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84.とても大事にされています

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 季節は夏が近づいてきたせいか、トマトと卵の炒めが出てきて嬉しい。茄子を揚げて旨煮っぽくされてるメニューもおいしい。

「この茄子料理おいしい」
「それはよかったです」

 雷月がにこにこしながら給仕してくれた。前菜も水餃子も、スープもなんでもおいしい。
 えっちしていっぱい気持ちよくされてるのに、ごはんもおいしいし、すごく大事にされてるって思う。こんなに俺、甘やかされてていいのかななんて思ってしまう。

「好きなものがあればおっしゃってくださいね。作らせますので」
「好物ばっかり食べてたら嫌いになっちゃうかもしれないから、ほどほどがいいかな。でも全部おいしい」
「それならよかったです」

 また食べすぎてしまった。天使はいっぱい栄養を取らないといけないって言われてるからもうセーブもしていない。だってごはんおいしすぎるし。
 しかもなんか、体型全然変わってないっぽいし。

「表へ出ましょうか」

 雷月が何かを鳴らすと、衛兵が扉を開け、侍従と思しき人が入ってきた。俺は思わず雷月に抱き付いた。まだ誰かに見られたくないのだ。
 卵を産んだ後の誰かの会話を思い出してしまうから。

「お呼びでしょうか」
「お茶の用意を。楼台(バルコニー)へ運びなさい」
「承知しました」

 雷月は俺の頭を優しく撫でながら侍従に言い、侍従から見えないように抱きしめてくれた。侍従が部屋を出て行ってから、雷月はちゅ、と額に口づけてくれた。

「申し訳ありません。人を入れる時はベールが必要ですね」
「ううん……俺が……」

 人の目が怖いなんて情けないと思った。でも雷月は俺を横抱きにし、更に優しく抱きしめてくれた。

「真崎さまはそのままでいいのですよ。その方が、私も独り占めできますし」
「独り占め……」

 雷月に独り占めされたいけど文浩たちがいるからそれはかなわない。でもそう言われたら胸がきゅうううって甘く疼いた。

「……独り占めしてほしい……」
「今は独り占めさせていただいておりますよ」
「うん……」

 俺の言っている意味もわかっていて、それは無理だと雷月は言う。切なくなったけどしょうがない。今はまだいいけど、俺の性欲が更に増大する可能性は0じゃない。俺の身体なのに全然思う通りにならなくて困ってしまう。
 でも天使の身体じゃなかったらとても雷月のイチモツは受け入れられなかっただろうなと思うと、なんともいえなかった。
 雷月に白い長靴下を履かされてどきどきした。人妻の証とか嬉しい、嬉しいっ!
 雷月のお嫁さんだって宣言してるわけで。それが嬉しくてたまらない。頬が熱くなった。

「真崎さまは靴下を履くと照れますね」
「そ、そんな、ことは……」

 バレバレだけどでもでもっ。

「私をより意識してくださっているようで、嬉しいです」
「う、うん……」

 こういうことさらりと言っちゃうから雷月好きーって思うんだよな。やっぱり言葉って大事だ。

「雷月……」
「はい、真崎さま」
「大好き……」

 消え入りそうな声で告げたら、雷月は途端に顔を上に上げた。そして目元を手で押さえる。

「……たまりませんね。真崎さま、私も真崎さまのことを……愛していますよ」

 雷月の頬が少し赤くなっているのが見えて、照れていることがわかって嬉しかった。俺は雷月の首に抱き付いた。もー、雷月のことが好きすぎてたまらない。
 そうしていると部屋の扉をノックする音が聞こえてきた。

「しばし待て」

 雷月はそう言うと、どこから出したのかベールを俺の頭の上からふわりと被せた。こういう気遣い超嬉しい。

「よい。入れ」

 通る声が耳に心地よくてうっとりしてしまう。このベールをしていると、周りは見えるけど相手からは俺の顔が見えないようだ。魔法っぽいものがかかっていなくても目を凝らさない限り見えはしないだろう。俺はほっとした。
 ワゴンを押して入ってきたのは侍従だった。
 彼はベランダへ続く窓を開け、俺を抱き上げた雷月を促した。雷月と俺の周りになにか薄い膜のような物が見えた。もしかしてこれが結界みたいなものなんだろうか。以前は見えなくて何か感じられる程度だったのに、今は見えるのが不思議だった。
 雷月が俺を抱いたままベランダに出る。そして長椅子に洗浄魔法をかけて俺を抱いたまま腰掛けた。
 侍従がベランダにワゴンを運び、無言で給仕をする。そして並べ終えるとベランダから出て行った。俺が他人に関わりたくないと言ったからそういう配慮もされているのだ。たまらなくなって、俺はベールを少し持ち上げ、そのまま雷月の頬にちゅ、と口づけた。
 雷月はきょとんとした顔になった。ちょっと恥ずかしい。
 そして雷月ははーっとため息を吐いた。

「……真崎さま、そんなかわいいことをされたら食休みどころではなくなってしまうではありませんか」
「そんな……」

 ベールを外され、ベランダからの景色を眺める。

「真崎さまが愛しくてならないのです。あまり刺激しないでくださいね?」

 雷月の笑みに、俺はコクコクと頷いた。だってなんか目が笑ってなくて、ギラギラしている……ように見えたから。
 この後また、抱いてもらえる?
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