【完結】巨人族の皇子たち四人と、異世界ラブラブ性活にいたるまで

浅葱

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2.ただ抱きしめられているだけで

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 部屋の外からざわざわと人が歩いたり話したりするような声がし始めて、俺はびくっとした。
 らが俺を探しに来たのかもしれないと思ったら身体が震えだした。もうやだ。アイツらの顔も見たくなかった。

「大丈夫ですよ。結界を張りましたから」

 当たり前のように言われて驚いた。そういえばこっちの世界の人間は魔法が使えるようだった。

「結界って……」

 元の世界だと、ゲームとか、アニメ、ラノベの中でしか聞いたことがない言葉で、俺は苦笑した。なんで俺、こんな世界に来ちゃったんだろう?

「そういえば、魔法のない世界からいらしたのでしたっけ……もしかして、真崎さまは兄たちに何も教えてもらっていないのですか?」

 何かを教えてもらったことなんてあったかな? 俺は首を傾げた。アイツのベッドの上に落ちてから、ただひたすらにヤられてた気がする。ヤられないのは食事の時と気を失った後ぐらいで、後は……。

「……わからない。俺、ただヤられてただけだから……」

 俺は首を振った。記憶を辿ってみたけど、”私の運命”とか言われたぐらいで、その意味もわからなかったし。ああでも……。

「皇帝? には会ったのかな……なんか、子どもができたって言われたから?」

 抱かれて気を失って、無理矢理起こされて、なんか抱きかかえられて運ばれた気がする。そういえば俺、ここに来てからまだ一度も自分の足で立ったことないかもしれない。ここに来てどれぐらい経ったんだろう。さっきこの青年が十か月ぐらい? って言ってたっけ? そりゃあそんだけ長い間立ってなかったら立てるはずがないじゃないかって苦笑した。

「そう、でしたか……」

 なんかまた俺を抱きしめている青年が低い声を出したから、びくっとしてしまった。なんか怖い。

「申し訳ありません。私は、貴方を絶対に守りますから……それだけは決して忘れないでください」

 耳元で優しくそう囁かれて、俺の涙腺はまたおかしくなった。
 こんな、初めて会ったばかりの青年に縋るぐらい俺は切羽詰まっていたんだと思う。

「泣かないで、愛しい人。貴方が泣くと私まで切なくなります」

 俺、たぶんだけど、こんな風にただ抱きしめてほしかったのかもしれない。
 こんながたいでネコとか笑われてしまうかもしれないけど、中学生ぐらいまではちっちゃかったんだ。でも父方の血は背が高くて、がたいがでかい方で……高校になったらぐんぐん伸びて、結局身長は22歳まで伸び続けた。
 自分が女の子より男子が気になるって気づいたのは高校に入ってからで、BLのマンガとか小説とかこっそり読んで、こんなに愛される受けになりたいって思った。でもその頃にはもうどんどん背が伸びて、がたいもよくなって、運動部に誘われて……。意外と運動神経も悪くなかったからバスケ部なんか入ってたらこんな状態に。
 だから一生誰とも性行為はできないかもって諦めてた。
 なのに異世界トリップして、そしたら俺よりでかい奴らばっかりで、しかも延々エッチされちゃうなんて誰が思うんだよ? ヤッてる最中に抱きしめられていることはあるけど、こんなただ抱きしめられてるなんてシチュは一度もなかったと思う。
 そのせいか、胸がどきどきしてきた。

「知らない世界に来て、さぞ心細かっただろうと思います。今日はもう疲れていらっしゃるでしょうからここでお休みください。洗浄魔法をかけますね」

 途端に身体がさっぱりした。そう、この世界には身体がキレイになる魔法もあるのだ。すごく便利なんだけど風呂に入る楽しみがなくなるのはなんかやだなと思った。

「さぁ、真崎さま」

 そっとまた俺をベッドに横たえようとする青年の動きに、俺はいやいやするように首を振った。

「……やだ……」
「わかりました。では私も添い寝しましょうか。貴方が寝るまでここにいますから」
「本当に……?」
「はい、お約束します」

 そう言いながら一緒になってベッドに横たわった。青年は俺の寝衣を直してくれ、布団をかけてくれた。もうたったそれだけの行為が嬉しくてまた涙が溢れた。

「ご、ごめ……俺……」
「心も身体も疲れていらっしゃるのですよね。大丈夫、大丈夫ですよ……」

 抱きしめられて布団の上からぽんぽんと軽く叩かれるのが気持ちいい。俺はぼろぼろと涙を流しながら、いつのまにか眠ってしまった。

「……あの愚か者共が……絶対に許さない……」

 夢の中でまた青年の低い声を聞いたような気が、した。



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