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第2部 嫁ぎ先を決めろと言われました
102.恥ずかしくてたまらないのです
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心地いい流れに身をゆだねているような感覚。青龍の腕の中で目を閉じるといつもそうだ。玄武や朱雀の腕の中とは違う安心感に香子はうっとりと身体を擦り寄せた。
先ほどの皇太后からの手紙は延夕玲が後で持ち帰ってきてくれるだろう。今日のこと、先日皇太后から受け取った手紙の内容などを反芻する。
皇帝と皇后がうまくいっていないというのは残念ながらよくある話だ。だがそれによって皇后が四神と花嫁のことを理解していないのは由々しきことである。
この国が四神の守護によって長く続いていることは間違いない。ただあまりにも長く安定して続いている為、四神を軽視する者もいるのだろう。今までは四神も年始の三日間王城で過ごすだけだったから皇后が四神の存在を正しく理解していなくてもそれほど問題はなかった。だが四神の花嫁が降臨し、一年間王城で暮らすことになった。
ふたを開けてみればなんということはない。皇太后がわざわざ王城に戻ってきたのはこの国を憂えてのことだったのだ。
先日受け取った手紙には現皇帝への教育を怠ったこと(帝王学などを教えるのは先帝のつとめだと思う)、皇帝と皇后の不仲により皇后が四神と花嫁のことを正しく理解していないことへの謝罪と、これから想定される無礼に対しての温情を願うということが書かれていた。流し読みをすると些か無礼ではあるが、子と国を思っての内容と思えば同情に値すると香子は思った。その上で皇后が先日話していた布の件で声をかけてくるだろうということ。その際皇太后が同席すること。決して香子に危害は加えさせないし、もし暴言を吐くようなことがあれば皇后の処分も辞さないなど皇太后としての覚悟のほどが窺えた。
打ち合わせをしたわけではないが皇帝が飛び込んでくるだろうことは想定内だったし、その皇帝ができるだけ穏便に済ませようと適当な返事をすることも予想はできた。
四神とその花嫁は人の身分制度やその営みとは別枠であり、皇族からすれば国の守護として重要な存在のはずである。だというのに四神の怒りを買えばどうなるのか考えられなかったのだろうか。
(これだから平和ボケは……)
元の世界のどこかの国で聞いたような文句だなと思いながら香子は青龍の胸に頭をぐりぐりと擦りつけた。
皇太后は先帝に四神の存在の重要さをきちんと教わってきたのだろう。それも花嫁が降臨した際の注意なども含めて。
今回の件は皇太后に預けた。今頃皇帝と皇后はたいそう絞られているに違いない。それで改善すればよし、しなければまた皇太后と相談する必要があるだろう。皇帝と皇后には『他国へ行ってもいいのだぞ?』とは言ったが香子としてはこの国に留まりたい。
(他国って、どことどこだっけ……?)
確か唐の他に四カ国あった。シーザン、オロス、バージースータン、ボースーのはずである。オロスとバージースータン、シーザンはわからないでもないがボースーって何だと香子は思う。
(まぁでも日本もないしね)
正確な地図を見ないことには確認できないが朝鮮半島も存在しないはずだ。もしくは他国の領土なのか。そもそもの話正確な地図というものは存在するのか。そこからして未知数である。
と、正直どうでもいいことを考えている間にじわじわと先ほどのやりとりが思い出され恥ずかしくなってきた。
香子からしたらせいいっぱい中国時代劇などの言い回しを思い出して、自分なりにアレンジした科白をしゃべったつもりである。いわゆる皇后や皇太后などの話し方を真似て言いつけた形だ。正直高笑いもできそうだった。
『ううううおおおお……』
己の口調を思い出し羞恥に悶える香子の髪を青龍の手が優しく撫でる。いつのまにか飾られていた簪などは全て取られ留めていたピンのようなものなどもなくなっており、赤い髪がさらさらと背を流れている。
(いつのまに……)
侍女たちに取ってもらう時もそれなりに時間がかかるのにこれも魔法のようなものなのだろうか。しかしそれよりも目先の羞恥である。黒月や皇太后付の女官の王にはさぞかしおかしく聞こえたに違いない。
『うあーん! もう黒月さんの顔見られないーーー!!』
『なぜ』
『だって私のあの物言い!! 超えらそうじゃないですか! って青龍さまは一部だけでしたね……』
青龍に聞かれたのが最後のやりとりだけなのが救いとは言えた。
が。
『いや、聞こえてはいたが江緑(皇太后)に止められてな』
すぐにでもそなたを連れ帰りたかった、と言われてしまい香子は真っ赤になった。どこまで四神は聞こえているのだろうか。それはともかく。
『ううううう……』
穴を掘りたい。スコップがほしい。深く深く埋まりたい。
悶えていたら改めて青龍の腕がきつく香子を抱きしめた。
『最初はどこにでもいる娘のように見えたが……そなたは日々我を魅了する。これ以上我を夢中にさせてどうする気だ?』
耳元で涼やかな声が香子を口説く。
『う……あ……』
これ以上ないほど赤くなった香子はその腕に囚われ、全身を甘く舐られてしまったのだった。
『さ、最後まではだめっ……!』
『……わかっている。だがそろそろ……いいだろう?』
近日中に青龍に一日中抱かれるのは避けられないようである。
───
周辺国についてはプチプリにある番外編「異世界で暮らしてます[四神番外]」を参照してください。
https://puchi-puri.jp/books/113
先ほどの皇太后からの手紙は延夕玲が後で持ち帰ってきてくれるだろう。今日のこと、先日皇太后から受け取った手紙の内容などを反芻する。
皇帝と皇后がうまくいっていないというのは残念ながらよくある話だ。だがそれによって皇后が四神と花嫁のことを理解していないのは由々しきことである。
この国が四神の守護によって長く続いていることは間違いない。ただあまりにも長く安定して続いている為、四神を軽視する者もいるのだろう。今までは四神も年始の三日間王城で過ごすだけだったから皇后が四神の存在を正しく理解していなくてもそれほど問題はなかった。だが四神の花嫁が降臨し、一年間王城で暮らすことになった。
ふたを開けてみればなんということはない。皇太后がわざわざ王城に戻ってきたのはこの国を憂えてのことだったのだ。
先日受け取った手紙には現皇帝への教育を怠ったこと(帝王学などを教えるのは先帝のつとめだと思う)、皇帝と皇后の不仲により皇后が四神と花嫁のことを正しく理解していないことへの謝罪と、これから想定される無礼に対しての温情を願うということが書かれていた。流し読みをすると些か無礼ではあるが、子と国を思っての内容と思えば同情に値すると香子は思った。その上で皇后が先日話していた布の件で声をかけてくるだろうということ。その際皇太后が同席すること。決して香子に危害は加えさせないし、もし暴言を吐くようなことがあれば皇后の処分も辞さないなど皇太后としての覚悟のほどが窺えた。
打ち合わせをしたわけではないが皇帝が飛び込んでくるだろうことは想定内だったし、その皇帝ができるだけ穏便に済ませようと適当な返事をすることも予想はできた。
四神とその花嫁は人の身分制度やその営みとは別枠であり、皇族からすれば国の守護として重要な存在のはずである。だというのに四神の怒りを買えばどうなるのか考えられなかったのだろうか。
(これだから平和ボケは……)
元の世界のどこかの国で聞いたような文句だなと思いながら香子は青龍の胸に頭をぐりぐりと擦りつけた。
皇太后は先帝に四神の存在の重要さをきちんと教わってきたのだろう。それも花嫁が降臨した際の注意なども含めて。
今回の件は皇太后に預けた。今頃皇帝と皇后はたいそう絞られているに違いない。それで改善すればよし、しなければまた皇太后と相談する必要があるだろう。皇帝と皇后には『他国へ行ってもいいのだぞ?』とは言ったが香子としてはこの国に留まりたい。
(他国って、どことどこだっけ……?)
確か唐の他に四カ国あった。シーザン、オロス、バージースータン、ボースーのはずである。オロスとバージースータン、シーザンはわからないでもないがボースーって何だと香子は思う。
(まぁでも日本もないしね)
正確な地図を見ないことには確認できないが朝鮮半島も存在しないはずだ。もしくは他国の領土なのか。そもそもの話正確な地図というものは存在するのか。そこからして未知数である。
と、正直どうでもいいことを考えている間にじわじわと先ほどのやりとりが思い出され恥ずかしくなってきた。
香子からしたらせいいっぱい中国時代劇などの言い回しを思い出して、自分なりにアレンジした科白をしゃべったつもりである。いわゆる皇后や皇太后などの話し方を真似て言いつけた形だ。正直高笑いもできそうだった。
『ううううおおおお……』
己の口調を思い出し羞恥に悶える香子の髪を青龍の手が優しく撫でる。いつのまにか飾られていた簪などは全て取られ留めていたピンのようなものなどもなくなっており、赤い髪がさらさらと背を流れている。
(いつのまに……)
侍女たちに取ってもらう時もそれなりに時間がかかるのにこれも魔法のようなものなのだろうか。しかしそれよりも目先の羞恥である。黒月や皇太后付の女官の王にはさぞかしおかしく聞こえたに違いない。
『うあーん! もう黒月さんの顔見られないーーー!!』
『なぜ』
『だって私のあの物言い!! 超えらそうじゃないですか! って青龍さまは一部だけでしたね……』
青龍に聞かれたのが最後のやりとりだけなのが救いとは言えた。
が。
『いや、聞こえてはいたが江緑(皇太后)に止められてな』
すぐにでもそなたを連れ帰りたかった、と言われてしまい香子は真っ赤になった。どこまで四神は聞こえているのだろうか。それはともかく。
『ううううう……』
穴を掘りたい。スコップがほしい。深く深く埋まりたい。
悶えていたら改めて青龍の腕がきつく香子を抱きしめた。
『最初はどこにでもいる娘のように見えたが……そなたは日々我を魅了する。これ以上我を夢中にさせてどうする気だ?』
耳元で涼やかな声が香子を口説く。
『う……あ……』
これ以上ないほど赤くなった香子はその腕に囚われ、全身を甘く舐られてしまったのだった。
『さ、最後まではだめっ……!』
『……わかっている。だがそろそろ……いいだろう?』
近日中に青龍に一日中抱かれるのは避けられないようである。
───
周辺国についてはプチプリにある番外編「異世界で暮らしてます[四神番外]」を参照してください。
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