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第3部 周りと仲良くしろと言われました

4.思ったより気にしていました ※R15ぐらい

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 四神宮に戻ると、白虎にそのまま拉致された。
 当り前のように白虎は己の室に香子を運び、居間を通り過ぎて寝室に行こうとする。さすがに香子は慌てて止めた。

『白虎様ー! 待って待って待って! ごはん! 晩ご飯食べたいです! ばーんーごーはーんー!』
『……菓子をあれほど食べたではないか』
『お菓子とごはんは別なんです! ごはんが食べたいです!!』
『……うるさい』

 香子は目を丸くした。そんなことを言われたのは初めてだった。その隙に寝室に連れ込まれ、ベッドに押し倒されて口づけを受けた。口を閉じておけばよかったと香子は思ったが、そうしたとしても何の意味もなかっただろう。白虎の舌が奪うように口腔内を蹂躙する。その性急な口づけに、白虎は今度こそ自分を抱くつもりなのかもしれないと香子は思った。

「んんっ……」

 長い舌は香子の舌を逃がさず捕らえ、べろべろと舐められる。この世界に来るまで、口づけがこんなに官能的なものだなんて香子は知らなかった。いつのまにか漢服ははだけられ、胸が空気に触れている。香子はとても恥ずかしくなった。

『あっ、白虎、さま……』

 白虎は口づけを解くと口端から流れた唾液を舌で追った。その動きにも香子はひくり、と身を震わせる。首筋を甘噛みされ、鎖骨を舐められ、そして白虎の顔が胸に落とされそうになった時香子ははっとした。急いで両腕で胸を隠そうとする。

『……香子シャンズ、何をしている』

 不機嫌そうな声と共に白虎は香子の腕をどかそうとした。

『だって……白虎様、小さいって言ったじゃないですか! だから……』

 香子は白虎に胸を触られて『小さくないか?』と言われた時のことを気にしていた。そう、それは夢に見てしまうぐらい許せなかったのである。不用意なことを言ったという謝罪は受けたし、その後も胸に触れられることはあったが、いざ奪われるかもしれないというシチュエーションで見せたくないと思ってしまったのだ。
 白虎はぽかん、と口を開けた。
 そして心ここにあらずという体で香子の腕をどかすと、ふるふると震える乳首に口づけた。

「あっ!?」

 白虎の大きな手がもう片方の胸もやわやわと揉み始める。白虎はぺろぺろと乳首を舐めると、口で乳輪から覆うようにしてちゅううっと吸った。

「ああっ……」

 もう乳首は香子の性感帯である。もう片方の胸の先端も白虎の指がくりくりといじり、香子を感じさせようとしていた。

「白虎、さま……」

 このままされてしまうのだろうか。人形ひとがたのまま、というのは無理なのだろうか。香子は湧き上がる快感にかすむ思考をどうにか繋ぎ止めながら胸を喘がせた。
 白虎はひとしきり香子の胸を愛撫すると(もう片方の乳首もちゅうちゅう吸った)ようやく顔を上げた。

『……そなたがそなに胸の大きさを気にしていたとは知らなかった。……我が抱けばそなたの胸は大きくなるだろう。だが胸の大きさ如何に関わらず我はそなたを愛している』

 白銀の髪をかき上げた金の瞳の美丈夫に至近距離で甘く囁かれるとか、それだけで香子は昇天してしまいそうだった。顔全体が赤くなっている気がして、香子はそっと目を伏せた。

『香子』

 玄武のバリトンとは違う、もっと低いバス。声にまで酔わされながらも、そういえばと香子は白虎の先ほどの言を反芻した。

(あれ? そういえば私白虎様に小さくないとは言われてないよね? これってやっぱり私の胸って小さいって白虎様は思ってるってことだよね)

 つまり白虎は。

『うわあああああん!! 白虎様嫌い! 大っ嫌い!!』
『香子……』

 戸惑う白虎から胸を隠し、香子は泣いた。
 事実だけれどもそれは言われたくなかったのだ。香子にとってそれは本来気にするような事柄ではなかったが、白虎に『小さくないか?』と言われて気になってしまった。自覚してしまい、うっすらとあったコンプレックスをとにかく刺激されてしまったのである。
 白虎もまた困ってしまったのだろう。香子の涙をぺろぺろと舐め、目を軽く閉じさせた。
 そして。
 ぶわりと風が吹いたかと思うと本来の獣の姿となり、香子を抱き込むようにして丸くなった。香子の全身が白虎の毛皮に包まれる。
 香子はすんすんと鼻を啜った。

『……ずるいです』

 泣きながら白虎の毛皮に埋もれる。

『白虎様はずるいです……』

 もふもふの毛皮にかなうわけがないではないか。
 ようやく涙が止まり、ふと顔を上げると。寝室の入口で玄武と朱雀が所在なげに立っていた。

『え』
『……その、そなたが泣いているようで……』

 玄武が困ったように言う。そういえば香子の強い感情は四神になんとなく伝わると聞いたような気がした。香子がぼんっと赤くなる。

『あ、あの……その……大丈夫です……』

 大丈夫とは言い難いがそれ以上何も言えない。他の人からすれば些細なことだし、話を蒸し返して今度は三神に胸を愛でられても困る。
 どうしようかと思ったところでぐうううう~~~と香子のおなかが鳴った。
 そういえばまだ夕飯を食べていなかった。

『ごはん!』

 照れ隠しに叫ぶと白虎が慌てて人形を取り、みなで食堂へ移動したのだった。



ーーーーー
白虎が香子の胸について言及したのは第二部25話、夢については第二部49話参照のこと。
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