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七一、溺愛
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「……山琴が話したのか」
「はい」
その日の夜、偉仁の帰りは遅かったがまっすぐ明玲の部屋に来た。元々明玲の部屋は偉仁の部屋の近くにあるので、結婚してからも移動はしなかった。立場は妾妃だが、蘇王の最愛の寵妃である。
偉仁は明玲に顔を見せてから風呂に入った。その間に明玲は支度を整えて偉仁の部屋に向かった。
そして今偉仁の腕の中にいる。
「趙姐がおっしゃられたことはそのう……」
「実際のところはわからぬが、山琴が男嫌いなのは間違いない」
「そうなのですか」
趙山琴が本当に偉仁をなんとも思っていないのかどうかは山琴にしかわからないと明玲は思う。ただ明玲のことを大事に思ってくれていることは伝わっていた。
偉仁と明玲の結婚にあたって偉仁の部屋に明玲を住まわせるという話もあったそうだが、山琴は絶対に許されることではないと反対したという。偉仁の部屋に誰かが訪ねてくることはまずありえないが、館で働く者たちに示しがつかないというのが表向きの理由だ。
本当のところは、どんなに仲が良くても喧嘩することもあるし、一人になりたいと思うこともあるはずだと、部屋を分けるよう進言してくれたようだ。しみじみ山琴には頭が上がらないと明玲は思う。
偉仁の他の妾妃たちについてはわからないが、娶る際にきちんとそこらへんの話はしていたらしい。彼女たちには彼女たちの事情があり、蘇王の妾妃となったことで自由に楽しく暮らせていると言っていた。
「明玲、蘇王の愛はとても重いと思うけどしっかり受け止めてね」
「明玲、どうかよろしくね」
かえって妾妃たちにそう頼まれてしまい、明玲はなんともいえない顔をすることになった。
「……もう何日かで月の物が始まるか」
「は、はい……」
一年近くも閨を共にしていると月経がいつ訪れるか把握されてしまうようだ。
「こればかりは縁だ。そう簡単にできるものではない。できたならできたで喜ばしいが、できていなくても気にするのではないぞ」
「……はい」
偉仁は明玲が気張ることのないよう、優しくそう言う。
「それに……しばらくはそなたを堪能したい」
「……え……」
明玲は赤くなった。床の上で手を取られ、指先に口づけられる。
「どうなったとしても、私はそなたを愛している。それだけは忘れるな」
「……はい」
結婚する前も、してからも偉仁は明玲を離さない。そしてその寵愛ぶりは日に日に激しくなっているように明玲には感じられた。
でもそれが嬉しいと明玲は思う。全身に触れる偉仁の手や、舌の動き。胸を優しく揉みながら乳首をいじる指先も明玲だけだと言っているようで興奮する。
「ああっ……!」
もう媚薬は必要なかったが、偉仁は明玲の秘所を丁寧に舐め明玲を甘く啼かせた。溢れる蜜を舐め啜り、偉仁自身を受け入れる蜜壺を丁寧に開いていく。
「……そなたの蜜は甘いな……」
「あっ、あっ、あっ……」
明玲は偉仁しか知らない。だから恥ずかしくは思っても全身を舐められるのは当たり前だし、延々偉仁自身を受け入れるのもそういうものなのだと思っている。
さすがに月経がきた日からは山琴が二人を引き離した。
「共に寝るぐらいならばいいだろう」
「だめです。月の物が来ている間は不安定なもの。聞けぬとおっしゃるならば妾の部屋に連れていきます」
「趙姐……」
「明玲、これは貴女の身体の為なのよ。偉仁様の言うことを聞きたくなるのはわかるけど、甘やかしすぎてはいけないわ」
「はい」
偉仁に嫁いでからの変化として、山琴が過保護になった。今までは立場上明玲に厳しくしていた部分もあったが、自分のことを話したことで思うように振舞うことにしたらしい。
明玲は元々山琴を慕っていたことからそれはそれで嬉しく思っている。
そうして穏やかに日々は流れ、母たちが離宮を出る日を迎えた。
「はい」
その日の夜、偉仁の帰りは遅かったがまっすぐ明玲の部屋に来た。元々明玲の部屋は偉仁の部屋の近くにあるので、結婚してからも移動はしなかった。立場は妾妃だが、蘇王の最愛の寵妃である。
偉仁は明玲に顔を見せてから風呂に入った。その間に明玲は支度を整えて偉仁の部屋に向かった。
そして今偉仁の腕の中にいる。
「趙姐がおっしゃられたことはそのう……」
「実際のところはわからぬが、山琴が男嫌いなのは間違いない」
「そうなのですか」
趙山琴が本当に偉仁をなんとも思っていないのかどうかは山琴にしかわからないと明玲は思う。ただ明玲のことを大事に思ってくれていることは伝わっていた。
偉仁と明玲の結婚にあたって偉仁の部屋に明玲を住まわせるという話もあったそうだが、山琴は絶対に許されることではないと反対したという。偉仁の部屋に誰かが訪ねてくることはまずありえないが、館で働く者たちに示しがつかないというのが表向きの理由だ。
本当のところは、どんなに仲が良くても喧嘩することもあるし、一人になりたいと思うこともあるはずだと、部屋を分けるよう進言してくれたようだ。しみじみ山琴には頭が上がらないと明玲は思う。
偉仁の他の妾妃たちについてはわからないが、娶る際にきちんとそこらへんの話はしていたらしい。彼女たちには彼女たちの事情があり、蘇王の妾妃となったことで自由に楽しく暮らせていると言っていた。
「明玲、蘇王の愛はとても重いと思うけどしっかり受け止めてね」
「明玲、どうかよろしくね」
かえって妾妃たちにそう頼まれてしまい、明玲はなんともいえない顔をすることになった。
「……もう何日かで月の物が始まるか」
「は、はい……」
一年近くも閨を共にしていると月経がいつ訪れるか把握されてしまうようだ。
「こればかりは縁だ。そう簡単にできるものではない。できたならできたで喜ばしいが、できていなくても気にするのではないぞ」
「……はい」
偉仁は明玲が気張ることのないよう、優しくそう言う。
「それに……しばらくはそなたを堪能したい」
「……え……」
明玲は赤くなった。床の上で手を取られ、指先に口づけられる。
「どうなったとしても、私はそなたを愛している。それだけは忘れるな」
「……はい」
結婚する前も、してからも偉仁は明玲を離さない。そしてその寵愛ぶりは日に日に激しくなっているように明玲には感じられた。
でもそれが嬉しいと明玲は思う。全身に触れる偉仁の手や、舌の動き。胸を優しく揉みながら乳首をいじる指先も明玲だけだと言っているようで興奮する。
「ああっ……!」
もう媚薬は必要なかったが、偉仁は明玲の秘所を丁寧に舐め明玲を甘く啼かせた。溢れる蜜を舐め啜り、偉仁自身を受け入れる蜜壺を丁寧に開いていく。
「……そなたの蜜は甘いな……」
「あっ、あっ、あっ……」
明玲は偉仁しか知らない。だから恥ずかしくは思っても全身を舐められるのは当たり前だし、延々偉仁自身を受け入れるのもそういうものなのだと思っている。
さすがに月経がきた日からは山琴が二人を引き離した。
「共に寝るぐらいならばいいだろう」
「だめです。月の物が来ている間は不安定なもの。聞けぬとおっしゃるならば妾の部屋に連れていきます」
「趙姐……」
「明玲、これは貴女の身体の為なのよ。偉仁様の言うことを聞きたくなるのはわかるけど、甘やかしすぎてはいけないわ」
「はい」
偉仁に嫁いでからの変化として、山琴が過保護になった。今までは立場上明玲に厳しくしていた部分もあったが、自分のことを話したことで思うように振舞うことにしたらしい。
明玲は元々山琴を慕っていたことからそれはそれで嬉しく思っている。
そうして穏やかに日々は流れ、母たちが離宮を出る日を迎えた。
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