【完結】巨人族の皇子たち四人と、異世界ラブラブ性活にいたるまで

浅葱

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37.末皇子、謀られる

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雷月視点です。ちょっとハラハラ。でもこの話で回収します。
ーーーーー


 正直、雷月はあまり皇帝とは顔を合わせたくなかった。
 だが移動服務車(ワゴン)を下げる為に部屋の外へ出た際、呼ばれてしまったのだからしかたなかった。雷月は”天使”を優先していいことにはなっているので、真崎をかわいがってから向かうことに決め、甘く啼かせた。戻ってきたら火照る身体を持て余しているだろう真崎をたっぷり抱く予定である。
 部屋の扉を施錠し、魔法が使えない者には入れないようにする。

「兄上たち以外は決して通さないように。妻がもし出ようとした時も出さないように」

 部屋の前で控えている衛兵にそう告げて、雷月は皇帝の元へと急いだ。兄たちを部屋に入れたくはないが、同じ部屋で暮らすことになっているのだからしかたない。
 皇帝の執務室に、と言われたのでそちらへ向かう。皇帝の執務室は真崎と暮らしている建物からとても離れていた。元々この建物は王城の居住区にあり、皇子たちの居住空間であると同時に身内の客人をもてなす為のものだった。皇帝の執務室に向かうにはまず居住区を抜ける必要がある。
 やっと居住区から出た時、雷月はあまり顔を合わせたくない人物に遭ってしまった。

「おや? 雷月ではないか。どうしたのだい?」
「皇上から呼び出しがあったそうで……向かうところでございます。失礼します」
「そうか。ならば早く向かうといい」
「はい」

 雷月に声をかけてきた者は、雷月よりも背は高いが、いわゆる優男である。彼は皇太子の三番目の息子だ。雷月は現皇帝の末皇子ということもあり、皇太子の息子とそう歳は変わらない。彼は皇位継承権を放棄した雷月に懸想していた。すでに妻がいるというのに事あるごとに口説こうとする彼を雷月は厄介だと思っていた。

「雷月」
「……なんでしょうか?」

 雷月は苛立ちをどうにか抑えようとする。皇位継承権を放棄した雷月の身分は彼よりも低い。ただ皇帝の末皇子であることに変わりはないので、表立って身分を振りかざす者はいない。だが雷月は己の分をわきまえるようにはしていた。

「結婚すると聞いたが、相違ないか」
「はい。失礼します」

 雷月は彼の質問に答えると、足早に去って行く。彼がクッと口端を上げたことには気づかなかった。
 居住区を抜けても皇帝の執務室は遠い。はやる気持ちを抑え込み、極力音を立てないようにして渡り廊下を進む。ようやく皇帝の執務室の手前の門に辿り着き、訪れを告げた。

「雷月、皇上のお呼びにより参上致しました」

 衛兵は聞いていなかったようで、そこでしばし時間を取られた。どういうことなのかと雷月は内心悪態をついた。こんなことなら真崎を抱いてから来るべきであった。せっかく真崎が抱いてと誘ってくれたのに、と思うだけで早く戻りたくてたまらない。
 ようやく通された時には、雷月の苛立ちは頂点を迎えていた。

「皇上……」
「ああよい、挨拶などするな。して、雷月よ。どうかしたのか?」

 皇帝は書類を尚書令から受け取りながらそんなことを聞いた。

「皇上からお呼びだと伺いましたが……」
「此度呼んだのはそなたではないぞ。朕が呼んだのは文浩ウェンハオだ。文浩とはすでに話を終えている。どういうことであろうな?」
「そうでございましたか。……たいへん失礼しました」
「まぁよい。文浩にも聞いたが”天使”さまはどんなご様子だ? すでにそなたが抱き、生命の危機は脱したと聞いてはいるがな」

 揶揄するように聞かれ、雷月は内心ムッとした。

「恐れながら、真崎さまは兄上たちを恐れていらっしゃいます。ですが、悪態を吐かれる余裕は出てきました」
「それならばよい。文浩にも”天使”からの文句は甘んじて受けろと言ってある。あやつらはそれだけのことをしたのだ。完全に拒絶されるよりはいいだろう」
「はい」
「そなたからすれば文浩たちは許せぬ存在であろうが、”運命”であることは変えられぬ。文浩たちの要求を聞く必要はないが、できるだけ協力し”天使”さまを愛していきなさい」
「はい、ありがとうございます」

 少し話をし、雷月は執務室を辞した。それにしても、と雷月は首を傾げた。

(もしや、誰かが私を真崎さまの側から引き離そうとしている?)

 はっとして雷月は顔を上げた。
 兄たちでないことは間違いないが、それならば雷月を真崎から引き離して特をするのは誰なのか。雷月は真崎が待つ部屋までの距離の長さを煩わしく思いながらも、できるだけ急いで居住区へ向かった。居住区の門を抜けた後はもう構わなかった。本来ならば王城内で飛ぶのはご法度である。だが真崎を守る為だと、雷月は魔法を駆使して渡り廊下の屋根の上に上がり、真崎の待つ建物まで一気に駆けた。
 二階の窓から建物の中へ入ると、先ほど居住区の手前で別れたはずの皇太子の息子が、建文によって縛り上げられていた。

建文哥ジェンウェングァ! これは、いったい……」
「雷月、どこに行っていたのですか!? この不届き者が真崎に触れようとしていたのですよ!?」
「なんですって!?」

 雷月は慌てて部屋へ飛び込んだ。部屋の入口には西文がいて、雷月に頷いた。

「真崎さま!」
「あっ……雷月ぇっ!」

 声は、衝立の向こうから聞こえた。そこから文浩が真崎を抱き上げて現れた。真崎の服の前は乱れ、顔には泣いた痕があった。雷月は怒りで頭がカッとなったが、文浩の顔を見てどうにか感情を抑え込んだ。

「雷月、どこへ行っていたのだ。我らが来なければどうなっていたか……」
「兄上たちが助けてくださったのですね。ありがとうございます」
「雷月ぇ……」

 真崎が雷月に手を伸ばした。雷月は真崎を文浩から受け取り、ぎゅっと彼を抱きしめた。

「……真崎さま、申し訳ありません。貴方を一人にするのではなかった……」
「バカッ、雷月のバカぁっ!」
「はい、本当に……」

 真崎が涙をぽろぽろこぼす。雷月はしばらくそのまま真崎を抱きしめていた。
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