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第2部 嫁ぎ先を決めろと言われました
131.その出会いは運命にも似ていました
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香子が手配させたのは一日頤和園を貸切にするということだけ。もっと気軽に動けるのなら紅児のことは香子が連れていきたかった。だが香子の移動には沢山の人が動く。二、三日後にあそこに行きたいと言って叶えられるものではないのだ。
なのでとてつもなく遺憾だが、はなはだしく不本意ではあるが、香子は紅夏に紅児を頤和園に連れていくよう言いつけた。
『エリーザの休みの日に、清漪園へ連れて行きなさい』
『承知しました』
眉一つ動かさず拱手する紅夏が憎たらしい。一応感謝の気持ちはあるのだろうか。
『ちゃんとエリーザをエスコートしてね』
『一定』
付き添って、何からも守るよう言いつける。紅夏と共にいる際に紅児に声をかけるような命知らずはいないと思うが念の為である。
それからどうしても聞きたいことがあった。
『ねぇ、もしエリーザがセレスト王国に帰ることになったらどうするの?』
『可能であれば着いていきます』
香子はふーっと、細くゆっくりと息を吐いた。椅子になっている朱雀を振り返る。
『朱雀さま、確か眷属が他の大陸に渡る時は……』
『そうだな。大陸の神々に許可を得るという方法はあるが、それよりも”つがい”を抱いた方が早いだろう』
ああやっぱり、と香子は目を伏せた。セレスト王国からの返答は半年以内に届くことになっている。せめて紅児がこの国での成人を迎えるまでは純潔を保たせたいと香子は思っていた。
『エリーザと共に他の大陸に渡るにはそうしなければならないのですか』
『そうでなければいつ許可が下りるかわからぬ』
香子は頭を抱えたくなった。これだから神さまとかいう連中はあああああ! と叫びだしたい心境である。神にとっては一ヶ月も一年も大差ない。簡単に言ってしまえば一年も百年も一緒なのである。いくら四神の眷属が長生きだといってもそれは許容できないだろう。
『……もし、お互いが想い合った状態なら……引き離す道理はないものね』
香子は自分に言い聞かせるように呟いた。なのに。
『言い忘れていたが、あの娘は一人で海を渡ることはできぬぞ』
『え? どういうことですか』
いったい何の話かと香子は朱雀に聞き返す。
『言葉通りだ。あの娘はそなたが保護者として預かっただろう』
『え、それでどうして海を渡れなくなるんです?』
朱雀は苦笑した。相変わらず香子は自覚がない。
『香子、そなたは四神の花嫁。すでにそなたは徒人ではない』
『あああああーー!?』
朱雀の言葉にやっと香子は紅児の置かれた情況を理解した。香子は四神の花嫁であるが故に、神に準ずる存在になっている。つまり紅児は現在神の庇護下にあるのだ。そして四神の眷属の”つがい”となっている。いくら紅児が一人で帰国しようとしてもそれは不可能なのだった。
『もし……エリーザが私と知り合わなかったら、帰国できたのかしら……?』
香子はとんでもないことをしたのではないかと青くなった。朱雀が香子を後ろから優しく抱きしめる。
『あの娘一人の力で何ができたというのか。ここに連れてこなければあの娘はいずれこの国の誰かの妻となり、ただ国を思うだけであっただろう。ありもしない想定をして気に病むな』
いつになく厳しい声に香子はほっとした。
紅児が帰国するにはどうあっても香子と知り合わなければならなかったのだと言われたようで、香子は少し慰められた。
『花嫁さま。紅児は最初から花嫁さまに会う為に王都へ出てきたのです』
『ああ、そういえば、そうだったわね……』
紅夏にも言われ、香子はやっと思い出した。会える、会えないに関わらず、紅児は香子に会う為に秦皇島の村を出てきたのだ。だから、紅児が香子と知り合ったのは必然だった。
『ねぇ、紅夏。このことを貴方がエリーザに伝えることは、できる?』
『はい』
どのことか紅夏はしっかり理解しているようだった。紅夏は紅児を”つがい”として見つけてしまった。その時点で紅児の運命は決まってしまったのだろう。
『よろしくね』
『承知しました』
香子からしたら不安しかない。けれど紅児のことは紅夏に頼むしかなかった。
紅児の休みの日に二人を送り出したはいいが、その日の夜紅児が紅夏の室で過ごしたと聞き、香子はまた盛大に後悔することとなった。
ーーーーー
「貴方色に染まる」49~55話辺りです。
よろしければ紅児と紅夏の頤和園デートを見てやってくださいませー。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/977111291/934161364
なのでとてつもなく遺憾だが、はなはだしく不本意ではあるが、香子は紅夏に紅児を頤和園に連れていくよう言いつけた。
『エリーザの休みの日に、清漪園へ連れて行きなさい』
『承知しました』
眉一つ動かさず拱手する紅夏が憎たらしい。一応感謝の気持ちはあるのだろうか。
『ちゃんとエリーザをエスコートしてね』
『一定』
付き添って、何からも守るよう言いつける。紅夏と共にいる際に紅児に声をかけるような命知らずはいないと思うが念の為である。
それからどうしても聞きたいことがあった。
『ねぇ、もしエリーザがセレスト王国に帰ることになったらどうするの?』
『可能であれば着いていきます』
香子はふーっと、細くゆっくりと息を吐いた。椅子になっている朱雀を振り返る。
『朱雀さま、確か眷属が他の大陸に渡る時は……』
『そうだな。大陸の神々に許可を得るという方法はあるが、それよりも”つがい”を抱いた方が早いだろう』
ああやっぱり、と香子は目を伏せた。セレスト王国からの返答は半年以内に届くことになっている。せめて紅児がこの国での成人を迎えるまでは純潔を保たせたいと香子は思っていた。
『エリーザと共に他の大陸に渡るにはそうしなければならないのですか』
『そうでなければいつ許可が下りるかわからぬ』
香子は頭を抱えたくなった。これだから神さまとかいう連中はあああああ! と叫びだしたい心境である。神にとっては一ヶ月も一年も大差ない。簡単に言ってしまえば一年も百年も一緒なのである。いくら四神の眷属が長生きだといってもそれは許容できないだろう。
『……もし、お互いが想い合った状態なら……引き離す道理はないものね』
香子は自分に言い聞かせるように呟いた。なのに。
『言い忘れていたが、あの娘は一人で海を渡ることはできぬぞ』
『え? どういうことですか』
いったい何の話かと香子は朱雀に聞き返す。
『言葉通りだ。あの娘はそなたが保護者として預かっただろう』
『え、それでどうして海を渡れなくなるんです?』
朱雀は苦笑した。相変わらず香子は自覚がない。
『香子、そなたは四神の花嫁。すでにそなたは徒人ではない』
『あああああーー!?』
朱雀の言葉にやっと香子は紅児の置かれた情況を理解した。香子は四神の花嫁であるが故に、神に準ずる存在になっている。つまり紅児は現在神の庇護下にあるのだ。そして四神の眷属の”つがい”となっている。いくら紅児が一人で帰国しようとしてもそれは不可能なのだった。
『もし……エリーザが私と知り合わなかったら、帰国できたのかしら……?』
香子はとんでもないことをしたのではないかと青くなった。朱雀が香子を後ろから優しく抱きしめる。
『あの娘一人の力で何ができたというのか。ここに連れてこなければあの娘はいずれこの国の誰かの妻となり、ただ国を思うだけであっただろう。ありもしない想定をして気に病むな』
いつになく厳しい声に香子はほっとした。
紅児が帰国するにはどうあっても香子と知り合わなければならなかったのだと言われたようで、香子は少し慰められた。
『花嫁さま。紅児は最初から花嫁さまに会う為に王都へ出てきたのです』
『ああ、そういえば、そうだったわね……』
紅夏にも言われ、香子はやっと思い出した。会える、会えないに関わらず、紅児は香子に会う為に秦皇島の村を出てきたのだ。だから、紅児が香子と知り合ったのは必然だった。
『ねぇ、紅夏。このことを貴方がエリーザに伝えることは、できる?』
『はい』
どのことか紅夏はしっかり理解しているようだった。紅夏は紅児を”つがい”として見つけてしまった。その時点で紅児の運命は決まってしまったのだろう。
『よろしくね』
『承知しました』
香子からしたら不安しかない。けれど紅児のことは紅夏に頼むしかなかった。
紅児の休みの日に二人を送り出したはいいが、その日の夜紅児が紅夏の室で過ごしたと聞き、香子はまた盛大に後悔することとなった。
ーーーーー
「貴方色に染まる」49~55話辺りです。
よろしければ紅児と紅夏の頤和園デートを見てやってくださいませー。
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