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四七、想見您(会いたい)

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 偉仁と明玲が再び顔を合わせたのは、それから半月後のことだった。


 それまでの間、明玲は趙山琴たちと共にずっと皇都にいた。一日にして成された革命は民間にはあまり影響はなかったものの、皇都の出入りは厳しくなったこともあり、あらぬ疑惑を持たれないようにと出るのを見送ったのだ。とはいえ皇都の中を自由に闊歩するわけにもいかないので、明玲たちは館の中で過ごした。中秋節後のとても気持ちのいい季節ではあったが、それはしかたのないことだった。
 こんな時明玲は自分がただの老百姓(一般の民)であったらなと思うこともある。皇帝が変わろうが変わるまいが、生活が変わらないのならば雲の上の話だ。市井では皇帝はどんな風に思われていたのだろう。皇帝はあくまで皇帝というもので、同じ人間だとは思われていなかったのかもしれない。
 そして国内に発布された文言の内容は明玲たちにも知らされた。

 皇弟殿下、薊王が立つ。
 色に狂い、私欲を満たし、更なる増税を企てていた先帝を廃し、薊王が即位した。
 即時先帝の後宮は閉鎖。増税もまた廃された。
 変わらず大明帝国の民として新たな皇帝の誕生を寿げ―

 と。
 全国への発布ということもあり一時は騒然となったようだが、すぐに沈静化したらしい。民の関心事はあくまで自分たちの生活がどうなるかということだけである。変わらないのなら、それほど興味を持つとは明玲にも思えなかった。
 それに新たな皇帝が即位する場合、一時的にでも減税などの措置を取られることが多いらしい。ちょうど稲の収穫が終り乾燥させて脱穀がなされた時期である。徴税官が動きだしたかださないかの時期であり、一時的に徴税は中止された。それにより農家は猶予を得、すでに徴収された米の一部は国で買い取ることを決定したという。
 老百姓にとって歓迎こそすれ、新たな皇帝の即位を厭うことはないだろう。

(これでよかったのよね?)

 明玲は思う。ちなみに即位に伴う恩赦はないらしい。公明正大を謳う薊王は犯罪者を決して許しはしないという決意の現れだという。明玲はそれに首を傾げたが、そういう皇帝の方が民には受けがいいだろうと納得した。実際権力者というのは自分の都合のいいように物事を改ざんしていくものだ。
 薊王などどうでもよかった。

偉仁哥ウェイレングァにはいつ会えるのかしら……」

 最初はすごく怒っていたが、会えないと思うと寂しい気持ちの方が勝ってしまう。そんな明玲を見て山琴は、「かわいらしいこと」と笑う。
 そうして半月が過ぎ、やっと会えた偉仁に明玲は何も言うことができなかった。
 会いたかった。とても会いたかったのだ。
 いつのまにか腹立たしい気持ちも溶けていた。そんなことではいけないと思うのに、今は偉仁の腕の中に飛び込みたかった。

「……息災だったか?」
「……いいえ」

 否定すると偉仁はとても困ったような表情をした。

明玲ミンリン、もしややまいか何か……」
「……はい。気鬱の病かと思います。……哥のせいで」
「……すまなかった」
「哥は謝ればそれで済むと思っていらっしゃるのですか」

 偉仁がとても困っているのが感じられた。困らせたいわけではない、なんて言わない。明玲は会いたかった。ただ偉仁に会いたかったのだ。

「……思ってはいない。ただ、情けないことだが謝る以外にどうすればいいのか私にはわからぬのだ」

 そう言って偉仁は明玲の腕を引き、その腕の中に明玲を捕らえた。

「哥……」
「そなたは私のものだ。皇帝などにくれてやるつもりはない」

 その言葉だけで、ここ半月のもやもやが溶けていく気がした。



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即位に伴う減税については独自設定です。
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