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第2部 嫁ぎ先を決めろと言われました
130.実はこんな話もしていました
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唐の国は香子の知っている唐の国とは異なる。この世界の唐は、隋の後実に1400年も続いている。なので香子が知っている観光地も存在しているのかどうかわからなかった。
先日皇太后と雑談をした時、王城の外にある施設についての話になった。以前頤和園や円明園、香山公園などがあることは香子も聞いていた。(施設の名前は一部異なる)それらの施設を見に行けないのかと香子が尋ねた時、そこまでの交通や施設の状態などは大まかに聞いてあった。そこで香子が気になっていたのは頤和園である。
『清漪園(頤和園)ですか』
『さよう。皇族の離宮があるが、皇族が使用しない時は有料での利用が許可されておる』
『……というと、清漪園全てを貸し切るという形ですか』
『さよう』
皇太后の返答に香子は冷汗を流した。元の世界で頤和園に行ったことがある香子はその広さについて大体理解している。香子が訪問したのは三回ぐらい。毎回一時間以上歩き回ったが、全然見れていないかんじがした。つまりはそれほど広いのである。
(確か朝から晩までかけないと見回れないんじゃ……)
頤和園の広さを言ってもピンとこないだろうが、その敷地の四分の三を占める昆明湖をぐるりと一周した友人が香子にはいた。確か昆明湖を黙々と一周して一時間以上かかったと聞ていることから、その広さが少しはイメージできるのではないかと思われる。
そこを一日貸し切るとしたら一体どれぐらいの金子を積まなければいけないのだろう。
『……老佛爷はおいでになったことがありますか?』
『先帝と共に訪れたことなら何度かある。花嫁さまの世界にも清漪園は存在していたのかえ?』
『はい。名称は違いましたがありました。何度か中に入ったことがあります』
皇太后が目を見開いた。
『ほほう。確か花嫁さまは学生であったと聞いていたが……』
『元の世界のこの国にはもう皇帝はいないのです。かつて皇族や王の為の施設だったところは有料で一般公開されている場所もあります。この王城も一部は公開されています』
『なんとも不思議な話よの』
『そうですね』
一般の老百姓(庶民)が絶対に足を踏み入れることができない場所が、有料とはいえ一般公開されているなど想像もつかないだろう。すでに話していることではあるが、何度聞いても皇帝がいない国というのが全く考えられないようだった。
『その清漪園に入るにはいかほど必要なのでしょうか』
香子は皇族ではないのでお金を払わなければいけないだろうと思い尋ねると、皇太后はへんな顔をした。
『……花嫁さま。妾の思い違いであればよいのじゃが……もしや……』
『申し上げます! 花嫁さま! 四神とその花嫁、そして眷属の方々におかれましては国内全ての場所においでになることが可能です!』
延夕玲が叩頭し、叫ぶように告げる。香子はその剣幕に、一瞬呆気に取られた。
『そ、そうなのね……ありがとう』
『はい、たいへん申し訳ありません!』
夕玲の耳が真っ赤になっている。香子はこの世界の常識というものを知らない。本来ならば夕玲に先に聞いておくべきことだったのかもしれないが、それすらも香子は知らなかった。この状態はまずいと香子は思う。
『老佛爷、申し訳ありません。四神の花嫁などと言われておりますが、私は未だ自分の立場がよくわかっていないのです』
『ほ、ほ……花嫁さまにも困ったものじゃ』
『お恥ずかしいかぎりです』
そう言いながら扇子で口元を覆い、夕玲に元の位置に戻るよう目配せした。これについて夕玲に咎はない。
『話を戻しますが、そうすると私が清漪園に行きたいと言えば行くことができるのですか』
『花嫁さまの希望であれば聞かぬわけにもいかぬじゃろう。ただ、すぐというのは難しい。手配をして、早くて半月後というところじゃろうな』
『……そうですよねぇ』
そんなに先か、と香子は落胆したが、先ほどの夕玲の言葉を思い出した。
『もし、もしもですが……四神の眷属が誰かを連れて清漪園に行くことは可能ですか?』
『連れにもよろうが、可能であろうな』
香子はにんまりした。
『老佛爷、ありがとうございます。此度もたいへん勉強になりました。またお茶をしにきてもいいですか?』
『ほほ……花嫁さまにはかなわぬ。またこの老人の無聊を慰めにいらしてくだされ』
『はい、是非!』
先日皇太后を訪ねた時、香子はこんな話もしていたのだった。
四神宮に戻ってから、先ほどまで椅子にしていた玄武に香子は声をかけた。
『玄武さま』
『香子?』
『私、エリーザにこの国を見せたいんです。村での生活はたいへんだったと思います。あの子がこの国を離れる時、少しでもこの国の美しいところを覚えていてくれたらいいなって……』
『それで清漪園に行かせたいのか』
『はい。いずれ、私たちも参りましょう。玄武さまたちともじっくり見て回りたいです』
『かわいいことを言う』
紅児を楽しませたいのだと言えば紅夏も素直に動く。そうして紅児のお休みの日、紅夏と共に出かける紅児を香子は微笑ましく見送った。
ーーーー
頤和園の面積 290万㎡ 東京ディズニリゾート全体で約200万㎡と聞きました。それより広いという。。。
「貴方色に染まる」48、49話辺りです。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/977111291/934161364
先日皇太后と雑談をした時、王城の外にある施設についての話になった。以前頤和園や円明園、香山公園などがあることは香子も聞いていた。(施設の名前は一部異なる)それらの施設を見に行けないのかと香子が尋ねた時、そこまでの交通や施設の状態などは大まかに聞いてあった。そこで香子が気になっていたのは頤和園である。
『清漪園(頤和園)ですか』
『さよう。皇族の離宮があるが、皇族が使用しない時は有料での利用が許可されておる』
『……というと、清漪園全てを貸し切るという形ですか』
『さよう』
皇太后の返答に香子は冷汗を流した。元の世界で頤和園に行ったことがある香子はその広さについて大体理解している。香子が訪問したのは三回ぐらい。毎回一時間以上歩き回ったが、全然見れていないかんじがした。つまりはそれほど広いのである。
(確か朝から晩までかけないと見回れないんじゃ……)
頤和園の広さを言ってもピンとこないだろうが、その敷地の四分の三を占める昆明湖をぐるりと一周した友人が香子にはいた。確か昆明湖を黙々と一周して一時間以上かかったと聞ていることから、その広さが少しはイメージできるのではないかと思われる。
そこを一日貸し切るとしたら一体どれぐらいの金子を積まなければいけないのだろう。
『……老佛爷はおいでになったことがありますか?』
『先帝と共に訪れたことなら何度かある。花嫁さまの世界にも清漪園は存在していたのかえ?』
『はい。名称は違いましたがありました。何度か中に入ったことがあります』
皇太后が目を見開いた。
『ほほう。確か花嫁さまは学生であったと聞いていたが……』
『元の世界のこの国にはもう皇帝はいないのです。かつて皇族や王の為の施設だったところは有料で一般公開されている場所もあります。この王城も一部は公開されています』
『なんとも不思議な話よの』
『そうですね』
一般の老百姓(庶民)が絶対に足を踏み入れることができない場所が、有料とはいえ一般公開されているなど想像もつかないだろう。すでに話していることではあるが、何度聞いても皇帝がいない国というのが全く考えられないようだった。
『その清漪園に入るにはいかほど必要なのでしょうか』
香子は皇族ではないのでお金を払わなければいけないだろうと思い尋ねると、皇太后はへんな顔をした。
『……花嫁さま。妾の思い違いであればよいのじゃが……もしや……』
『申し上げます! 花嫁さま! 四神とその花嫁、そして眷属の方々におかれましては国内全ての場所においでになることが可能です!』
延夕玲が叩頭し、叫ぶように告げる。香子はその剣幕に、一瞬呆気に取られた。
『そ、そうなのね……ありがとう』
『はい、たいへん申し訳ありません!』
夕玲の耳が真っ赤になっている。香子はこの世界の常識というものを知らない。本来ならば夕玲に先に聞いておくべきことだったのかもしれないが、それすらも香子は知らなかった。この状態はまずいと香子は思う。
『老佛爷、申し訳ありません。四神の花嫁などと言われておりますが、私は未だ自分の立場がよくわかっていないのです』
『ほ、ほ……花嫁さまにも困ったものじゃ』
『お恥ずかしいかぎりです』
そう言いながら扇子で口元を覆い、夕玲に元の位置に戻るよう目配せした。これについて夕玲に咎はない。
『話を戻しますが、そうすると私が清漪園に行きたいと言えば行くことができるのですか』
『花嫁さまの希望であれば聞かぬわけにもいかぬじゃろう。ただ、すぐというのは難しい。手配をして、早くて半月後というところじゃろうな』
『……そうですよねぇ』
そんなに先か、と香子は落胆したが、先ほどの夕玲の言葉を思い出した。
『もし、もしもですが……四神の眷属が誰かを連れて清漪園に行くことは可能ですか?』
『連れにもよろうが、可能であろうな』
香子はにんまりした。
『老佛爷、ありがとうございます。此度もたいへん勉強になりました。またお茶をしにきてもいいですか?』
『ほほ……花嫁さまにはかなわぬ。またこの老人の無聊を慰めにいらしてくだされ』
『はい、是非!』
先日皇太后を訪ねた時、香子はこんな話もしていたのだった。
四神宮に戻ってから、先ほどまで椅子にしていた玄武に香子は声をかけた。
『玄武さま』
『香子?』
『私、エリーザにこの国を見せたいんです。村での生活はたいへんだったと思います。あの子がこの国を離れる時、少しでもこの国の美しいところを覚えていてくれたらいいなって……』
『それで清漪園に行かせたいのか』
『はい。いずれ、私たちも参りましょう。玄武さまたちともじっくり見て回りたいです』
『かわいいことを言う』
紅児を楽しませたいのだと言えば紅夏も素直に動く。そうして紅児のお休みの日、紅夏と共に出かける紅児を香子は微笑ましく見送った。
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頤和園の面積 290万㎡ 東京ディズニリゾート全体で約200万㎡と聞きました。それより広いという。。。
「貴方色に染まる」48、49話辺りです。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/977111291/934161364
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