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3.悪役令嬢?の言う通り
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こ、この声はおそらく悪役令嬢のヴィクトーリア様!
私終了は間違いないけどできることならば弁明をををを!
「そ、その声はもしや……」
「あら? 私を声で判別できるほど親しい方なんていらっしゃったかしら? どなた?」
この優美なしゃべり方、そして女性にしては低いなと何度も思った声。間違いなくヴィクトーリア様だ。
……逃げたい……。
「早く出てこないと、この扉を開けさせてしまうわよ?」
ひいいいい! 引きずり出す宣言キター!
「あ、あああああのっ……!」
ガチャガチャと個室の鍵を開け表へ出る。そして私はバッと頭を下げた。
「ごめんなさい、助けてください! そんなつもりじゃなかったんです!」
「あら、まぁ……貴女、確か……?」
ヴィクトーリア様は私のことを覚えていないようだった。そりゃあ王太子の側にいたとはいえたかが男爵令嬢だもんね。歯牙にもかけないよね。
やっぱり私への嫌がらせは取り巻きが主導して行ったようだった。今更もうどうでもいいけど。
「ローゼリンデ・ルガリシと申します、ヴィクトーリア様っ。私、間違ってここに来てしまったのです! できましたら私(わたくし)めの存在は見なかったことにしていただきたく……」
頭を下げていたので気づかなかったが、その時のヴィクトーリア様は人の悪い笑みを浮かべていたのだろうと思う。
「あら困ったわね? 貴女を見逃しても私にはなんの得もないのだけれど?」
「そ、そそそそうですよね! わかってます、わかっていますが……牢屋に入れられるのは嫌なんですううう~~~!」
「牢屋?」
ヴィクトーリア様はその白いたおやかな……いや、太い指先で私の顔を上げさせた。
「ああ……貴女だったのね? アルノルト様がご執心の……」
「執心されてないです! 絶対気のせいなんです! そんなことよりも今すぐここから出て行きたいんですううう!」
ヴィクトーリア様は首を傾げた。
「そうね……少しここでお待ちになっていただけるかしら?」
なにか思いついたらしいヴィクトーリア様は、そう言ってにっこりとほほ笑んだ。
それからはなんというか、怒涛の展開だった。ヴィクトーリア様は王太子の従者を追い返し、侍女に私がこの会場に足を踏み入れる為の特別許可があるかどうかを確認させた。
……当然のことながらそんなものはなかった。
やっぱり……と涙に暮れる私に、ヴィクトーリア様はまた笑んだ。
その顔といい、身体つきといい、どこか不自然なものを私は感じた。それでつい、こんなことを呟いてしまった。
「まるで……男性みたい……」
それはとても小さな呟きであったが、彼女の耳には届いたらしい。
「どこを見て、そう思ったの?」
「え? あ、いえ、その……私、ちょっと現実逃避していまして……」
自分の受け答えもどうしようもないものだったが、ヴィクトーリア様は許さなかった。
「純粋な興味なのよ。私を見て、男性みたいだと思ったんでしょう? その理由をお聞かせ願いたいわ」
うわあああんっ! 私のバカバカバカああああ!
しかしそれは結果的に私を救うこととなった。どういうわけか、私は彼女に気に入られてしまったのである。
「気に入ったわ。特別許可を取ってあげる。そういえば三枚のお札とか言っていたわね? それは願い事かなにかに使う物なのかしら?」
「は、はははい!」
私は彼女に聞かれるがままに三枚のお札の物語について話した。山姥は化物に、小僧は修行者に置き換えた。
「ふうん? 面白い物語ね。じゃあ私が三つだけ願いを叶えてあげる。もちろん私が叶えたくない願いだったら無理よ? さぁ、言ってごらんなさい」
涙が止まらない。まるでヴィクトーリア様は悪魔のようだった。なんか身体がやっぱりごつい気がする。もしかして鍛えまくっていらっしゃるのだろうか。
「王太子様とは絶対一緒になりたくないです! 妾も、結婚も嫌ですううう!」
この会場に入る為の特別許可を私の為にとっていなかったようなポンコツ王太子なんて嫌だ。例え妾になったとしてもいずれ誰かに暗殺されること請け合いである。
「貴女はアルノルト様に惚れていたのではなくて?」
かつては惚れていたかもしれないが今は違う。
「もう惚れてないです! 絶対に嫌です!!」
ヴィクトーリア様は不思議そうな顔をしたが、それからすぐに人の悪い笑みを浮かべた。そんな表情もお似合いですううう。
「わかったわ……その願い、叶えてあげましょう。もう一枚の願いは?」
「え?」
そこまで聞かれるとは思っていなくて、私はきょとんとした。そして頭の中をこねくり回してひねり出した。
「え、あ……お、穏やかに暮らしていきたいです!」
一人でもいいから平穏無事に暮らせるならそれに越したことはない。
「ますます面白い。じゃあ、化粧を直したら、参りましょうか」
え、何? これって終了のお知らせ? それとも私助かるの?
頭に盛大な?をくっつけたまま、私はヴィクトーリア様に促され、卒業記念パーティーの会場に足を踏み入れたのだった。
ヴィクトーリア様、思ったよりも背も高いしやっぱり逞しいなと思った。
私終了は間違いないけどできることならば弁明をををを!
「そ、その声はもしや……」
「あら? 私を声で判別できるほど親しい方なんていらっしゃったかしら? どなた?」
この優美なしゃべり方、そして女性にしては低いなと何度も思った声。間違いなくヴィクトーリア様だ。
……逃げたい……。
「早く出てこないと、この扉を開けさせてしまうわよ?」
ひいいいい! 引きずり出す宣言キター!
「あ、あああああのっ……!」
ガチャガチャと個室の鍵を開け表へ出る。そして私はバッと頭を下げた。
「ごめんなさい、助けてください! そんなつもりじゃなかったんです!」
「あら、まぁ……貴女、確か……?」
ヴィクトーリア様は私のことを覚えていないようだった。そりゃあ王太子の側にいたとはいえたかが男爵令嬢だもんね。歯牙にもかけないよね。
やっぱり私への嫌がらせは取り巻きが主導して行ったようだった。今更もうどうでもいいけど。
「ローゼリンデ・ルガリシと申します、ヴィクトーリア様っ。私、間違ってここに来てしまったのです! できましたら私(わたくし)めの存在は見なかったことにしていただきたく……」
頭を下げていたので気づかなかったが、その時のヴィクトーリア様は人の悪い笑みを浮かべていたのだろうと思う。
「あら困ったわね? 貴女を見逃しても私にはなんの得もないのだけれど?」
「そ、そそそそうですよね! わかってます、わかっていますが……牢屋に入れられるのは嫌なんですううう~~~!」
「牢屋?」
ヴィクトーリア様はその白いたおやかな……いや、太い指先で私の顔を上げさせた。
「ああ……貴女だったのね? アルノルト様がご執心の……」
「執心されてないです! 絶対気のせいなんです! そんなことよりも今すぐここから出て行きたいんですううう!」
ヴィクトーリア様は首を傾げた。
「そうね……少しここでお待ちになっていただけるかしら?」
なにか思いついたらしいヴィクトーリア様は、そう言ってにっこりとほほ笑んだ。
それからはなんというか、怒涛の展開だった。ヴィクトーリア様は王太子の従者を追い返し、侍女に私がこの会場に足を踏み入れる為の特別許可があるかどうかを確認させた。
……当然のことながらそんなものはなかった。
やっぱり……と涙に暮れる私に、ヴィクトーリア様はまた笑んだ。
その顔といい、身体つきといい、どこか不自然なものを私は感じた。それでつい、こんなことを呟いてしまった。
「まるで……男性みたい……」
それはとても小さな呟きであったが、彼女の耳には届いたらしい。
「どこを見て、そう思ったの?」
「え? あ、いえ、その……私、ちょっと現実逃避していまして……」
自分の受け答えもどうしようもないものだったが、ヴィクトーリア様は許さなかった。
「純粋な興味なのよ。私を見て、男性みたいだと思ったんでしょう? その理由をお聞かせ願いたいわ」
うわあああんっ! 私のバカバカバカああああ!
しかしそれは結果的に私を救うこととなった。どういうわけか、私は彼女に気に入られてしまったのである。
「気に入ったわ。特別許可を取ってあげる。そういえば三枚のお札とか言っていたわね? それは願い事かなにかに使う物なのかしら?」
「は、はははい!」
私は彼女に聞かれるがままに三枚のお札の物語について話した。山姥は化物に、小僧は修行者に置き換えた。
「ふうん? 面白い物語ね。じゃあ私が三つだけ願いを叶えてあげる。もちろん私が叶えたくない願いだったら無理よ? さぁ、言ってごらんなさい」
涙が止まらない。まるでヴィクトーリア様は悪魔のようだった。なんか身体がやっぱりごつい気がする。もしかして鍛えまくっていらっしゃるのだろうか。
「王太子様とは絶対一緒になりたくないです! 妾も、結婚も嫌ですううう!」
この会場に入る為の特別許可を私の為にとっていなかったようなポンコツ王太子なんて嫌だ。例え妾になったとしてもいずれ誰かに暗殺されること請け合いである。
「貴女はアルノルト様に惚れていたのではなくて?」
かつては惚れていたかもしれないが今は違う。
「もう惚れてないです! 絶対に嫌です!!」
ヴィクトーリア様は不思議そうな顔をしたが、それからすぐに人の悪い笑みを浮かべた。そんな表情もお似合いですううう。
「わかったわ……その願い、叶えてあげましょう。もう一枚の願いは?」
「え?」
そこまで聞かれるとは思っていなくて、私はきょとんとした。そして頭の中をこねくり回してひねり出した。
「え、あ……お、穏やかに暮らしていきたいです!」
一人でもいいから平穏無事に暮らせるならそれに越したことはない。
「ますます面白い。じゃあ、化粧を直したら、参りましょうか」
え、何? これって終了のお知らせ? それとも私助かるの?
頭に盛大な?をくっつけたまま、私はヴィクトーリア様に促され、卒業記念パーティーの会場に足を踏み入れたのだった。
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