の声が色を含んだ。白虎はグルル……と何かに耐えているように唸る。いったい何が二人に発情を促してしまったのだろう。香子は慌てた。
『あのっ……王城の上とか、街の上とか飛ぶことはできますか? もちろん誰にも見られないように……』
『……ああ、できる』
『香子、そなたには隙がありすぎる』
二神はため息混じりにそう言うと、改めて香子を白虎の背に乗せ、景山から流れるように下りた。暗くてほとんど何も見えないが、夜の空気感とか、王城の上を飛ぶ非日常に香子の心は踊った。
『すごいすごい……私、本当に外にいるんですね……』
無意識のうちにぽろりと涙が流れた。香子は基本引きこもりだったから四神宮の中にいることはそれほど苦ではなかった。でも出てはいけないと言われたら出たくなるものではないか。元の世界の大陸とは異なるから、一人で抜け出したら何が起こるかわからなかったから出なかっただけだ。
紅児の境遇は同情に値する。でも休みの日に紅夏とデートすることができるなんて、とないものねだりをしてしまう。そんな自分が香子は嫌だった。
『……そなたが望むなら、どこへでも連れて行こう』
白虎の言葉が嬉しかった。きっと香子がもう王城にはいたくないと、誰かの領地に行きたいと望めばすぐにその願いは叶うのだろう。でも自由に外に出たいから誰かに決めるというのは違うと思うのだ。
ぽろぽろと涙がこぼれる。己はとても不安定なのだと香子は改めて自覚した。
もうだいぶ遅い時間なので王都の店もほとんど閉まっている。人通りももうあまり見られない。香子はそれらを眺めながら、自分は世界に閉じ込められてしまったような気になった。香子はぎゅっと白虎に抱き着いた。情けない話だが、本当の意味で香子の側にあってくれるのは四神だけだと理解する。
(寂しさとか、そんなことで抱かれてもいいのかな……。それは失礼じゃないのかな……)
処女ではないが、香子はまだ元の世界での倫理観に囚われていた。
(みんな、私の旦那様なんだよね……?)
四神全員が香子の夫なのだと言われてもまだ信じられない。そしてその四神の妻が香子だけなのだということも。
(私って面倒くさいな……)
自分でも自分自身が面倒臭いと香子は思う。それは言ってしまえば未知への恐怖だった。全員を夫として受け入れるなんて、これまで考えたことなどなかったから。
(夢じゃ、ないんだよね……?)
長い、長い夢を見ているようだと夜の景色を見ながら思う。今はっと目が覚めたら北京の寮の部屋にいてもおかしくはないと時折思うのだ。
『夢ではないぞ。そなたはここにいて、我らもずっとそなたの側にいる』
白虎からの応えに香子は驚いた。そういえば本性を現した身体に香子が触れていると、感覚が研ぎ澄まされて考えていることがわかると朱雀が言っていたような気がした。
『……(心の声を)聞いていたなら教えてくれればよかったのに……』
香子は真っ赤になって白虎の毛に顔を埋めた。そんなことをしても現状は変わらないが、とにかくいたたまれなかったのだ。
『……我はまだ細かくはわからぬ。どれだけそなたと想いを交わしたによっても違うだろう。……どのような理由でも早くそなたを抱きたいと思ってはいるがな』
『~~~~っっ!!』
しっかりわかっているではないか。香子は更に白虎の毛に顔を埋めた。
(もー無理……穴掘って埋まりたい……)
『……そなたの中をいっぱいにしたいものだ』
香子は無言でべちべちと白虎の背を叩いた。本当にデリカシーがない。
『……よくそんなことで女性が抱けましたね……?』
『神に抱かれるというだけで盛り上がっていたぞ』
『……ああそうですか』
確かに相手は神様で、しかもありえないほどの美丈夫。ただの性欲処理であってもみな喜んで相手をしたに違いなかった。
『……もう少し気遣いをしましょうよ。白虎様の他に三柱も素敵な神様がいらっしゃるんですから』
『……それもそうだな』
白虎は素直に同意した。そして香子はぐるうりぐるうりと王都の上を飛んでもらった。
なんともそれは幻想的で、香子はまたぽろりと涙をこぼした。
ーーーーー
本性になるとうんぬんは第二部111話参照のこと。
白虎を椅子代わりにして、燃えているような羽毛の朱雀に寄り添われる。なんという贅沢なのかと香子は思う。
白虎はいつもの、香子を包み込めるような大きさだ。朱雀は飛んでいた時と違い、白虎と同じような大きさにその身体を縮めている。普段の朱雀よりももちろんその姿は大きく、いろいろな赤の羽毛で抱きしめられていると安心感を覚えた。
(はう~もふもふ~もふもふがいっぱい~~)
白虎の毛も朱雀の羽毛もとても気持ちいい。玄武は亀だし青龍は龍だから触れてもこんなに気持ちよくはないだろう。そう思うと朱雀と白虎に挟まれるのは貴重だと思った。
『……そなに我の羽が好きか』
『……白虎様の毛も、朱雀様の羽毛もすごく気持ちいいです……』
うっとりしながら素直に答えると、何故か二神が詰まった。
『……そなにかわいいことを言うと、抱いてしまうぞ……?』
『? え? なんで……』
朱雀の声が色を含んだ。白虎はグルル……と何かに耐えているように唸る。いったい何が二人に発情を促してしまったのだろう。香子は慌てた。
『あのっ……王城の上とか、街の上とか飛ぶことはできますか? もちろん誰にも見られないように……』
『……ああ、できる』
『香子、そなたには隙がありすぎる』
二神はため息混じりにそう言うと、改めて香子を白虎の背に乗せ、景山から流れるように下りた。暗くてほとんど何も見えないが、夜の空気感とか、王城の上を飛ぶ非日常に香子の心は踊った。
『すごいすごい……私、本当に外にいるんですね……』
無意識のうちにぽろりと涙が流れた。香子は基本引きこもりだったから四神宮の中にいることはそれほど苦ではなかった。でも出てはいけないと言われたら出たくなるものではないか。元の世界の大陸とは異なるから、一人で抜け出したら何が起こるかわからなかったから出なかっただけだ。
紅児の境遇は同情に値する。でも休みの日に紅夏とデートすることができるなんて、とないものねだりをしてしまう。そんな自分が香子は嫌だった。
『……そなたが望むなら、どこへでも連れて行こう』
白虎の言葉が嬉しかった。きっと香子がもう王城にはいたくないと、誰かの領地に行きたいと望めばすぐにその願いは叶うのだろう。でも自由に外に出たいから誰かに決めるというのは違うと思うのだ。
ぽろぽろと涙がこぼれる。己はとても不安定なのだと香子は改めて自覚した。
もうだいぶ遅い時間なので王都の店もほとんど閉まっている。人通りももうあまり見られない。香子はそれらを眺めながら、自分は世界に閉じ込められてしまったような気になった。香子はぎゅっと白虎に抱き着いた。情けない話だが、本当の意味で香子の側にあってくれるのは四神だけだと理解する。
(寂しさとか、そんなことで抱かれてもいいのかな……。それは失礼じゃないのかな……)
処女ではないが、香子はまだ元の世界での倫理観に囚われていた。
(みんな、私の旦那様なんだよね……?)
四神全員が香子の夫なのだと言われてもまだ信じられない。そしてその四神の妻が香子だけなのだということも。
(私って面倒くさいな……)
自分でも自分自身が面倒臭いと香子は思う。それは言ってしまえば未知への恐怖だった。全員を夫として受け入れるなんて、これまで考えたことなどなかったから。
(夢じゃ、ないんだよね……?)
長い、長い夢を見ているようだと夜の景色を見ながら思う。今はっと目が覚めたら北京の寮の部屋にいてもおかしくはないと時折思うのだ。
『夢ではないぞ。そなたはここにいて、我らもずっとそなたの側にいる』
白虎からの応えに香子は驚いた。そういえば本性を現した身体に香子が触れていると、感覚が研ぎ澄まされて考えていることがわかると朱雀が言っていたような気がした。
『……(心の声を)聞いていたなら教えてくれればよかったのに……』
香子は真っ赤になって白虎の毛に顔を埋めた。そんなことをしても現状は変わらないが、とにかくいたたまれなかったのだ。
『……我はまだ細かくはわからぬ。どれだけそなたと想いを交わしたによっても違うだろう。……どのような理由でも早くそなたを抱きたいと思ってはいるがな』
『~~~~っっ!!』
しっかりわかっているではないか。香子は更に白虎の毛に顔を埋めた。
(もー無理……穴掘って埋まりたい……)
『……そなたの中をいっぱいにしたいものだ』
香子は無言でべちべちと白虎の背を叩いた。本当にデリカシーがない。
『……よくそんなことで女性が抱けましたね……?』
『神に抱かれるというだけで盛り上がっていたぞ』
『……ああそうですか』
確かに相手は神様で、しかもありえないほどの美丈夫。ただの性欲処理であってもみな喜んで相手をしたに違いなかった。
『……もう少し気遣いをしましょうよ。白虎様の他に三柱も素敵な神様がいらっしゃるんですから』
『……それもそうだな』
白虎は素直に同意した。そして香子はぐるうりぐるうりと王都の上を飛んでもらった。
なんともそれは幻想的で、香子はまたぽろりと涙をこぼした。
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本性になるとうんぬんは第二部111話参照のこと。
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