【本編完結】ざまあはされたくありません!

浅葱

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25.隣国王女がやってきた

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 本日は快晴なり。
 隣国の王女は隣国の使いとしてやってくるので王太子妃夫妻に出迎える義務はない。だがあえてヴィクトーリア様は王太子と共に王女を迎えた。おそらく人となりを見る為なのだろう。
 ちなみに私はというと、プランタ公爵と何故かお茶をしています。公爵は毎日登城して仕事をしているらしいのだけど、大魔法使いの仕事ってどんなものなのかさっぱり想像がつかない。
 見た目は、髪は黄色が強めの金髪だけどヴィクトール様が年を重ねたらこうなると思うような美丈夫だった。目の色はヴィクトール様と一緒である。そうかー、こうなるのかー。見た目だけだって超優良物件ですね。

「あああああの、公爵さま……」
「なんだい?」
「その……隣国王女の出迎えとかは必要ないんですか?」
「ただの使いだろう? が偵察に行ったから問題ないよ」

 偵察ってことはやっぱり公爵も隣国王女を多少危険視しているってことなんだろう。

「監視もつけたから大丈夫だ。君は息子のお気に入りだからね。なにかあったらいつでも知らせるといい」

 そう言って細めの銀色をしたブレスレットをくれた。

「あのう、失礼ですがこれは?」
「話しかければ私に繋がる。あとこれで君のいる場所がわかるから、万が一攫われても大丈夫だ」
「そうなのですね。ありがとうございます」

 GPS機能付きホットラインかぁ。私には過ぎたものだけど安全の為だよね。
 私はさっそくブレスレットをつけた。大きめのわっかだったそれは、私が身につけると私の腕にピッタリとはまった。こういう魔道具なんだろうけどいざ自分が体感してみるとおおお! というかんじである。

「これって外れないんですか?」
「うん。君が息子と無事結婚するまでは外れないよ。せっかくの息子のお嫁さんだからね。大事にしないと」
「はあ……」

 なんか周りが外堀も内堀も埋めにきている気がする。私はすでにヴィクトール様に抱かれているから結婚するとしたらヴィクトール様しか選択肢はないのだけど。結婚しないで修道院に行くって手もあったけど、それだと秘密裡に処分されるかもしれない。やだもうありえない。やはりヴィクトール様と結婚するしかないんだろう。わざわざ監視用のブレスレットまでもらっちゃったしね! つかこれヴィクトール様と結婚するまでは外れないって……あはははは。
 無事に王女の出迎えが済んだのか、ヴィクトーリア様が迎えにきてくれた。

「父上、ローゼを守っていただきありがとうございました」
「これからも守るから安心していいよ~」

 公爵がひらひらと手を振って言う。

「ローゼ、そのブレスレットは……」
「私があげたよ~。なにがあってもおかしくないしね」
「……ありがとうございます」

 ブレスレットを見た途端ヴィクトーリア様は不機嫌になった。

「公爵様、ありがとうございました!」
「心配はないと思うけど、これからも息子と仲良くしてくれたまえ」

 ヴィクトーリア様に付き従って彼の部屋に戻った。ヴィクトーリア様は私を隣に腰掛けさせると侍女にお茶を淹れさせた。

「あの、ヴィクトーリア様。お召しかえは……」
「後でする」

 そう言ってさりげなく私の手を握った。ちょっとどきどきした。

「隣国の、王女様はどうでした?」
「噂にたがわずエキゾチックな美人だったな。黒髪がつややかで、わざわざ更に黒く染めているのかと思ったぐらいだ。国では相当わがままに振舞っていたらしいが、ここではどうなるか。どちらにしろ特使として来ているんだ。それほど私たちが顔を合わせることはないだろう」
「そうですか……」

 一度会ったぐらいじゃどんな人かなんてわからないよね。使いだっていうからそのうち国に帰られるんだろうけど、あまり会わないで済むといいなと思った。
 だがそうは問屋が卸さなかったようだ。
 昨夜にヴィクトーリア様からも受け取ったブレスレットをさりげなく眺めていたら、隣国王女が訪ねてきたのだった。
 一応先ぶれがあり二時間後に来るという話だったので、とっとと王太子を部屋に戻し、ヴィクトーリア様の支度をした。
 隣国王女はどんな女性なのか。エキゾチックな美人というワードで想像してみたが、貧弱な私の頭ではうまくイメージができなかった。小説の挿絵を思い出す。確か長い髪を後ろで一本の三つ編みにしていたような気がした。
 そうして部屋のノックがされ、とうとう王女の姿を見ることとなった。
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