【完結】巨人族の皇子たち四人と、異世界ラブラブ性活にいたるまで

浅葱

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38.権力には逆らえないものなのだと思う

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 雷月(レイユエ)が部屋を出て行ってからしばらくは、枕を抱きしめてごろごろしたりしておとなしくしていた。

「早く~早く~」

 とか言いながら枕抱きしめてる俺、なんか幼児退行してない?
 やってることは子どもみたいなんだけど、実際は尻穴がきゅんきゅんしてたまらないのだ。
 自分でやっちゃだめだよな~。道具もないし……多分自分の指だけじゃ満足できないだろうし。困ってごろごろしていたら、今度はなんかトイレに行きたくなってきた。
 で、でもできるだけ早く雷月は戻ってくるようなこと言ってたし、我慢した方がいいよな。
 ……と思ったけど、したいと思ったら時間の進みが余計にゆっくりな気がする……どうしよう。
 うーんうーんとしばらく唸って考える。
 トイレ行きたいー! うー……。
 漏らすのは、ない。絶対にないったらないっ!
 そういえば、トイレに行くにしても抱き上げられて衝立の内側まで運ばれるんだよな。あれはあれでとても恥ずかしい。トイレぐらい自分で行かせてくれればいいのにっ。
 ちょ、ちょっとぐらい……トイレぐらいいいよな? そう思ってベッドにかかった薄絹を払い、部屋の中を見回した。
 誰もいない。そっとベッドから下りる。

「わっ……」

 自分で上り下りしてなかったから知らなかったけど、この床、けっこうな高さがある。俺はそれなりにでかいから問題ないけど、やっぱり全部巨人仕様なんだなと思った。部屋の入口の方、皇子たちの床の近くにトイレはあるのだ。こんなに魔法が発達している国なのにトイレが壺ってなんなんだろうな? それともこの部屋だけか? 大は洗浄魔法でどうにかできるからって適当すぎだろ。
 内心悪態をつきながら俺はそーっとトイレの衝立の向こうに移動し(靴がないから裸足だ。やなかんじ)、どうにか終えた。
 ふー……。
 なんか手を洗いたい気がするけど誰もいないから洗浄魔法もかけてくれないし……。水道みたいなのもあるはあるんだけど、魔道具らしくて自分で魔力を注いで使うらしい。俺、魔力ないんですけど!
 雷月が帰ってきたら洗浄魔法をかけてもらうとして、床に戻ろうとしたらなんか部屋の外から声がした。

「私は皇子だ。皇太子の息子である。ここを開けよ!」

 え? 誰?
 皇太子の息子って何? 皇太子って? とか余計なことを考えてしまったが為に反応が遅れた。おかげで床に戻る前に部屋の扉がバンッ! と音を立てて開かれた。

「ええええ!?」

 部屋に入ってきたのはアイツらと同じぐらい背が高い青年だった。顔は、確かに雷月にも似ていると思う。俺は思わず呆然と彼を見つめた。
 誰?

「ふん……貴様が雷月の嫁か」

 どうやら知っているらしい。

「そ、そうだけど……」

 何? と聞き返そうとしたが大股で近づかれ、腕を掴まれてしまった。え? なんで?
 反射的に反対の手で青年の身体を押しのけようとしたが、ひょろりとしているくせに押しのけることができなかった。

「貴様、皇子に逆らおうとするとは何事かっ!」

 青年はギラギラした目を俺に向けると、パンッと俺の顔を叩いた。

「……え?」

 なんで俺コイツに叩かれてんの? 痛みはなかったが、叩かれたことが衝撃だった。俺、アイツらにえっちされてる時に尻を叩かれたことはあるけど(あれはプレイ的な何かだったと思う。思い出してみると実はちょっと気持ちよかった)、顔や頭は叩かれたことなかった。腕だってこんな強い力で掴まれたことない。

「は、離せ、よっ!」
「逆らうなと言ってるだろう!」

 再び叩かれそうになるのを今度は片腕でガードする。皇子とか言っていたからやり返すのはまずい。でも叩かれるのはごめんだった。

「このっ!」

 うまく叩けなかったらしく、また青年が手を振り上げる。なんなんだよこの暴力男はっ!

「定平(ディンピン)! 貴様、真崎に何をしている!?」
文浩哥ウェンハオグァ、ここは私がっ!」

 叩かれないようにするのが必死で、誰かが部屋に入ってきたことに気づけなかった。俺の腕を掴んでいた青年が無理矢理引き剥がされ、俺はたたらを踏んだ。

「わっ、とっ……わぁっ……!」
「真崎、大丈夫かっ!?」

 倒れそうになった身体をさっと掬い上げられ、気が付いたら俺は文浩の腕に抱かれていた。文浩がひどく焦ったような表情をして俺の顔を覗き込んでいる。

「あ……え……」

 何が起きたのかさっぱりわからない。

「雷月はどうした?」
「え……皇帝に、呼ばれたって……」
「皇上が?」

 文浩が訝し気な顔をした。

「頬が腫れている。すぐに手当てをするぞ!」

 そう言って文浩は俺を床に運ぼうとしたが、彼が俺を床に置くことはできなかった。何か壁のようなものがあったみたいだった。そういえば結界魔法を張ったと言っていた気がする。

「結界魔法か……しかたない、私の床で治そう」
「え……あの……」

 俺だけ床に入ってもいいんだけど、と思ったけど手当しないという選択肢はないようだった。使用人部屋の側の衝立の向こうに床があり、俺はそこにそっと下ろされた。

「顔を見せてくれ。他に何かされなかったか?」
「う、うん……」

 すごく心配そうな目を向けられてどぎまぎしてしまう。文浩はいきなり俺を強姦したひどい奴なのに。

「触るが、治す為だ」
「んっ……」

 文浩は断ってから俺の頬に触れた。少し頬が熱くなったけど、ピリピリしたような痛みはなくなった。痛みはなかったと思っていたけど、興奮して感じていなかっただけのようだ。治癒魔法をかけてくれたらしい。俺はほっとした。ほっとしたと同時に、先ほど掴まれた腕が痛みだして、俺は眉を寄せた。

「ん? まだあるのか?」
「だ、だいじょぶ……」
「大丈夫ではないだろう。見せてみろ。治すだけだ」

 そっと腕を出せば文浩の目がスッと細められた。

「ああ……ひどいな」
「え?」

 文浩の呟きに自分の腕を見ると、確かに少し紫色っぽくなっていた。俺どんだけ強い力で掴まれたわけ!? と驚愕した。

「触れるぞ」

 文浩が触れたところがまた少し熱くなって、鈍い痛みがすうっと消えていった。

「……あ、ありがと……」

 まっすぐ顔を見て礼を言うなんてことはできなかった。俺は俯いてどうにか、小さい声で礼を言った。

「いや……そなたに怖い思いをさせてしまった。すまない」

 そう言われ、今頃になって身体が震え始めた。カタカタと勝手に震える手を見て、俺はひどく動揺した。涙がぽろぽろこぼれる。

「おっ、俺……」
「そなたを守れず、すまなかった」

 そっと抱きしめられて、また涙が溢れた。文浩の腕の中で、俺は静かに泣いた。
 そうしてやっと雷月が帰ってきてくれた時、文浩は俺を抱いて立ち上がり、雷月に渡してくれた。

「……真崎さま、申し訳ありません。貴方を一人にするのではなかった……」
「バカッ、雷月のバカぁっ!」
「はい、本当に……」

 また涙がぼろぼろこぼれた。雷月じゃなきゃ嫌だ。でも、文浩たちが来てくれて助かった。こういう時、俺はいったいどうすればいいのだろう。
 やっと自分の床に運ばれて、俺はほっとした。
 西文が部屋の入口にいるのが見えた。じゃあ、あの皇子を引き剥がしてくれたのは建文だろう。部屋の外からいろいろ音がするから、そっちでなんとかしてくれているのかもしれない。後でお礼を言わなければいけないなと思った。
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