上 下
1 / 59

プロローグ

しおりを挟む
 小さい頃から女子ではなく男子が恋愛対象だった。
 でもそれは普通ではないのだと知ったのは5歳の頃。それからは男子に恋をしても隠してきた。
 それでも想いを止めることはできなかった。
 好きな子ができた。彼は勇者になるのだと、身体を鍛えていた。

「クルト、お前も俺のパーティーに入れ。そして一緒に魔王を倒すんだ!」

 好きな子にそう言われてとても嬉しかった。正直魔王なんてどうでもよかったけど、彼と一緒にいられるならばとがんばって剣の練習をした。そうして張り切ったせいか、僕の身体は彼よりもでかくなってしまった。
 でも彼は気にしないでいてくれた。
 15歳になって彼と王都へ向かった。
 石に埋まっているという勇者の剣を抜く為だ。その剣を抜けた者が勇者となり、魔王を倒す旅に出るのだという。
 今まで何百人という男性が勇者の剣を抜こうとしたけど誰も抜けなかったらしい。彼に言われて僕もその剣を引っ張ってみたら、なんと剣はなんの抵抗もなく抜けてしまった。
 その時の彼の顔が忘れられない。
 彼は顔を引きつらせて「おめでとう」と言ってくれたけど、逃げていってしまった。追いたかった。でももう追ったとしても何を言ったらいいのかわからなかった。
 王城の関係者という人たちに「おめでとう、勇者の誕生だ!」と祝われながら、僕は失恋したことを知った。
 そして僕は勇者になった。
 なんで魔王を倒さなければいけないのかはわからなかった。
 魔王がいると魔族や魔物が増える。それらは人間の害にしかならないから魔王を倒せと言われた。
 僕はもうどうでもよかった。
 僕はそこそこ見目がよかったらしく(ブロンドの短髪で、目は青い)、王女である白魔法使いが率先して着いていきます! と手を上げた。必然的にその友人である黒魔法使い、王女の護衛を担っている女剣士、王女の侍女である拳闘士も付いてくることになり、僕たちは魔王を倒す旅に出させられたのだった。
 魔族や魔物を倒すのはかまわなかった。でも毎晩のように誰かに夜這いをかけられるのには辟易した。

「もっと自分を大事にしてください」

 そう言って最初の頃は帰していたのだが、そのうち寝ている間に添い寝されたりと気が抜けない日々が続いた。
 きっと僕が普通の男だったらウハウハなハーレム状態だったのだろうが、あいにく僕は女性には全く勃たなかった。それで愛想をつかしてくれればいいものを、王女たちは自分たちのいいように解釈した。
 曰く、勇者様は高潔なのだと。
 そんなわけない。僕はストレスや性欲を抑えようと鍛錬を続けているせいか、身体はムキムキマッチョになってしまった。でも顔は王女たちの好みらしく、彼女たちが諦めてくれる気配はない。
 僕は男性が恋愛対象だし、しかも僕の方が王女たちのように誰かに抱かれたいと思っていた。王女たちが夜這いをかけてくるから自慰もできず、妄想はどんどん肥大していった。
 もう、魔物でも魔族でもいいから僕をめちゃくちゃに犯してくれとまで思っていた。
 でも魔物も魔族も僕よりはるかに弱くて……。
 旅をし始めて三年、ようやく僕たちは魔王城に辿り着いた。
 僕はもう魔王に殺されたいとさえ思っていた。だって王女が、魔王を倒したら結婚しましょう! とか言うんだ。しかも友人も女剣士も侍女も妾として娶ってほしいとかいうし。
 もう勘弁してほしかった。
 だから、この先は危険だからと彼女たちを魔法で王城へ帰した。そう、そんなすごい魔法も持っているのに、僕の望みはかなわない。
 魔王城に足を踏み入れる。
 魔王城の入口にあった魔法陣が起動した。あれ? と思った時には、僕は広間にいた。
 そこには玉座があり、王冠を頭に乗せた妖艶な美女が腰掛けていた。

「よく来た、勇者よ。そなたの戦いぶり見ていたぞ」

 僕は剣を下げたままだった。それが魔王だということはわかった。魔王も女性だったらしい。

「そなたは魅力的だ。どうだ、私と結婚してこの魔の国を治めてはくれぬか?」

 僕はその場に崩れ落ち、泣いた。

「な、なんで女性ばっかなんだよおおおーーー!!」

 そんなこともうどうでもいいから、早く殺してほしかった。


ーーーーー
新連載ですー。
ビッチ勇者受け、魔王+複数攻め。いつものストレスなくエロエロ仕様で突っ走ります(ぉぃ
本日中にもう一話上げられたら上げます。よろろんですー。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~

さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。 そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。 姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。 だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。 その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。 女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。 もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。 周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか? 侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈

めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。 しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈ 記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。 しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。 異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆! 推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!

田舎の雑貨店~姪っ子とのスローライフ~

なつめ猫
ファンタジー
唯一の血縁者である姪っ子を引き取った月山(つきやま) 五郎(ごろう) 41歳は、住む場所を求めて空き家となっていた田舎の実家に引っ越すことになる。 そこで生活の糧を得るために父親が経営していた雑貨店を再開することになるが、その店はバックヤード側から店を開けると異世界に繋がるという謎多き店舗であった。 少ない資金で仕入れた日本製品を、異世界で販売して得た金貨・銀貨・銅貨を売り資金を増やして設備を購入し雑貨店を成長させていくために奮闘する。 この物語は、日本製品を異世界の冒険者に販売し、引き取った姪っ子と田舎で暮らすほのぼのスローライフである。 小説家になろう 日間ジャンル別   1位獲得! 小説家になろう 週間ジャンル別   1位獲得! 小説家になろう 月間ジャンル別   1位獲得! 小説家になろう 四半期ジャンル別  1位獲得! 小説家になろう 年間ジャンル別   1位獲得! 小説家になろう 総合日間 6位獲得! 小説家になろう 総合週間 7位獲得!

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…

月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた… 転生したと気づいてそう思った。 今世は周りの人も優しく友達もできた。 それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。 前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。 前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。 しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。 俺はこの幸せをなくならせたくない。 そう思っていた…

処理中です...