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37.そんなベタなシチュなんてかえって想像できませんでした
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その日の夜は特に話もせず、ヴィクトール様に押し倒された。マリーンのことを聞きたかったのだけど、ヴィクトール様も調査していなかったのだろう。なんか誤魔化されたような気がしないでもなかったが、ヴィクトール様に求められるのは嬉しくも感じられるからそのまま流された。
ええ、チョロインですとも。
それから二日ほど経った夜、ヴィクトール様が難しい顔でこう言った。
「……マリーン嬢は、おそらく最近覚醒した転生者ではないかと思う」
「ええええ」
衝撃です。
「すいませんが、その根拠は……?」
「私と王太子が式を挙げた頃までは特に目立った動きはないが、その後乗馬中に一度倒れている。それから明らかに以前と行動が変わっている」
私は首を傾げた。以前のマリーンはどんなことをしていたっけ。
「具体的にはどのような行動を?」
「そうだな……ルガリシ男爵家に行ったり、修道院を見に行ったりしている。婚約者が亡くなって喪に服すと言って学園を休み、王立図書館に頻繁に足を伸ばしているな」
「え? マリーンの婚約者が亡くなったんですか?」
「小説の中にも記述があったはずだ。元々王家の遠縁の娘の婚約者は病弱であったと」
「それで最終的には王太子とくっつくんですか」
「小説の通りならな」
でもすでに予定外のことばかり起こっている。となるとどうなってしまうのか全く読めない。
なんたって一番のイレギュラーは、ヴィクトーリア様が王太子と結婚しているということではないだろうか。これではどうやってもマリーンが王太子と結婚することはできない。
「マリーンが転生者だったとして、どうするんですか?」
「さぁな」
「え?」
「私はマリーン嬢の行動は咎めないと言った。あとは彼女がどう動くかだろう」
「まぁ、そうですけど……」
なんか釈然としない。絶対ヴィクトーリア様が何かしているような気がするからかもしれない。
「ローゼに危害が加えられるようなことにならなければ私はかまわん」
「……そ、そう、ですか……」
私はちら、と両腕にはまった腕輪を見た。シンプルで、光の加減によっては何もつけていないように見える腕輪はいわゆる魔道具なのだと思う。この腕輪は絶対に外れないと公爵もヴィクトーリア様も言っていたから、私が危害を加えられるようなシチュエーションは訪れないだろう。
その夜もヴィクトール様の腕の中で甘く啼かされた。そういえば王太子っていつからまたやってくるんだろうか。
また月の物がきて、それがそろそろ終わるかなという頃にまたマリーンが訪ねてきた。ヴィクトーリア様はありがたくもマリーンと二人きりにしてくれた。
「ローゼ、元気だった?」
「うーん、普通、かしら。可もなく不可もなくってところね。王太子に会わなくて済むのは気が楽だけど……」
「あんなに好き合っていたのに、なんで嫌になっちゃったの?」
それは当然の疑問かもしれない。
「好き合ってたって……王太子が私に本気だったはずはないし、それにあの卒業記念パーティーでは、私が会場に足を踏み入れる為の許可を取っていなかったっていうのよ? 咎められたら即牢屋行きじゃない。百年の恋も冷めてしまったわ」
「まぁ……それはひどいわね」
「でしょう? だからね、私は助けてくださったヴィクトーリア様に恩を感じているの」
「じゃあ、王太子殿下のことはもうなんとも思っていないのね?」
「ええ」
「そう……」
マリーンはそっと目を伏せた。そういえばマリーンは王太子が好きだと言っていたっけ。事実しか言ってないけど、傷つけてしまったのだろうか。
「ローゼ!」
え?
私は目を疑った。応接間のカーテンの影から、なんと王太子が出てきた。確かにあのカーテンとても大きいけど、あそこに隠れてた王太子ってなんだろう。もしかしてコントかなにかかな。
王太子はつかつかとこちらに近づいてくると、ソファに腰掛けたまま動けないでいる私の手をがしっと握った。
あれ? なんで? 私事実しか言ってないよ? 大丈夫だよね? ね?
よくわからないけど、助けてヴィクトーリア様ぁ!
ええ、チョロインですとも。
それから二日ほど経った夜、ヴィクトール様が難しい顔でこう言った。
「……マリーン嬢は、おそらく最近覚醒した転生者ではないかと思う」
「ええええ」
衝撃です。
「すいませんが、その根拠は……?」
「私と王太子が式を挙げた頃までは特に目立った動きはないが、その後乗馬中に一度倒れている。それから明らかに以前と行動が変わっている」
私は首を傾げた。以前のマリーンはどんなことをしていたっけ。
「具体的にはどのような行動を?」
「そうだな……ルガリシ男爵家に行ったり、修道院を見に行ったりしている。婚約者が亡くなって喪に服すと言って学園を休み、王立図書館に頻繁に足を伸ばしているな」
「え? マリーンの婚約者が亡くなったんですか?」
「小説の中にも記述があったはずだ。元々王家の遠縁の娘の婚約者は病弱であったと」
「それで最終的には王太子とくっつくんですか」
「小説の通りならな」
でもすでに予定外のことばかり起こっている。となるとどうなってしまうのか全く読めない。
なんたって一番のイレギュラーは、ヴィクトーリア様が王太子と結婚しているということではないだろうか。これではどうやってもマリーンが王太子と結婚することはできない。
「マリーンが転生者だったとして、どうするんですか?」
「さぁな」
「え?」
「私はマリーン嬢の行動は咎めないと言った。あとは彼女がどう動くかだろう」
「まぁ、そうですけど……」
なんか釈然としない。絶対ヴィクトーリア様が何かしているような気がするからかもしれない。
「ローゼに危害が加えられるようなことにならなければ私はかまわん」
「……そ、そう、ですか……」
私はちら、と両腕にはまった腕輪を見た。シンプルで、光の加減によっては何もつけていないように見える腕輪はいわゆる魔道具なのだと思う。この腕輪は絶対に外れないと公爵もヴィクトーリア様も言っていたから、私が危害を加えられるようなシチュエーションは訪れないだろう。
その夜もヴィクトール様の腕の中で甘く啼かされた。そういえば王太子っていつからまたやってくるんだろうか。
また月の物がきて、それがそろそろ終わるかなという頃にまたマリーンが訪ねてきた。ヴィクトーリア様はありがたくもマリーンと二人きりにしてくれた。
「ローゼ、元気だった?」
「うーん、普通、かしら。可もなく不可もなくってところね。王太子に会わなくて済むのは気が楽だけど……」
「あんなに好き合っていたのに、なんで嫌になっちゃったの?」
それは当然の疑問かもしれない。
「好き合ってたって……王太子が私に本気だったはずはないし、それにあの卒業記念パーティーでは、私が会場に足を踏み入れる為の許可を取っていなかったっていうのよ? 咎められたら即牢屋行きじゃない。百年の恋も冷めてしまったわ」
「まぁ……それはひどいわね」
「でしょう? だからね、私は助けてくださったヴィクトーリア様に恩を感じているの」
「じゃあ、王太子殿下のことはもうなんとも思っていないのね?」
「ええ」
「そう……」
マリーンはそっと目を伏せた。そういえばマリーンは王太子が好きだと言っていたっけ。事実しか言ってないけど、傷つけてしまったのだろうか。
「ローゼ!」
え?
私は目を疑った。応接間のカーテンの影から、なんと王太子が出てきた。確かにあのカーテンとても大きいけど、あそこに隠れてた王太子ってなんだろう。もしかしてコントかなにかかな。
王太子はつかつかとこちらに近づいてくると、ソファに腰掛けたまま動けないでいる私の手をがしっと握った。
あれ? なんで? 私事実しか言ってないよ? 大丈夫だよね? ね?
よくわからないけど、助けてヴィクトーリア様ぁ!
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