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33.なんか巻き込まれたみたいです
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「……?」
目が覚めた時、自分が一瞬どこにいるのかわからなかった。
「本当にうかつな子だねえ。あんな状況でも寝られるというのはある意味才能かもしれないけどね」
プランタ公爵の声がして、私はバッと身体を起こした。どうやら私はまたプランタ公爵に預けられたようです。
「……申し訳ありません。状況がさっぱりわからないのですが……」
公爵は大仰にため息をついた。
「うんうん、勉強ができるのとそういう能力があるかどうかは別だもんね。それに王宮で起こることなんか全く想定してもいないだろう。いいとも! この私が説明してあげよう!」
公爵はビシッと指を突き出した。
これだけ見るとあほっぽいんですが、絶対そんなはずはないのです。どうやら私は公爵の執務室のソファの上に寝かされていたみたいです。またなんか迷惑かけちゃったなぁ。
「よろしくお願いします」
私は居住まいを正して頭を下げた。
「うんうん。礼儀正しいのは美徳だ! まず昨日息子が王妃から怪しげな瓶をもらったことは覚えているかい?」
「はい、覚えています」
「その瓶の中身は毒だった」
「えええっ!?」
しょっぱなからなんかヘビーである。
話としてはこうだ。
王妃は王太子の正妃であるヴィクトーリア様を案じていた。で、ある商人から子どもができやすくなるという薬を買い求めた。それを王妃はヴィクトーリア様に渡した。
だが実はその薬はおなかの子を殺してしまうという毒だった。
ヴィクトーリア様自身には全く関係のない薬ではあるが、ヴィクトーリア様はそれに気づいて媚薬と入れ替えた。入れ替えた毒は三の妃のところに持って行かせた。
「質問です! どうしてヴィクトーリア様は毒薬を三の妃のところへ持って行かせたのですか?」
「いい質問だ。それはね、三の妃が間男の子を身籠っているからだよ」
「は?」
三の妃って王の側室だよね? しかも三の妃って最近王の寵愛を受けている人じゃなかったっけ? 余計に頭がこんがらがりそうである。
「三の妃は自分のおなかの子が間男の子だと知っていて後宮で育てようとしている。毒薬だと気づけば回避できるだろうが、知らずに飲んだらどうなるかな」
「え? でも王宮では毒は効かないんじゃ……」
「後宮はその限りじゃないねぇ」
王と王妃の部屋は王宮内にあるが、後宮は王宮の離れにある。そこまでは面倒みきれないということなのか。私はだらだらと冷汗が流れるのを感じた。
「三の妃の話は置いといて、薬は入れ替えたから問題はない。だが、王妃が毒薬を王太子妃に渡したという密告があった。それにより夜だというのにも関わらず衛兵たちがヴィクトーリアの部屋にやってきた。その後の顛末は君が知っている通りだよ」
そこにはいくつかの疑問がある。
「王妃様に毒を売った商人はどこから来たのでしょう? それから、昨夜密告をした人は誰なのでしょうか?」
「商人は三の妃の生国から来た。密告をしたのは王妃の侍女で、その侍女の出身地は二の妃と同じだ」
「つまり?」
「どの妃が怪しいと思う?」
商人は三の妃の生国出身。となると三の妃が怪しいけど、わざわざ商人自ら毒を偽るとは考えにくい。と、なると買った後で薬が入れ替えられたと考えるのが普通ではないだろうか。
「……聞いただけだと二の妃が怪しいですね。でも王妃様の侍女の出身地が二の妃と同じだなんてよくわかりましたね」
「王宮に勤める者は採用する際に全て調べることになっている。密告した侍女が怪しいと考えるのは初歩の初歩だよ」
「王太子はなんともなかったんですよね」
「ああ、だから今は怒り狂っているはずだ」
怒り狂ってる王太子とかやだなぁ。
「でも何故二の妃はそんなことをしたんでしょうか? すぐにバレてしまいそうなのに……」
「侍女の出身地は隠ぺいされていた。ただそれだけのことだよ」
「えええ。じゃあどうやって突き止めたんですか?」
公爵がにっこりと笑う。
「魔法に不可能の文字はないんだよ」
こわっ。魔法こわっ。チートすぎてやヴぁっ。
「……三の妃はどうなるんですか?」
「三の妃は元々媚薬を愛用している。それで王を繋ぎ止めているんだ。だから自分が飲むだけではなく王にも飲ませるだろう」
「えええ」
おなかの子を殺す薬を王様に飲ませたりしたらどうなるんだろう。
「そ、そしてらどうなるんですか?」
「さぁね。もしかしたら子種が減ってしまうかもしれないね」
「えええええ」
「でももう子どもは十分いるから必要ないだろう。きっと薬の中身が発覚すれば芋づる式にあれもこれもわかるだろうね。いやあ楽しいなぁ」
楽しくない! 全然楽しくないです。王宮はとても怖いところだああああ! おうち帰りたいいいいいいい。帰るところなああああい! つらい。(定期)
「三の妃のことは……王はご存知なのですか?」
「知ってるわけないよね。でも私には隠せないよ。ちょうどヴィクトーリアがいい薬を手に入れたっていうからプレゼントさせただけさ」
うわあうわあ。この人にかかったら何もかもお見通しだ。やっぱりラスボスはこの人かもしれない。
「これからも息子と仲良くしてね」
「……はい」
逃げるつもりはないけど、王宮ってとっても怖いところなんだなってしみじみ思った。
ところであれ? 二の妃がなんで王妃を蹴落とすようなことをしたのか聞いてないよ? ……あ、王妃の座から蹴落としたかったのか。納得です。
目が覚めた時、自分が一瞬どこにいるのかわからなかった。
「本当にうかつな子だねえ。あんな状況でも寝られるというのはある意味才能かもしれないけどね」
プランタ公爵の声がして、私はバッと身体を起こした。どうやら私はまたプランタ公爵に預けられたようです。
「……申し訳ありません。状況がさっぱりわからないのですが……」
公爵は大仰にため息をついた。
「うんうん、勉強ができるのとそういう能力があるかどうかは別だもんね。それに王宮で起こることなんか全く想定してもいないだろう。いいとも! この私が説明してあげよう!」
公爵はビシッと指を突き出した。
これだけ見るとあほっぽいんですが、絶対そんなはずはないのです。どうやら私は公爵の執務室のソファの上に寝かされていたみたいです。またなんか迷惑かけちゃったなぁ。
「よろしくお願いします」
私は居住まいを正して頭を下げた。
「うんうん。礼儀正しいのは美徳だ! まず昨日息子が王妃から怪しげな瓶をもらったことは覚えているかい?」
「はい、覚えています」
「その瓶の中身は毒だった」
「えええっ!?」
しょっぱなからなんかヘビーである。
話としてはこうだ。
王妃は王太子の正妃であるヴィクトーリア様を案じていた。で、ある商人から子どもができやすくなるという薬を買い求めた。それを王妃はヴィクトーリア様に渡した。
だが実はその薬はおなかの子を殺してしまうという毒だった。
ヴィクトーリア様自身には全く関係のない薬ではあるが、ヴィクトーリア様はそれに気づいて媚薬と入れ替えた。入れ替えた毒は三の妃のところに持って行かせた。
「質問です! どうしてヴィクトーリア様は毒薬を三の妃のところへ持って行かせたのですか?」
「いい質問だ。それはね、三の妃が間男の子を身籠っているからだよ」
「は?」
三の妃って王の側室だよね? しかも三の妃って最近王の寵愛を受けている人じゃなかったっけ? 余計に頭がこんがらがりそうである。
「三の妃は自分のおなかの子が間男の子だと知っていて後宮で育てようとしている。毒薬だと気づけば回避できるだろうが、知らずに飲んだらどうなるかな」
「え? でも王宮では毒は効かないんじゃ……」
「後宮はその限りじゃないねぇ」
王と王妃の部屋は王宮内にあるが、後宮は王宮の離れにある。そこまでは面倒みきれないということなのか。私はだらだらと冷汗が流れるのを感じた。
「三の妃の話は置いといて、薬は入れ替えたから問題はない。だが、王妃が毒薬を王太子妃に渡したという密告があった。それにより夜だというのにも関わらず衛兵たちがヴィクトーリアの部屋にやってきた。その後の顛末は君が知っている通りだよ」
そこにはいくつかの疑問がある。
「王妃様に毒を売った商人はどこから来たのでしょう? それから、昨夜密告をした人は誰なのでしょうか?」
「商人は三の妃の生国から来た。密告をしたのは王妃の侍女で、その侍女の出身地は二の妃と同じだ」
「つまり?」
「どの妃が怪しいと思う?」
商人は三の妃の生国出身。となると三の妃が怪しいけど、わざわざ商人自ら毒を偽るとは考えにくい。と、なると買った後で薬が入れ替えられたと考えるのが普通ではないだろうか。
「……聞いただけだと二の妃が怪しいですね。でも王妃様の侍女の出身地が二の妃と同じだなんてよくわかりましたね」
「王宮に勤める者は採用する際に全て調べることになっている。密告した侍女が怪しいと考えるのは初歩の初歩だよ」
「王太子はなんともなかったんですよね」
「ああ、だから今は怒り狂っているはずだ」
怒り狂ってる王太子とかやだなぁ。
「でも何故二の妃はそんなことをしたんでしょうか? すぐにバレてしまいそうなのに……」
「侍女の出身地は隠ぺいされていた。ただそれだけのことだよ」
「えええ。じゃあどうやって突き止めたんですか?」
公爵がにっこりと笑う。
「魔法に不可能の文字はないんだよ」
こわっ。魔法こわっ。チートすぎてやヴぁっ。
「……三の妃はどうなるんですか?」
「三の妃は元々媚薬を愛用している。それで王を繋ぎ止めているんだ。だから自分が飲むだけではなく王にも飲ませるだろう」
「えええ」
おなかの子を殺す薬を王様に飲ませたりしたらどうなるんだろう。
「そ、そしてらどうなるんですか?」
「さぁね。もしかしたら子種が減ってしまうかもしれないね」
「えええええ」
「でももう子どもは十分いるから必要ないだろう。きっと薬の中身が発覚すれば芋づる式にあれもこれもわかるだろうね。いやあ楽しいなぁ」
楽しくない! 全然楽しくないです。王宮はとても怖いところだああああ! おうち帰りたいいいいいいい。帰るところなああああい! つらい。(定期)
「三の妃のことは……王はご存知なのですか?」
「知ってるわけないよね。でも私には隠せないよ。ちょうどヴィクトーリアがいい薬を手に入れたっていうからプレゼントさせただけさ」
うわあうわあ。この人にかかったら何もかもお見通しだ。やっぱりラスボスはこの人かもしれない。
「これからも息子と仲良くしてね」
「……はい」
逃げるつもりはないけど、王宮ってとっても怖いところなんだなってしみじみ思った。
ところであれ? 二の妃がなんで王妃を蹴落とすようなことをしたのか聞いてないよ? ……あ、王妃の座から蹴落としたかったのか。納得です。
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