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85.心、乱れて
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今日もいい天気だ。
紫外線を浴びないといけないっていうのはくる病対策だと思う。こんな魔法とかが発展している国でも完全な引きこもりではいられないらしい。
魔法の発展は他のものを発展させないのかもしれない。怪我とかなら魔法で簡単に治してしまうみたいだし。でも病気とかはどうなんだろう。
お茶を飲みながらぼうっとそんなことを考えた。
「この国には梅雨ってないの?」
毎日いい天気だから、ふと気になって聞いてみた。
「つゆ、とはなんでしょうか?」
言い方が違うのかな。
「俺がいた国には、夏になる前に一か月ぐらい雨がずっと降り続ける時期があったんだけど、この国にはないのかな?」
「それは雨季なのでしょうか。国によっては夏の間ずっと雨が降るところもございますが」
それは雨季と乾季の雨季だよな。
「うーん、それとは違うんだけど、雨が降る日が多いのが一か月ぐらいあるんだ」
「そうなのですか。こちらはそれほど雨は降りません。地方によっては降るようですが、この王都では雨は少ないですね。ただし、夏は比較的雨が多いです」
「そうなんだ?」
そんなことを話しながら、俺はこの国のことを教えてもらっていた。いろいろ聞いたけど、俺はもう元の世界には戻れないみたいだし。
でもゲイだってことは学生時代は隠してたからあんまり友達も積極的に作らなかったし、ゲイの俺が元の世界に戻ったとしても結婚とかもできないから両親も困るだろう。だから帰れないってことにショックは思ったより受けてはいない。
でもやっぱり引っかかることはある。
今はこうして雷月の腕の中に納まっているから比較的気持ちも安定しているけど、文浩たちがいるとけっこうダメダメになってしまう。やっぱりアイツらは俺のトラウマなんだよな。
毎日のえっちが濃すぎて忘れてしまいそうになるけど、まだ卵産んでから十日も経ってないし。あれ? 産後ってえっちは厳禁なんじゃなかったっけ? あ、それは元の世界の産婦さんの話か。赤ちゃんそのまま産むとかホントたいへんそう。なんで人間ってそんな進化しちゃったんだろーな?
そんな関係のないことまでつらつらと考えてしまう。
お茶を飲んでため息をついた。お茶はおいしい。
「真崎さま、どうかなさいましたか?」
「んー……? ごめん、なんかよくわかんない……」
太陽の光がぽかぽかして気持ちいい。おなかもいっぱいになって、大好きな雷月の腕の中だ。
「真崎さま、お昼寝をなさいますか?」
寝たいような気もする。でもそれはそれでもったいないような気もして、やっぱりよくわからない。無意識のうちにうつらうつらしていたようだ。
雷月が優しく俺を抱き上げてくれて、床へ運んでくれた。
「片付けて参りますから、少々お待ちを」
「……やだ」
雷月も一緒じゃなきゃやだ。俺は雷月の袖を掴んでいやいやをするように首を振った。ずっと一緒にいてくれないとダメなんだ。
「わかりました。片付けは後にしましょう」
雷月は優しく笑むと、俺と一緒に床に寝転がってくれた。嬉しい。すっごく嬉しい。俺は雷月の胸に頭を摺り寄せた。雷月、大好き。そう思いながら、俺はそのまま眠ってしまった。
…………。
「……哥、建文哥と西文哥は明日の朝には帰っていらっしゃるでしょうか」
「ああ、心配などすることはない。問題は真崎が望むような海の幸を獲ってこられるかどうかだな」
「真崎さまは海老を好んで食べられています」
「そうか。多めに獲ってこいと言うべきだったな」
二人とも聞き慣れた声だ、と思った。床の天蓋から薄絹が下りている。なんか肌寒いような気がして、俺はブルッとした。
「……兄上たちがとんでもないことをしてくれたおかげで、私が真崎さまの側にいられるようになりましたが……。兄上たちは私を邪魔だとは思いませんか?」
ドキッとした。雷月が相対しているのは文浩のようだった。そんなことを聞いていいものなのだろうか。
「……邪魔とは思わぬ。私たちは間違っていた。真崎が”運命”だと知って犯し、真崎の身体が感じているのをいいことに犯し続けた。真崎は”天使”になり、更に感じやすくなった。そして妊娠していることがわかった。全てが悪いように作用してしまった。こうして、今も真崎に触れさせてもらえているだけで奇跡だと思っているさ」
「それならよいのですが、最悪真崎さまが兄上たちを拒絶したら、兄上たちは狂ってしまうのではないですか?」
「……そうだな。そうなった時私たちがどんな行動を取るのかわからぬ。もし、半年を過ぎても真崎に許してもらえぬのであれば……」
「どう、なさいますか?」
「……我らはそなたと真崎を傷つけぬよう、領地へと参ろう。元々ここに残っていたのは我のわがままだった」
「……そのようなことはおっしゃらないでください」
「我らが真崎を傷つけた事実は変わらぬ。領地へ行っても想いが抑えきれぬ場合は自害する。なに、皇子は沢山いるのだ。我ら三人が消えたところでたいした問題にはなるまい」
「兄上……そうならないように、いたしましょう……」
「そうだな。真崎が許してくれるのを待つしかない」
なんで、って思った。
なんで”運命”を抱けなかったらそんなたいへんなことになるのに、俺にひどいことをしたんだって。
許せない。
絶対に許せないけど……アイツらにまた抱かれてもいいなんて思える日が来るのだろうか。
ーーーーー
1/8 表紙のイラストはNEOZONE様に描いていただきました! 雷月と真崎です! ありがとうございます! 真崎の手をとっている手が誰かはご想像にお任せします。
どちらにせよ最終的に4人とラブラブになってしまう未来は変わりません(笑)
これからもよろしくお願いします!!
紫外線を浴びないといけないっていうのはくる病対策だと思う。こんな魔法とかが発展している国でも完全な引きこもりではいられないらしい。
魔法の発展は他のものを発展させないのかもしれない。怪我とかなら魔法で簡単に治してしまうみたいだし。でも病気とかはどうなんだろう。
お茶を飲みながらぼうっとそんなことを考えた。
「この国には梅雨ってないの?」
毎日いい天気だから、ふと気になって聞いてみた。
「つゆ、とはなんでしょうか?」
言い方が違うのかな。
「俺がいた国には、夏になる前に一か月ぐらい雨がずっと降り続ける時期があったんだけど、この国にはないのかな?」
「それは雨季なのでしょうか。国によっては夏の間ずっと雨が降るところもございますが」
それは雨季と乾季の雨季だよな。
「うーん、それとは違うんだけど、雨が降る日が多いのが一か月ぐらいあるんだ」
「そうなのですか。こちらはそれほど雨は降りません。地方によっては降るようですが、この王都では雨は少ないですね。ただし、夏は比較的雨が多いです」
「そうなんだ?」
そんなことを話しながら、俺はこの国のことを教えてもらっていた。いろいろ聞いたけど、俺はもう元の世界には戻れないみたいだし。
でもゲイだってことは学生時代は隠してたからあんまり友達も積極的に作らなかったし、ゲイの俺が元の世界に戻ったとしても結婚とかもできないから両親も困るだろう。だから帰れないってことにショックは思ったより受けてはいない。
でもやっぱり引っかかることはある。
今はこうして雷月の腕の中に納まっているから比較的気持ちも安定しているけど、文浩たちがいるとけっこうダメダメになってしまう。やっぱりアイツらは俺のトラウマなんだよな。
毎日のえっちが濃すぎて忘れてしまいそうになるけど、まだ卵産んでから十日も経ってないし。あれ? 産後ってえっちは厳禁なんじゃなかったっけ? あ、それは元の世界の産婦さんの話か。赤ちゃんそのまま産むとかホントたいへんそう。なんで人間ってそんな進化しちゃったんだろーな?
そんな関係のないことまでつらつらと考えてしまう。
お茶を飲んでため息をついた。お茶はおいしい。
「真崎さま、どうかなさいましたか?」
「んー……? ごめん、なんかよくわかんない……」
太陽の光がぽかぽかして気持ちいい。おなかもいっぱいになって、大好きな雷月の腕の中だ。
「真崎さま、お昼寝をなさいますか?」
寝たいような気もする。でもそれはそれでもったいないような気もして、やっぱりよくわからない。無意識のうちにうつらうつらしていたようだ。
雷月が優しく俺を抱き上げてくれて、床へ運んでくれた。
「片付けて参りますから、少々お待ちを」
「……やだ」
雷月も一緒じゃなきゃやだ。俺は雷月の袖を掴んでいやいやをするように首を振った。ずっと一緒にいてくれないとダメなんだ。
「わかりました。片付けは後にしましょう」
雷月は優しく笑むと、俺と一緒に床に寝転がってくれた。嬉しい。すっごく嬉しい。俺は雷月の胸に頭を摺り寄せた。雷月、大好き。そう思いながら、俺はそのまま眠ってしまった。
…………。
「……哥、建文哥と西文哥は明日の朝には帰っていらっしゃるでしょうか」
「ああ、心配などすることはない。問題は真崎が望むような海の幸を獲ってこられるかどうかだな」
「真崎さまは海老を好んで食べられています」
「そうか。多めに獲ってこいと言うべきだったな」
二人とも聞き慣れた声だ、と思った。床の天蓋から薄絹が下りている。なんか肌寒いような気がして、俺はブルッとした。
「……兄上たちがとんでもないことをしてくれたおかげで、私が真崎さまの側にいられるようになりましたが……。兄上たちは私を邪魔だとは思いませんか?」
ドキッとした。雷月が相対しているのは文浩のようだった。そんなことを聞いていいものなのだろうか。
「……邪魔とは思わぬ。私たちは間違っていた。真崎が”運命”だと知って犯し、真崎の身体が感じているのをいいことに犯し続けた。真崎は”天使”になり、更に感じやすくなった。そして妊娠していることがわかった。全てが悪いように作用してしまった。こうして、今も真崎に触れさせてもらえているだけで奇跡だと思っているさ」
「それならよいのですが、最悪真崎さまが兄上たちを拒絶したら、兄上たちは狂ってしまうのではないですか?」
「……そうだな。そうなった時私たちがどんな行動を取るのかわからぬ。もし、半年を過ぎても真崎に許してもらえぬのであれば……」
「どう、なさいますか?」
「……我らはそなたと真崎を傷つけぬよう、領地へと参ろう。元々ここに残っていたのは我のわがままだった」
「……そのようなことはおっしゃらないでください」
「我らが真崎を傷つけた事実は変わらぬ。領地へ行っても想いが抑えきれぬ場合は自害する。なに、皇子は沢山いるのだ。我ら三人が消えたところでたいした問題にはなるまい」
「兄上……そうならないように、いたしましょう……」
「そうだな。真崎が許してくれるのを待つしかない」
なんで、って思った。
なんで”運命”を抱けなかったらそんなたいへんなことになるのに、俺にひどいことをしたんだって。
許せない。
絶対に許せないけど……アイツらにまた抱かれてもいいなんて思える日が来るのだろうか。
ーーーーー
1/8 表紙のイラストはNEOZONE様に描いていただきました! 雷月と真崎です! ありがとうございます! 真崎の手をとっている手が誰かはご想像にお任せします。
どちらにせよ最終的に4人とラブラブになってしまう未来は変わりません(笑)
これからもよろしくお願いします!!
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